インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今日は早めに書けました。
それではどうぞ!


第38話

「コホン。さて与太話はこのくらいにして昼食にしよう。いつまでも談笑していられるほど昼休みは長くない」

 

 おいおい箒。全うな事を言ってるが、一夏に追い討ちをかけてやるなよ。

 

「じゃあまあ、いただきます」

 

 一夏は箒に言われたとおり再び食べ始め、唐揚げを頬張る。

 

「おお、うまい!」

 

 唐揚げを食べた一夏は笑顔で賞賛した。一夏がそこまで言うって事は、それだけ箒が作った唐揚げが美味い証拠だ。そして賞賛された箒は得意そうな顔になっている。

 

「これって結構仕込みに時間がかかってないか? ええと、混ぜてるのはショウガと醤油と……んぐんぐ。なんだろうな。絶対食べたことのある味なんだけど」

 

「おろしニンニクだ。それとあらかじめコショウを少しだけ混ぜてある。隠し味には大根おろしが適量だな」

 

「へえ! それはいいな。今度俺もやってみよう」

 

 これは良い事を聞いたな。後で綾ちゃんに箒お手製唐揚げの作り方をメールで送っといておこう。多分メールを見た後すぐに実践するだろう。

 

 しかしまあ、一夏は本当にモテモテだな。箒だけじゃなく、セシリアや鈴から手作り料理を貰えるとは。まあこの三人は一夏にベタ惚れだから、アピールする為に手料理を作ってるのはとっくに分かってる。当の本人は三人の想いにちっとも気付いていないがな。

 

「いやでも、本当にうまいな。箒、食べなくていいのか?」

 

「……失敗した方は全部自分で食べたからな……」

 

「ん?」

 

「あ、ああ、いや、大丈夫だ。まあ、その、なんだ……。おいしかったのなら、いい」

 

「本当にうまいから箒も食べてみろよ。ほら」

 

 俺が考えているのを余所に、一夏は箒に唐揚げを食べさせようとしていた。一夏の行動に箒はキョトンとした顔になっている。

 

「な、なに?」

 

「ほら。食ってみろって」

 

「い、いや、その、だな……」

 

 しどろもどろになりながら頬を赤くしてる箒。そりゃそうだ。何しろ大好きな一夏に『はい、あーん』をされているんだからな。

 

「箒、折角一夏がお前に食べさせようとしてるんだ。ここは素直に食べたらどうだ?」

 

「だ、だが……」

 

「……………………」 

 

「……………………」

 

 箒にアドバイスをしてる俺に鈴とセシリアが睨んでくる。その程度で怒るなよ二人共。もうちょっと広い心を持ったらどうなんだ?

 

「それとこれと話は別よ」

 

「出来ればわたくしたちの心情を察して欲しいのですが」

 

 そんな事を言われてもなぁ。と言うかよく俺の考えてる事が分かったな。顔に出てたか?

 

「ほら。箒、食べてみろって」

 

「い、いや、その……だな。ううむ……ごほんごほん」

 

 一夏が催促してるにも拘らず、箒は未だに迷っていた。いつまでも迷ってないでさっさと決断しろっての。ってかさっきから緩んだ表情からキリッと戻してるからちょっと面白いぞ。

 

「あ、これってもしかして日本ではカップルがするっていう『はい、あーん』っていうやつなのかな? 仲睦まじいね」

 

 こらこらシャルル。そう言う事は思ってても口には出してはいけないんだぞ。

 

 でないと、

 

「だ、誰がっ! なんでこいつらが仲いいのよ!?」

 

「そっ、そうですわ! やり直しを要求します!」

 

 鈴とセシリアが黙っていないんだから。

 

 そんな激昂した二人にシャルルは笑顔を絶やさずに提案を出そうとする。

 

「うん。それならこうしよう。みんな、一つずつおかずを交換しようよ。食べさせあいっこならいいでしょう?」

 

「ん? まあ、俺はいいぞ」

 

「俺も一夏と同じく」

 

