Rewrite if   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

こんな時間に更新ですが……続きです。


鳳ちはや⑧

 何が起きているのか、目では見えていても思考が追い付いていなかった。

 それだけの惨状が魔物使いの目に焼き付けられる。

 

 長居という者を閉じ込めた部屋を見張るように言われ、奥にある部屋に身を潜めていた。

 侵入者の報告を受け、人数は2人で3体の魔物が居ると外で見張りをする加島桜と行動する人物が言っていた。

 

 侵入者を一ヵ所に固めてこちらの部屋と外から挟み撃ちにし、一網打尽にする戦法である。

 その為には全員を誘き出す必要があった。

 

 一度目は少女と小さな魔物が来た。

 それだけでは足りないので黒犬の群れを用いて追い出す。

 

 それからしばらくして青年の姿をした魔物が部屋に足を踏み入れた。

 程無く、先程に追い返した少女と小さな魔物が少年と別の小さな魔物を引き連れて戻ってきた。

 長居が潜む部屋まで訪れた。

 数を改めて確認し、報告の数と一致するのを再確認する。

 部屋を後にしようと背中を向ける瞬間が狙い目だ。

 

 成功率を上げるべく、外で待機していた魔物使い達が黒犬を引き連れて現れる。

 こちらも臆するまいと、黒犬を連れて飛び出す。

 直後にとんでもない光景が魔物使いの瞳に映された。

 

 外で待機していた魔物使いの黒犬の1体が少年と青年の魔物へ牙を剥けて飛びかかる。

 それを、何でもないかのように両者は黒犬を一撃で葬った。

 

 少年は腕から剣の形をしたオーロラのようなもので、青年の魔物は手刀で――――黒犬を両断した。

 

 瞬く間に起きた出来事に思考が追い付かない。

 頭が真っ白になった。

 

 2人は挟み撃ちにしたこちら側にも気付く。

 少年の方が弾丸のような速度で迫ってきた。

 腕にある剣を無造作に振るう。

 それだけで黒犬の群れはボーリングのピンかと疑う程に簡単に薙ぎ倒されて霧となって消滅する。

 

「悪夢だ…………」

 

 少年1人に魔物1体。

 たった2つの存在が用意していた黒犬の群れをあっさりと薙ぎ倒していく。

 

 次の瞬間には少年が急接近し、魔物使いの意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少年天王寺瑚太朗と青年の魔物咲夜はまさに敵に悪夢を見せていた。

 魔物使い達にはたった1人と1体で集め寄せた黒犬の群れを吹き飛ばす嵐に見えたであろう。

 

「ったく!! 何だってこんなに居やがるんだ?」

 

「ギブアップならあなたから先に冥土へ送りましょうか?」

 

「咲夜さんっ!? まださっきの発言を根に持っていらっしゃいますの!?」

 

 等というやり取りの応酬を繰り広げながら黒犬をバッタバッタと薙ぎ倒す。

 強すぎる――――魔物使い達の空気が後ろ向きに変化していく。

 

「さ、咲夜……だって?」

 

 やり取りに耳を傾けていた魔物使いの1人が瑚太朗の出した名前から嫌な予感を募らせた。

 咲夜――――ガイアに所属する者なら名前だけは噂に耳にした事があった。

 曰く、ガイア最強と謳われる程の実力を持つ魔物だと。

 その異名を持つ魔物だとしたらあの圧倒的な強さにも納得がいく。

 

 自分達はなんて化け物を敵に回したのだろう。

 

「おいおい、何か恐れられてるぜ? 咲夜さんよ」

 

「私は特別な事はしていませんよ。向こうの都合が悪いだけです」

 

 咲夜の名はガイア内部でも轟いているのだろう。

 でなければ、名を聞いただけで恐れおののくとは思えなかった。

 

 元々、黒犬の群れなどものの数でも無かったが更に拍車が掛かる。

 咲夜の名前を聞いてから統率が無くなり、勝手に崩れてくれている。

 対して体力の浪費も無しに、無駄な力を使わずに倒せている。

 

「さあ、進みますよ」

 

「ああ、分かってる」

 

 咲夜と瑚太朗は崩れた魔物使いの動きを見逃さなかった。

 示し合わせたように2人は前に斬り込む。

 

「だあっ!!」

 

「はあっ!!」

 

 瑚太朗のオーロラブレードが、咲夜の手刀が黒犬を、魔物使いを、蹴散らしていく。

 先程も例えたように嵐としか言い様のない2人の津波のような怒濤の迫力に魔物使い達は腰が引けていく。

 1人、また1人と迫り来る2つの嵐から逃げようと走り去っていく。

 集団は完全に崩壊の一途を辿っていく。

 

