インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回はちょっと原作ブレイク気味になっちゃいました。
最後の方を見れば分かります。
それではどうぞ!


第74話

「……神代、私が許可するから強制退去させろ」

 

 部屋のど真ん中の天井から、篠ノ之束の首が逆さから出てきたのを見た千冬さんは、鬱陶しそうな感じで俺に指示を下す。

 

「了解しました。おい、さっさとそこから降りて――」

 

「とうっ★」

 

 『睨み殺し』を使って動けなくしようとする俺だったが、篠ノ之束は空中で一回転して着地する。そしてすぐに千冬さんに駆け寄るので、『睨み殺し』を使うのを躊躇ってしまった。別に千冬さんが俺程度の『睨み殺し』をしただけで金縛り状態にはならんが、それでも相手が相手だから平常時に使うのはどうしても躊躇ってしまう。もし篠ノ之束だけだったら遠慮無くやるんだが。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん。もっといい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティングー!」

 

「……出て行け」

 

 頭を押さえる千冬さんを見て、俺も流石にあの女の行動にウンザリしてるからさっさと追い出そうとする。

 

「おいアンタ、いい加減にしろ」

 

「よっと!」

 

「くっ……。この……!」

 

 篠ノ之束を捕まえて追い出そうとする俺だったが、素早くかわされてしまった。やはりコイツ、見た目とは裏腹にそれ相応の身体能力があるようだ。

 

「聞いて聞いて! ここは断・然! 紅椿の出番なんだよっ!」

 

「なに?」

 

「!」

 

 篠ノ之束の台詞に俺は思わず手を止めた。

 

 紅椿の出番だと? コイツ、一体何を考えている?

 

「紅椿のスペックデータ見て見て! パッケージなんかなくても超高速機動が出来るんだよ!」

 

 奴の言葉に応えるように数枚のディスプレイが千冬さんを囲むようにして現れた。

 

「紅椿の展開装甲を調整して、ほいほいほいほいっと。ホラね! これでスピードはばっちりだよ!」

 

 展開装甲? そんなの聞いたこと無いぞ。

 

 聞き慣れない単語に俺が不可解に思ってると、篠ノ之束はいつのまにか千冬さんの隣に立って勝手に説明を始めた。同時に、メインディスプレイで福音が映っていたスペックデータから、紅椿のスペックデータにいつのまにか切り替わってる。

 

「説明しましょ~そうしましょ~。展開装甲というのはだね、この天才の束さんが作った第四世代型ISの装備なんだよー」

 

 第四世代型って……。この女、本当に次から次へと面倒な事を起こそうとする奴だな……!

 

「はーい、ここで心優しい束さんの解説開始~。いっくんのためにね。へへん、嬉しいかな? まず、第一世代というのは――」

 

 篠ノ之束の説明を聞いて俺はもう本当にウンザリした。

 

 今現在、各国がやっと第三世代型の一号試験機が出来た段階だってのに、それをコイツは物の見事に順序をすっ飛ばして第四世代型を作ってしまった。これは色々と不味い展開だ。

 

 俺が後々の事を危惧してる最中、一夏は紅椿のスペックを束から聞いて素っ頓狂な顔をしている。

 

「まぁ具体的には白式の《雪片弐型》に使用されてま~す。試しに私が突っ込んだ~」

 

「「「え!?」」」

 

「何だと!?」

 

 篠ノ之束の言葉に、一夏以外の専用機持ちと俺は驚いた。

 

 俺だけじゃなくセシリア達が驚くのは無理もない。何故なら《雪片弐型》に搭載されている零落白夜が展開装甲になっている事は、『白式』自体も第四世代型のISということになる。

 

「それで、上手く行ったのでなんとなんと紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありま~す。システム最大稼動時にはスペックデータは更に倍プッシュだよ★」

 

「ちょっ、ちょっと、ちょっと待って下さい束さん。え? 全身? 全身が、雪片弐型と同じ? それってひょっとして……」

 

「うん、無茶苦茶強いね。一言で言うと最強だね」

 

 こ、この女……どこまでふざけた真似を……!

