Rewrite if   作:ゼガちゃん

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亀更新でお待たせして申し訳ない。

続きです。


鳳ちはや⑦

 瑚太朗達はぱにの先導の下、マーテル内を駆け回っていた。

 途中までちはやが道案内役に自分を選ばなかった事を問い詰めていたが全てスルーしていたら押し黙った。

 

 代わりに頬を膨らませ、瑚太朗を睨み付けている。

 場違いにも実に可愛らしい仕草だなと思ってしまった。

 

「あそこです」

 

 ぱにの示した部屋。

 他とは何も変わらない。

 違うのは扉が何者かの手によって破壊されて開けられた跡があること位だ。

 

 これを行った人物は今後ろで睨み付けているのだから、彼女の怪力は純粋に恐ろしい。

 しかし、その怪力も咲夜あってのもの。

 彼が今も無事である何よりの証明である。

 

「良し。俺が先に行く」

 

 真っ先に瑚太朗が一番槍を名乗り出る。

 と言うのも、中に誰かが居る可能性を考慮してだ。

 本当に居ないと言うのならば笑い話で済まされるものの、隠れ潜んでいた場合は話が別である。

 万が一を考えて、瑚太朗が応戦してちはやに援護を頼むのが無難だ。

 

「何かあったらぎるを弾丸代わりに投げて助けてくれ」

 

「了解です」

 

「待て!! なんでおれさまがそんな事に――――」

 

 ぎるの抗議は受け入れられず、ぱにが口を塞ぐ。

 騒がれても迷惑なだけなので口にチャックはして貰っておきたい。

 

 ぱにが黙らせてくれたおかげで集中できる。

 壁に背中を預けながら徐々に近付いていく。

 もう1歩踏み出せば扉の前に躍り出る所まで来た。

 それでも人の気配を感じ取れない――――人が居ないのか、それとも上手く気配を殺しているのか。

 

(誰が居ようと関係ない)

 

 長居の救助の為にここまで奔走したのだ。

 さっき応戦した強敵が待ち受けようと、瑚太朗は決して引き下がる選択を取らない。

 それだけの覚悟は持って来たのだから。

 

 オーロラブレードを展開。

 それを終えると同時――瑚太朗は中へ侵入した。

 

 部屋は薄暗く、廊下の明かりがあるおかげで見える程度だ。

 照明を付けるスイッチはないかと入り口付近に視線をやりたかったが、中に敵が潜んでいるなら背中は見せたくない。

 

 一歩、また一歩と確実に奥へ進んで――――

 

「っ!?」

 

 瞬間、瑚太朗は反射的に動いた。

 戦士として過ごした経験が直感的に身体を動かしたのだ。

 真正面から何者かが迫り来る気配を感じ取った。

 気付けば既にオーロラブレードを真横へ振るっていた。

 

 相手も侵入してきた瑚太朗のオーロラブレードが目に入ったようだ。

 間合いに入る事はせず、その場で待ち構え…………

 

「咲夜?」

 

 入り口まで近付いてくれれば、何者かの判別も難しくない。

 それが仲間内だと言うのだから脱力するのも当然だ。

 

「遅かったですね。与太郎君」

 

 こんな時でも自分のペースを崩さない咲夜は尊敬する。

 

「瑚太朗だよ」

 

 このやり取りのおかげで緊張感も解け、思わずリラックスしてしまう。

 彼がここに居るのは瑚太朗にとっても実に心強い。

 

「あ~、やっぱり咲夜が居ました~」

 

 元気そうにちはやが続いて部屋に入ってくる。

 彼女は咲夜と契約しているのだから気付けそうなものなのだが。

 瑚太朗が道案内をぱにに頼んで怒らせたからか、ちはやに気付かせなかった要因となってしまったのか。

 そこはもうどうしようもないので諦めておこう。

 

「よくここまで来れたな」

 

「ええ。ですが見誤りました。まさか、これ程までに警備が強化されていたとは」

 

 咲夜も想定外だと状況に苦虫を噛む。

 元々、瑚太朗と朱音の潜入で警戒を意識させてしまったのが要因だ。

 黒篝の件を除いても準備を怠らず、警戒をされないようにしてから挑むべきだった。

 

「悪い、元はと言えば俺が…………」

 

「いえ。それは言いっこなしです。私の方も分かっていて乗ったのですから」

 

 咲夜の言葉に少しばかり救われる。

 それに今は後悔をしている場合ではない。

 前を見て進むのだ。

 

「私もここには今着いたばかりなので何か言える訳ではありません……が、ここで当たりではないかと考えてもいます」

 

 咲夜程の男が言うと説得力のある話と思えてくる。

 実に頼もしい存在だと改めて教えられる。

 

「場所が判明した件についてですが…………」

 

 咲夜は一度入り口の扉に視線を向けるも、何事も無かったように瑚太朗に向き直る。

 自分の主の能力という観点もあり、複雑な想いから言わなかったのだろう。

 言わぬが華だと言わんばかりだ。

 瑚太朗もちはやの怪力の餌食にはなりたくないのでお口はチャックしている。

 

「この奥か?」

 

「恐らく。居るとすれば、ですがね」

 

 薄暗く、もっと奥へ足を運ばないと事態は掴めない。

 

「迷ってても仕方無いな。電気を点けよう」

 

 どうせバレているのだ。

 それなら堂々と真正面から向かっていってやる。

 咲夜も特別に異論は立てず、瑚太朗の発案を肯定していると見て良いだろう。

 入り口に照明のスイッチがあったので、点灯する。

 