「す、すごいです…………」

 

「こ、これって現実なんですの?」

 

「た、大したことないな。おれさまでも出来るけど…………今回は譲ってやるかな」

 

 目の前を走る嵐を目の当たりにする三者の反応は三様だった。

 ちはやとぱには2人の怒濤の戦いに目を見張る。

 ぎるも同様だが、自分もできますよアピールしながら腕を組んで偉そうにしている――――声が少し震えてるようにも聞こえるが気付かないフリをしておこう。

 

「なあ、咲夜」

 

「ええ、来ましたね」

 

 通路を駆ける足を一旦止める。

 前から何かが来るのが分かった。

 その理由は単純明快、コンクリートを砕かんばかりの音が反響するから。

 

 ドシンッ!!

 

「な、なんですか!?」

 

 先程までの快進撃を続けた2人が足を止めた理由に遅れてちはやも気付く。

 ぱにとぎるも同じようで、全員の中に不安の感情が充満する。

 

 反響する衝撃が伝わってくる。

 徐々に徐々に、瑚太朗達へ近付いてくる。

 

 全員の前にあるのは十字路となった通路。

 その右側から件の音の原因が現れた。

 

 恐竜――――その一言がまず全員の頭の中に描かれた。

 ティラノサウルスを連想させる頭部がひょっこりと、可愛らしい表現とは裏腹に恐怖させるインパクトのある顔面でお出迎えしてきた。

 

 ティラノサウルス型の魔物――――しかし、大きさだけで言えば瑚太朗達よりも大きい程度。

 クリボイログやキリマンジャロに比べれば大きさは地ほどの低さだ。

 しかし、突出して目を見張るのは胴体に似つかわない程の極太の足だ。

 まるで恐竜の子供みたいな見た目とは裏腹にドラム缶のような極太の足に目が行く。

 

「グォォォォォッ!!」

 

 瑚太朗達を見付けるや、威嚇による咆哮が真っ先に行われる。

 同時、ドシンッ!! 聞いたばかりの振動音がした。

 ティラノサウルス型の魔物が一歩を踏み出し、その極太の足を地面に着けた音だ。

 それだけで衝撃がすると共にコンクリートにヒビを入れる。

 ただ歩くだけで恐竜の魔物は破壊行為を難なくこなす。

 

「ガァァァァァッ!!」

 

 大口を開き、更なる咆哮が成される。

 それだけでちはやもぱにもぎるも萎縮してしまう。

 

 捕食する事を決定した恐竜が大きな顎を開いて獲物へと一歩を踏み出――――――

 

「ちはやをビビらせてるんじゃねえよ、トカゲ」

 

「ちはやさんに恐怖を与えようとするとは、爬虫類ごときが万死に値します」

 

 声がするのとタイミングは同じであった。

 一瞬、まさに瞬きも許されぬ時間だった。

 

 瑚太朗のブレードが、咲夜の手刀が――――恐竜の頭部を真上から切り捨てていた。

 何が起きたのか恐竜は理解できずにいただろう。

 姿を現した恐竜の進撃はたったの一歩を踏み出しただけで終わりを告げられた。

 

「うそ~ん」

 

 たったの一撃…………瑚太朗と咲夜の強さがより浮き彫りになった。

 ぎるが全員を代表して今起きた出来事の衝撃を声に出してくれた。

 

「よくよく考えてみると、あれよりもっと大きな魔物を2体も同時に倒していましたのだから当然と言えば当然なのかもしれませんね」

 

 クリボイログにキリマンジャロ――――大きさだけで言えば最大級の存在を瑚太朗は1人で相手して危なげも無しに勝利を収めた。

 それを目の当たりにしたぱにとぎるからしたら普通の出来事かもしれない。

 

 それは同時にこの2人が居れば脱出だって可能だと教えてくれてるようなものだ。

 そう思わせるだけの強さを2人は秘めている。

 

「よし!! 早いところ出ちまおうぜ!!」

 

「そうしたいところですが、問題が生じました」

 

 ぎるが意気揚々と腕を振り上げるも、咲夜によって出鼻を挫かれる。

 

「何だよ~、おまえらが居れば他の奴等も蹴散らして脱出しちまえば良いだろ~?」

 

「それをするのに面倒な事が起きています」

 

「面倒な事ですか?」

 

 ぎるの問いに答えるだけで核心には触れてこない。

 ぎるが話を脱線してしまわないよう、お目付け役のぱにが即座に咲夜へ質問を投げる。

 

「今のように魔物使いによる襲撃もそうですが、出口そのものが封鎖されている可能性も出てきました。先程から出口となる箇所が見付からないのです」

 