 

 俺と千冬さんを除く全員がポカンとしている。と言うより、目の前の篠ノ之束という存在に度胆を抜かれていると言った方が正しい。

 

 そして篠ノ之束は紅椿は攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能で、第四世代型の目標、即時万能対応機(リアルタイム・マルチロール・アクトレス)と、自慢するように言い切った。

 

 その直後、場の一同は完全に静まり返って言葉が出なかった。いや、出せないと行った方が正しい。

 

「はにゃ? あれ? 何でみんなお通夜みたいな顔してるの? 誰か死んだ? 変なの。ねえ君、これってどういう事?」

 

「………それは自分の胸に聞いてみるんだな」

 

 アンタのやった事が、各国の努力を(ことごと)く無意味にさせたんだ。一夏達が何も言えないのは無理もない。

 

「……束、言った筈だぞ。やり過ぎるな、と」

 

「そうだっけ? えへへ、ついつい熱中しちゃったんだよ~」

 

 千冬さんに言われた事に、一夏達が黙り込んでいる理由を理解した篠ノ之束だが悪気が無いような感じで言い放つ。

 

「あ、でもほら、紅椿はまだ完全体じゃないから、そんな顔しないでよ、いっくん。いっくんが暗いと束さんは思わずイタズラしたくなっちゃうよん♪」

 

 そう言って篠ノ之束は一夏にウインクをするが、当の本人は何とも言えない状態だった。

 

「まー、あれだね。今の話は紅椿のスペックをフルに引き出したら、って話しだし。でもまあ、今回の作戦をこなすくらいは夕食前だよ!」

 

 本当に他人事の様に言ってくれるな、コイツは。もう殴って良いか?

 

「それにしてもアレだね~。海で暴走っていうと、十年前の白騎士事件を思い出すねー」

 

 ニコニコとした顔で話し出す篠ノ之束に、その横にいた千冬さんが『しまった』みたいな顔をしていた。

 

 白騎士事件……か。

 

 この事件を知らない人間は恐らく世界にはいない。

 

 あれは十年前、篠ノ之束によってISの存在が発表されてから1ヵ月後に起きた事件だ。日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射されたが、その約半数を搭乗者不明のIS「白騎士」が物の見事に迎撃しただけでなく、それを見た各国は「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと大量の戦闘機や戦闘艦などの軍事兵器を送り込んだが、その大半を無力化した事件。そしてこの事件で奇跡と言う様が無いと言われる程、死者はゼロ。この事件以降、ISとその驚異的な戦闘能力に関心が高まることとなった。

 

 そして同時に今まで利用してた軍事兵器の殆どが廃棄されて多くの男性軍人は無能の烙印を押されるかのように退かれ、女性しか使えないISによって女性優遇制度が出来た事により、女尊男卑世界が出来上がってしまった。それにより、世の中の大半の女は男を使い勝手の良い奴隷の様に扱き使い、自分の思い通りに出来る存在と自惚れた下劣な存在へと成り果ててしまった。それもこれも、女性しか扱えないISを作った篠ノ之束が原因なんだが、

 

「しかし、それにしても~ウフフフ。一体白騎士って誰だったんだろうね~? ね? ね、ちーちゃん?」

 

 当の本人はどうでも良いように思っていた。正直言って俺としてはあの女をぶん殴りたい。それも本気で。『砕牙・零式』を撃ちたいほど、な。

 

「知らん」

 

「うむん。私の予想ではバスト八十八センチで――」

 

 

 ゴスッ。

 

 

 絡んでくる篠ノ之束に、千冬さんは伝家の宝刀である出席簿アタック、もとい情報端末アタックを喰らわせた。

 

 流石は千冬さん。お見事です。

 

「ひ、ひどい、ちーちゃん。束さんの脳は左右に割れたよ!?」

 

「そうか、よかったな。これからは左右で交代に考え事が出来るぞ」

 

「おお! そっかぁ! ちーちゃん、頭良い~!」

 

 ………世の中の天才に失礼だと思うが、頭が良すぎる天才と言う名のバカがいるって事が良く分かった。

 

「それはそうとさぁ、あの事件では凄い活躍だったね、ちーちゃん!」

 

「そうだな。白騎士が、活躍したな」

 

 ……もう大体の予想は付いてるが、恐らくあの白騎士は千冬さんなんだろう。

 

 本来ならば千冬さんも、篠ノ之束と同様に女尊男卑の世界を作り出した要因の一人で恨みを抱くべきなんだが、俺はとてもそんな気にはなれなかった。

 

 勿論、最初は恨んでいたが、初めてあの人と拳を交えた際に分かった事があった。それは千冬さんの拳からは“守る”と言う思いがあったからだ。変だと思われるだろうが、武道や格闘技で相手と戦うと、力や技だけでなく、その相手の思いや人格などが伝わってくる。それにより俺は千冬さんがどういう人なのかを理解した……と言っても、それで全て分かる訳ではないが。だが少なくとも、千冬さんが誰かを守る、もとい大事な弟の一夏を守る為にやったんだと思って今に至るって訳だ。

 

「話を戻すぞ。……束、紅椿の調整にはどれくらいの時間がかかる?」

 

「お、織斑先生!?」

 

「それは本気で言ってるんですか!?」

 

