インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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仕事によって執筆する時間が無い……誰か私に時間を……!

まあそんな事はどうでもいいので、続きをどうぞ!


第37話

 

「……どういうことだ」

 

「ん?」

 

「いや、俺は断ったんだが一夏がしつこくてな」

 

 昼休みの屋上。そこに俺達がいた。

 

 本来、高校の屋上は生徒立ち入り禁止となっているが、このIS学園ではそんな決まりはない。それどころか誰でも入れるように開放されており、花壇には綺麗に配置された季節の花々、欧州を思わせる石畳が設置されている。そしてそれぞれ円テーブルには椅子が用意され、晴れた日の昼休みには女子達で賑わう快適な場所となってる。

 

 その女子達はシャルル目当てで学食に向かったと思われるので、屋上には俺達以外誰もいなかった。今日は貸し切り状態みたいで何よりだ。

 

「天気がいいから屋上で食べるって話だっただろ?」

 

「そうではなくてだな……!」

 

 チラッと箒が睨むかのように俺を見た後、近くにいるセシリアや鈴、そしてシャルルに視線を送る。

 

「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきたばっかりで右も左もわからないだろうし」

 

「そ、それはそうだが……」

 

「諦めろ箒。一夏がこう言う奴だって事くらいはお前だって分かってる筈だと思うが?」

 

「む、むう……」

 

 俺の台詞に箒は何か言いたげにしながら持ち上げた拳を握り締める。そのてには包みに包んだ手作りの弁当が握られていた。成程。どうやら箒は一夏の為に手作り弁当を作ったみたいだな。

 

 IS学園は全寮制だから、弁当持参にしたい生徒の為に早朝のキッチンが使えるようになっている。俺も使ってる事はあるが、そのキッチンはプロが使ってるような器具ばかりだ。見るだけで使われてる金の桁が違うってのが良く分かった。

 

 因みに俺は今日弁当を作った。綾ちゃんほど料理は美味くないが、それでも作れる方だからな。弁当は以前に綾ちゃんが作ってくれた料理である肉野菜炒め弁当だ。これとご飯があるだけで充分食っていけるからな。作り方を教えてくれた綾ちゃんに感謝しないと。

 

「はい一夏と和哉。アンタたちの分」

 

 そう言ってタッパーを俺と一夏に向かって放る鈴。食べ物を投げるなっての。

 

「おお、酢豚だ!」

 

「これは美味そうだな」

 

「そ。今朝作ったのよ。アンタたち前に食べたいって言ってたでしょ。和哉はついでだけど」

 

 俺はついでかよ。ま、本命である一夏の為に作ったんだから、俺はついでなのは仕方ないか。しかしご飯がある俺は別に良いんだが、それが無い一夏にはちょっとキツイな。鈴は鈴で自分の分のご飯だけ食堂で買ってきてるし。一夏にオカズだけじゃなくご飯も用意してやれよ。

 

「コホンコホン。――一夏さん、わたくしも今朝はたまたま偶然何の因果か早く目が覚めまして、こういうものを用意してみましたの。よろしければおひとつどうぞ」

 

 セシリアがバスケットを開くと、ソレにはサンドイッチが綺麗に並んでいる。

 

「(安心しろ一夏。セシリアが変な材料を入れてないかちゃんと確認した上に、本人にも味見をさせといたから大丈夫だ)」

 

「(た、助かった……)」

 

 俺が小声で教えると一夏は物凄く安堵している。因みに鈴はチッ……っと舌打ちしていた。余計な事をとでも思ってるんだろう。

 

「? お二人とも、どうかしまして?」

 

「いや! どうもしてない!」

 

「俺はただ、朝早くセシリアが俺の部屋に入って来て料理を見て欲しいと懇願――」

 

「わーっ! わーっ! わーっ!」

 

 言ってる最中に遮るかのように大声を出すセシリア。

 

 何故こんな会話をしてるのかと言うと……セシリア・オルコットは料理スキルが0に近い。見た目は良いんだが、味が途轍もなく不味い。

 

