インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回は和哉と本音の絡みがあります。
それではどうぞ!!


第61話

「かずーっ! 海だよぉー!」

 

「見りゃ分かるよ」

 

 トンネルを抜けたバスの中で本音が俺にそう言った。

 

 本日は臨海学校初日で快晴の中、IS学園一年生全員はバスを使って今日泊まる旅館へと向かっていた。

 

「どうでも良いんだが本音。君はいつまで俺に引っ付いてるんだ? 俺は抱き枕じゃないんだが」

 

「だってかずーとこうするの久しぶりだしー」

 

「普段学校で俺に引っ付いてるだろうが」

 

 言うまでもないと思うが、バスで俺の隣の窓側の席に座っているのは本音である。バスに乗って席に座った直後から俺に寄り添うかのようにずっと左腕を抱き締めながら引っ付いている。

 

「それとこれとは違うんだよー」

 

「どう違うんだ?」

 

「学校のときは私がかずーを癒すためでー、こうしてる今はかずーが私を癒してくれるのー」

 

「意味分からんぞ」

 

 コイツの日本語は全く理解出来ん。一体何が言いたいんだ?

 

 と言うか、そろそろ離れて欲しいんだが。

 

「つまりー、前に部屋で一緒に寝ているときみたいな感じだってことだよー」

 

「あれは君が勝手に人のベッドに潜り込んで寝てるだけじゃないか。ってか、そもそも君が勝手に抱き付いてるだけで俺自身何もしていないんだが……?」

 

「こうしてるだけで癒されるのー」

 

「普通好きでもない男に抱き付いてそんな事を言うか?」

 

「私はかずー大好きだよ~。かずーと一緒になるだけで嬉しいし~」

 

 そう言って本音は抱きついてる俺の左腕に更にギュッと強く抱き締めてくる。

 

 バスに乗って一時間以上もこんな状態だから、いい加減に左腕がだるくなってきているから俺はもういい加減に離れさせる事にした。

 

「はいはい。俺も君が大好きだから取り敢えず離れてくれ」

 

「やだー」

 

 嫌と言ってくる本音だったが、

 

「膝枕していいから」

 

「分かったー」

 

 妥協案を出すとすぐに言う事を聞いてすぐに俺の太ももの上に頭を乗っけた。

 

 本当なら無理矢理にでも引き剥がしたいところだが、コイツは俺から離れるのを何故か嫌がるからこう言った妥協をしなければいけない。ったく、何か俺もう本音の扱いが完全に分かってしまってるな。

 

 そう思いながら膝枕している本音の頭を右手で軽く撫でると、

 

「ふにゃ~。かずーの撫でられると気持ちいい~……すぅ……すぅ……」

 

 本音は猫みたいにゴロゴロと鳴らすようにそのまま寝てしまった。

 

「相変わらず本音は寝るのが早い事で……って何だお前等? さっきからコッチをジロジロと見て」

 

 すぐに寝た本音に取り敢えず安堵している俺だったが、先程から俺達を見ている周囲に声を掛ける。中には暑そうな顔をして『あっついよ~』と言いながら手を団扇代わりにして扇いでいたり、羨ましそうな感じで見ていたり、更には『あ~なんか砂吐きそう~』と言って気分が悪そうな顔をしていた。おい特に最後の奴、吐くならビニール袋を使えよ。

 

「あ、あのさぁ神代くん。実は君ひょっとして本音と付き合って恋人同士だったりする?」

 

「そんな訳無いだろう。俺とコイツはただの友達。それ以上の関係じゃないよ」

 

 一人のクラスメイトの女子が失礼な問いをして来ることに、俺は顔を顰めながら違うと否定する。

 

 全く。俺と本音はそんな関係じゃないっての。

 

『和哉、お前いい加減にのほほんさんと付き合えよ……!』

 

『いいなぁ。僕も一夏にあんな事されてみたいなぁ……』

 

『ん? 何か言ったかシャル?』

 

『っ! い、い、いや何でもないよ!』

 

 ん? 何か一夏とシャルロットの声が聞こえたような気が。

 

『はあっ……あんなにラブラブな雰囲気なのに、どうして和哉さんは友達だと言いきるんでしょうか……理解に苦しみますわ』

 

『流石は師匠だ。私も見習わなければ』

 

 セシリアの声はボソボソと言っててよく聞き取れなかったが、ラウラは一体何を見習うんだろうか。

 

「おい和哉」

 

「ん? 何だ箒?」

 

 通路を挟んで向こう側にいる箒が俺に声を掛けて、

 

「バスの中で見せ付けるな。暑苦しいぞ」

 

「? 何が暑苦しいんだ? 今バスの中は冷房で涼しいはずだろ」

 

 何か周囲が冷房をMAXにしてるような気がするのは俺の気のせいだろうか? いくら外が暑いとはいえ、そんなに体を当てて冷やしたら外に出た際に体に悪影響が出ると思うんだが。

 

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ………あと神代、布仏を起こしておけ」

 

 千冬さんの言葉で全員が一斉に従う。けど俺に言った時には妙に鬱陶しそうな感じで言ったのは俺の気のせいだろうか?

