インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回もまた短い閑話です。

それではどうぞ!!


第91話

 和哉と箒のちょっとした出来事が起きた数日後。

 

 臨海学校前に通知されていた神代和哉の専用機受領の件は取り止めとなり、訓練機“打鉄”から第二形態移行(セカンド・シフト)した“黒閃”が和哉の専用機となる事がIS学園で決定される事となった。

 

 決定されると同時に、千冬が言ったとおり黒閃が発表され、内容を聞いた各国全てが仰天したのは言うまでも無い。何しろ戦闘経験を積む事が一切出来ない訓練機が進化しただけでなく、意思を持って会話が出来るのは前代未聞なので各国の反応は無理もなかった。

 

 黒閃の事を知った直後、各国全ては『黒閃を引き渡して調査させよ』とIS学園に通達と同時に、和哉をスカウトする為の勧誘も本格的に開始された。だが学園側はIS学園の“特記事項第二一”を理由に全て拒否。

 

 因みにその内容は、『IS学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする』である。この特記事項により、学園は一切拒否しているからである。

 

 しかし、その特記事項で拒否をされても、各国は素知らぬ顔でISの引渡しと和哉のスカウトを連日続けていた。どの国も下手に引き下がってしまったら、他の国に先を越されてしまうと思って、拒否されるのを分かっていながら未だに通達とスカウトをしている。

 

 各国の行動によって、学園側は拒否の姿勢を取りつつも内心かなりウンザリ気味であるが、それでも引き下がらなかった。特に織斑千冬とIS学園最高責任者である学園長が。千冬は教え子が政治家達の身勝手な行動に付き合せる訳に行かない為であり、学園長も千冬と同様の理由だが他にもある。だが、それについては話が色々と脱線するので今は割愛させて頂く。

 

 和哉を勧誘している国で、一番躍起になっているのはアメリカとイスラエルだった。この二つの国がここまでする一番の理由としては、以前に共同開発した軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』を和哉が撃破したからだ。その時は和哉が一人で福音を倒した訳では無いのだが、和哉が従来のIS操縦者ではあり得ない戦い方や、福音の主力武装である大量のエネルギー弾を刀一本だけで全て弾き飛ばした戦闘記録を見ただけでなく、あまつさえ訓練機の打鉄がセカンドシフトして“黒閃”誕生を知ったから、何が何でも和哉をスカウトすると決心したと言う訳である。因みに戦闘記録を見ていた某アメリカ代表は、和哉と戦いに行くとまたもや無断で日本に行こうとしていたところを、上司に阻止されて大目玉を食らっていたのは余談である。

 

 ここまでで神代和哉が注目の的になっているが、織斑一夏と篠ノ之箒を各国は見過ごしてはいなかった。和哉の強烈なインパクトで二人の存在感が薄まってても、片方は織斑千冬の弟で第四世代型IS『白式』、もう片方は篠ノ之束の妹で第四世代型IS『紅椿』でカバーされている。有名人の身内と最新IS、和哉ほどではないが、その二点のネームバリューで充分な存在感を示しているから。

 

 各国全ての政府が和哉を賞賛している中、全く逆の事を思っている組織もいた。その組織は、殆どの女尊男卑主義の女性達が構成する女性権利団体。その団体の上層部は和哉の情報を入手し、非常に不愉快極まりなく歯軋りしていた。

 

 

 

 

「――以上が、神代和哉の専用機“黒閃”についてです。このISの入手経路については目下調査中であります」

 

 此処は女性権利団体が保有している一つビル。その中の会議室では重大な緊急会議を行っているかのように、緊迫した雰囲気で報告している秘書風の女性の報告を聞いていた。

 

「なんて事なの!」

 

「どこまでも不愉快な事をしてくれるわね、あの男は!」

 

「何なのよあのISは!? 意思を持ってる上に人間にまでなれるなんてあり得ないわよ!」

 

「しかも女性型であんな男にしか従わないだなんて……悪夢だわ!」

 

 説明を聞き終えた女性権利団体の幹部である女性達は一斉に声を荒げていた。彼女達の台詞で、いかに和哉を嫌っているのかがよく分かる。加えて声を荒げていた女性には大の男嫌いもいるから尚更だ。

