インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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すいません。今日はかなり短いです。


第34話

「ったく。アイツ等は人が急いでいるってのにお構い無しだったな。鬱陶しいにも程がある」

 

「ね、ねえ。あの人たちはどうしてあんなに騒いでいたのかな?」

 

 更衣室に着いて俺が愚痴ってるとデュノアが訊いて来る。

 

「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」

 

「……?」

 

 デュノアの問いを一夏が代わりに答えるが、訊かれた本人は意味が分からない顔になってる。

 

「いや、普通に珍しいだろ。ISを操縦できる男って、今のところ俺たちしかいないんだろ?」

 

「もし俺や一夏、そしてお前の他にもいたなら話は別だが」

 

「あっ! ――ああ、うん。そうだね」

 

 何だ? まるで自分が男だと思い出したかのような言い方だな。

 

「それとアレだ。この学園の女子って男子と極端に接触が少ないから、ウーパールーパー状態なんだよ」

 

「ウー……何?」

 

「二十世紀の珍獣。昔日本で流行ったんだと」

 

「ふうん」

 

「尤も、俺は一夏と違って一部を除いたクラスの女子達以外に嫌われているがな」

 

「え? どうして?」

 

「早い話、この学園の全生徒に喧嘩を売ったんだ」

 

 まぁそれもさっきの事を含めて後で話すと俺は付け加えると、一夏が安堵したかのような顔になってる。

 

「しかしまあ助かったよ」

 

「何が?」

 

「いや、学園に男が俺と和哉だけって辛いからな。何かと気を遣うし。もう一人男がいてくれるっていうのは心強いもんだ。なあ、和哉?」

 

「確かに」

 

「そうなの?」

 

 そうなのって……やっぱり妙だな。何かコイツはどうも自分が男だと言う自覚が無いと言うか何と言うか。

 

「ま、何にしてもこれからよろしくな。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

 デュノアに疑問を抱いてる中、一夏が自己紹介をしていた。

 

「俺は神代和哉だ。神代でも和哉でも好きな方で呼んで良い」

 

「うん。よろしく一夏、和哉。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「わかった、シャルル」

 

「って今こんな話しをしてる場合じゃないぞ一夏、シャルル。早く着替えないと不味い」

 

 俺がそう言うと一夏が時計を見ると焦った顔になる。

 

「うわ! 本当に時間ヤバイな! すぐに着替えちまおうぜ!」

 

 焦る一夏は速攻で制服のボタンを一気に外し、それをベンチに投げて一呼吸でTシャツも脱ぎ捨てた。何だ一夏、お前事前にISスーツに着替えてなかったのか? 一時間目にあるのを知ってるなら、事前に部屋で着替えてれば良いものを。因みに俺は既に制服の中にISスーツを着てるので、ただ制服を脱げば良いだけだ。

 

「わあっ!?」

 

「「?」」

 

 何だ? シャルルがいきなり顔を赤らめてるな。

 

「どうしたんだシャルル?」

 

「荷物でも忘れたのか? って、なんで着替えないんだ? 早く着替えないと遅れるぞ。シャルルは知らないかもしれないが、うちの担任はそりゃあ時間にうるさい人で――」

 

「要するに早く着替えないと担任の千冬さんから鉄拳制裁が下されるって言いたいんだろ?」

 

 前置きはいらないからと言って、俺は制服を脱いでISスーツを着てる状態になる。

 

「う、うんっ? き、着替えるよ? でも、その、あっち向いてて……ね?」

 

「あっち向いててって……」

 

 まるで自分の着替えを見られちゃ不味いみたいな言い方だ。シャルルの不審な言動に俺はどんどん疑問が膨らんでいく。

 

「??? いやまあ、別に着替えをジロジロ見る気はないが……って、シャルルはジロジロ見てるな」

 

「み、見てない! 別に見てないよ!」

 

 否定しながら両手を突き出し、慌てて顔を床に向けてるシャルル。ってかコイツの行動は本当におかしい。男とは思えない反応ばかりしている。

 

 シャルルに本当に男なのかと問い質してみたいが、今はそんな時間が無いので後回しにするとしよう。

 

「一夏、シャルル。俺は一足先に行かせてもらうぞ」

 

「え? 行くなら一緒に行こうぜ。出来れば和哉が使った……えっと……『疾足』だったか? それ使って運んで欲しいし」

 

「お前が着替えるのを待ってたら遅刻になりそうな予感がするからな。そんじゃお先に」

 

「あっ! ちょっ……!」

 

 

フッ!