 

 取り敢えず俺は本音を起こしていると、バスは目的地である旅館前に到着した。そして四台のバスからIS学園一年生が出て整列する。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月壮だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

 

『よろしくおねがいしまーす』

 

 千冬さんの言葉の後に全員で挨拶をすると、着物姿の女将さんが俺達に丁寧にお辞儀をした。

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

 

 今年のって事はIS学園は毎年夏の臨海学校には此処に来ていると言う事か。

 

「それに和哉君も相変わらずお元気そうですね」

 

「お久しぶりです清洲さん。貴方もお変わりないみたいで」

 

『え?』

 

 女将さん――清洲景子さんが俺に声を掛けたので挨拶で返すと千冬さんや一夏達が一斉に俺を見た。

 

「神代、お前ここに来たことがあるのか?」

 

「ええ、まあ。以前師匠たちと一緒に何度も来てました」

 

 驚いたように問う千冬さんに俺はすぐに答える。

 

 この花月壮は以前に師匠と師匠の孫娘である綾ちゃんと一緒に修行 (俺メイン)とバカンス(綾ちゃんメイン)目的で来ていた。師匠曰く、此処は修行と遊び場を兼ねた絶好の場所だと。

 

「ですので此処の女将さんとは知り合いでして。もしかして、言わなきゃ不味かったですか?」

 

「別に不味くはないが、出来れば前もって言って欲しかったぞ」

 

「まあまあ織斑先生。そう仰らずに。和哉くんは悪気があって教えなかった訳ではありませんから」

 

 不機嫌そうに言う千冬さんを女将さんが宥めると、今度は俺を見てくる。

 

「和哉くん、竜三さんと綾ちゃんに『いつもの部屋はすぐにご用意できます』と伝えておいて貰えますか?」

 

「分かりました。特に綾ちゃんには必ず伝えますので。あの子はこの旅館が好きですから」

 

 言伝を頼む清洲さんに俺はそう言って頷く。

 

 そして次に、清洲さんはもう一人の男子である一夏の方を見る。

 

「織斑先生、こちらも和哉くんと同じくが噂の……?」

 

 ふと、俺と一夏を見た女将が千冬さんにそう尋ねる。 

 

「ええ、まあ。今年は二人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」

 

「いえいえ、そんな。それに、いい男の子じゃありませんか。しっかりしてそうな感じを受けますよ」

 

「感じがするだけですよ。挨拶をしろ、馬鹿者」

 

 千冬さんはグイッと一夏の頭を押さえると、一夏は取り敢えず挨拶をしようとする。

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「うふふ、ご丁寧にどうも。清洲景子です」

 

 そう言って清洲さんは一夏に丁寧なお辞儀をする。相変わらず気品のあるお辞儀だ。ああ言う大人の女性って今の世の中にあんまりいないんだよなぁ。大半が傲慢な女ばっかりだから。

 

 挨拶をされた一夏は清洲さんみたいな大人の女性に耐性がないのか、少し緊張してそうな感じがする。

 

「不出来の弟でご迷惑をおかけします」

 

「あらあら。織斑先生ったら、弟さんには随分厳しいんですね」

 

「いつも手を焼かされていますので」

 

 よく言うよ。人前では厳しくしてるけど、一夏に何かあった時は物凄く心配して……やばっ。千冬さんが俺を睨んでるからもう止しておこう。

 

 そんな中、清洲さんが俺達を招きながら旅館についての説明をしており、女子一同が『はーい』と返事をしてすぐに旅館の中へと向かっていた。

 

 あれ? そう言えば俺は何処の部屋なんだろうか。いくらこの旅館を知ってるとは言え、どの部屋に泊まるのかが分からなければどうしようもない。

 

「ね、かずー」

 

「ん?」

 

 俺はどの部屋に行くかを千冬さんに訊こうとするが、突然俺の腕をグイッと引っ張って不機嫌そうな顔をしてる本音が声を掛けてきた。

 

「綾ちゃんって誰~?」

 

「綾ちゃん? その子は師匠の孫娘だが、それがどうした?」

 

 ってか何でそんなに不機嫌なんだ? 訳分からんぞ。

 

「……ひょっとしてその子ってかずーの恋人なの~?」

 

「君は一体何を言ってるんだ? 綾ちゃんとはそんな関係じゃない。ってかその子は小学生だ」

 

 とは言え、本音も本音で綾ちゃんと同レベルかもしれない。特に俺に甘えてたり、一緒に寝ようとするところとか。

 

「ほんとに~?」

 

「本当だっての。何疑ってるんだよ」

 

「何をしてる神代。部屋に案内するから早くこっちに来い」

 

 あ、千冬さんのお呼びだ。何か待ってるような感じだったので、俺は本音に「じゃあ後で海でな」と言って別れた。

 

「あれ? 一夏も一緒か」

 

「ああ。もしかしたら和哉と一緒の部屋かもな。えっと、織斑先生。俺と和哉の部屋ってどこになるんでしょうか?」

 

「黙ってついてこい。神代もな」

 

