インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回は殆どオリジナルです。

それではどうぞ!


第51話

「漸く神代が動いたようだな」

 

「うわぁ……。デュノア君が神代君の技を直撃……大丈夫でしょうか?」

 

 和哉がシャルルに『砕牙・零式』を使ったことにより、観察室で見ている千冬はどんな動きも逃さんと言わんばかりにジッと和哉を注視し、真耶は痛そうな顔をしながらシャルルの安否が気になっていた。

 

「よく見ろ。デュノアはまだやられていない」

 

「え? ……あっ!」

 

 千冬に言われたとおり、真耶はシャルルが一夏のいる所まで退いているのを確認すると安堵した顔を見せる。

 

「神代の『砕牙・零式』を受ける直前、デュノアは咄嗟に退いてボーデヴィッヒに使ってた武器を盾代わりにして防いだ。それによって神代から逃れる事は出来たが……代償として、あの腕は暫く使えないだろう」

 

「そ、それって神代君のアレを受けたから……ですか?」

 

「そうだ。神代の攻撃技は必殺と言っていいほどの一撃だ。いくら防いだとは言え、アレを喰らってただで済むわけがない」

 

 モニターではシャルルが腕を押さえながら顔を顰めている。千冬はシャルルの様子を見て、あの腕は暫く使い物にはならず、片腕だけで和哉と戦わざるを得ないと考えている。

 

 そして真耶は顔を顰めているシャルルを気にしつつも、和哉が一体どう言う試合展開にさせるのか気になってモニターに集中していた。

 

「お、織斑先生。これまで神代君は代表候補生相手に勝っていますけど……今回も勝つんでしょうか?」

 

「知らん。だが勝敗に関係なく、各国は神代の認識を改めるだろう。それと同時に――」

 

 各国がどう言う行動を取るのかが容易に想像が付く、と付け加える千冬。

 

 それは真耶も粗方の予想は付いていた。

 

 

 

 

 

 

「シャルル、大丈夫か!?」

 

「う、うん。何とか……ううっ」

 

「やるじゃないかシャルル。まさかアレを防がれるとはな。てっきり仕留めたと思ったんだが」

 

 俺の『砕牙・零式』を受けたシャルルはパイルバンカーを盾代わりにして防ぎ、そのまま後退して一夏のいる位置へと戻っている。だがそれでもシャルルの片腕はダメージを受けているから、あの腕は暫く使えない。片腕だけのシャルルなら余裕で倒せるかもしれないが、それで挑むのは愚の骨頂だ。シャルルはセシリア・鈴とは違い、常に冷静に戦うから、下手に攻め込んでしまえば返り討ちに遭ってしまう。

 

 あと一夏はシャルルと違って攻撃が読みやすいから、余り苦戦することなく倒せる。先に一夏を倒してシャルルに専念すれば良いが、そんな事をする気は無い。一夏はさっきのボーデヴィッヒとの戦いで急激な成長を見せていたから、更に成長させる為に今度は俺がギリギリまで追い込ませる。一夏は練習や訓練より実戦形式で戦わせれば伸びるタイプだからな。さてさて、どうやって追い込ませようか……。っと、いかんいかん。ボーデヴィッヒを忘れていたな。

 

「それじゃ、約束だぞボーデヴィッヒ。お前が負けそうになるから、今度は俺も参戦させてもらうからな」

 

「ふ、ふざけるな……! 私はまだ戦える……!」

 

「そのザマじゃ、もうあの二人に勝てる訳が無いだろう。俺が戦ってる間に、冷静さを取り戻すために頭を冷やしとけ」

 

「何だとっ……!」

 

 ダメージを負いながらも虚勢を張って立ち上がろうとするボーデヴィッヒに、

 

 

 ギンッ!

 

 

「っ! き、貴様何を……!」

 

 俺が『睨み殺し』を使って動きを止めた。

 

「ふんっ。軍人であるお前ならすぐに撥ね退けるかと思ったが、やはりダメージが大きいだけじゃなく、心が少し折れかけてるな。なら尚のこと、今はそこで大人しく見てな」

 

「だ、誰が貴様の命令などを「黙れ」……っ!」

 

 体が動けなくても未だに反抗的な態度を見せるボーデヴィッヒだったが、俺が殺気を出しながら声を低くして発すると静かになった。

 

「言っておくが今のボーデヴィッヒには拒否権は無い。仮に挑んだところで却って足手纏いだ。だがそれでも戦うと言うのなら、俺の『睨み殺し』で動けなくなった体を自力で解くんだな」

 

「くっ……おのれっ!」

 

 動けない体を必死に動かそうとするボーデヴィッヒだが、そう簡単に体が動かないみたいだから少々時間が掛かりそうだ。ま、その方が俺にとっては好都合だけど。

 

「さてと……待たせて悪かったな二人とも。さあ、始めようか」

 

 コキコキと体の骨を鳴らしながら一定の距離まで近付こうとする俺に、一夏とシャルルは警戒しながらも少々戸惑う様子を見せている。

 

「和哉、お前……」

 

「自分からボーデヴィッヒさんを動けなくするなんて……どういうつもりなの?」

 