「そういう事か」

 

「どういう事です?」

 

 咲夜の言いたい事が何となくではあるが理解できてきた。

 ちはやにはちんぷんかんぷんなようで、諦めて答えを求めてくる。

 

「早い話、この迷路のような通路を加島桜が好きなように操ってる可能性があるんだ。魔物使いの襲撃は、恐らく足止めが目的なんだと思う」

 

 出口を移動させられるのか、封鎖したのか、はたまた幻術の類いで誤魔化すのか。

 潜入がバレている以上、一度入り込んだネズミをむざむざ帰宅させるとは思えない。

 しかも今回は二度目となるのだ。

 ガイア側も躍起になるのは当然の事と言える。

 

「この辺にも出入口はあったのか?」

 

「ええ、それは間違いありません」

 

 ガイア内の地図が完全に頭の中にインプットしてあるのは咲夜だけ。

 万能執事にも身をやつす咲夜の記憶力が言うなら出口があったのは本当の話だと信じられる。

 結構な距離を黒犬の群れを掻き分けて進んでいたのだから出口に着いても不思議はないという話には瑚太朗も首を縦にする。

 

 それでも辿り着けないならガイア側の…………加島桜の思惑があるのではと考える。

 もしくは、顔を隠すあの謎のフード男が元凶と考えられる。

 

「それなら“新しく出口を作っちゃえば良いんですよ”」

 

 全員の困惑へ対し、ちはやがとんでもない発言を行った。

 

「ちはやさん? 何をお考えで?」

 

「とりあえず、この人をお願いします」

 

 そう言ってちはやは背負っていた長居を咲夜へ預ける。

 主の行動に渋々と言った様子で咲夜は頷く。

 

「さて、と――――」

 

 つい先程、恐竜が踏み潰した事で作られたヒビ。

 その一部へ向けて指を入れる。

 

「よいっ、しょ!!」

 

 重たい物を持ち上げる際に頻繁に使われる掛け声。

 そんな気安いものとは打って変わって バコッ!! と、何かが壊れて外れる音がした。

 

 床のコンクリートをちはやは細腕の剛腕で以て引っぺがしたのだ。

 畳を引っくり返すかのような気軽さで、いとも容易くコンクリートを畳にでも見立てたかのように。

 大きさは1メートル程、ショートケーキのような形状で引き剥がした。

 

 それを一度、真後ろへと振るう。

 彼女が狙うのは天井。

 それだけで、ちはやの行動の意図する所を完全に理解した。

 

「やば、伏せ――」

 

「せーーーーのぉっ!!」

 

 瑚太朗が「伏せろ」と言い切るよりもちはやの砲丸の方が早かった。

 黒犬の群れを吹き飛ばした際にも見せた大砲の弾丸がごとき威力をこの場でも見事に再度発揮してくれる。

 

 ドゴォォォォォンッ!!

 

 おおよそ、人の手で引き起こせるとは言い難い衝撃音が狭い通路の世界で響く。

 その結果、引き起こされた現象に瑚太朗も驚きを隠せない。

 

「は、はは…………」

 

 自身の顔がひきつるのが分かる。

 天井に見事な大穴が出来ているではないか。

 

「やりました」

 

 得意顔でガッツポーズをするちはや。

 彼女は自分が何をしたのかを正しく理解しているのかと小一時間問い詰めたくなる。

 怪力女子の名前なぞ生ぬるい。

 怪物女子の称号を瑚太朗は心の中でちはやへプレゼントした。

 

「どうです? どうです?」

 

「さすがはちはやさん」

 

 自分の手柄の成果を聞くと、咲夜が素晴らしい笑顔で褒め称える。

 実際、エキセントリックにも程がある解決策だが助かった事実は本当だ。

 

「では、あそこから脱出しましょう」

 

「分かった」

 

 まだ地下である事に変わりないが、それでも脱出ルートができた事は喜ばしい。

 咲夜は長居を、瑚太朗はちはやを抱えて跳ぶ。

 ぎるとぱには自身の飛行能力で上階へ。

 

「瑚太朗も大分常人離れしてきてますね」

 

「ブーメランを投げるんじゃない」

 

 これくらいなら『書換能力(リライト)』の行使無しでも出来るようになってきた。

 うん、人間からどんどん離れていってるのは仕方無い。

 その内に何処ぞの妖怪のように「人間になりたい」と言い出さないように注意しよう。

 尤も、なるとしたら大樹だろうが。

 

 

「しかし、これなら何とかなるかもしれませんね」

 

 咲夜はとある一点を指差す。

 指の動きに合わせて視線を動かせばエレベーターの入り口があった。

 

「じゃあ、任せて下さい」

 

