インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第92話

「いや~、予想していたとは言え、まさか各国のお偉いさん方が俺の考えてた通りの行動をするとは……。呆れると言うか、現金な連中と言うべきか……」

 

「全くだ。どの国も要求は完全に神代のスカウトそのもので、殆どが自国のPRやお前が所属した際の高給待遇などの内容ばかりだった。それを聞いた学園長は完全に呆れ顔だ」

 

「……でしょうね」

 

 千冬さんの部屋で監視されて数日が経ち、専用機黒閃の発表を終えた夜。俺は今仕事を終えて自室に戻ってきた千冬さんのちょっとした愚痴を聞いていた。

 

 愚痴を零している千冬さんは疲労度MAXみたいな顔をしていたので、俺が前以て作っていたアップルパイを用意すると、真っ先に手を伸ばして食べていた。疲れていて甘い物が欲しかったのか、お腹が空いていたかのどっちかだと思うが、恐らく両方だと思う。そうでなければ千冬さんは何も言わずにすぐ食べはしないからな。

 

 まぁそれはそうと、愚痴の内容については千冬さんの言うとおりの内容だ。黒閃の存在を知った各国の企業は俺の勧誘をして、千冬さんたち学園側がそれを断ってもしつこく同じ事をして凄くウンザリ……のようだ。

 

 その内容を聞いてる俺も呆れるのを通り越して笑うしかなかった。何たって大人のお偉いさんが、子供の俺が考えた通りの行動をしているからな。これが笑わずにはいられない。

 

「それじゃアッチの方も、ですか?」

 

「ああ、アレもアレで――」

 

 更なる千冬さんの愚痴には、もう一つ俺が予想していた内容もあった。それは女性権利団体。あの団体はクレームから集団抗議行動にまで発展し、『女性の平和を守る為に俺をIS学園から追放しろ』とか、『女性としての自我を持った専用機の黒閃を男である俺が束縛する事に断固反対』、などと言うふざけた事を言っていたようだ。

 

 まさかあの連中も俺の予想通りに動くとはな、と内心滑稽に思いながら俺はある事を千冬さんに尋ねようとする。

 

「そう言えば俺を殺そうとした件について、女性権利団体は何て言ってました?」

 

「そんなの聞くまでも無いだろう。奴等の返答は『知らなかった』の一点張りで、お前を殺そうとした女も罪状が揉み消されたかのように既に釈放された。しかも警察の取調べをする直前にな」

 

「………分かりきってましたけど、あの連中って良い根性してますね~」

 

 殺人未遂にも拘らず、あっと言う間に釈放されるとは……本当に腐ってやがるな。

 

 返答を聞いた俺が女性権利団体に皮肉を込めて言うと、ちょこんとベッドの上に座っている人間状態の黒閃が不機嫌そうな顔をしていた。因みに黒閃が人間状態になっているのは、千冬さんが戻ってくるまで俺の話し相手としてこの状態にさせたからである。

 

「あのクソアマ共……いつか絶対潰してやる」

 

「……一応言っておくが神代、いくらここが学園だからと言って不用意な発言はするな。もし私以外の教師や生徒が聞いて奴等の耳にでも入ったら、要らん敵が更に作る事になる」

 

 と言ってる千冬さんだが、それはあくまで教師として諌めてるだけだ。何故なら千冬さんは女性権利団体の話をしていた時に物凄く不愉快極まりない顔をしてたから。この人も内心、女性権利団体の対応に相当頭に来てたんだろうな。

 

「申し訳ありません、以後気をつけます」

 

 棒読みでの謝罪をする俺に千冬さんは分かっていても何も言わなかった。

 

「ところで織斑千冬、私からも少し訊きたいことがあるのですが、宜しいですか?」

 

「ん? 何だ?」

 

 さっきまで静かだった黒閃が訪ねると、千冬さんは声を掛けられるとは思っていなかったみたいで本の少しだけ驚いていた。

 

「私の事について公表したのは良いのですが、この学園にいる際の私はどう言う扱いになるのでしょうか? 自分で言うのもなんですが、私はかなり異質な存在ですので」

 

 ………あ~確かに。黒閃は他のISとは違って意思疎通が出来る上に人間にもなれるからなぁ。流石に外出する時は黒閃を置いていかないと、色々と不味い事になるのは目に見えてる。

 

「それについては安心しろ。お前は神代の専用機だから、神代が外出する際も共に行動しても問題ない」

 

「え? 良いんですか?」

 

 千冬さんの返答に思わず俺が声をあげた。まさかこんなにあっさり黒閃の外出許可を得られるとは思ってなかったし。

 

「神代はこの先また狙われる可能性があるから、黒閃には神代の身辺警護を含めた証人役をやってもらう」

 

 これは学園長が提案した事だがなと付け加える千冬さん。

 

 まぁ確かに誰か証人役がいないと、女性権利団体のようなバカ女が俺を陥れようとするかもしれないからな。黒閃はISだが、状況を映像に残す事が出来ると言ってたから、ちゃんとした証拠を残す事が出来るし。

 

「他に質問はあるか?」

 

「いいえ、もう充分です」

 

「そうか。勝手な役を押し付けてすまないが、神代を頼むぞ」

 

「言われるまでもありません。私はマスターの専用機なのですから、マスターを守るのは当然の事です」

 

「そう言ってくれて助かる」

 

 えっと……。守ってくれるのは嬉しいんですけど、そこまで心配されるほど弱くないですよ? って言いたいけど、黒閃のやる気に水を差してしまうと思って敢えて言わなかった。

 

 一先ず二人の話を終えたのを確認し、今度は俺が千冬さんに尋ねる。

 

「千冬さん」

 

「神代、学園内では織斑先生と――」

 

 呼び方を咎めようとする千冬さんに俺は間髪いれずに割ってはいる。

 

「すいません、今は教師としてでなく、一夏の姉である千冬さんにお願いがあるんです」

 

「――お願いだと?」

 

 プライベートな内容だと分かった千冬さんは咎めるのを止めて怪訝そうな顔をした。どうやらちゃんと話を聞いてくれるみたいだ。そんな千冬さんに俺は真剣な顔をして言う。

 

「ええ。真に勝手なお願いで申し訳ないんですが……千冬さんの愛しくて大事な弟である一夏うおっ!!」

 

 ガシイッ!!

 

 千冬さんが俺の顔目掛けて正拳突きを放ってきたので、俺は即座に両手を使って千冬さんの腕を掴んで阻止した。こんないきなりの展開に黒閃は目をパチクリしてる。

 

 あ、あぶねぇ~~! あとちょっと反応が遅れてたら絶対に吹っ飛んでたぞ……!

 

「ち、ちょっと千冬さん……冗談なんですから少しは軽く流してくださいよ……」

 

「神代、私はからかわれるのは嫌いだと前にも言った筈だ」

 

「あ、あはは……そういえばそうでしたね」

 

 くそっ。このところちょっと丸くなったと思っていたが、案外そうでもなかった。

 

 暫く迂闊な発言は控えようと思った俺は気を取り直して、今度はちゃんと真面目に言おうとする。

 

「えっと、今度の夏休みの時に一夏を俺に預けさせる許可を下さい」

 

「……どう言うことだ? 理由を説明しろ」

 

 顔を顰めながら理由を問う千冬さんに俺はこう答えた。

 

「アイツを僅かでも強くさせる為に、一度俺の師匠に会わせて本格的な修行をさせたいんです」




次回からはオリジナル話となります。
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