「ま、まあ、一夏と和哉がいいって言うんならね。付き合ってあげてもいいけど」

 

「わたくしは本来ならばそのようなテーブルマナーを損ねるような行為は良しとはいたしませんが、今日は平日でここは日本、『郷に入っては郷に従え(ゴーイング・ゴウ)』ですわね」

 

 取り敢えず全員参加みたいだな。 

 

「じゃ、早速もーらいっ!」

 

 突然鈴がそう言ってすぐに、一夏の箸から唐揚げを奪った。

 

「あ、こら!」

 

「おい鈴、いくらなんでも行儀が悪いぞ」

 

 俺の突っ込みに鈴は全く聞いておらず唐揚げを味わって食べている。

 

「もぐもぐ……。う! な、なかなかやるわね。なかなか」

 

「ふっ。和の伝統を重んじればこそだ」

 

 自分が食べる筈だった唐揚げを奪われたにも拘らず余裕の表情を見せる箒。相手に料理の美味さをアピールしてるのが良く分かる。一夏は全く気付いていないけど。

 

「あー……わりい箒。今ので唐揚げ、俺が口を付けたのしか無くなったわ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ああ。いくらなんでも男が口を付けた食べ物っていやだろ? って、でもそうなると(ほか)出せるおかずないんだよな。唐揚げ以外は一緒だし」

 

「一夏、箒はそんな細かい事を気にしてないと思うぞ。なあ、箒?」

 

「う、うむ。和哉の言うとおりだぞ一夏。べ、別に口がついていてもいいぞ。私は気にしない」

 

「うん? そうなのか。じゃ、はいあーん」

 

 助け舟を出した俺に箒が賛同すると、一夏は食べかけの唐揚げを箒に食べさせようとする。

 

「あ、あーん……」

 

 多少ぎこちない感じだがそう言って口を開けて唐揚げを頬張る箒。良かったな。大好きな一夏から食べさせて貰えて。

 

「い、いいものだな」

 

「だろ? うまいよな、この唐揚げ」

 

「唐揚げではないが……うむ。いいものだ」

 

 箒が幸せを感じている最中、

 

「一夏! はい、酢豚食べなさいよ酢豚!」

 

「一夏さん! サンドイッチもどうぞ! 一つといわずにどうぞ全部!」

 

 今度は鈴とセシリアが一夏に食べさせようとしていた。

 

「ね、ねえ和哉。どうして二人は一夏に食べさせようとしてるのかな?」

 

「乙女の暴走とでも言えば分かるか?」

 

「暴走って……もしかしてあの二人は一夏の事を?」

 

「そう言う事だ」

 

 一夏達のやり取りを余所に俺はシャルルと会話している。今下手に関わると巻き添えを食うからな。

 

「まあ他にも一夏を狙ってる女子がいるがな。とは言え、それはシャルルも同様か」

 

「和哉は違うの?」

 

「生憎俺は女子からはそう言う目で見られていないし、逆に嫌われているんでな。更衣室で女子達に絡まれた時、俺に対して嫌悪感を抱いていた女子達がいただろ?」

 

「そう言われれば……」

 

 俺の台詞にシャルルは思い出して疑問を抱くようになる。

 

「どうして和哉だけ嫌われてるの?」

 

「俺がIS学園に喧嘩を売ったからだ。『IS学園最強』になるって宣戦布告をしてな。それをした事によって女子達は気に食わないんだ」

 

「さ、最強って……」

 

「シャルルは軽蔑するか? 俺がどれだけ身の程知らずな事をしているのかと」

 

「そ、そんな事は無いよ。とても立派な目標だと思う。僕は応援するよ、和哉」

 

「ありがとう。けどなシャルル。俺が最強になると言った以上は、いずれ代表候補生であるお前とも戦う事になるからな。その時は容赦しないぞ」

 

「あはは。お手柔らかに頼むよ」

 

 俺とシャルルがそう話している内に、

 

「ていうか食べようぜ。食べてすぐダッシュは避けたい。俺と和哉とシャルルはまたアリーナの更衣室まで行かないといけないんだからな」

 

 どうやら一夏達は一段落しているようで話題が変わって……ん?

