インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第27話

『おい鈴、そろそろ現実を見て欲しいんだが?』

 

『うるさい! 何が何でも絶対アンタに当ててやるんだから!』

 

『やれやれ。これだけ避けているってのにまだそんな事を言うか……』

 

 未だに衝撃砲をバカスカと撃ってる鈴に和哉が避け続けていた。

 

「鈴の衝撃砲を簡単に避けるなんて……すげぇ」

 

「何なんですのあの動きは? わたくしの目からでは、和哉さんが瞬間移動したようにしか見えないんですが……本当にムチャクチャですわね」

 

「かずー凄いよ~!」

 

 その事に一夏、セシリアは和哉の避け方に信じられないような目で見ており、布仏はきゃいきゃいと応援している。

 

「か、神代くんって……実は忍者?」

 

「何であんな事ができるの?」

 

「なんかさ……もう私たちとは次元が違うよね」

 

 他の一組の女子達は何か達観したかのような感じで和哉を見ていた。

 

 そして……。

 

「う、嘘よ……こんな事って……」

 

「何で? どうしてあんな簡単に避ける事ができるの?」

 

「ま、間違ってる。こんなの間違ってる!」

 

「こ、これは夢よ。そうでなきゃこんな非現実的な事が……」

 

「男のくせに……あんな……あんな事が……!」

 

 一組以外のギャラリー達は和哉のやっている事が未だに信じられずに現実逃避をしていた。

 

「和哉さんの事を知っていなければ、わたくしもあそこにいる人たちと同様のことを言ってますわね」

 

「アイツと一緒に訓練してると、そんなに大して驚かなくなるんだよな」

 

「そうですわね。その時には和哉さんのやる事に驚かされるばかりで。それと同時に……今まであったわたくしの常識も覆されていますし」

 

「俺さぁ……和哉がこの後に何かとんでもない事をしても、『和哉だから』の一言で済ませてしまうんだけど」

 

「わたくしもですわ、一夏さん」

 

「「はぁっ」」

 

「どうしたの二人とも~? 急に溜息なんか吐いちゃってー。幸せが逃げるよ~?」

 

 一夏とセシリアが話している最中に溜息を吐いた事に、布仏がのほほんとした顔で二人に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? え? え? い、一体神代君は何を?」

 

「やれやれ。どうやら神代は相当な食わせ者のようだったな。まだ他にもあんな技があったとは」

 

 ピットでは真耶が困惑しており、千冬は笑みを浮かべながら和哉の動きを目で追っている。

 

「お、織斑先生、神代くんはどうやって凰さんの衝撃砲を避けているんですか?」

 

「簡単なことだ。凰が衝撃砲を放つ瞬間、神代はそれと同時に高速移動をして避けただけだ」

 

「け、けど砲弾が見えないのに避けるのは無理なのでは? どこに当てようとしてるのかが分からないと言うのに」

 

「別に見えなくても、衝撃砲が自分に当てようとしていると予測すれば回避できる。もし衝撃砲をかく乱して撃てば、流石の神代も避けきる事はできないから凰には充分勝機はある。だが今の鳳は神代に挑発されただけでなくアッサリと避けられたから、絶対に当てようと躍起になっててかく乱なんて微塵も考えていない。前回のオルコット戦と同様に、凰も神代の思惑通りに動かされているな」

 

「はぁぁ………前にも言いましたけど、神代くんって本当に色々と考えていますね」

 

 千冬の説明に真耶は未だに衝撃砲を避け続けてる和哉を見て再び感心していた。とても自分ではそんな事出来ないと。

 

「あんなのは冷静に戦えば誰でもできる。神代がその例だ。それが出来なければ、いくらIS操縦経験が豊富な凰でも神代に勝ち目は無い」

 

 そう言いながら千冬は和哉の動きを見逃さず、画面を見続けていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で……何で当たらないのよ!?」

 

 和哉が衝撃砲を避け続けて数分経つが、鈴は未だに信じられない様子だった。

 

「当たりたくないから避けているんだが?」

 

「この……! さっさと当たってやられなさい!」

 

 また撃ってくる衝撃砲に和哉は『疾速』を使って避けると、砲弾はまた地上に当たる。

 

「なぁ鈴。もう避けるのはいい加減に飽きてきたから、そろそろ反撃しても良いか?」

 

「あ、飽きたって……ずっと避けているからっていい気になってるんじゃないわよ!」

 

 和哉の発言に激昂する鈴だったが……。

 

(あれ? 和哉の奴、なんかさっきからずっと地上で避け続けているような気が……)

 

 ふと急に疑問を抱いた。

 

(空中に避けようと思えばできる筈なのにアイツは飛ぼうとする気配が一切無い……まさかアイツ!)

