Rewrite if   作:ゼガちゃん

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大変お待たせしました。

体調崩して治ったら仕事忙しくなってしまっていましたf(^_^;

続きです!!


鳳ちはや⑤

「こっち、ですか?」

 

「咲夜のメールによるとですけど」

 

 ちはやとぱにはマーテル協会の中を移動していた。

 

 ちはやは元々マーテルの魔物使いでもある。

 なので、他の魔物使いと遭遇しても特に不審がられる様子はなかった。

 

 普段は咲夜を引き連れている影響からか、その点のみは不思議に思われたようではあったが、こうやって自由に動き回れているので問題はない。

 

 そして、ぱにはと言えばちはやの長い髪に隠れている。

 

「ちゃんと進めているのか不安になります」

 

「マーテルには何度か来ているのではないですか?」

 

「そうなんですけど~~~。普段は咲夜が居たから迷わなかったんです~~~」

 

 ちはやの返しに「ああ」と呆れ混じりに納得してしまった。

 あの過保護執事の事だ。

 ちはやを甘やかした結果、マーテル協会内の構造すら頭に叩き込まれてはおるまい。

 

 しかしながら……彼女のオツムで覚えられるとも思っていないのは口が裂けても言えずにいた。

 

「ですが、今は咲夜さんの指示通りに動いている訳ですから問題ないのでは?」

 

 ぱにが至極尤もな発言をする。

 彼はちはやを溺愛し過ぎる傾向にあるのが欠点な位で、頼もしい仲間だ。

 

「そうじゃなくて、見覚えがないから困ってるんですよ~」

 

 涙目になりながら訴えてくる。

 それは道を覚える努力も怠っている自身が悪いのでは――と、喉まで出かかって止める。

 こんな論争をするつもりで言ったのではないのだから。

 

 そんな会話を繰り広げながらも、目的の部屋に到着できた。

 ぱにもしつこく咲夜からのメールを共に確認したのだから間違いはない。

 

 建物の最奥部。

 しかも地下も地下――の方だと来たものだ。

 咲夜の情報が無ければ右往左往としていた事であろう。

 

 大きな両開き式の扉。

 ちはやは深呼吸をし、意を決して扉を押した。

 

「ふんっ!!」

 

 思っていたよりも扉は重く、開くにはちはやも力を込める必要はあった。

 恐らく、ちはやのパワーがなければ辿り着けても目前で膝を折る結果になったに違いなかった。

 

「えいっ!!」

 

 最後の最後に力任せで、ちはやは扉を勢い良く押し出した。

 彼女の力に耐えきれず、扉はひしゃげて蝶番(ちょうつがい)を容易く破壊した。

 

 そして、中には目的の人物が――――

 

「………………えっ!?」

 

「これは………………っ!?」

 

 両者の反応は共に同じ「驚愕」の色に染め上げられていた。

 

 何故なら、そこには目的のものはなかった。

 あったのは、紅く目を光らせ、獰猛に唸る黒犬の群れで――。

 

 

 

 

 

 

 

「私とした事が……迂闊でした」

 

 咲夜は自身の失態に舌打ちをし、狭い通路を駆け抜ける。

 

 1人の魔物使いを閉じ込めるにしては、些か厳重が過ぎる。

 長居――津久野と瑚太朗の関係を知っており、誘き寄せるには十分であった。

 

 そもそも、今回の策で長居の居場所を突き止めたのは監視カメラの履歴からだ。

 彼女が捕まったのは近日中である事は明白、なのでそう時間が掛からずに炙り出せると踏んだ。

 

 推測は当たり。

 結果、彼女の監禁場所を見付ける。

 USBは監禁カメラの映像が他にも流れている事を見越して、ダミー映像を流す為のシステムを組み込んであった。

 

 ここまで完璧。

 寸分の狂いもなかった。

 

 綻びを発見したのは――しばらくしてからであった。

 普段なら何人か居るであろう魔物使いの姿が見当たらない。

 

 今、この時にこれは偶然だとは思えなかった。

 侵入したちはやとぱにからは瑚太朗とぎるが何者かと交戦している情報を受けている。

 悪寒が走り、一目散に(ちはや)の下へ駆ける。

 

