インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第60話

「つまり荷物持ちは建前で、千冬さんと山田先生は俺の護衛と同時に買い物をしに来たと言う訳ですか?」

 

「まぁそう言うことだ」

 

「生徒を守るのは教師である私たちの役目ですからね」

 

 俺を殺そうとした女の身柄を駆けつけて来た警官に引渡した後、俺達は何事も無かったかのように店の中を歩いている。

 

 その途中で俺が尋ねると、千冬さんと山田先生が頷いた事に少し顔を顰める。

 

「別にお二人の護衛が無くても、あの程度の相手なら俺一人でも対処出来ますよ?」

 

「確かにな。だが状況によってお前一人では無理な場合もある。お前が伸した相手なら尚更な」

 

 相手がって……ああ、そう言う事か。

 

「………成程。確かに今回は千冬さん達がいなかったら不味かったかもしれませんね」

 

 千冬さんが言いたい事を察した俺は、内心前言撤回しながら二人がいなかった場合の事を想定する。

 

 もし俺一人だけで俺を殺そうとしてきた女性権利団体のメンバーである女に反撃して伸してしまえば、ソイツと一緒に同行していた他のメンバーが女に手をあげた等と声高に叫んで俺を嵌められていたかもしれない。けれど多分奴等の事だから俺を殺す事に成功しようが失敗しようが、どの道自分達の都合の良いシナリオを企てているに違いない。奴等は女尊男卑社会を利用してどんな事でも正当化しようとするからな。

 

 だから千冬さん達が一緒にいなければ、俺はさっき言ったような展開になって今頃は刑務所行きだ。俺がIS学園の生徒で学園側が抗議したとしても、女性権利団体の奴等の事だから『女性に暴力を振るって傷を負わせた非道な男には刑罰が必要』などと言って無視すると思う。何が何でも俺を消したがってるからな、あの連中は。

 

「理解してくれて何よりだ」

 

「でもお二人が一緒なら襲撃犯と一緒にいた女二人もしょっ引けば良かったのでは?」

 

「そんな事をしても時間の無駄だ。問い質したところで『自分たちは無関係だ』と白を切るのが目に見えてる」

 

「………そうでしょうね」

 

 だとしたら襲撃犯のあの女も近々釈放されるだろうな。

 

 何せアイツ等には女性権利団体と言う強力な後ろ盾があるから、アレが存在している限りやりたい放題出来るし。 

 

 ホントに嫌になるな。女尊男卑社会って奴は。特に女だからって何をしても許されると思い上がってるバカ女共には。

 

「一応教師である我々の方でも女性権利団体に抗議はしておくが、余り期待しないでくれ」

 

「分かってます。ですのでいつか女性権利団体に必ず相応の報いを受けさせます。もう二度と下らん真似が出来ないよう徹底的に……フフフ」

 

「ふっ。楽しみにしてるぞ神代。私も奴等にはウンザリしているからな」

 

「そ、それよりも二人とも。今は水着を買いましょうね、ね?」

 

 俺と千冬さんが笑みを浮かべていると、妙に怯えている様子を見せる山田先生が話題を変えた。その事に俺と千冬さんは此処に来た目的を思い出すと、すぐに頭を切り替える。

 

 そして水着売り場に着いた俺は男性用の水着が売ってる所へ行くために別行動をしようと二人に言おうとする。

 

「男用の水着がアッチですので、俺ちょっと見て来ますが良いですか?」

 

「ああ、構わん」

 

「何かありましたらすぐに私たちを呼んでくださいね」

 

「へ~い」

 

 許可を得た俺に千冬さんと山田先生は了承したので、俺はテクテクと男性用の水着売り場へと行く。

 

「さてと、なるべくシンプルなやつを選んで……」

 

『い、いや! それが似合うんじゃないか!? うん、それがいいぞ、シャル!』

 

『じゃ、じゃあ、これにするねっ』

 

「ん? 何かどこかで知ってる声が聞こえたような気が……」

 

 並ばれている水着を見回してる最中、男女の声が聞こえた方へ視線を向けた。

 

 見ると試着室の前に置かれている靴が何故か二足ある。同時にそこからはさっきの聞き憶えがある男女の声も。

 

 ちょっと気になって試着室の方へ行くと、千冬さんと山田先生も気になっていたかのように来ていた。

 

「あ、やっぱり千冬さんも気付きました?」

 

「ああ。まさかとは思いたいが」

 

 そう言って千冬さんは目の前の試着室のカーテンを開けると、

 

「「うわぁっ!!」」

 

 制服姿の一夏とオレンジの水着に着替えたシャルロットが突然の不意打ちに慌てふためいた。

 

「おやおや、これはこれは……」

 

「お、お、織斑くんっ! デュノアさんっ!」

 

「何をしている、バカ者が……」

 

 一夏とシャルロットがいた事に俺は苦笑、山田先生は顔を赤らめながら軽いパニック、千冬さんは呆れ顔となって呟いた。

 

 

 

 

 

 

「あのなぁ。水着を買いに来たとしても、試着室に二人揃って入るのは不味いだろ」

 

「神代くんの言うとおりですよ。教育的にもダメです!」

 

「す、すみません」

 

 俺の台詞に頷く山田先生が強めに言うと、シャルロットがぺこりと頭を下げる。

 

 けど俺は何故こうなったのかは大体分かった。恐らく原因はシャルロットだろう。

 

 一夏がシャルロットと一緒に試着室に入るなんて非常識な事は絶対にしない筈。となればシャルロットが強引に一夏を試着室へ連れ込んだ事になる。

 

 何故シャルロットがそのような行動に走り、そんな事が分かるのかと疑問に思うだろうが、もう俺は既に大体分かっているからだ。それはさっきからこっちをコソコソと覗き見しているのがいるからだ。しかも俺もよく知っている連中。ソイツ等がいるからシャルロットはあんな行動に走ったのだろうと推測していると言う訳だ。

 

「ところで和哉。どうしてお前が山田先生と千冬ね――織斑先生と一緒にいるんだ?」

 

 山田先生がシャルロットに説教されているのを見るに見かねた一夏は話題を変えながら俺に尋ねてくる。

 

「千冬さんとデート」

 

「は!? それどう言う事だ和哉!?」

 

 

 ゴンッ!

