作者の都合で遅れてしまって申し訳ないです。
「コタロー……本当にこれで大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫」
静流の不安を余所に瑚太朗は親指を立ててサムズアップする。
変装――と言う程でもないが、彼女は“普段とは全く違う服装をしている。”
白いワンピースに青のカーディガンを羽織っている。
髪も下ろし、眼帯も外してオッドアイが見えるようにしている。
ガーディアンの関係で着ているものとはまた違った印象を受ける。
「下手に変装するよりも普段とは違う印象を与えるだけで違ってくるもんだ」
「そ、そういうものなのか……?」
何処か不安げな静流。
可愛らしい感じの彼女だが、こうして髪を下ろすと大人っぽさがある印象もあった。
「気付いてないだろうけど似合ってるよ。普段とは違って大人っぽさを感じる」
嘘偽りのない本音をぶつけてやる。
本心からそう思っているのだから仕方無い。
彼の言葉を受けた静流は心ここにあらず――ボーッとし始めた。
「どうした?」
「な……何でもない」
顔を赤くさせ、両手を前に突き出して左右に振り始める。
彼女が照れた時に行う仕草だ。
どうやら自分の発言に恥ずかしがらせるものがあったようだ。
無意識にやってしまった――が、今更考えても意味がない。
それに先程までの発言の中に瑚太朗自身に“何ら虚言はない。”
「とりあえず行こうぜ」
未だに呆ける静流の手を取り、彼女の家族の住む家に突撃する。
「ごめんなさいね。何もない所で」
瑚太朗と静流(主に瑚太朗だけだが)が意気揚々と中津家へ突撃した。
玄関先に出向いた際に静流の母親とバッタリ出会わした。
彼女に用があったこともあり、瑚太朗は迷わずに話し掛けた。
そうしたらあれよあれよと言う間に家に上げられ、リビングまで案内された。
静流と隣り合わせに瑚太朗は座り、お茶を出された
。
静流の母親は、瑚太朗の隣の少女こそが娘だと気付かない。
それは仕方のない事で、静流自身が行った事に相違ないのだ。
ただ、何と無くではあるが静流の方も寂しいのではないかと思え始めた。
「いえそんな。こっちこそ急に押し掛けたのにお茶まで貰って……」
実際、瑚太朗としても立ち話位で済ませる予定だった。
それがどうしてか、彼女との対談に刷り変わっている。
本当は話さねばならない本人が隣で口をつぐんでいた。
「しずか――娘なのだけれど、帰ってくるまでなら大丈夫ですので。私も何故だかあなたと……それにそちらの娘さんとお話をしたいと思ったのです」
ふと、静流の母親はそんな事を言い出した。
静流の特殊能力で彼女の記憶から娘の事は忘れている筈だ。
なのに静流と話したいと“何故か”思ったらしい。
あの時……静流と過ごした世界、その終焉で彼女は「しず」とまで言って消滅してしまった。
それが静流の妹である「しずか」なのか、はまたま静流の事なのか――判明しないままでいた。
定かではないが、記憶からは静流の事を消せても心の中には記憶が残されているのかもしれない。
月並みの言い方ではあるし、そんな漫画のような奇跡的展開ではないかもしれない。
それでも……瑚太朗はそんなご都合主義があっても良いじゃないかと思っていた。
「不思議な事がね、私の周りでは起きているの」
ポツポツと、唐突ながら彼女は語り始める。
知らぬ間にお金が届けられている事。
それと、何故かさんまを食べる時は七輪をよく使う事を。
話を聞いている内に、最初に考えた奇跡が実は起きているのではないかと瑚太朗は思い直す。
それは隣の静流も同じだった。
多分、自分以上に驚きに包まれていると感じられる。
母親としずかが喧嘩をしている現場を目撃し、貧乏でもいいから七輪でさんまを焼いて、笑顔で食べたいと願った。
その願いは確かに静流の記憶を消す事で叶った。
まさか、“その願望を彼女達は叶えてくれていたらしい。”
「あら、もうこんな時間」
静流の母親は時計を見るなり、慌て始めた。
仕事が入っているらしい。
こちらも長居し過ぎた。
「あの……また来てくださいね」
「また……来る」
答えたのは瑚太朗ではなく静流。
彼女の言葉がどれだけ静流に嬉しいのかは分かるまい。
早々に家を出て、瑚太朗は静流と共に皆のいる場所へと戻ろうとする。
「どうだ? 会えて良かったか?」
「ああ、ありがとう。コタロー」
今度は迷う事のない返答があった。
来る前は不安で曇っていた顔付きが――晴天に変化していた。
晴れ晴れとした彼女の表情に、瑚太朗は内心で喜んでいた。
如何でしたでしょうか?
静流の母親の件については色々と考えられる事はありましたが、やはり静流自身にこういったご褒美があっても良いではないかと。
本編の方では何となくもやっとしていましたしね。
ではまた。
年明け前にはもう一度更新しておきたいな。