 

「おい一夏、一つ聞いて良いか?」

 

「何をだ?」

 

「お前もしかして、実習の度に毎回スーツを脱いでいるのか?」

 

「え? 脱がないとダメだろ?」

 

 俺の問いに一夏は聞き返すと鈴が呆れたように言おうとする。

 

「あんたねぇ。女子は半分くらいの子が着たままよ? だって面倒じゃん」

 

 鈴の言葉に一夏は今更気付いた顔になる。道理で午後からの実習がいつもギリギリに来ていた訳だ。何やってんだか。

 

「和哉、お前今は……」

 

「言うまでもなく着てるぞ。ほれ」

 

「………俺、てっきり素早く着替えているのかと思ってた」

 

 俺がズボンの裾を上げてスーツの一部を見せると一夏はガックリとなった。いくら俺でも時間をロスする事は避けたいからな。

 

「ていうことは」

 

 次に一夏は箒達を見始める。おいおい一夏、いくらなんでもそれは止した方が良いと思うぞ。

 

「な、なに女子の体をジロジロ見てるのよ! このスケベ!」

 

「え? いや、別にそういう意味で――」

 

「い、意味がどうであれ、紳士的ではないと言っているのですわ!」

 

「だから眺めていただけ――」

 

「お、女の体を凝視しておいて眺めていただけとはなんだ! 不埒だぞ!」

 

 ほれ見ろ。下手に確認するかのように見ると鈴達はセクハラされたように誤解するんだから。もうちょっと後先考えて行動しような、一夏。

 

 そう思っていると一夏は「はぁ……」と溜息を吐いて反論する事を諦めて弁当を食べ始めた。賢明な判断だな。今の箒達に何を言っても無駄だから。

 

「……………」

 

「どうかしたの、一夏?」

 

「何か言いたそうな顔だな」

 

 一夏は何となくと言った感じでシャルルと俺を見た後、

 

「男同士っていいなと思ってな」

 

 訳の分からん事を言ったが、一夏の気持ちは何となくだが分からなくもなかった。

 

 多分、一夏の事だから新しい男子が転入して来た事に嬉しく思っているんだろう。ついでに寮の大浴場も使えるかもしれないと。

 

 因みに大浴場についてだが、男の俺や一夏は現在使う事が出来ない。前は時間をずらして使用出来る筈だったが、かなりの女子達から異議があったそうだ。

 

 その異議とは『私たちのあとに男子が入るなんて、どういう風にお風呂に入ったらいいかわかりません! 特に神代和哉が変態的な行動をするかもしれません!』だそうだ。人を変態扱いするとは良い根性してるよ。

 

 だったら女子の前の時間――と言う編成では更に倍の数の女子達が異論を唱えたみたいだ。『男子の後のお風呂なんてどういう風に使えばいいんですか! 特に神代和哉の体臭が付いたら大変です!』だそうだ。流石にその異論には俺も頭に来たから、『睨み殺し』を使って暫く動けなくしてやったがな。全く。人がいなけりゃ好き勝手ほざくくせに、いざ現れると蜘蛛の子を散らして逃げようとするからな。

 

 まあそれはともかく、男二人だけのために使用時間の割り振りをするのは無駄が多いと言う結論が下り、俺や一夏は寮の大浴場を一度も使った事がない。俺は別にどうでも良いが、風呂好きの一夏にとっては拷問に等しいだろう。

 

「そ、そう? よくわからないけど、一夏がいいなら良かったよ」

 

「シャルル、何か妙に照れてるように見えるが俺の気のせいか?」

 

「き、気のせいだよ。おかしなことを言わないでよ、和哉」

 

 そうかねぇ。何故か言葉がぎこちないんだが。

 

「……男同士がいいって何よ……もしかして和哉と一夏は以前から……」

 

「……不健全ですわ……和哉さんは実は一夏さんと……」

 

「……灯台もと暗しに気付かぬ愚か者め……和哉、一夏は渡さんぞ……」

 

 何やら三人が小さな声で独り言を言いながら俺を睨んでいた。聞き取れなかったが、何か物凄い悪寒が走ったような気がする。

 

 その後、女子トリオが俺に対して敵視するかのように一日中睨まれた。俺が一体何をしたんだ?