 

 

 アウチッ! 不覚にもまた千冬さんからの拳骨を喰らってしまった。

 

「……アタタ……痛いじゃないですか、千冬さん」

 

「誤解を招く事を言うお前には当然の罰だ。何故私がお前とデートしなければならん」

 

「ちょっと場を和ませようとして……」

 

「そんな物いらん」

 

「………え、えっと……」

 

 ボケをかます俺と突っ込みをやる千冬さんに、ついさっき俺に掴み掛かろうとした一夏はどうすれば良いのかと悩んでいる様子だった。

 

 そんな俺達に山田先生が苦笑しながらフォローをしようとした。

 

「私と織斑先生は水着を買いに来たんですよ、織斑くん。神代くんとはこの店に着いた時に偶然会って、私たちと同じく水着を買いに来たと言うことでしたので一緒だったんです」

 

 おおう。山田先生がいかにも本当だと言う作り話をしている。

 

 まぁ流石に本当の事を言えないからな。俺が命を狙われない為の護衛に二人が付いてるなんて。

 

 いくら相手が一夏でも、もし言ってしまったらコイツは絶対に心配して守ろうとするからな。俺を殺そうとしてくる相手の心配を。

 

 普通は逆だと思われるだろうが、当然これには訳がある。あれは過去に俺が一夏と一緒に町を歩いている最中、『アタシ今手元にお金無いから頂戴。よこさないと警察呼ぶわよ』と堂々と喝上げしてくる女尊男卑主義のバカ女に遭遇した時だ。言うまでも無く俺が殺気全開の『睨み殺し』を使ってバカ女を恐怖のどん底に叩き落し、それを隣にいた一夏が必死になって俺を止めた。

 

 そんな事があって一夏は俺に喧嘩を売ってくる相手がいると知ったら、必ずストッパー役を自ら買って出ると言う訳だ。

 

「ま、そう言う訳だ一夏。千冬さんとデートは全くの冗談だから気にするな」

 

「………なら良いが」

 

 山田先生に合わせた俺がそう言うと、一夏は取り合えずと言った感じで納得した。

 

 そして、

 

「そこの二名。いつまでも覗き見してないで、いい加減出てきたらどうだ?」

 

 俺がコソコソと見ている方へ顔を向けながら言うと、そこからギクッと言う音が聞こえた気がした。

 

「あ、相変わらず鋭いのね和哉。そ、そろそろ出てこようかと思ってたのよ」

 

「そ、そうですわ。タイミングを計っていたのですわ。別に覗き見なんてしてません」

 

 柱の陰から鈴とセシリアの二名が言い訳をしながら出てきた。

 

 そんな二人に一夏は大して驚いた様子も無い様子。コイツもさっきから気付いていたからな。

 

「お前ら、一体なにをこそこそとしていたんだ? ずっと気になってたんだが」

 

「女子には男子に知られたくない買い物があんの!」

 

「そ、そうですわ! まったく、一夏さんのデリカシーのなさにはいつもながら呆れてしまいますわね」

 

 一夏の問いに二人が非難する事に、俺は呆れながらこう言う。

 

「よく言う。どうせ一夏とシャルロットのデート阻止の為に――」

 

「「わ~~~~!!!」」

 

 図星だったのか、俺が言ってる最中に鈴とセシリアが突然大きな声を出しながら両手を使って俺の口を塞ごうとしてきたのでヒョイッと避けた。

 

「アンタはどうしていつも余計な事を言うのかしら!?」

 

「いくら和哉さんでも言って良いことと悪いことがありますわ!」

 

「あ~はいはい。俺が悪かったよ」

 

 怒鳴る鈴とセシリアに俺が謝っていると、一夏は不可思議な顔をしており、シャルロットはやはりと言うような顔をしていた。同時に山田先生は苦笑し、千冬さんは呆れ顔となって嘆息している。

 

「おい。さっさと買い物を済ませて退散するぞ。私たちがいつまでも此処にいたら他の客に迷惑だからな」

 

 千冬さんがそう言うと、俺達は買い物を済ませることにした。

 

 そんな時、山田先生が何か閃いた顔を見せる。

 

「あ、あー。私ちょっと買い忘れがあったので行ってきます。えーと、場所が分からないので凰さんとオルコットさん、ついてきてください。それに神代くんとデュノアさんも」

 

 成程、一夏と千冬さんに姉弟水入らずの買い物をさせる為か。

 

 意図に気付いた俺は黙って従い、鈴達を連れて行こうとする山田先生の後を追った。

 

「そういえばラウラはどうしたの?」

 

 突然シャルロットがそう言うと、鈴とセシリアは思い出した顔になる。

 

「あれ? さっきまでアタシたちと一緒だったのに……」

 

「どこかではぐれてしまったんでしょうか?」

 

 ラウラも来ていたのか。この二人の尾行に付き合うなんて、アイツ本当に変わったな。前までは敵対していたのに。

 

 そう思いながらも俺は山田先生の演技に付き合った後、目的の水着を買うのであった。




次回は和哉とのほほんさんが絡みます。それも甘々に……出来るかどうか保障出来ませんが、待っていて下さい。
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