 だが、彼の行動は既に見透かされていた。

 立ちはだかるように魔物使い達が黒犬を引き連れて姿を現したのだ。

 

「先程までは姿を見せていませんでしたが……」

 

 何処かに隠れていたのだろうか――いずれいせよ、咲夜のやる事に変更はない。

 

「あなた達が何人束になって来ようが私を倒せる道理はありません」

 

 何故なら、今ここに立つのはガイア最強の魔物――咲夜。

 

「過ぎた通り名だとは思いますが、その目に焼き付け、身体に刻み付けなさい――私が最強と呼ばれる所以を」

 

 主が危機に陥るその前に馳せ参じる――その為の力を思う存分に発揮しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、そっ!?」

 

「どうした? どうした?」

 

 瑚太朗と男の戦いは続いていた。

 しかし、少し語弊のある言い方でもあった。

 

 瑚太朗は防戦一方を余儀無くされていた。

 オーロラブレードを展開させているが、男は臆せずに“素手で”応戦されている。

 拮抗――などという熟語が残念な事に出てきもしない。

 瑚太朗は終始押されっぱなしである。

 

 圧倒的――これまで何度か抱いてきた感覚ではあった。

 江坂にせよ、ミドウだって、強者の部類ではあった――が、隙を見付けての反撃はして仰せた。

 

 なのに、目の前のフードの男はその一切を全く見せない。

 何度か打ち合っているのに彼はわざと隙を見せて罠を張る事すらも行わない。

 

 瑚太朗を圧倒しているが、リスクを置いた戦いを本能的に拒否しているようにも見受けられる。

 

「やはり、強い――な!!」

 

 瑚太朗がオーロラブレードを振り抜くが、拳を合わせて真上へ弾く。

 

「くっ!?」

 

 力が強すぎたが故に腕も上に持ち上げられる。

 しかしながら――この事を瑚太朗は予測していたようだ。

 弾かれた反動を利用して後ろに跳躍して体勢を整える。

 

「さっすが!!」

 

 瑚太朗の行動を称賛しながら男は一息に瑚太朗へ詰め寄る。

 

「はあっ!!」

 

 瑚太朗も後退をした際に、突撃を試みる事を予期していた。

 直後に……瑚太朗はオーロラブレードを“真っ直ぐに伸ばす。”

 

「そんなもの!!」

 

 男は伸ばされたブレードを紙一重で身体をズラして回避する。

 そして、腕を無造作に振るって伸びてきたブレードをへし折った。

 

 密度は薄い。

 へし折る芸当は男ならば容易にできた。

 

 瑚太朗の体力が尽きたのか、自棄になったのか。

 

(いや――――)

 

 どちらでもないと男は考えた。

 論理的な思考のない、直感でしかない。

 そう思った理由はただ1つだ。

 

 

 

 

 

 天王寺瑚太朗の目の輝きは、強大な敵を相手にしても死んでいないからだ。

 

 

 

 

 

「良いぞ!! 次は何を仕掛けてくる? 天王寺瑚太朗!!」

 

 歓喜に震えるかのように男は声を発する。

 

 相対する瑚太朗は次の一手を打つ。

 ブレードを伸ばしていたのとは反対――もう1つの腕を地面に殴り付ける。

 

 その行為は自傷の為でも、無力さに嘆いた為でもない。

 勝つ為の――一手だ。

 

「うっ、おおおおおーーーーっ!!」

 

 雄叫びと共にオーロラブレードを地面へ殴り付けた腕で展開した。

 そして、それを“可能な限りに伸ばす。”

 どこぞのバトル漫画よろしく、伸びる武器を使って空中へ逃げる。

 

「っ!!」

 

 伸ばされたオーロラブレードへ勢いを付けたままに男は突撃した。

 またも造られたブレードの装甲は薄く、彼が体当たりしただけでいとも容易く粉々に砕け散った。

 

「これは……っ!?」

 