 オープン・チャンネルで俺とボーデヴィッヒの会話を聞いていた二人は疑問を抱いているようだ。

 

「言ったろ? 冷静さを失ってる今のアイツじゃ却って足手纏いだと」

 

「だからって……」

 

「一夏、相手を気にする前に自分の事に集中するんだな。でないと……(スッ)」

 

 俺は右手で両目を覆い隠した後、

 

「……すぐに負けてしまうぞ?」

 

「「!!!」」

 

 指と指の間から殺気を込めた目で睨むと、二人は驚愕を露わにした。そして一夏はすぐに武器を構え、シャルルは俺の余りの変わりように戸惑っている様子だ。

 

「な、なにこの殺気は……? さっきまでの和哉とはまるで別人みたいに……あれが本当に和哉なの……?」

 

「シャルル、絶対に気を抜くなよ。アイツは、和哉は……その気になれば俺達をあっと言う間に倒すだけの実力を持ってる……!」

 

「おいおい一夏、それはいくらなんでも過大評価しすぎだぞ? 訓練機の俺に専用機の二人相手に――」

 

「よく言うぜ。代表候補生のセシリアや鈴にサシで勝った奴に、そんな事言われると逆に嫌みだぜ」

 

 ふむ。どうやら一夏は一切の油断は無いだけでなく、俺がいつ動いても対応出来るように武器を構えたままだ。ま、そうするように訓練で言っておいたからな。

 

 一夏の行動に俺が内心で感心していると、

 

『頑張れ~! 織斑君! デュノア君!』

 

『そんな最低な奴ぶっ飛ばしちゃえ~~!』

 

『ていうかよくもデュノア君に攻撃したわね!』

 

『アンタなんか二人にやられちゃえばいいのよ~!』

 

 観客席にいるバカ女共の大半が一夏・シャルルの応援と同時に、俺への罵倒を飛ばしていた。

 

 相変わらず口だけは達者な連中だ。文句があるなら俺に言えと何度も言ってるのに、奴等はすぐに蜘蛛の子を散らすかのようにすぐ逃げるからな。ま、所詮その程度の矮小な連中だって認識してるから、もう大して気にしてないけど。

 

 って、おいおい二人とも。そんな気の毒そうな目で俺を見ないでくれよ。別に気にしちゃいないんだから。

 

「和哉、その……悪い」

 

「謝罪は結構。あのバカ女共のやってる事は今に始まった事じゃないのは一夏も分かってる筈だ」

 

「でも……だからと言って」

 

「前に教えただろ、シャルル? アイツ等は俺が嫌ってるだけじゃなく、やろうとしてる事も認めたくないから、ああやって俺を否定してるんだ」

 

 『IS学園最強』になろうとする俺を、な。

 

「やろうとしてる事? それって……」

 

「お喋りはここまでだ。何とか腕を使えるようにする為に話しを長くさせようなどと言う時間稼ぎは見抜いているぞ、シャルル」

 

「くっ……」

 

 俺の指摘にシャルルは顔を苦くしている。適当に言ったんだが、まさか大当たりだったとは。抜け目がない奴だ。本当にシャルルは厄介な相手極まりないな。これはやはり先にシャルルを倒したほうが良さそうだ。一夏を追い込ませて更に強くさせようとする際に、下手に横槍入れられたら俺が負けてしまうからな。

 

「さて、第2ラウンド……開始だ!」

 

 

 フッ!

 

 

「き、消えた!?」

 

「鈴やラウラに使ったアレか!」

 

 『疾足』を使う俺にシャルルと一夏は驚愕の声を発し、会場全体もざわめいていた。俺はそんな事を一切気にせず、シャルルの背後に回ってすぐに右腕から刀を展開して斬撃を繰り出だそうとする。

 

「シャルル!」

 

 

 ガギンッ!

 

 

 シャルルに当てようとした俺の斬撃に一夏が割って入り、持っている雪片弐型で防いで鍔迫り合いとなった。

 

「い、一夏……!」

 

「へぇ。俺がシャルルを狙うのを読んでいたとは。やるじゃないか、一夏」

 

「和哉の性格から考えて、絶対にそうすると思ってたぜ! お前はザコの俺なんかよりシャルルを警戒してたからな!」

 

 驚くシャルルを余所に俺が賞賛すると、一夏は守ると言わんばかりに必死に押し留まっている。

 

「別にお前をザコ扱い何かしてはいないんだが」

 

 そこまで卑屈になるなよ。音を上げた台詞を言っても、俺の訓練を最後まで付き合ってくれてるお前を弱いと思っちゃいない。

 

「ま、やはり刀を展開して正解だったな」

 

「お前……俺がシャルルを庇うと分かっててソレを出したのか……ぐっ!」

 

 両手で雪片弐型を持つ一夏が押されてるのに対し、片手で刀を持ってる俺はグイグイと押し始める。ISの補正があっても結局は人間が使うので、今の一夏と俺では腕力の差が結構ありすぎる。

 

「ふむ。このまま一夏と戦いたいところだが、今は後回しにさせてもらうよ」

 