 

 そんな女性達のヒステリックに会議室が騒いでいる中、一切騒いでいない二名の女性の内一人が言い放つ。

 

「……静かになさい、貴女達。会議はまだ終わってないのよ」

 

『…………………』

 

 大きくも小さくも無い女性の声に、先程まで騒いでいた女性達がまるで鶴の一声のようにすぐに静まった。

 

 彼女達がそうするのは無理もない。何故なら女性権利団体の最高責任者である団長の命令であったから。

 

 そして女性達が静まったのを確認した団長は、報告していた秘書風の女性に視線を向けて問う。

 

「ところで、神代和哉に本来用意される筈だった専用機の開発企業はどうしてるの?」

 

「は、はい。専用機は一時凍結状態となった事により、企業は現在も学園に抗議しています。ですが……」

 

「学園は聞き入れない、かしら?」

 

「……はい」

 

 言い難そうな秘書風の女性に団長が付け加えるように尋ねると、若干間がありながらも答えた。

 

「そう……。全く、使えない連中ね。自分達が開発したISの性能をアピール出来ないまま却下されるなんて……本当に男って無能揃いで嫌だわ。これじゃ私達があそこを買い取った意味が無いじゃない」

 

 吐き捨てるかのように団長は企業に対して侮蔑な台詞を言い放つ。

 

 何故このような事を言っているのかと不思議に思うだろうが、実は彼女たち女性権利団体は和哉に専用機を用意する企業を買収していた。当然、それはIS学園や政府に知られないよう秘密裏に。

 

 本来、ISと全く関係を持っていない女性権利団体にそんな事は出来ないのだが、団体の中には一部の権力者や女性政府高官もいる為、企業を買収する事など造作も無かった。況してや女性優遇制度もあるため、企業は女性権利団体に逆らえないのだ。下手に反抗すれば、自分達があっと言う間に解雇されるだけでなく多額の賠償金まで支払う羽目になってしまうから。それ故に企業は女性権利団体の傘下に入る選択しかなく、彼女達の言いなりになるしかなかった。

 

 次に女性権利団体が企業を秘密裏に買収した理由は、和哉を裏で自分達の傀儡にする為だった。最初は和哉の存在が危険な為に消そうとしていた彼女達だったが、IS学園と言う後ろ盾があると同時に、和哉が生身でも強い為に殺害失敗の報告を聞いた団長は考えを改めた。下手に殺害を完遂させて薮蛇になるなら、いっそ自分達の手駒にして利用するだけ利用した後に殺せば良いと。その為に団長は企業を買収し、専用機を使う和哉を裏で操ろうと考えた。そして不利益になれば和哉が専用機を使ってる最中に自爆させる為の細工を施して事故死にさせ、全て企業に責任を被らせようと。たとえ関与してる事がばれたとしても、一切関係無く全て企業が勝手にやった事だと白を切れば問題ない。自分達は簡単に跳ね除けられる権力があるから、と。

 

 だがしかし、その目論見は和哉の行動によって潰された為、団長のやった事は全て無駄になった。因みに当人である和哉は、まさか黒閃を自分の専用機にしたのが最良の選択肢であった事に全く気づいていないが。

 

「団長、やはり以前のプランに戻したほうが良いのでは? それに買収した企業の専用機が凍結状態とは言え、今は我々の手中に収めているのも同然ですから、いざと言う時に使用しても企業側の責任になるので、こちらには何の不利益にはなりません」

 

 提案してくる幹部に団長は少し呆れ顔になりながら口を開く。

 

「専用機を使うにしても、操縦者がいなければ話にならないわよ?」

 

「それについてはご安心下さい。先日入団した同士の中にIS学園の――」

 

 団長達が興味深そうに幹部の説明を聞いている中、一人だけどうでもいいように聞き流している銀髪の女性がいた。

 

(はぁっ……バカバカしい。重要な会議だと聞いて来てみれば、たった一人の男の子に躍起になるなんて……。団長達は自分で自分の首を絞めてる事に気付いてないのかしら?)

 

 この時に彼女は予感した。いつか自分達は途轍もない代償を払わされるのではないかと。




今回は以前に和哉を殺そうとした女性権利団体の話でした。
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