インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

それでは本編をどうぞ!!


第86話

「おい本音、いい加減に離れてくれないか? 食べ辛いんだが……」

 

「むぅ~~~~」

 

「………聞く耳持たない、か。はぁっ……」

 

 隣に座っている本音は、夕飯を食べている俺の左腕に引っ付いたまま俺を睨んでいる。そのせいで俺は左手が使えなくてご飯が盛られている茶碗が持てず、右手しか使えない状態だった。別にご飯茶碗が持てないからと言っても夕飯を食べる事には全然支障は無いんだが、本音が不機嫌な表情で俺を睨んでくるから食べ辛いったらありゃしない。

 

『布仏本音、マスターを困らせるのはどうかと思いますが?』

 

「むぅ~~~!」

 

『………理解出来ない行動ですね。何故私に敵意を抱いているのですか?』

 

 本音が何故か不機嫌となっている理由、それは現在待機状態でブレスレットになっている黒閃だ。

 

 あの後、怒りながら問い詰めてきた本音に黒閃の事をちゃんと説明したんだが、それでも不機嫌のままだった。説明し終えた黒閃がブレスレットに戻ると、本音は箒達と違って何かしらの暴走はしなかったが、ず~~っと不機嫌なまま俺に引っ付いて今に至る。まぁ流石にトイレや着替えに行く時には離れてくれたがな。

 

 にしても、本音は一体どうしたんだろうか。今までこんなに不機嫌になってるなんて初めてだから、俺としてはどう対処すれば良いのかさっぱり分からない。一夏達に訊こうとしても、向こうは明後日の方を見ながら、のらりくらりとかわして答えてくれなかった。まさかあそこまで薄情だったとは知らなかった。今度の訓練の時に覚えてろよ、アイツ等。

 

「ねぇ、どうして本音はあんなに怒ってるの?」

 

「さあ……? ひょっとして神代くんと喧嘩でもしたのかな?」

 

「でも、本音は神代くんに今ベッタリくっ付いてるけど……」

 

「と言うか、さっきから神代君のブレスレットから何か声が聞こえなかった?」

 

「本音も本音で、そのブレスレットを睨んでるし……」

 

 ヒソヒソと話している一組の女子数名が不思議そうにこっちを見ており、

 

「布仏さんって趣味悪いわね。何であんなのと一緒にいるのかしら?」

 

「ひょっとして布仏さんは神代和哉に何か弱みを握られてるとか?」

 

「そうだとしたら、先生に言ったほうが良いんじゃ……」

 

 一組以外の女子は相変わらず俺に侮蔑の視線を送って、陰湿な事をヒソヒソと会話していた。

 

 前者はともかく、後者の連中は未だに俺を嫌っているんだな。まぁ確かに、入学当初あんな事を言っちゃ嫌われるのは当然だ。一組の女子にはちゃんと謝罪して今は何の問題なく話せるから良いんだが、それ以外のクラスの女子は全く聞く耳持たず状態。遠くからだと陰口叩いて、いざ俺が近寄ると急に恐がって蜘蛛の子を散らすかのようにすぐ逃げる。それも入学当初から今に至るまで……はぁっ。もう一体どうすれば良いのやら。

 

 もういっその事、土下座でもした方が良いんだろうか。かと言って、あの手の連中はこっちが下手(したて)に出れば調子に乗って、あれやこれやと色々な要求をしてくると思うから余りやりたくない。取り敢えず、他の解決方法は後で考える事にしよう。今は最優先で解決したい事が俺に引っ付いている本音を何とかしなきゃいけないからな。

 

「なぁ本音、いつまでもそんな状態だと、周囲から完全に誤解されるんだが?」

 

 と言う俺だが、もうそれは今更だ。もう一組以外の女子は完全に誤解されてる。それでも言うのは、本音に周囲の認識をさせたい為である。

 

「…………別に誤解されても良いよ~。私かずーのこと大好きだし」

 

「また君はそう言って……。あんまり困らせないでくれよ」

 

「私がこうするとかずーが何か困るの~?」

 

「いや、別にそう言う訳じゃ……」

 

 ジーっと俺を見てくる本音に俺はどう言い返せばいいのか分からなかった。

 

