インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回の話はイマイチかと思われます。


第77話

「ラウラ、先ずは手筈通り、あそこで寝ている奴を叩き起こしてやれ。豪快にな」

 

「了解」

 

 目的地に着いた俺は、海上200メートルで静止している『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』をハイパーセンサーを使って5キロ先に発見すると同時に、ラウラに指示を下した。

 

 俺の指示に頷いたラウラはIS『シュヴァルツェア・レーゲン』に装備されている大型カノンを使おうとする。だが、その大型カノンは以前俺と戦った時に使った物ではない。

 

 その姿は以前の大型カノンとは大きく違い、口径だけでなく、二門左右それぞれの肩に装備している。更には遠距離からの砲撃・狙撃に対する備えとして、左右と正面を守るかのように四枚の物理シールドがあった。

 

 ドイツが開発した物の為に、他国者である俺は詳しい装備については大して知らないが、砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』と言う装備だけは知った。

 

「装填完了。師匠、いけるぞ」

 

「よし、では………撃てぇ!」

 

 俺の合図と共にラウラは砲弾を撃ち放った。

 

 そして砲弾は音速でターゲットに向かって行くと、さっきまで胎児のような格好で蹲って膝を抱くように丸めた体を、不意に顔をあげた。

 

 その次の瞬間、砲弾が福音の頭部を直撃して大爆発する。

 

 

 

 

 

 

「織斑先生、始まったみたいです」

 

「そのようだ」

 

 作戦室で緊急アラームが鳴り、和哉達が福音と交戦したのを察知する真耶と千冬だったが、二人は大して驚いていなかった。寧ろ、こうなる事が分かっていたかのように。

 

「………本当に、呼び戻さなくていいんですか?」

 

 辛そうな顔をする真耶が、何故か千冬に確認するかのように尋ねる。

 

「………ああ、|今の私にアイツらを呼び戻す事も出来なければ、命令する権限もない」

 

 本当ならすぐに連れ戻すように通信しろと言う千冬だが、敢えてやらなかった。まるで自分の出る幕ではないと言った感じで。

 

「ですが……今回の作戦の指揮権は織斑先生にありますから、すぐ神代君に通信を入れて止めるように言うだけでも――」

 

「私にそんな事ができると思うか? 私情にとらわれて(・・・・・・・・)判断ミスを犯したと、神代に論破されたこの私が」

 

「そ、それは……」

 

「今の私には、命令違反をしているアイツらを罰する資格などない」

 

「……………」

 

 千冬の発言に真耶は何も言えなくなってしまい、その千冬はモニターを見つめながら腕を組んでいる拳を力強く握り締めて耐えるかのように見ていた。

 

 何故千冬が帰投命令を下さずに黙って見過ごし、辛そうな千冬に言葉を掛けることが出来ないのかは、今から約30分前に遡る。

 

 

 

 

「織斑先生、神代です。失礼します」

 

 念入りに打鉄の戦闘準備を終えた和哉は千冬がいる作戦室へと向かい、ドアをノックしてすぐにそのまま入った。

 

「何のつもりだ神代。私は入出許可は認めていないぞ」

 

「か、神代くん。すぐ部屋に戻ってください」

 

 和哉が入った事に千冬が咎めるが、すぐ間に入った真耶がやんわりと退出するように言う。

 

 だが和哉はそんなのお構い無しにある事を言おうとする。

 

「織斑先生、山田先生、無理は承知ですが、俺はセシリア達を連れて福音を撃破しにいきます」

 

「なに?」

 

「え……ええ~~!?」

 

 とんでもない事を言い出す和哉に千冬は眉を顰めて睨み、真耶は仰天しながら和哉に近付いて止めようと説得を試みようとする。

 

「な、な、な、何いってるんですか神代くん!? そんなのダメに決まってるじゃないですか!」

 

「すいませんが山田先生、俺は織斑先生に訊いているので退いて下さい」

 

「神代、貴様私がそんなふざけた事を許可すると本気で思っているのか?」

 

 言うまでもなく和哉の提案を突っ撥ねる千冬。作戦指揮官である千冬として、そんな勝手な真似を許可する訳が無かった。

 

 当然、和哉も最初から許可を貰う事が出来ないのは最初から分かっていたので、断られていても一切表情を崩していない。

 

「思ってません。ですが、このままいつまでも福音を泳がせておく訳にはいかないでしょう。今は停止して動いていませんが、アレがもしどこかに上陸して破壊活動をしたら、住民に被害が及んで取り返しのつかない事になってしまいます。そうならない為にも、ここは俺達が今すぐ出るべきです」

 

「………お前の言いたい事は分かる。しかし、何の策も無く無闇に全員出撃させたところで、お前が危惧した状況を余計早めてしまうことになる。それくらいはお前も分かっている筈だ」

 

 全員で出撃したとしても、それで必ず勝てるとは限らない。更に言えば、対複数戦用の福音相手に大人数で挑めば、一夏と同じく負傷者が増えるのが二の舞。千冬はそれが分かっているから、和哉の提案を呑むわけには行かなかった。

 

「ならばどうやって福音を撃破するんです? 頼みの綱である一夏は負傷して今も目覚めなく、箒は自責の念に駆られて一切戦う気が無い状態。あの二人を当てにできない以上、もう俺達が出るしかないじゃないですか」

 

「………今は私の方で作戦を思案している。だから今は部屋に戻って待機しろ」

 

 用は済んだと言わんばかりに退出をさせようとする千冬だが、和哉は一向にそうする気配が無かった。

 

