インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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かなり遅れた更新ですが、どうぞ!!


第62話

 俺と一夏は途中で箒と出くわし、そのまま更衣室のある別館へ向かおうとしていたのだが、

 

「何だコレは?」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 その途中、目の前の珍奇な物を発見した為に足を止めていた。

 

 思った事をそのまま口にする俺に、一夏と箒は無言となっている。

 

 俺達がこんな言動をするのは仕方ないだろう。何故なら道端に、ウサギの耳が生えているからだ。別にウサギの耳と言っても本物のウサギではなく、バニーガールとかが使う『ウサミミ』みたいなやつだ。本来、ウサミミの色は黒いのだが、目の前にあるやつは白だった。

 

 それと一緒に『引っ張ってください』という下手くそな字で書かれた張り紙もある。

 

「おい、お前等コレに心当たりあるのか?」

 

「ま、まぁ一応……。なあ箒、これって――」

 

「知らん。私に訊くな。関係ない」

 

「?」

 

 一夏が確認の為に箒に尋ねようとするが、言い切る前に箒は即否定する。まるで関わりたくないと言わんばかりに。

 

 俺が疑問に思っている最中、一夏はウサミミに近付こうとする。

 

「えーと……抜くぞ?」

 

「好きにしろ。私には関係ない。行くぞ和哉」

 

「え? ちょ、ちょっと箒……!」

 

 箒は俺の腕を引っ張って、そのままスタスタと更衣室へ向かおうとする。

 

「お、おい。お前なにか知ってそうな感じがするんだが、本当にほっといて良いのか?」

 

「構わん。私としても今あの人に会いたくないからな」

 

「あの人?」

 

 連れて行かれながらも、箒の台詞に俺はふと気になった。

 

 あんな珍奇な物を見て何か知ってそうな感じがしながらも否定し、加えて箒が言う『あの人』。俺が知ってる中で箒が言うあの人ってなると……あ、何か分かったかも。

 

「箒、あの人ってもしや……お前の姉、篠ノ之束か?」

 

「………………」

 

 俺の問いに箒は更衣室前に着いたと同時に急に足を止めて無言になる。そしてすぐに俺に振り向いてこう言う。

 

「和哉、姉さんには気をつけろ」

 

「? どう言う意味だ?」

 

「いずれ分かる。じゃあな」

 

「お、おい……」

 

 言うだけ言った箒はそのまま更衣室へと入って行った。

 

 箒は何が言いたいんだ? 姉に気をつけろって……。まぁアイツが言うからには篠ノ之束と言うISの開発者は何か危険な感じがすると言う事だろう。

 

 取り敢えず俺はそう考え、一番奥にある男子更衣室へ行き、そこに入ろうとする為にドアを開けようと、

 

 

 ドカ~~~~~ン!!

 

 

「!!! な、なんだ今の音は!?」

 

 突然、何かデカイ音がした事によって俺は男子更衣室に入ろうとする足を止めた。

 

 音が聞こえたのは本館からだ。もしかしたら一夏と別れた場所かもしれない。確かあそこにはウサミミがあったから、一夏がそれを抜いた事によって何か起きたと思われる。

 

 そう考えた俺は箒と一緒に行った道を急いで戻ると、そこには尻餅をついてる一夏と驚いているセシリア、そして何故か真っ二つに割れてる機械的な人参と奇抜な格好をしている見慣れない女性がいた。

 

「おい一夏! 一体何が起きた!?」

 

「あ、か、和哉……」

 

「ん? 和哉?」

 

 一夏が俺を呼んだことに見慣れない女性が急に俺を見ると、すぐに近付いてきた。

 

「な、何だアンタは? 見たところ学園関係者じゃなさそうだが……」

 

「もしかして、君がちーちゃんが言ってた神代和哉かな?」

 

 ちーちゃん? 一体誰の事だ? ってか、何でこの人は俺の名を知っているんだ? お互いに初対面の筈だぞ。

 

 いきなりの見知らぬ女性の問いに俺が不可解に思ってると、一夏は何故か驚いた顔をしていた。

 

「だとしたら何だ?」

 

「ふ~ん」

 

 急に頷いて何か考える仕草をする女性。何なんだこの人は?