 俺が一度試食した時に思わず吐いてすぐ「不味い」と言ってしまった事によりセシリアは凄く憤慨したが、自分が作った料理を食わせた時は前言撤回して事実を受け入れた。それによりセシリアは男の俺によって料理を一から学んで凄く不味い料理にならなくなった。だが俺がちゃんと見てないとセシリアは時折とんでもない物を作ってる事もあるが、そこは敢えて割愛しておこう。

 

 まあ、セシリアのような大金持ちのご令嬢だったら仕方がない。本来ならお抱えシェフが作った料理を食べている立場だから、包丁を握った事が無いどころか、自分で食材を選ぶ事すらした事は無いだろうからな。

 

 しかしそれでも異様に見た目が良かったのはセシリア曰く「本と同じになればいいのでは?」だとさ。もし料理を作るのが大好きな綾ちゃんがいたら絶対にセシリアを説教していただろう。味を重視する綾ちゃんにとってそれは一番許せないからな。当然俺もだけど。

 

「あんたが余計な事するから一夏にアピールするのよ。このバカ」

 

 はっはっは。お前も人のこと言える立場じゃないだろうが、鈴。俺はまだ憶えてるぞ。お前が中学の頃、俺に殺人料理を食わせたじゃないか。一夏に料理を食わせる前の毒味役として。あの時は散々だったんだぞ。不味かった上に暫く口の中で味が残ってたんだからな。まあその後は俺が鈴に料理の基礎を叩き込んでやったが。と言うか鈴も大して料理スキルが無い俺に料理を教えられたのは屈辱だったと思うが。

 

 話が逸れてしまったが、ともかく今のセシリアの料理は不味くはないから心配は無い。ちゃんと俺が見てたからな。

 

「ええと、本当に僕が同席してよかったのかな?」

 

 俺と一夏の間にいるシャルルがそう言う。転校初日でいきなりこんな展開になるとは予想外だったんだろう。

 

 だがシャルルが俺達と同席するついさっきまではかなり面倒な事になっていた。三人目の男子争奪戦とばかりに一年一組には鬱陶しいと思う位に女子が大挙して押し寄せてきたのだ。そんな女子達にブロンドの貴公子のシャルルは、実に見事としか言いようのない対応でお引取り願っていた。

 

 女子一同はシャルルの対応と姿に強くアピールするのが逆に恥ずかしくなるばかりか、嬉しいような困ったような顔をして引き上げて言った。

 

 何しろ、

 

『僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから』

 

 ってな事を言ったからな。

 

 普通はかなりのキザな台詞と思うだろうが、シャルルが言っても全然嫌味じゃなかった。それはもう本当にそう思ってると言う感じの態度、堂々とした雰囲気の中にある儚げの印象、その言葉の輝きを引き立たせていた。そしてどこか優しいと言うのが更に良かったのだろう。手を握られた三年の先輩さんが速攻で失神してたからな。

 

 そんなやり取りが何度もあった後に一夏が誘ったと言う訳だ。そのついでに鈴とセシリア、そして前もって誘っていた俺も同行した事により、一夏と箒の二人っきりの食事の筈が大勢で賑わう形になった。

 

「いやいや、男子同士仲良くしようぜ。色々不便もあるだろうが、まあ協力してやっていこう。わからないことがあったらなんでも聞いてくれ。――IS以外で」

 

「アンタはもうちょっと勉強しなさいよ」

 

「一夏、最後の台詞によって頼りになる男が台無しだぞ」

 

「してるって。多すぎるんだよ、覚えることが。お前らは入学前から予習してるからわかるだけだろ」

 

「ええまあ、適性検査を受けた時期にもよりますが、遅くてもみんなジュニアスクールのうちに専門の学習をはじめますわね」

 

 俺や一夏は分厚い教科書だけで予習してただけだがな。尤も一夏はやっていなかったが。

 