 ブレードを展開した時点で彼の目論見は読めていた。

 ただ、瑚太朗がこちらがかわせない程に接近してからブレードを伸ばしたが故に反応が僅かに遅れた。

 現に男は進行方向を斜め前へ変更してはいた。

 けれどもそれが瑚太朗の出したブレードを完全に回避するまでには到らなかった。

 

 結果、男はブレードに衝突。

 瑚太朗は空中から落下する。

 

「っ!!!!」

 

 そして――それは瑚太朗の意図した結果に辿り着く。

 重力の摂理に抗わず、落下していく。

 その最中に手を伸ばし、背中のフードを掴み取る。

「逃がす……かぁっ!!」

 

 瑚太朗は叫び、腕力のみで身体を男へと引き寄せる。

 いや、男を引き寄せたのか――いずれにせよ、瑚太朗が無理矢理な体勢から背中へ膝蹴りを咬ました。

 

「ぐっ……くっ!?」

 

 意識の外からの攻撃に、遂に男は苦痛に奥歯を噛み締める。

 すかさず、瑚太朗は詰め寄った距離を活かす。

 

「はあっ!! 」

 

 そのまま後ろから頭突き、ローキック、止めに正拳突きを背中に叩き付ける。

 連続攻撃――しかも、文字通りに超人の力を有するものだ。

 さしもの男もダメージ無しとまでは言えなかった。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーっ!!」

 

 瑚太朗は雄叫びを上げ、拳を振り抜く。

 まだ距離を詰めきったアドバンテージがある。

 これを殺してしまっては瑚太朗に勝機はない。

 

 敵が倒れるまで何度も、何度でも――彼は拳を振り抜く“つもりでいた。”

 

「悪い、な」

 

 瑚太朗の打ち出した拳を、男は手のひらで受け止める。

 

「っ!? 」

 

 受け止められた事も少なからず瑚太朗に驚きを与えた。

 しかしながら、それ以上に瑚太朗へ衝撃を叩き付けたのは――男は攻撃の嵐の中で身体を振り向かせ、攻撃を受け止めて見せた点である。

 

 本気で打ち込んだ攻撃のダメージは蓄積されている筈だ。

 だというのに、彼はそれを感じさせない。

 

 堪らず、瑚太朗は拳を慌てて引き戻そうとする。

 

「追撃は、させないぞ?」

 

 瑚太朗は拳を引いていたのは、ローキックを再び敢行しようと試みたからだ。

 男はこちらの動きを見透かしたかのように先読みして動いた。

 

 身を低くし、瑚太朗の腹部に拳を叩き付けてきた。

 

「――――――っ!!!?」

 

 腹から沸き起こる痛みに身体を捩らせる。

 たったの一撃で、立っている事が不可能になる程に膝を折らせる結果となった。

 

「休んでる暇はないぞ」

 

 追撃を失敗した瑚太朗への当て付けか、男は彼の顎にめがけて蹴りを送り付けた。

 

「――――――――――っ!!」

 

 衝撃が駆け巡った。

 気付いた時には瑚太朗の身体は空中へ投げ出され、次の瞬間には背中から地面に着地していた。

 身体に襲い掛かる2度の衝撃の後に、ようやく激痛が全身を走る。

 

「ぐっ……くっ、そ!!」

 

 身体を反転させ、手を着いて何とか立ち上がろうとする。

 

「思っていた以上に頑丈だな。それだけ鍛えたのか? それとも『書換能力(リライト)』を使ったのか?」

 

「鍛練の賜物だ――――」

 

 男へ対し、精一杯の強がりを返そうとして言葉を止めた。

 喋れなくなった訳でも、向こうから攻撃を受けたからでもない。

 

 

 

 

 

 男がサラッと『書換能力(リライト)』の名前を口にしたからだ。

 

 

 

 

 

「何でその事を知ってる!? お前はいったい何者なんだ!?」

 

 既に瑚太朗の中から痛みや疲労は消え去った。

 それほどの衝撃を今、彼は受けている。

 

「さあ? 何者でもないんじゃないか?」

 

「話にならないな」

 

 元より真面目な対話が望めるなどとは微塵も思ってはいなかった。

 答えるつもりがないなら自力でこの難問を解き明かす。

 