 

「確かに強そうに見えるけど、ちーちゃんはどうしてこんなのに入れ込んでるのかな~?」

 

「何だと?」

 

 『こんなの』呼ばわりされる事に不快な表情をする俺。いきなり人の前に立ってジ~ッと人の顔を見ながら訊いておきながら、いきなり人を見下すような発言をすれば誰だって不快になる。

 

「まあ、いいや。取り敢えず君は後回しっと。今は箒ちゃんを見つけないとね。じゃあねいっくん。また後でね!」

 

「おい待てコラ……って、いつの間に」

 

 一夏を見て別れを告げて何処かへ行こうとする女性に俺がすぐに捕まえようとするが、かなりの速さで走り去ってしまったので無理だった。普段の俺なら捕まえれたんだが、かなりの速さで去って不意を突かれた為に思わず見逃してしまった。

 

「チッ! 俺とした事が逃したか……今度会ったら絶対に捕まえてやる。おい一夏、今の失礼な女は誰なんだ?」

 

「和哉! 一体どう言う事だ!?」

 

「はあ?」

 

 舌打ちしてる俺に突然一夏が俺に近付いてきて詰問してきた。

 

 ってか、今度は一夏かよ。出来れば先に俺の質問に答えてほしいんだが。

 

「ど、どうしたんですか一夏さん?」

 

 セシリアも一夏の行動に首を傾げながら問うが、当の本人は全く聞いていない。

 

「何であの人に名前を覚えられてるんだ!? お前何かしたのか!?」

 

「おい、言ってる意味が分からんぞ」

 

 コイツは一体何が訊きたいんだ? さっきまで訳の分からん反応をしただけでなく、今度は意味不明な質問だし。俺の頭の中は『?』だらけだぞ。

 

「だから! 俺が言いたいのは……!」

 

 

 バチンッ!

 

 

「ぐあああ~~!」

 

「す、すごく痛そうな音ですわね……」

 

 これ以上意味不明な質問をされたら困るので、俺は詰問してくる一夏の額にデコピンを食らわした。それを見たセシリアが喰らってもいないのに額を押さえながら痛そうな顔をしている。

 

「先ずはお前が落ち着け、一夏。そんなに慌てたらまともに話が出来ん」

 

「~~~~!!」

 

 俺のデコピンを喰らった一夏は額を押さえながら悶えている。あ、両目から涙出てるな。手加減したつもりだったんだが、それでもかなり効いたみたいだな。一夏はともかくとしても、あの失礼な女には本気でやりたかったが。

 

「い、いきなりデコピンは止めてくれよ……! ただでさえ、和哉のデコピンは強烈なんだから……!」

 

「お前がいきなり訳の分からん事を言うからだ。と言うか、先ず最初に俺の質問に答えてくれ。あの女は一体誰だ? 言っておくが俺はあんな失礼な女なんか知らんぞ」

 

 文句を言う一夏に斬って捨てる俺はあの女について尋ねた。

 

 俺の質問に一夏はデコピンによって少し落ち着いたのか、額を手で押さえながらも質問に答えようとする。

 

「いててて……あ、あの人は束さんで、箒の姉さんだ」

 

「箒の姉だと? って事はもしや――」

 

「ええええっ!? い、今の方が、あの篠ノ之博士ですか!? 現在、行方不明で各国が探し続けている、あの!?」

 

 聞いていたセシリアが驚愕しながら言う。セシリアの反応は正しいだろう。何しろISを開発した天才科学者がさっきまで目の前にいたからな。

 

「そう、その篠ノ之束さん」

 

 驚いているセシリアに一夏は振り向きながら答える。

 

「んで? その天才博士様が何故此処に来たんだ? いくらISを開発した重要人物でも、此処は部外者は立ち入り禁止だとちふ……織斑先生が言ってたが?」

 

 思わず千冬さんと言いそうになった俺は言い直して再度一夏に尋ねる。

 

 今回の臨海学校はISの稼動試験を目的とした物であり、それを機に各国から代表候補生宛に新型装備が山ほど送られる。しかし、IS学園教師と生徒以外の部外者は参加出来ない為、揚陸艇でしか装備を運べない事になっている。

 

「いや、まぁ……多分束さんの事だから、思いっきり規則無視して入り込んだと思う」

 

「………千冬さんとは正反対な奴だな」

 

「さぁ和哉。お前の質問には答えたぜ。今度は俺の質問に答えてくれ。お前は束さんに名前を覚えられるような事をしたのか?」

 

 篠ノ之束について呆れている俺に、一夏は言うべき事は言ったと言う感じで尋ねてきた。

 