 

 

 

 

 

 

「全く。今日は何故か散々だったな」

 

「不機嫌そうだね、かずー」

 

 夕食を終えた俺は一夏とシャルルと別れて部屋に戻ると布仏がいた。食堂では三人目の男子転校生と言う事で女子包囲網と質問攻めにあい、延々と続きそうな状況に俺が二人を連れて即座に『疾足』を使って離脱したのだ。

 

 それとやはり山田先生の言ったとおり、シャルルは一夏と同室だった。一夏は申し訳無さそうに謝っていたが、俺は大して気にはしてない。

 

「かずー、今日はデザート無いの~?」

 

「無い。と言うか作る暇が無かった。食堂にはたくさんの女子達がいるからな」

 

「ぶー」

 

 デザートが無い事を知ると布仏は不機嫌そうに頬を膨らませるが、突然思い出したかのように言う。

 

「そういえば、おりむーと転校生が同室って聞いたけどー?」

 

「ああ。今頃一夏はシャルルと部屋でまったり過ごしてるだろうな」

 

 そう言って俺はベッドに座ると、布仏が俺の隣に座る。

 

「かずーはおりむーが羨ましい?」

 

「いいや。もし仮に俺がシャルルと同室になる話が来ても現状のままで良いって断るし」

 

「…………どうして?」

 

 ん? 何だ? 布仏が妙に顔を赤らめて真剣な顔をしてるような気がするな。

 

「布仏さんを放っておいたら、俺がいないのを良い事にお菓子をバリボリ食べるだろうから……って痛っ!」

 

「む~~~~! 私そんな子供じゃないよ~~~!」

 

 俺が言ってる最中に布仏はポカポカと俺を叩いてくる。それもグーで。

 

「かずーが普段から私をどういう目で見ていたのかよーくわかったよー!」

 

「わ、悪い! 思わず本音が……」

 

「私が何さー!」

 

「いや、君じゃないから! 俺が言った本音は本当の事を言ったって意味だよ!」

 

 あ~、何か段々面倒な事になって来たな。と言うかここ最近、布仏は俺に遠慮が無くなったと言うか、いつも以上に子供っぽくなったみたいな気がする。

 

「もうかずーなんて知らない! ふーんだ!」

 

 プイッと顔を背けて自分のベッドで不貞寝を始める布仏。

 

「布仏さん、俺が悪かったから許してくれ」

 

「…………………」

 

 謝罪しても布仏は何の反応も示さない。こりゃ相当不機嫌にさせてしまったようだな。仕方ない。此処はちょっと妥協するか。

 

「………明日布仏さん専用のアップルパイを作るって言ったらどうする?」

 

「…………お菓子も追加~」

 

 くっ……! ここは我慢しなければ……。

 

「……分かった。明日はお菓子も追加してあげるから」

 

「………じゃあ後もう一つ」

 

 こんにゃろっ……! 何か調子に乗っているな。いい加減に俺もちょっと頭に……。

 

「これから私の事を本音って呼んでくれたら許してあげるー」

 

「…………はい?」

 

 名前を呼ぶだけで? 別にそれは構わないが……まあ良いか。

 

「分かったよ、本音。これで良いか?」

 

「うん。それじゃ許す~」

 

 そう言って布仏……ではなく本音は犬や猫みたく俺にじゃれ付いて来た。

 

 後日、俺達が互いに名前で呼び合い、本音がいつも以上に俺に引っ付いてくる事にクラスから色々と誤解をされる羽目になったのは言うまでもなかった。




次回をお楽しみに!
けど『なろう』の方もいい加減書かなければいけないから、こっちはちょっとお休みになりそうです。
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