 一先ず本音が昨日の夕食で美味しそうに食べていた刺身の一つであるカワハギを箸で摘んで食べさせようとすると、

 

「ほら。さっきから俺に引っ付いてて何も食べてないだろ? これでも食べな」

 

「………あ~ん」

 

 不機嫌なままパクッと口に入れてモグモグと食べ始めた。

 

「美味いか?」

 

「………うん、美味しい」

 

「そうか。じゃあ、俺から離れて――」

 

「かずーが私にご飯を食べさせてくれたら許してあげる」

 

「――はい?」

 

 ………今なんて言った? 俺が本音にご飯を食べさせる、だと?

 

 ってか、周囲が滅茶苦茶引いてると言うか何と言うか……。うん、これ俺にとって拷問に等しいよな。だってそうだろ。こんな公衆の面前で本音にご飯を食べさせるって最悪な罰ゲームにも程があるぞ。

 

「いや、本音さん。そう言うのは流石にちょっと……」

 

「じゃあ私このままでいるから~」

 

 おいおい……食べさせてくれるまでずっと俺に引っ付くのかよ。勘弁してくれ。

 

 こればかりは流石に困ったので、俺は近くにいた一組の女子に声を掛けようとする。

 

「お、おい相川――」

 

「あ~~……ご、ごめんね神代くん」

 

「谷本――」

 

「ゴメン、無理」

 

「岸原――」

 

「ここは大人しく本音の言う事を聞いたほうが身の為だよ、神代くん」

 

 ジーザス。俺を助けてくれる味方は誰もいなかった。

 

 因みに一夏達に救援の視線を送っても、我関せずみたいにそっぽ向いてやがる。関わりたくないなら、何故さっきからこっちをチラチラ見てるんだろうなぁ~?

 

 そして極めつけは、

 

「かず~、早く~」

 

 本音は本音で食べさせて貰う気満々だし。

 

 はぁっ……俺には味方はいないんだろうか……。本当なら黒閃を実体化させて、本音を引き離すように言いたいんだが、こんな所で黒閃を出したら絶対騒ぎになるから無理。と言うか出したら出したでまた本音が不機嫌になりそうな気がするし。

 

 もう何もかも諦めた俺は仕方なく、公衆の面前で甘えてくる本音にご飯を食べさせる事にした。

 

「………ほれ、口開けろ」

 

「あ~ん♪」

 

 俺がまた食べさせようとすると、本音は大人しく俺に従いご飯を食べ始めた。

 

『……なぁシャル、箒、アレってどう見てもイチャ付いてるよな……?』 

 

『う、うん……そうだね……。………良いなぁ、布仏さん……羨ましい(ボソッ)』

 

『か、和哉め……! こんな公衆の面前でなんと破廉恥な……! だ、だが……私も一夏にあんな事をされてみたい(ボソッ)』

 

『あ~~、またあのバカップルがイチャ付いてるわねぇ~……! エアコンが効いてるのに何で真夏みたいに暑いし。あたし今、和哉に衝撃砲をぶっ放したい気分だわ……でも、ちょっと羨ましい(ボソッ)』

 

『な、な、何ですのあの二人は……! あ、ああ、あんなお恥ずかしい事を……! ですが……やっぱり羨ましいですわ(ボソッ)』

 

『ふむ、今度私も師匠を見習って一夏にやってみるとしよう』

 

 一夏達が何やら戯けた事を言っているのを聞こえていたが、今の俺は本音の方に集中していたので、一先ず無視する事にした。

 

 因みに一組の女子達は暑いと言いながらも面白そうに見ていたり、羨ましそうな感じで凝視していたのも多数いて、俺としては凄く居た堪れない気分だった。

 

 そして今回の臨海学校では、俺にとって一番恥ずかしい思い出となってしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ……」

 

 月明かりが照らしている崖に、俺は広い海を見下ろすかのように腰を下ろして眺めていた。

 

 あの恥ずかしい食事の後、本音からやっと開放された俺は誰にも見られないように旅館を抜け出して、心を落ち着かせる為に此処にいる。

 

 今日は満月である為、真夜中であっても明るい。綺麗な満月と穏やかな海を見ていたおかげか、さっきまでの羞恥心が無くなるかのように落ち着いてきた。

 