 因みに鈴は聞いた話だと中学三年から勉強して専用機持ちの代表候補生になったらしい。そうなるにはかなりの勉強と努力をしたんだろう。全ては再び一夏に会う為に。

 

 現在、模擬戦でのトータル勝率は俺が一位、鈴が二位、セシリアが三位、箒が四位で一夏が五位。ISに乗り始めて間も無い上に専用機持ちじゃない俺が一位なのはおかしいと思うだろうが、それはあくまで俺の身体能力と武術でカバーしているだけにすぎない。もし一夏達が俺のように武術を会得していたらビリになっているからな。

 

「ありがとう。一夏って優しいね」

 

 シャルルが笑顔で礼を言った事により、一夏は妙におかしな反応をしていた。おい一夏、シャルルは男なんだぞ……って突っ込みたいところなんだが、実のところ本当にシャルルは男なのかと疑問に思っている。男にしてはかなり細いし、更衣室で着替えた時には一夏の上半身の裸を見た時に女みたいな反応をしていたからな。それにコイツ、着替えの時にはまるで見られては不味いように一夏と着替えるのを拒んでいたし。

 

「い、いや、まあ、これからルームメイトになるだろうし……ついでだよ、ついで。って和哉の方は部屋割りについて何か聞いてないのか?」

 

「山田先生から聞いた話だと、俺はもう暫く布仏さんと相部屋だとさ」

 

「そうか。けど何か申し訳ないな。お前を除け者にしてるような感じで」

 

「気にするな。それに布仏さんを放っておいたら、俺がいないのを好機と見てお菓子をたくさん食べるのが目に見えてるから逆に好都合だ」

 

「和哉、あんたもうすっかりあの子の保護者になってるわね」

 

「まあな。けど就寝中には困る事がある。布仏さんは時折、俺のベッドに潜り込んで寝てる時があるからな。何度も言ってるんだが、『かずーと一緒だと寝やすい』とか言って来る始末で……ん? どうした?」

 

『…………………』

 

 俺が言ってる最中、箒を除く一夏達が呆れたような顔をしてコッチを見ている。何か俺が布仏さんの事を話す度にこんな反応をしてるんだよな。俺は何か呆れるような事を言ったか?

 

「な、なあ和哉……随分とのほほんさんと仲良いと言うか、親しいと言うか……」

 

「和哉さん……もしかして実は付き合っているのでは……?」

 

「か、和哉って彼女持ちだったんだね……。僕知らなかったよ」

 

「んな訳無いだろうが。俺と布仏さんはただの友達だけの関係だ」

 

「あんたねぇ! 一緒に寝ている時点で友達なんかで済ませる関係じゃないでしょうが!」

 

 鈴の突っ込みに一夏達はウンウンと頷いてる。失敬な奴等だな。

 

 そうしてる内に昼食が進む。俺は弁当の肉野菜炒め弁当と酢豚、一夏と鈴は酢豚、シャルルは購買のパン、セシリアは手料理を作ったにも拘らず購買で買ったパンを食べている。一夏に食わせる為に作ったとは言え、自分も今後の為に食っといた方が良いと思うんだがな。

 

「……………………」

 

 そんな中、先程から一夏の隣で全然箸を動かしてないどころか、弁当の包みさえ広げていない箒はずっと黙ったままだ。本当は一夏と二人っきりで食べる予定だったから、俺達が加わったことにより不機嫌になってるんだろう。

 

「どうした? 腹でも痛いのか?」

 

「違う……」

 

「そうか。ところで箒、そろそろ俺の分の弁当をくれるとありがたいんだが――」

 

「………………」

 

 無言で弁当を差し出す箒に、一夏は返事に困る反応をしている。箒が不機嫌な理由を作ったのは一夏だと言うのに、当の本人は全く気付いていないからな。この唐変木にはホントに困ったもんだ。

 

「じゃあ、早速。……おお!」

 

「ほう、これは凄いな……」

 