 そして、

 

「申し訳ありませんが、俺はもうこれ以上待つつもりはありませんし、貴女の命令にも従えません。ですので勝手に出撃させて頂きます」

 

「何だと?」

 

「ちょ、ちょっと神代くん!?」

 

 和哉が更にとんでもない事を言った事により、千冬は目を見開いた。

 

 そんな和哉の発言に千冬はすぐさま和哉の胸倉を思い切り掴む。

 

「お、織斑先生!?」

 

「貴様、自分が何を言ってるのか分かっているのか? これは命令違反だぞ」

 

「分かってて言ってるんですよ」

 

 真耶があたふたしてる最中、千冬に胸倉を掴まれても一切動じていない和哉。そんな和哉を見て千冬は睨みながら殺気立たせた。

 

「これ以上私を怒らせるなよ、神代? 貴様の勝手な行動でオルコットたちを危険に晒せるなど私が許さん」

 

「ご心配なく。セシリア達も承知の上で俺と行動を共にしますから」

 

「そういう問題ではない! 貴様の私情でオルコットたちを巻き込むなと言ってるんだ!!」

 

 流石に我慢の限界に達したのか、千冬は激昂して和哉に怒鳴り散らした。

 

 千冬の怒鳴りに真耶はビクッと怯えているが、和哉は待っていたかのように笑みを浮かべた。

 

「確かに、俺のやろうとしてる事は完全な私情ですね。ですが、貴女にそんな事を言われる筋合いはありません。貴女だって私情を優先したじゃないですか」

 

「私がいつそんな事をした!?」

 

「したでしょう。作戦前に俺が提案した、『福音を篠ノ之束にハッキングさせて暴走阻止する』作戦を、貴女は弟の一夏に危険が迫ると危惧して却下したじゃないですか。これで私情優先してないって言えます?」

 

「!!!」

 

 千冬は和哉の発言を聞いた途端、すぐに痛い所を突かれたかのように顔を顰めた。

 

「篠ノ之束に言い包められて出撃する事にした結果、それが裏目に出てしまって、結局は一夏が怪我するどころか、いつ目覚めるのかが分からない状態になってしまった」

 

「わ、私は……!」

 

 和哉が言ってる最中、千冬は胸倉を掴んでる手を放すも、何とか感情を維持しようと懸命に堪えていた。

 

 無論、それは千冬も分かっていた。自分の判断ミスで一夏をあんな目にあわせてしまった事に。それを敢えて必死に感情を押し殺して作戦室に篭っていたが、和哉に指摘された事によって少しずつ剥がれかけてきた。

 

「もし貴女があのまま俺の提案を受けてくれれば、一夏は傷付く事無く万事解決していた。だがそれを貴女は無駄にしてしまったばかりか、却って一夏を危険な目にあわせてしまった。分かりますか織斑先生? 貴女は一夏を守るどころか、死地に赴かせたんですよ。貴女のせいで一夏は――」

 

「神代くん! いくらなんでも言い過ぎです! これ以上は私も黙っていられません!!」

 

 追い詰められようとする千冬に、今度は真耶が激昂した。

 

 本来であれば滅多に怒る事が無い真耶に和哉は驚いていた。だがそれはあくまで平時の時である為、今の和哉は大して驚く事無く真耶を見る。

 

「俺は事実を言ったまでですよ、山田先生。一応訊いておきますが、もし貴女が指揮官でしたら、俺の案と織斑先生の判断、どちらを選んでましたか?」

 

「そ、それは……」

 

 和哉を叱ろうとする真耶だったが、急に選択肢を問われた事によって、さっきまでの勢いが無くなってしまう。

 

 何も言い返せなくなった千冬と真耶を見る和哉は、芝居がかったかのように溜息を吐く。

 

「はぁっ、やれやれ。生徒一人に何も言い返すことが出来ないとは……。ま、取り敢えずは俺の言いたい事は全て言いましたので、失礼します」

 

 そして和哉はそう言って二人に背を向けて言い放つ。

 

「織斑先生、俺を力付くで止めるなら今しかないですよ。尤も、今の貴女にそれが出来ればの話ですが」

 

「…………………」

 

「ついでに、処分に関しては俺が生きて戻ったときにいくらでも受けます。いっその事、退学にしても構いません。俺はそれ程の事を仕出かそうとしますからね。あとセシリア達も処分は免れないにしても、なるべく軽めにお願いします。でもそれが無理でしたら、俺に全て責任を押し付けて下さって結構です。そうすれば一夏が負傷した原因は有耶無耶に出来ますし」

 

「っ! 神代、お前まさか――」

 

「それじゃ俺はこれで」

 

 

フッ!

 

 

 千冬が何かに気付いた直後、和哉は『疾足』を使って作戦室から姿を消した。

 

 

 

 

 以上が30分前の出来事で、千冬と真耶は今現在こうなっているという訳であった。

 

「織斑先生、神代くんが戻って来た場合はどうするつもりなのですか?」

 

「……………」

 

「いくら神代くんが独断で動いたとしても、あの子一人に全ての責任を押し付けるなんて、教師である私にそんな事は……!」

 

「見縊らないでくれよ、山田先生。私が生徒一人にそんな下らん事をさせるとでも思うか?」

 

「え? それでは――」

 

「神代には別の方法で責任を取ってもらう。別の方法で、な」

 

 だがそれは神代が生きて戻ればの話だが、と千冬は付け加えながらモニターを集中していているのであった。

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