(そういえば此処はいつも竜爺と一緒に眺めていたなぁ。こんな満月の時には季節外れの月見酒に付き合わされたし)

 

 まぁ月見酒と言っても、未成年の俺は数滴程度しか飲まなかったけど。

 

『心拍数が大分落ち着きましたね、マスター』

 

「ああ、何とか……っておい」

 

 黒閃の台詞に頷いていると、突然ブレスレットが眩い光を発した。そして俺の隣には肌が露出気味である黒のミニワンピースを纏った長い黒髪の美少女、黒閃が当然のように座っている。

 

「おい、勝手に人間の姿になるなよ。誰かに見られたらどうするんだ?」

 

「ご心配なく。周囲には誰もいないのは既に確認済みですので」

 

「……あ、そう」

 

 まぁ確かに俺も周囲には気を配っていたが、誰もいないのは分かっていたので、黒閃を人間の姿になっても良いって指示しよう思っていた。けれど、何かやる前に俺が先に許可をしてからやって欲しいのだが……ま、いっか。

 

「んで、どうして人間の姿で現れたんだ? 俺と話したいなら、待機状態のままでも充分だと思うんだが?」

 

「別に深い意味はありません。ただ単にマスターと面と向かい合って話したかっただけです。それに待機状態のままで会話していますと、もし万が一にも誰かが覗いていたら、マスターはずっと独り言を言ってる変な人と見られるかと思いまして」

 

「……お気遣いどうも」

 

 コイツ、もしかして事前に言い訳出来る理由を考えておいて人間の姿になったんじゃないだろうか?

 

 そもそも此処には俺達しかいないのに、もし誰かが覗いて会話を盗み聞いたとしても、俺は最小限に声を抑えて会話をするだったから、そんな心配は不要だっての。

 

 ま、此処でそんな事を言っても、どうせ黒閃の事だから他の理由も考えていると思うから、敢えて突っ込まないでおこう。

 

「ところでさ、お前が人間の姿になってちょっと疑問に思ってた事があるんだが……」

 

「何でしょうか?」

 

「えっと……ちょっと言い難いんだけど、お前どうしてそんな格好なんだ?」

 

「私の格好、ですか。何か不都合でも?」

 

「いや、不都合と言うか何と言うか……。その格好、どうも服の面積が少なくて……ちょっと目のやり場に困ると言うか」

 

 肩と両腕は完全に露出し胸元もかなり見えていて、スカートの裾部分も短くてスラッとした綺麗な両足が見えるばかりか、下手に足を動かしたら下着が見えてしまいそうだ。だから少しばかり目のやり場に困る。

 

「私は別に大して気にしませんが?」

 

「お前は良くても、俺や一夏が少し困る」

 

 黒閃が説明していた時、一夏は黒閃の見えそうな下着をチラチラと見ていたからな。まぁその時に俺は、アイツも何だかんだ言っても男なんだなぁって思ったけど。

 

「何故織斑一夏も含まれるんですか?」

 

「………一夏には悪いんだが、アイツ……お前のスカートの中を覗き見ていてな」

 

 スマン一夏。お前の名誉を傷つけてしまったお詫びとして、後日謝罪するから。

 

「? 意味が全く分かりませんね。どうして彼はそんな事をしたんですか? 服の面積が少ないとは言え、私はちゃんと衣類を纏っていますが」

 

「あ、いや、そう言う意味じゃなくてだな……。普通、男がそんな行為をすると女の子は怒るもんで……」

 

「怒る? 何故怒る必要があるのです? 人間の行動と言うのは理解し難いですね」

 

「………………」

 

 ………ああ、そっか。黒閃って見た目は女の子でも、元々はISと言う名の機械だから、人間――男女の感情と言う物が分かっていないんだ。だから一夏のスケベな行動に対しても、黒閃はそれを全く理解出来てないから不可解に思ってる。

 