「シャルルはやらせないぞ、和哉……!」

 

「その心意気は結構だが、忘れてることがあるぞ」

 

「なに……?」

 

「俺が使うのは拳だけじゃないって事をな!」

 

「うぐっ!」

 

「一夏っ!」

 

 俺は左足を使って一夏の顔を目掛けて蹴りをやると、物の見事に当たった一夏は怯む。そしてそのまますぐに左拳で一夏の上半身にドドドッと当てた後、回し蹴りをして吹っ飛ばした。

 

「がはっ!」

 

「次はお前だ、シャルル!」

 

「くっ!」

 

 一夏を吹っ飛ばしてすぐに標的を変えると、シャルルは右腕からマシンガンを展開して俺に当てようと撃ってくる。言うまでも無く、あんなのに当たりたくない俺は『疾足』で回り込みながら避ける。

 

「ちっ。やはりそう簡単にやらせてはくれないか」

 

「まだまだっ!」

 

「おっと!」

 

 距離を取った俺にシャルルはマシンガンからライフルに切り替えて俺を撃って来る。それにより俺は再度『疾足』を使って避けながら近付こうとするが、ライフルからマシンガンに切り替えて撃って来るシャルル。

 

 恐らく接近戦を避ける為に、弾幕を張って打ち続けて間合いを維持しているんだろう。近付こうとする度にマシンガン連射、一定の距離を取ったら得意の『高速切替(ラピッド・スイッチ)』を使ってアサルトライフルを展開して撃つ。接近戦を好む俺にとっては嫌な戦い方だ。

 

 だがなシャルル。距離を取っていれば俺が一切攻撃出来ない等と思わないほうが良いぞ。

 

「そっちがそう来るなら……これでも喰らえ!」

 

 そう言って俺は足をあげて、

 

「宮本流奥義『飛燕脚(ひえんきゃく)』!」

 

 そのまま大きく振りかぶると、

 

 

 ドンッ!

 

 

「うあっ!!」

 

 シャルルは見えない何かに喰らったかのように吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

「ねぇセシリア。和哉が足を振りかぶった直後にシャルルが吹っ飛ばされるのって……」

 

「おそらく……あの時と似た技でしょうね」

 

 観客席側にて試合を見ている鈴とセシリアは、和哉が距離を取っていたシャルルを吹っ飛ばしていたのを見てある事を思い出していた。

 

 それは和哉と鈴が戦った時の試合であり、その時に和哉が拳で見えない攻撃である『破撃』を使った時である。

 

「ったくもう和哉の奴。一体どれだけの技を隠し持ってるのよ……!」

 

「試合を見るたびに、こうも新しい技を次々と……ほんっとうに和哉さんわたくしたちの常識をことごとく壊してくれますわね……! しかも今度は衝撃砲の足バージョンって……」

 

「あたし達はもうそんなに驚きはしないけどさぁ。あそこで見物してるお偉いさんたちが面白いくらいにビックリしてるわよ」

 

 鈴が指す方向では、来賓用の席に座っている各国の上層部一同が遠くからでも見て分かるほど仰天していた。他にも鈴たちの周りにいる観客たちも同様に驚いており言葉を失っている。

 

 普段から和哉と一緒に訓練している一夏・箒・セシリア・鈴は既に耐性が付いてるので大して驚かないが、大して和哉の事を知らない人から見れば仰天もの。何しろ和哉が遠距離攻撃が一切無い訓練機の打鉄を使って、あんな事をしたのだから驚くのは無理もない。因みにシャルルは和哉と訓練はしていたが、ISについての事や遠距離武器の事を中心に学んでいた為に和哉の技については大して知らなかった。

 

「これで各国の上層部の方たちも和哉さんの認識をあらためると思いますわ。このトーナメントの後、わたくしの祖国であるイギリスが和哉さんを勧誘しろなどという命令を下さなければいいんですが……」

 

「アンタの国はまだ良いわよ。中国は多分荒れると思うわ。あたしのISの第三世代兵器である龍咆を和哉が生身でやったんだから、研究者たちなんか卒倒するわよ」

 

 二人は自分達の国だけでなく、他の国も今後どう言う行動を取るのかを安易に予想をしていた。

 

 そして、

 

「やれやれ、今度は足か」

 

「あ、あははは。か、神代君って……本当に何でもありなんですね」

 

 モニター室で和哉の足技を見ていた千冬は驚きを通り越して感心し、真耶はもう何とも言えないように苦笑していた。

 

「まさか腕だけではなく、足でもあんな事が出来たとはな。どこまでも私を飽きさせない奴だ」

 

「何かもう、神代君って……ぶっちゃけ歩く兵器じゃないですか?」

 

「ふむ。中々ユニークなネーミングだ。私から見れば歩くビックリ箱だが」

 

 いっそ今度の早朝手合いの時に見せてもらうかと呟く千冬に、真耶は千冬を見て『この人も色々な意味で凄い』と内心思っているのであった。




すいません。本当でしたらラウラの暴走シーンまで書こうと思ってましたが区切りました。

次回で何とかそのシーンまで持って行きますのでお楽しみに!
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