 

 何かに気付いた鈴は衝撃砲を撃つのを止めて双天牙月を構える。 

 

「やっと諦めてくれたか。流石にいつまでも避けるのは……」

 

「はああっ!」

 

「むっ!」

 

 

ガキィィィンッ!

 

 

 撃つのを諦めたかと思った和哉だったが、鈴のいきなりの突進攻撃を瞬時に刀を展開して受け止めた。

 

「おい鈴、どう言う風の吹き回しだ? いきなり近接戦をやるなんて」

 

「ちょっと確かめたい事があって、ね!」

 

「おっと!」

 

 

ガキンッ! キィンッ! ヒュッ!

 

 

 鈴はすぐに回転しながらの猛攻撃をすると、和哉は防御しなから避けてすぐに空中へと避難した。

 

(ここだ!)

 

 そう思った鈴はすぐ空中にいる和哉に目掛けて衝撃砲を放つと……。

 

「くっ!」

 

 次の瞬間に和哉はさっきまでとは違ってギリギリに避けた。

 

「ふう~危ない危ない。今のはちょっとヤバかっ――」

 

「思った通りね!」

 

「ん?」

 

 いきなりの鈴の発言に和哉は不可解な顔をした。

 

「何が思った通りなんだ?」

 

「和哉、アンタどうして地上でやった時のようなかわし方をしなかったの? さっきはギリギリで避けたみたいだけど」

 

「………………………」

 

 鈴の問いに和哉は答えずに無言となると、鈴はそのまま続けた。

 

「地上ではあたしの龍咆を簡単に避けていたアンタが、いざ空中になると急に焦った避け方をするなんて……これはつまり――」

 

「…………………」

 

「和哉、アンタ空中では地上でやってたような避け方はできないんでしょ? それを気付かせない為にあたしを挑発して龍咆を撃ち続けさせ、その後に自信喪失したあたしに攻撃を仕掛けて勝とうって言うシナリオを考えてた。違うかしら?」

 

「…………ちっ。どうやらバレてしまったみたいだな」

 

 さっきまで無言だった和哉だったが、手痛そうな顔をしながら刀を持っていない手でポリポリと頭を掻いていた。

 

「上手く行くと思ったんだがなぁ。流石は中国代表候補生。俺程度の浅知恵は軽くお見通しか」

 

「ふんっ、おだてても何もでないわよ。アンタにしてはよく考えたわ……けどね! 見抜いた以上、もうアンタには地上に足を着けさせないわ! 覚悟なさい!」

 

 そう言って鈴は再び衝撃砲を撃ち始めた。

 

「くっ! このままでは……!」

 

 空中にいる和哉は辛うじて避けながらも地上に降りようとしたが……

 

「させない!」

 

「!」

 

 鈴が阻むかのように近接戦を仕掛けてきた。

 

 

キィンッ! ガキンッ! ギンッ!

 

 

「ちいっ!」

 

「ふふんっ! 言ったでしょ!? もうアンタには地上に足を着けさせないって!」

 

 得意気に言う鈴に和哉は右手で使っている刀で鈴の双天牙月を防いでいる。そのまま鈴は和哉を地上に降ろさないように空中戦に持ち込もうとする。

 

 そして和哉がまた距離を取ると、鈴は再び衝撃砲を撃つと言う流れになった。

 

「和哉! この勝負、あたしの勝ちね!」

 

「ちっ! だが俺とてそう簡単には負けないぞ!」

 

 そう言って鈴は早くも勝利宣言を言って来るが、和哉は先程までの余裕顔が無くなって凄く焦っていた。

 

 だが……。

 

「さて、これで漸く次の段階に移る事が出来るな………」

 

 和哉が何やら妙な事を呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら今回は凰さんの勝ちのようですね」

 

「何故そう言い切れる?」

 

「あの状況を見る限りでは、凰さんに考えを見抜かれた神代くんにはとても勝機があるようには思えませんが」

 

 千冬の突然の問いに、真耶は自分でも分かると言うように答える。だが千冬はとてもそうには見えなかった。

 

「それは違うな。あんな幼稚な考えを見抜かれて焦るほど、神代は馬鹿じゃない」

 

「え?」

 

「私からすれば、凰は未だに神代の掌の上で踊らされているようにしか見えんがな」

 

「そ、それってつまり……神代くんは見抜かれるのを分かって誘い込んだと言うことですか?」

 