 あ~、どうしよ。コイツに女としての感情を理解させた方が良いんだろうか? けど黒閃はISだからそんなの理解させるのはどうかと思うし、かと言って男の俺が教えたら変な方向に進んでしまう可能性がある。女に頼むとしても……箒達は却下だな。アイツ等の場合だと、(一夏関連の)恋愛に関しておかしな事を教えそうな気がするし。ここは常識的に考えて、教師である千冬さん……は止めておいて、山田先生に頼んでみるか。俺が知る中で、山田先生が一番の常識人だからな……時々ちょっとやばい妄想をする事もあるが、あの人なら大丈夫だろう。

 

「ま、まぁそれは追々説明するから良いとして……」

 

「はぁ……」

 

「次にさ、黒閃は俺の専用機になるって言ってたが」

 

「それが何か?」

 

「………俺、この臨海学校が終わったら黒閃じゃない専用機を用意されるって知ってるか?」

 

「……………はい、一応」

 

 話題が変わった途端、黒閃は急にムスッとした顔になった。意思が戻ってたと言ってたから、俺が専用機を用意される話はやっぱり聞いていたみたいだな。

 

「学園がこの先どう言う処置をするのかは知らないが、もし俺が黒閃じゃない専用機を使う事になったらお前は――」

 

「そうなれば真っ先に自爆させてもらいます。私はマスター以外の人間と共に戦う気はありません」

 

 俺が言ってる最中に明確な拒否を示す黒閃。

 

「私はマスターがいたからこそ、今の私がいるのです。それを知りもしない人間に使われるなど真っ平御免です」

 

「………何もそこまで拒否しなくても良いと思うんだが?」

 

 俺じゃないとダメと言う事に関しては嬉しいが、他の人間に対して嫌悪感を抱くのを見て流石に言い過ぎだと内心思った。

 

 そう思っていると、黒閃はスクッと立ち上がる。そして俺の背後に立って膝を付き、覆うかのように両腕を俺の首に回して抱きついて来た。

 

「お、おい黒閃、いきなり何を……?」

 

「私は、マスターでなければダメなんです。私を理解し、私を己の一部のように使ってくれたマスターでなければ……それに」

 

「それに?」

 

 黒閃が抱きしめてくる両腕を少し強めてくるが、俺は気にせず続きを聞こうとする。

 

「マスターが私以外の専用機を使うところを……正直言って、見たくないんです。だから――」

 

「………その為に自爆しようと?」

 

「はい」

 

 ………え~っと、黒閃ってかなり一途な性格、なんだろうか。やる事が極端すぎるけど。

 

「じゃあお前はこの先、俺じゃないとダメなのか?」

 

「はい、私はマスターに全て委ねると誓っています。ですから……貴方の傍に居させて下さい。私はマスターと一緒じゃなければ……生きていけないんです」

 

「……………………」

 

 更に力を込めて俺を抱きしめながら心の底から願うように言ってくる黒閃に、俺はどう言い返せばいいのか分からなくなっていた。

 

 プロポーズ染みた台詞を言ってくる黒閃に突っ込みたいが、こんな真剣なお願いをされればそんな事は出来なかった。

 

 けど、だからと言って俺の判断で決められる事ではないから、一先ず千冬さんに黒閃を俺の専用機にしてもらうよう頼み込んでみるとしよう。そうすれば黒閃がいなくなる事は無くなるし。

 

「……お前の言いたい事は分かった。だがな黒閃、これは俺の判断で決められる事じゃ無く、学園が決める事だ。俺の方でも一応何とかしてもらうよう掛け合ってみるが、絶対とは言い切れないからそんなに期待はしないでくれ」

 

「………はい、分かっています」

 

「もうついでに言わせて貰うが、多分学園はお前を自爆なんてさせないと思うぞ?」

 

「自爆が無理でしたら、コアを全て初期化します。更にそれが無理でも、他にも手段がありますので」

 

 ………つまりあらゆる状況を想定し、どんな手を使ってでも自分の存在を消すって事か。どんだけ俺以外の人間を乗せるのが嫌なんだよ。コイツって用意周到と感心すべきか呆れるべきか……本当に調子狂う奴だ。




私なりに甘い展開を書いてみましたが、どうでしょうか?

因みに黒閃の衣装についてですが、『fate/extra CCC』である赤セイバーの赤ワンピースの黒バージョンと思っていただけると良いです。知っている人………いるかな?
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