 因みに一夏は痛みが漸く引いたのか額を押さえていた手を離していた。

 

「知らん。俺はあの女が篠ノ之束だと分かる前まで全く分からなかったし、何かをした覚えなんか一切無い。寧ろコッチが知りたい位だ」

 

「そ、そっか……。悪いな、突然変な事を訊いて」

 

 と言うか、何故一夏はあの女が俺の名前を覚えてる事に驚いているんだ? あの天才博士が俺の名を覚えた事に何か深い意味でもあるんだろうか。

 

 嘘偽り無く答える俺に一夏は本当だと分かったようで、これ以上は訊かなかった。コイツとは付き合いが長いから、俺が本当の事を言ってると分かってるからな。

 

「変な奴だな。あの女が俺の名前を覚えてる事はそんなに驚く事なのか?」

 

「あ、いや、気にしないでくれ。それとさっきの束さんの失礼な態度は俺が代わりに謝るから。気を悪くしてすまなかった」

 

「……別にお前が謝る必要は無いんだが」

 

 謝る一夏を見て少し呆れ気味に言う俺。

 

 多分コイツの事だから、自分の関係者だから謝る必要があると思ってるんだろう。まぁあの女を見た限り、自分から謝るなんて事はしないと思う。我が道を往くみたいな感じだったし。

 

「取り敢えず今は海に行こうぜ。な?」

 

「……そうだな」

 

 一夏に謝られたら、もうこれ以上何も言う気は無いので海に行くことにした。そして一夏は次にセシリアの方を見る。

 

「ところで俺たちは海に行くけど、セシリアは?」

 

「え、ええ、わたくしも海へ。そ、そこでですね」

 

 話しかけられたセシリアはこほんこほんと咳払いをする。あれは何かお願いをする仕草だな。

 

「せ、背中はサンオイルが塗れませんから、一夏さんにお願いしたいのですけど……よろしくて?」

 

「ん? 友達に塗ってもらえばいいじゃないか。もしくは和哉とか」

 

「え、ええまあ、そうですけど、できれば……その、和哉さんではなく一夏さんに……」

 

 ははは~。友達や俺よりも好きな男に塗られたいって訳か。まぁもし俺が女でセシリアの立場だったら、同じ事を言ってるだろうな。

 

「うーん、思い切って塗らないとかどうだ?」

 

「却下です!」

 

「おいおい一夏。折角のレディからのお誘いを断ったら、男が(すた)るぞ?」

 

 一夏の提案にセシリアは即断し、俺はフォローに回ると一夏がちょっとばかり顔を顰める。

 

「別に男とか関係無いだろ。と言うか冗談だってセシリア。サンオイルを塗るくらいならおやすい御用だ」

 

 一夏がそう言うと、

 

「ほ、本当ですね!? 後からやっぱりナシは認めませんわよ!?」

 

 物凄い勢いで食いつくセシリアに俺は少し呆れた顔をする。

 

 いくらなんでも喜びすぎだと思うんだが。ま、好きな男からの了承を得られただけでも嬉しいって事か。

 

「わかった。じゃあ、また後でな」

 

「ええっ。また後で!」

 

 セシリアはコクンコクンと深く二回頷き、すぐ別館へ向かって走り出した。しかも相当機嫌が良いのか、軽快かつ迅速な足取りだった。

 

「和哉、俺たちも行くか」

 

「ああ」

 

 そして一夏と俺は別館に入って奥にある男子更衣室へと向かう。

 

 その途中で、

 

『わ、ミカってば胸おっきー。また育った~?』

 

『きゃあっ! ちょ、ちょっと揉まないでよぉっ!』

 

『うわぁ~。ティナって水着だいたーん。すっご~い』

 

『そう? アメリカでは普通だと思うけど」

 

 女子更衣室を横切ると、その中からきゃいきゃいとした黄色い声が聞こえた。

 

「……なぁ和哉。俺、ああ言うの正直苦手っていうか、恥ずかしいんだが。何でか知らないけど」

 

「んなもん俺だって同じだ。だからとっとと行くぞ」

 

「お、おい、ちょっと待てよ和哉」

 

 スタスタと早足で行く俺に一夏は追いかけ、そのまま男子更衣室に入って手早く水着に着替えた。男の身支度なんて手軽であっと言う間だ。では、いざ海へ行きますか。




一応、和哉と束の初会合でした。
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