結局1ヶ月掛かってる
続きをどうぞ!!
―――フォレストの地下にこんな場所があったのか……。
瑚太朗はアカリに案内され、フォレストの従業員しか立ち入れないエリアの奥。
そこに地下に通じる階段があった。
静流は準備があるとの事で、瑚太朗が先に来ている。
中は円形の形をしていて、回りはコンクリートの壁に阻まれている。
地面は砂利も含んだ土。
学校のグラウンドみたいに思えてくる。
「此処が?」
「ガーディアンの専用の訓練所らしい」
アカリもここの事は知っていたようだ。
過去の記憶を探ってみても瑚太朗にはない情報である。
「待たせた」
そんなに遅れる事なく、戦闘体制万全の静流が現れる。
制服ではなく、ガーディアンの一員となっている時に着ている黒の服。
両手には刃を潰した短刀があるが、当たれば大怪我は免れそうにない。
本気なのだ。
本気で、瑚太朗と戦うつもりだ。
知らず、拳を強く握っていた。
手が汗で湿り、緊張に身体が反応していた。
「準備は出来たかね?」
「はい。いつでも行けます」
瑚太朗は「パンッ!!」と両の頬を叩く。
これは瑚太朗にとっても重要な事柄だ。
手加減は一切しない。
正真正銘のガチンコ対決である。
「では、試合を始めてくれたまえ」
江坂は言うなり、アカリの側へ寄って、彼女を引き離しながら告げる。
使えるフィールドは広大だ。
故に江坂が開始の合図を告げれば、瞬く間に戦場となる。
江坂が開始宣言をした直後から両者は身構える。
そして、一瞬の後に両者は全身全霊をぶつけて突進する。
先手を仕掛けてきたのは静流だ。
眼帯を外し、オッドアイとなった静流は跳ぶ。
側転するように宙を舞い、瑚太朗の真上を陣取った。
「っ!!」
「くっ」
短剣が振るわれたのは一瞬後だ。
静流が跳ぶ為に膝を軽く曲げた瞬間に予期できた。
真上、もしくは背後だと推測するや大当り。
速さでは絶対に静流に追い付けないと踏み、身体を斜め前に傾けた。
瞬きすらも許されぬ時間の中、結果は短剣は宙を裂いたのみ。
「逃がさない」
静かに紡がれた一言を瑚太朗は聞き逃さなかった。
かわせたとはいえ、戦闘の――そして攻撃の主導権は静流が握っている。
瑚太朗は前に傾けた事で崩れ掛けた体勢を立て直す。
静流の方を振り向くが、既に彼女は瑚太朗の懐に飛び込む為に接近をしている所だ。
自身を弾丸にして、飛び出してくる。
その手にある短剣を十字に構えている。
「なら……」
迎え撃つしかない。
決断よりも先に身体が動いていた。
その手にはアウロラによって造られた一振りの剣がある。
片手でも扱える軽量型で、きちんと刃は潰してある。
しかし、まともに受ければ大怪我は免れない。
「せっ!!」
それを迷う事なく、横に薙いだ。
一閃された剣が静流に横から直撃――するかと思われた。
「っ!!」
当たる直前、静流は短剣を上からアウロラの剣に当てる。
カキッ!! 軽い衝突音が響くや、静流は身体を回転させた。
上から当てた時の勢いと自身の身軽さを活かし、身体を上空へ回転しながら投げ出す。
「せっ!!」
身動きの取れない空中での対処は、武器の短剣を投げ付けてくる事だった。
瑚太朗の顔面を狙う一撃に結局は回避をせざるを得なかった。
振るった動作なので身体毎は無理だ。
なので、頭を下げて何とかやり過ごす。
だけど、それすら静流の策略だった。
彼女は床に降り立つや、一歩で瑚太朗との距離を縮めた。
「いつの間に!?」
瑚太朗からすれば一瞬の出来事だ。
瞬間移動をしたのかと勘違いしてしまう程だ。
この疑問を投げ掛ける余裕すらない。
瑚太朗が回避の挙動を起こすよりも速く静流の短剣が振るわれた。
「がっ……づぅっ!?」
腹部に鈍器で突かれたのと同等の衝撃が襲う。
思わず漏れそうになった悲鳴を噛み殺す。
痛みを根性で押さえ付け、攻撃に転じた際に振るわれた腕を掴み取る。