「さあな。神代が何を狙っているのかは私にも分からん。だが一つ言える事は……この勝負、そろそろ終わりそうになるかもしれないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 さ~てと。鈴がやっと気付いて俺の思った通りの展開に動いてくれたから、そろそろ仕掛けるとしますか。

 

 そう考えながら俺は鈴が撃つ衝撃砲をギリギリで避けながら次の段階に移ろうとする。

 

「和哉! もう逃さないわよ!」

 

 鈴はそう言ってバカスカと衝撃砲を撃ち続けていた。

 

(よし、距離はだいたいこの位だな)

 

 距離を測った俺は再び地上に降りようとするが……。

 

「させないって言ったでしょ!」

 

 鈴がさせまいと双天牙月を構えて近接戦を仕掛けようと突進してきた。

 

「馬鹿が! それを待ってたんだよ!」

 

「え!?」

 

 近づいてくる鈴に俺が即座に刀を捨て、右拳を握りながら構え……。

 

「宮本流奥義『破撃(はげき)』!」

 

 まだ鈴との距離があるにも拘らず、右拳を鈴に目掛けて繰り出すと……。

 

 

ドンッ!

 

 

「がはっ!」

 

 鈴は見えない何かに殴られたかのようにそのまま地上に激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………な、なぁセシリア。和哉の奴……今何をやったんだ?」

 

「……え、えっとぉ……わたくしには……和哉さんが拳を振った直後に、鈴さんが吹っ飛んだようにしか見えないのですが……?」

 

 突然の出来事に一夏とセシリアだけでなく、アリーナを見ているギャラリー全員が呆然とした。一体何があったのかと。

 

「つ…つまり何か? 和哉は鈴みたいな衝撃砲をやったってことか? ぶっちゃけ遠当てみたいな感じで……」

 

「じょ、状況から見るに……そうとしか思えませんわ……」

 

 一夏の問いにセシリアが間がありながらも答えると……。

 

『………ええええええええ~~~~~~~~!!!!!????』

 

 アリーナ全体が驚愕の声を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? 何かギャラリーの方が騒がしいが……まぁ今は放っておこう」

 

 取り敢えずは地上で倒れている鈴の様子でも見てみるか。

 

「おい鈴。いつまで倒れているんだ? あの程度の攻撃でやられるほど、お前は柔じゃ無い筈だが?」

 

「………あ、アンタ……今何したのよ?」

 

「ん?」

 

 俺が地上に降りながら問うと、鈴は起き上がりながら信じられないような目で俺を見てくる。

 

「何をしたって……見ての通りだったと思うが?」

 

「ふ、ふざけないで! さっきアンタがやった攻撃はまるで……」

 

「衝撃砲みたいだった、ってか? こんな風、に!」

 

 俺が再び右拳を繰り出すと……。

 

 

ドンッ!

 

 

「…………………なあっ!?」

 

 何かが地面にぶつかった音がした。鈴が恐る恐る下を見ると、地面には小さな穴が開いていた。

 

「どうだ。『破撃』の感想は?」

 

 宮本流奥義『破撃(はげき)』。高速で拳を繰り出すことによって衝撃波を発生させる遠距離戦用の技。武術で言う遠当ての一種。俺では最大7メートル程度だが、師匠は20メートル以上は軽く行ける。

 

「……あ、アンタ……ハッキリ言ってもう人間じゃないわ」

 

「失礼な。俺はまだ人間の領域から外れてないっての。それは師匠に言ってくれ」

 

 あの人みたいな超人は未だに見たこと無いからな。ま、その超人である師匠を超えるのが俺の最大の目標なんだが。

 

「それはそうと鈴。驚いているところ悪いが、俺は地上に足を着いたんだが?」

 

「! し、しまった!」

 

「今更気付いても遅い」

 

 そう言って俺は『疾足』を使って鈴の懐に入り……。

 

「なっ!」

 

「受け取れ鈴!」

 

 即座に上半身のバネだけを捻って……。

 

「『砕牙・零式』!」

 

 

ズドンッ!!

 

 

「ガハッ!!」

 

 鈴の腹に強烈な拳を繰り出した。俺の一撃を受けてくの字に曲がった鈴はそのまま吹っ飛ぶ。

 

 

ダァァァァァァァァンッ!

 

 

 そのままアリーナの壁に激突してズルズルと落ちていく鈴。

 

「あ…あ…あああ……」

 

 『砕牙・零式』を見事に喰らった鈴は何とか立っていたが……。

 

「あ…あたしは……まだ……がはっ」

 

 

バタンッ!

 

 

「あっけない幕切れだったな、鈴」

 

 何か言おうとしている途中に倒れた事に俺はそう呟いた。

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