 一夏の問いにスパッと言論封殺する千冬さんだった。

 

 取り敢えず千冬さんの言うとおり何も言わずに付いて行く事にした俺と一夏は、旅館の中を見ながら歩く事にした。何度も来ているけど、此処はかなり広くて綺麗だな。

 

「ここだ」

 

「え? ここって……」

 

「あの、織斑先生。ドアの張り紙には『教員室』と書かれているんですが?」

 

 俺の問いに千冬さんはこう答える。

 

「最初はお前たち二人部屋という話だったんだが、それだと絶対に就寝時間を無視した女子が押しかけるだろうということになってだな」

 

 成程、そう言う事か。確かに一夏狙いの女子が絶対に来そうだ。

 

「ですが、その時には俺が追っ払いますけど?」

 

「神代の場合は布仏が来るだろうが。部屋にいた時にはお前が寝てる間にベッドに潜り込んでいたんだろう?」

 

 ………ああ、そうですね。本音の事だから一夏がいたとしても絶対にやりそうだ。ってか千冬さん、バスで俺と本音の会話を聞いてたんですね。

 

 そして千冬さんは溜息を吐いてそのまま続ける。

 

「結果、私と同室になったわけだ。これなら、女子もおいそれとは近付かないだろう」

 

「そりゃまあ、そうだろうけど……」

 

「ははは。確かにそう簡単には近付かないな」

 

 IS学園で千冬さんに逆らう生徒なんか一人もいないし。やるにしても相応の覚悟が必要だ。

 

「一応言っておくが、あくまで私は教員だということを忘れるな」

 

「はい、織斑先生」

 

「分かってます」

 

「それでいい」

 

 一夏と俺の返答を聞いた千冬さんは部屋の中に入る許可を出した。あ、この部屋は竜爺たちと一緒に泊まった部屋と一緒だ。

 

「おおー、すげー」

 

 初めて部屋を見る一夏は感嘆しながら見回っている。俺と綾ちゃんも最初はあんな感じで見ていたな。

 

「神代はこの部屋を知っているみたいだな」

 

「そりゃまぁ」

 

 これでも常連ですから。

 

「一応、大浴場も使えるが男の織斑と神代は時間交代だ。本来ならば男女別になっているが、何せ一学年全員だからな。お前ら二人のために残りの全員が窮屈な思いをするのはおかしいだろう。よって、一部の時間のみ使用可だ。深夜、早朝に入りたければ部屋の方を使え」

 

「わかりました」

 

「了解です」

 

 しかしまぁ、いくら俺もいるとは言えよくあそこまで職務に忠実なことで。恐らく俺がいなかったら一夏は、千冬さんに言われないとそのまま普通に「千冬姉」と呼んでるだろう。

 

「さて、今日は一日自由時間だ。荷物も置いたし、好きにしろ」

 

「じゃあそうします。じゃあ行くか一夏」

 

「あ、ああ。えっと、織斑先生は?」

 

 俺が荷物から物を出していると一夏が千冬さんに問う。

 

「私は他の先生との連絡なり確認なり色々とある。しかしまあ」

 

 折角愛しの弟が選んだ水着を無駄にしない為に後で海に泳ぎにうおっとっ!!

 

「神代、後で私と試合でもするか?」

 

「い、いえ。結構です」

 

 あ、あぶね~! あとちょっと反応が遅かったら確実に千冬さんの特大拳骨で気絶されるところだった!

 

「和哉。お前また余計な事を考えてたんだな」

 

 お前にだけは言われたくないよ一夏。ってか、お前の場合は俺と違ってやられているだろうが。

 

 にしても千冬さんがあそこまで過敏に反応したって事は、適当に考えてた予想がずばり的中したのか。果たして一夏はどんな水着を選んだのやら。

 

 そう思っていると、突然コンコンっとノックが聞こえた。

 

「織斑先生、ちょっとよろしいですかー?」

 

 この声は山田先生か。

 

「ええ、どうぞ」

 

 千冬さんの返事を聞いた山田先生がドアを開けると、丁度入り口からの直線上に立っていた一夏と目が合った。

 

「わあっ、織斑君! それに神代君も!」

 

「いや、そんなに驚かなくても」

 

「俺らは別に驚かしたつもりないんですが……?」

 

 山田先生の驚きように呆れる一夏と俺。まぁこの人はドアを開ける時も書類に目を通したまま入室したからな。驚くのは無理もないかもしれない。

 

「ご、ごめんなさい。ついつい忘れていました。織斑君と神代君は織斑先生のお部屋でしたね」

 

「山田先生。確かこれはあなたが提案したことだったはずだが?」

 

「は、はいぃっ。そうです、はいっ。ごめんなさい!」

 

 おいおい、提案者である山田先生が忘れてどうするんですか。

 

 そして千冬さんから『遊びに行け』と言われるついでと同時に『羽目を外し過ぎないように』との注意を受けて、俺と一夏は海へ行く前の準備の為に更衣室へ向かうのであった。




和哉と本音の甘々な展開になれたかどうかは分かりませんが、取り敢えずああしてみました。
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