静流も一瞬だけ目を見開く……も、彼女にはもう片手が空いていた。
そちらにも逆手で持った模造の短剣がある。
脱出の為に瑚太朗の脇腹を狙う……が、こちらももう片手によって防がれる。
手は出し会えない状況になった。
だが、これはルールに則った試合ではない。
これは最早条件反射の領域だ。
静流の足を踏みつけようとし――
「っ!?」
視界がボヤける。
彼女の毒によるものだと察するのに時間を要した。
気付くのは遅れ、瑚太朗は掴む為に込めていた力を緩めてしまう。
「はっ!!」
同時、静流の飛び蹴りが瑚太朗に突き刺さる。
声を出す間も与えられず、瑚太朗は床を無様に何度もでんぐり返しするはめとなる。
だが、瑚太朗も身体を何度か
静流の毒は確かに通用したが、立て直せない程の致命傷は受けてない。
(だとして……)
何と無く、静流の戦いに違和感を覚える。
確かに根本は変わってないように見受けられる。
だけども、一撃一撃にキレを感じられない。
(ひょっとして――)
静流が突進をしてくるのを、瑚太朗はアウロラを鞭にして伸ばす。
足に巻き付き、手前に引っ張るとあろうことか転倒した。
「なあ、静流……お前、迷ってるのか?」
瑚太朗の問い掛けに転倒し、起き上がった静流は動きを制止させる。
尚も瑚太朗は続けた。
「お前が俺との戦いをしようとした本当の理由は、自分が成してる事が正しいか急に分からなくなったから……か?」
別段不思議に思わないでもない。
敵対組織のガイアが仲間内に居る件に関しては和解して解決はした。
しかしながら、ブレンダ・マクファーデン――ガーディアンという身内で引き起こされた問題。
あの時はアカリの事もあったからだろう。
特別に問題視はしていなかったが、いざ考えてみるとガーディアンという組織体制が信用に足るか不安で仕方無いのだ。
これは勘だが……ブレンダとの一件から色々と考えたのだろう。
今はガーディアンから離れ掛け、組織の使命である『鍵』とも仲良しこよしだ。
「どうだ?」
「さすがは天王寺君。君の言う通りだ」
答えたのは静流ではなく江坂。
何故?――などと疑問が沸いたのを恥じる。
江坂が提案し、今回の一試合が発生した。
彼は一枚噛んでいた訳だ。
「正確に言うと、自分を天王寺君達が必要としてくれているのか心配だったんだ。
静流君から黒篝の件については聞いたとも。居合わせた時には逃走が精一杯だったと聞いた。そんな相手に自分が役立つのか知らずに不安になっていたんだ。
そんな中でブレンダ・マクファーデンが大きく動いてガーディアンを揺るがした。一部とは言え、これまで信じて突き進んだ組織に裏切られたのも拍車を掛けたのだろう」
「そう、だったのか……」
静流の口から出来れば聞きたかったが仕方無い。
瑚太朗の懸念は的中した。
戦い事態に意味はなく、瑚太朗に自分の力を把握して“一緒に居て欲しかったのだ。”
始まる前とは真逆の出来事。
瑚太朗は「全く」と呆れた。
「俺が、俺達が静流を悪く思うだなんてない。
強い弱いとか関係無しに俺達には『中津静流』って女の子が必要なんだ。
それにブレンダの事は気にするな。少なくとも江坂さんは正しいんだ。お前の進んだ道に間違いはない」
元々、自力で立ち上がるだけの力を静流は秘めている。
なら、どうこう口出しするだけ野暮だ。
今彼女はこんがらがってるだけ。
少し背中を押してやるだけで十分な筈だ。
アウロラを消し、瑚太朗は静流と向き合う。
「それでも不安になるって言うなら行こうぜ」
「何処へ?」
瑚太朗の差し伸べた手を小首を傾げ、問い掛ける。
瑚太朗は薄く笑うと「決まってるだろ」と言って――
「お前の疑念を払拭する為に皆の所へ……だよ」
如何でしたでしょうか?
力的には瑚太朗も静流も然程変わりないです
ではでは、この辺で!!
次回も1ヶ月程見てくれると嬉しいです