 マーテルにいる時点で加島桜との繋がりはあろうが、それとて瑚太朗の『書換能力(リライト)』の事には繋がらない筈だ。

 

 よって、彼は何らかの方法で天王寺瑚太朗の能力を知り得た。

 

 咲夜のように先駆者という可能性も捨てきれずにはいる。

 もしくは別の可能性だって有り得るのだ。 だからと言って、瑚太朗は黙っている程のお人好しではない。

 ヒントを少しだけでも良い。

 引っ張り出し、自力でも他力本願でも回答に辿り着きたい。

 

 実力差があろうが構うものか。

 彼を上回る――現に天王寺瑚太朗には大言壮語ではなく、事実として行える能力が存在するのだから。

 

「行くぞ――」

 

 その行為は先駆者からも止められている。

 実際、数ある世界の中で天王寺瑚太朗は人間を逸脱する事となった。

 けれど、アクセルを踏み込まねば次の瞬間に生きているか保証はしかねる。

 

 それだけの敵が眼前に立ち塞がっている。

 

「覚悟はできているようだな」

 

 瑚太朗の並々ならぬ気迫に男も気付く。

 彼の背中にあるもの――それを守る為に彼は人である事を捨てても構わない。

 

 想像の中でアクセルに足を掛ける。

 1つ呼吸を置き、覚悟を改めて――――――

 

 

 

 

 

「大変だぞ!!」

 

 

 

 

 

 瑚太朗のその覚悟も、男の気迫すら気にせぬ大声が全てを支配した。

 

 瑚太朗の前に躍り出る影……それはぎるのものだった。

 

「ぎる?」

 

「ぱにから連絡があったんだ!! 今、ピンチだって!!」

 

 ぎるの焦燥感に溢れる言葉。

 それが演技ではないことくらい分かる。

 男に向けていた意識がぎるにシフトする。

 

「じゃあ、ちはやも!!」

 

「あいつのおかげで何とか保ってるって言ってるけど……」

 

 無意識なのだろう。

 早口になるぎる。

 それだけの危険が今ちはやとぱにに訪れている。

 

「チッ、興が削がれたな」

 

 瑚太朗の意識は完全にちはや達の方にシフトしている。

 男としては、瑚太朗には真正面から向かってきて欲しかったのだろう。

 

「さっさと助けて来い」

 

「お前……」

 

 男の態度に瑚太朗は困惑する。

 正直に言うと、彼の言葉に毎度のことながら嘘偽りがない。

 なので、今の彼の発言も決して嘘で塗り固められたものではない。

 

「どうしてだ?」

 

「天王寺瑚太朗とはお互いのコンディションが絶好調な状態で戦いたい。それに――こっちは手の内を知ってるのはフェアじゃないからな」

 

 質問の返答は瑚太朗に戸惑いを与えるには十分過ぎた。

 

 戦闘での動きは最低限、向こうに知られてしまっている。

 この事実は、瑚太朗に与える衝撃にしては大きすぎた。

 

「何で俺に執着するんだ? 手の内を知ってるなら倒すのは簡単だろ?」

 

「別に倒すのが最終的な目標じゃないからな。と言うか、ここでお喋りしていて良いのか?」

 

 詮索をされまいと話題を替えてきた。

 しかし、それは瑚太朗に時間がない事を知っての行いだ。

 

「礼は言わないぞ!!」

 

「別に構わない」

 

 瑚太朗はちはやを助ける目的を一番に据え置く。

 

「行くぞ、ぎる」

 

「お、おうっ!!」

 

 ぎるは男に背を向ける瑚太朗を心配し、何度も男の方を警戒しながら進む。

 だが、その心配は杞憂となって消えた。

 

 男もまた瑚太朗へ背を向けて去っていったのだから。

 

 彼が何者であるのか瑚太朗も分からない。

 それでも分かる事はある。

 

 天王寺瑚太朗より強く、そして突破しなくてはならない障壁だということが――




如何でしたでしょうか?

ゆっくり、準備しながら書いていたものですが矛盾はないようにしている(つもりです)

次は早めに更新したいな~と思いながら、アニメの2期が待ち遠しいと思ってる自分が居ます。

ではでは。また次回に。
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