 セシリアと俺は驚きの声をあげる。専用機持ちの中でも高機動パッケージを持っているのがセシリアだけだったから、俺は今回の作戦にセシリアが適任だと思っていたからだ。

 

「いくら紅椿のスペックが高いからと言って、それだけで確実に成功するとは限りません! ここは現実的に考えて、高機動パッケージを装備したセシリアのブルー・ティアーズで行くべきです!」

 

「そ、そうですわ! 和哉さんの言うとおり、わたくしとブルー・ティアーズで必ず成功してみせますわ!」

 

「では訊くがオルコット。そのパッケージは既に量子変換(インストール)してあるのか?」」

 

「そ、それは……まだですが……」

 

 千冬さんに痛いところを突かれたかのように、セシリアは勢いを失ってもごもごと小声になってしまった。

 

「でしたら、多少時間が掛かっても量子変換(インストール)を済ませてから――」

 

「神代、お前の言いたい事は分かる。だが今は生憎、そこまで時間を掛けている暇は無い。それはお前も充分に分かっている筈だ」

 

「くっ……」

 

 いくら紅椿の高スペックだけで相手をそう簡単に倒せない事は貴女だって分かってる筈でしょう……!

 

 だが今の状況じゃ、誰もが篠ノ之束が作った紅椿ならやれるかもしれないと言う流れになっているから、俺がどんなに反対しても一蹴されるだけ。

 

「ちなみに紅椿の調整時間は七分あれば余裕だよ★」

 

 横から口を出してきた篠ノ之束がまた余計な事を……ん? 待てよ。コイツは紅椿と言うチート同然のISを作れるんだから……。

 

「よし。では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を――」

 

「待って下さい。やっぱり俺は反対です」

 

 俺がまたストップを掛けた事に、千冬さんは顔を顰めて俺を見る。

 

「神代、貴様いい加減にしろ。これ以上反論するなら貴様も室内待機を――」

 

「一夏や箒が戦わずとも、軍用ISの暴走を簡単に止める方法を思い付きました」

 

『!!!』

 

 俺の発言に教師陣と専用機持ち達は驚愕の顔を浮かべてると、篠ノ之束は不快そうな顔をしていた。

 

「ちょっと君~、この期に及んで一体何を言ってるのかな~? 今は箒ちゃんといっくんの出番だってのに、余計な茶々を入れないでくれる?」

 

「それは悪かったな。だけど本当に思いついたんだから、敢えて横槍を入れさせてもらった」

 

「お、おい和哉。ほ、本当に簡単に止める方法があるのか?」

 

「和哉、お前……!」

 

 隣にいた一夏は驚きながら尋ね、箒は折角の出番を邪魔されたかのように顔を顰めていた。

 

「ちょっと和哉、あんた嘘言ってんじゃないわよね?」

 

「和哉さん、それはどんな方法なんですか?」

 

「か、和哉、君は一体何を思いついたんだい? 僕には全然分かんないんだけど……」

 

「いくら師匠とは言え、もし出任せを言うのであれば、私は許さないぞ」

 

 鈴、セシリア、シャルロットは信じられないように尋ね、ラウラは厳しい表情をしながら言った。

 

「出任せでもなんでもないから、一先ず俺の話しを聞いてくれ。もし俺が思いついた方法を言って、信じられなかったら俺は黙って室内待機する。それで良いですか、織斑先生?」

 

「――なら言ってみろ」

 

「ちょっとちーちゃん、紅椿の調整はまだ~?」

 

 篠ノ之束の言葉を無視する千冬さんは、俺に厳しい目を向けながらそう言った。

 

 あれは下手な事を言ったら懲罰は確実だな、と思いながら俺は咳払いをする。

 

「ゴホンッ……えっと、俺が言った軍用ISを簡単に止める方法ですけど、それは――」

 

『…………』

 

 一字一句聞き逃さないように耳を傾けている一夏達を見ながら、

 

「そこにいるISを開発した天才科学者様に軍用ISにハッキングしてもらうよう織斑先生が頼めば、あっと言う間に暴走を止める事が出来ると思ったんですが、皆さん如何(いかが)でしょうか?」

 

 

『…………え?』

 

「ん?」

 

 俺が篠ノ之束を指差してそう言うと、一夏達はポカンとしながら束を見て、その束はいきなり一斉に見られた事に振り向いた直後、

 

 

『あ~~~~~~~~~!!!!!!!!』

 

 

 宴会用の広い部屋にも拘らず、デカイ叫び声が旅館全体にまで響き渡った。




はい、和哉は物の見事にシリアスな雰囲気をぶち壊しちゃいました~~~!

そしてすいませんでした~~~!!
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