 この部屋の奥、更に続く扉が1つ設置されている。

 長居が居るのだとしたらあそこだろうと、瑚太朗は考える。

 

「俺が様子を見てくる。後から来てくれ」

 

 瑚太朗が言うと、全員が頷いた。

 オーロラブレードを展開。

 扉の前に立つと、ゆっくり――――ではなく、思いっきり扉を開け放った。

 

 何か罠があるのならば迎え撃つ為に臨戦態勢でいる。

 だと言うのに…………

 

「何も来ないのかよ」

 

 様々な状況をシミュレーションしていたのに無駄に終わった。

 

「見付けた」

 

 瑚太朗の視線の先、そこには探していた人物がいた。

 両手を後ろに組んで綱で縛られ、目隠し、おまけに布で口を塞がれた長居が床に転がされていた。

 

「他には何も無いようですね」

 

「そうみたいだな」

 

 実は長居の存在がフェイクでしたというオチも考えられたものの、咲夜が「罠がない」と断言するなら間違いはあるまい。

 瑚太朗も気配を探ろうと辺りを見渡すも成果は無かった。

 

「じゃあ、長居を連れて帰ろう。頼むぞ、ちはや」

 

「わ、私ですかぁぁぁ~~~っ!?」

 

 長居の運搬役を任されたのは他でもないちはやだ。

 このメンバーの中で(人間の)女子は彼女オンリーなのだが、何故白羽の矢を立てるのか?

 まあ、彼女の怪力によるところが大きいのは重々承知している。

 

「俺が運びたいところだけど、追っ手が来ないだなんて言い切れるか?」

 

「た、確かに……」

 

 戦闘においてはちはやだって並大抵の魔物使い相手であれば遅れは取るまい。

 現に電柱を振り回して黒犬の群れを薙ぎ倒した実績もある。

 しかし、それは相手が単調な動きのみをする魔物にも限られる。

 それに多勢に無勢、単純な物量の差に押し負けないとも言い切れない。

 そうなると、戦闘に秀でた瑚太朗と咲夜は手ぶらである方が良い。

 

「なんて理由を並べてくけどさ、やっぱりちはやを危ない目なんかに遇わせられないからさ」

 

「えっ!? はっ!? えっ!?」

 

 ボボボッ!! ちはやが驚きながら顔を赤面させる。

 ちはやを気遣う瑚太朗の発言が不意討ちなのが主な要因である。

 

「私の目の前でちはやさんをたぶらかすとは…………覚悟はおありで?」

 

 直後、咲夜がマグマのような怒りに満ちた怒気の視線と威圧を解き放ってくる。

 さすがの瑚太朗も威圧に押される。

 

「こ、瑚太朗ってば……えへえへ」

 

 ちはやは照れ臭そうに頬を赤く染めながら微笑みを表情に出す。

 それが心も完全に父親のものと同様となった咲夜の怒気が更に激しさを増す。

 

 ぱにとぎるは我関せずと咲夜の後ろで待機状態だ。

 1対1の状況下だが勝ち目は一切与えられてないように感じてしまう。

 打開策を練ろうと脳をフル回転させ――――

 

「おっと、どうやらあなたと話している暇は無くなったようです」

 

 咲夜の方から話を切り上げる。

 彼の言うように話に興じる暇が無くなっただけの事だ。

 入り口付近、気付けば黒犬が包囲網だとばかりに集まっていたのだ。

 

「力が弱すぎて、近付いてくるのも気付きませんでした」

 

「本当か?」

 

 今しがたの瑚太朗への怒気に全てを集中させていたせいで注意力が散漫になっていたと見える。

 

「自ら藪を突きに来ましたか」

 

「どうせこいつらの掃除が終わったら問い詰めるだろ?」

 

 瑚太朗も入り口の方へ視線を巡らせる。

 咲夜、瑚太朗共に並び立つ。

 

「ぐぅぅぅ…………あぁぁぁぁぁっ!!」

 

 我慢しきれないとばかりに一匹の黒犬が集団から飛び出してくる。

 他のものと比べると大きく、両足で立てば成人とそう変わりはあるまい。

 

「我慢が出来ないとは、躾がなっていませんね」

 

「もう少しものを考えて出直しな」

 

 飛び掛かる黒犬は真っ直ぐに瑚太朗と咲夜を襲撃せんと獰猛な牙を向ける。

 しかし、彼らに立てる牙にしては小さ過ぎた。

 

 一瞬、2本の直線が黒犬の顔に描かれる。

 1本は瑚太朗が右腕に展開したオーロラブレード、もう1本は咲夜の手刀。

 黒犬が2人に届くよりも先に線を描いた。

 

 まさしく刹那の出来事である。

 2本の直線が描かれると同時に黒犬は存在そのものを否定されたかのように霧散して消え去った。

 

「あなたと共闘するのもこの状況では仕方ありません」

 

「そうみたいだな」

 

 恐らくは“口だけのやり取り。”

 彼等は“互いが互いに頼もしい存在だと感じている。”

 

「行きます。遅れないで下さいね瑚太朗君」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すよ咲夜」

 

 2つの嵐が黒犬の群れを吹き飛ばしたのは直後の話だった。

 




如何でしたでしょうか?

今回も短めで申し訳ないです。

次回もこんな調子で遅くなるかもしれないですが、頑張って書きますので待っていて下さい。
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