 一夏が箒に貰った弁当を開けると、鮭の塩焼きに鶏肉の唐揚げ、こんにゃくとごぼうの唐辛子炒め、ほうれん草のゴマ和えと言うバランスの取れたオカズがあった事に俺は思わず感嘆の声をあげる。

 

「これはすごいな! どれも手が込んでそうだ」

 

「つ、ついでだついで。あくまで私が自分で食べるために時間をかけただけだ」

 

「(よく言う。キッチンで作ってた時の箒はそりゃもう一夏の為にと――)」

 

「何か言ったか、和哉?」

 

「気のせいだろう」

 

 小声で言ったにも拘らず箒は聞こえていたようでギロッと睨んでくるが、俺は惚けるように振舞う。箒って一夏関連の事となると耳が良いんだな。

 

「そうだとしても嬉しいぜ。箒、ありがとう」

 

「ふ、ふん……」

 

 俺の呟きが聞こえてなかった一夏は礼を言うと、嬉しそうな表情で自分の弁当を開ける箒。

 

「箒、なんでそっちに唐揚げがないんだ?」

 

「! こ、これは、だな。ええと……」

 

 箒の弁当に唐揚げが無い理由は知っている。一夏の入ってるその唐揚げしか美味く出来ていないからな。

 

「わ、私はダイエット中なのだ! だから、一品減らしたのだ。文句があるか?」

 

「文句はないが……別に太ってないだろ」

 

 誤魔化す箒に一夏は不味い発言をしてしまう。何故なら鈴とセシリアの目の色が変わったからである。

 

「あー、男ってなんでダイエット=太っているの構図なのかしらね」

 

「まったくですわ。デリカシーに欠けますわね」

 

 それは俺も含まれてるのかねぇ。俺から言わせれば、若い内から下手にダイエットすると逆に太ってしまうから適度に食べた方が良いと思うぞ。

 

「いやでも実際ダイエットなんか必要ないように見え――」

 

「もうそこまでにしておけ、一夏。それ以上言うと手痛い目に遭うぞ」

 

「何でだ?」

 

 箒の体を見ようとする一夏に俺がストップをかけるとキョトンとした顔になる。

 

「女には色々と複雑な理由があるんだ」

 

「はあ?」

 

「どうやら和哉は一夏と違って分かってるみたいね」

 

「一夏さんには紳士として不足しているものがあまりに多いようですわね。少しは和哉さんを見習って下さい」

 

 俺の台詞に鈴とセシリアが頷くように言ってると、一夏は何やら考え事をしてる顔になる。どうせまた何か下らん事でも考えてるんだろう。

 

「「一夏!」」

 

 俺だけじゃなく箒と鈴も気付いて一夏に怒鳴る。さすが幼馴染と言ったところか。

 

「? ねえ和哉、彼女達はどうして急に一夏に怒鳴ったのかな?」

 

 状況が全く飲み込めないシャルルは困った顔をしながら俺に訊いて来る。

 

「幼馴染同士であるコミュニケーションとだけ言っておこう」

 

「???」

 

 全く理解が出来ないシャルルであるが、これしか言いようがない。と言うか一夏、お前シャルルを見ながらまた変な事を考え始めてるな。

 

「一夏……どうしたの? なんだか不思議な顔をしているけど」

 

「不思議? ほう、どんな感じかね?」

 

「口調まで不思議に……。ええと、孫夫婦の一家団らんを眺めているおじいさんのような顔かな」

 

「奇遇だなシャルル。実は俺もそう思ってたぞ」

 

「コーヒーと歴史を深く愛する知的な老学者ではなくて?」

 

「あはは。それはないよ、一夏。面白いなぁ」

 

「面白い冗談だな、一夏。思わず噴出しそうになったぞ」

 

 シャルルと俺の台詞により一夏が若干打ちのめされたような顔になってた。流石に友人である俺でもフォローは出来ない台詞だったからな。

 

 と言うか一夏、そんな事を言ってる暇があるなら早く箒の弁当を食ったらどうだ? 箒が痺れを切らしそうだぞ。




次回もまた遅い更新になりますが、お楽しみに!
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