 

 

 引き止めようとする一夏に俺は、すぐに『疾足』を使って更衣室の出入り口に移動してドアがバシュっと開くと、

 

「早く着替えてグラウンドに来いよ」

 

 

フッ!

 

 

 再び『疾足』を使い更衣室を出てグラウンドへ向かった。

 

「神代、織斑とデュノアはどうした?」

 

 第二グラウンドに到着すると、ジャージ姿の千冬さんが既にいた。

 

「二人はまだ着替えてる最中だったので、俺だけ早く来ました」

 

「その割には少し遅かったようだが?」

 

「情報に飢えたハイエナ達が一斉に一夏とシャルルに絡んできた故に少し手間取りまして」

 

「そうか。それは大変だったな」

 

 千冬さんは『ハイエナ=女子』と認識しているようだ。さっきのクラスでの騒ぎを思い出し、他のクラスのハイエナ達がどう言う行動を起こすか大体予測してたんだろう。

 

「ってな訳で、一夏達が遅刻しても勘弁してもらえませんか?」

 

「それとこれとは話が別だ」

 

 ですよねー。敢えて言ってみたけどやっぱりダメだったか。

 

 そう思いながら俺が列に並んで五分近く経った後、一夏とシャルルが漸く来た。

 

「遅い!」

 

 一夏とシャルルが来て早々、千冬さんは腕を組んで顔を顰めていた。ま、授業がもう始まってるからな。

 

「くだらんことを考えている暇があったらとっとと列に並べ!」

 

 

バシーンッ!

 

 

 あ、千冬さんが出席簿で一夏の頭を叩いた。遅刻したのに一体何を考えてたんだよ、一夏。

 

 俺が呆れていると、二人は一組整列の一番端に加わった。因みに俺は二人の前だ。

 

「ずいぶんゆっくりでしたわね」

 

 一夏の隣にいる蒼いISスーツ姿のセシリアがいかにも不機嫌ですみたいに言う。おいおいセシリア、遅刻した位で怒るなよ。

 

「和哉さんがおっしゃった理由を差し引いても、スーツを着るだけで、どうしてこんなに時間がかかるのかしら?」

 

 本来ISスーツと言うのは一般的に女性専用であり、見た目はワンピース水着やレオタードに近い。それゆえ部分的に肌の露出があるのは動き易いように考慮されているみたいだ。それでは防御力が無いも同然に思えるだろうが、一応ISのシールドバリアーがあるので、スーツの面積があろうが無かろうが関係無い。もしシールドエネルギーが無くなったら完全にアウトだが。

 

 因みに男のISスーツだが、スキューバダイビングの全身水着みたいな物である。女子と違って露出してる箇所は頭と手と足くらいだ。何でもデータ取りのためにそうしているらしい。

 

「(セシリア、そんなに剥れるなよ)」

 

「わたくしは別に剥れてなんか……」

 

「(一夏が女にモテるのは今に始まった事じゃ無いんだから、ちょっとは余裕な心を持ったらどうだ? 淑女なんだろ?)」

 

「…………それとこれと話は別ですわ」

 

 あらら。恋する乙女は淑女としての余裕が無いんだな。

 

「それにしても一夏さんはさぞかし女性との縁が多いようですから? そうでないと二月続けて女性からはたかれたりしませんよね。尤も、先程のHRの時には和哉さんが止めてくれましたが」

 

 そんな嫌味を言うなってセシリア。 

 

「なに? 一夏またなんかやったの?」

 

 今度は鈴か。因みに鈴は一夏の後ろにいる。

 

「後ろにいるわよ、バカ!」

 

 鈴があんな風に怒鳴ると言う事は、一夏がまた下らない事を考えていたんだろう。アイツは毎度毎度飽きない奴だな。

 

 そう言えば一夏の後ろは二組の列だったな。鈴はともかく、未だ俺を敵対視してる連中がいるみたいだ。言いたい事があるなら直接言えっての。

 

「こちらの一夏さん、今日来た転校生の女子にはたかれそうになりましたの」

 

「はあ!? 一夏、アンタなんでそうバカなの!?」

 

「俺から言わせれば周りに聞こえるように声を出して喋るお前等の方がバカだと思うが?」

 

「――全くだ。バカは私の目の前にも二名いる」

 

 ギギギギッ……と軋むようなブリキの音で首を動かすセシリアと鈴の頭に、

 

 

バシーン!

 

 

 千冬さんの伝家の宝刀である出席簿アタックが響いた。

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