 瑚太朗から降りてエレベーターへと近付く。

 エレベーターの入り口の溝に指を滑り込ませる。

 

「ふんっ!!」

 

 気合いの声と共に腕を外側へと思いっきり振る。

 直後、重い鉄の扉が開いたではないか。

 

「はへぇ~」

 

 実は超人ではないかと疑いたくなるちはやの剛腕。

 それもこれも咲夜の影響によるものなのは承知しているが、些か“以前よりも力が増してるように見える。”

 

 天井の破壊だって、ただコンクリートを力任せに叩き付けただけで壊せるものじゃない。

 

「まあ、今は些細な事か」

 

 ちはやはちはやだ。

 何も変わりなどしない。

 それよりもやれる事を成さなくては。

 

 エレベーターに乗り込み、天井を外して籠の上に乗る。

 上へとワイヤーロープを2、3度引っ張る。

 

「大丈夫そうですね」

 

「あとはこれを伝って登るだけだ」

 

 しかし、依然と気絶する長居を背負う必要がある。

 その為に紐か何かは必要だ。

 

「では、長居さんは瑚太朗君が運んで下さい。その為の準備はしてありますので」

 

 懐から取り出したるはロープである。

 しかも、丁度腰に巻き付けられる程の長さ。

 計画をしていた時点であらゆる想定はしていたとは思うが…………何処に隠していたのかが非常に気になるところ。

 いや、今は考えないでおこう。

 

 長居を背負って腰にロープを巻き付けてしっかり固定する。

 その際、何だかちはやから羨ましそうな目で見られた気がする。

 主に背中にいる長居へ対して。

 

「では、さっさと登りましょうか」

 

「ああ」

 

 咲夜はと言えばちはやを背負って軽々と登っていく。

 さすがは万能執事、クライミングも御手の物と来たか。

 

「よっ、ほっ」

 

 さすがにロープを登る経験はほとんど無いが、体力は有り余ってるので問題なくサクサク登れる。

 

「本当に人間なのか?」

 

 咲夜は魔物というのがあるが、瑚太朗はただの人間だ。

 特殊な能力によるものとは言えど、ここまで動き回って戦闘までこなし、今は慣れないだろうワイヤーロープでのクライミングまでこなしている。

 色々と言いたい事はあるが、ぎるもそのような疑問を瑚太朗にぶつけたくなる。

 そう言われるのは瑚太朗本人も不本意だが……人間離れしているせいで何も言い返せない。

 

「話していないで、着きましたよ」

 

 先に登る咲夜が到着を教えてくれる。

 瑚太朗も同時に視線を上に…………

 

「瑚太朗、顔を上げないで下さいね。パンツが見えちゃいますので」

 

「はい」

 

 内心そのつもりだったのだが、ちはやに制止させられた。

 咲夜が目を光らせているだろう状況では拝む事も許されまい。

 紳士な精神の持ち主天王寺瑚太朗がそのような行為をしよう等とは思わない。

 

「おまえ、何か泣いてない?」

 

「気のせいだ」

 

 決して先手を取られて自らの欲望を達成できなかったから泣いている訳ではないと心の中で言い訳する紳士な精神の持ち主天王寺瑚太朗。

 

「では、先に行きます」

 

 言うや、咲夜は弾丸のごとく飛び出した。

 横の壁、そちらへ蹴りを繰り出しながら跳ぶ。

 どうやったのかは分からないが、勢いも一瞬ながら付けて硬い壁を容易く蹴破る。

 

 ドガンッ!! 凄まじい轟音と共に出口は強引に開かれた。

 遅れて瑚太朗も咲夜の用意した出口の高さまで登って飛び移る。

 

「いや、軽く跳んでるけど、普通に無理なんじゃないか?」

 

 瑚太朗の身体能力の高さにさすがに有り得ないものを見る目でぎるが見てくる。

 

「何を言い出すのかと思えば…………これ位は出来ないとまずいからな」

 

「そ、そうか?」

 

 まあ、こういうツッコミをする事そのものが今更の連発である。

 既に怪物クラスの魔物を退治している人間へ対して掛ける言葉にしてはインパクトが欠けている。

 

「それより、だ」

 

 見事出口のある箇所まで辿り着けたのか?

 当面の疑問はその一点に他ならない。

 

「どうやら、エントランスまでは来れたみたいですね」

 

 咲夜の言うように確かにエントランスまでは来れた。

 奇妙なのはこの雰囲気だ。

 

 “誰も居ないのである。”

 人の気配をこのフロアから全くと言って良い程に感じない。

 

「一体、何が…………」

 

 瑚太朗はロープをほどく。

 このまま長居を背負った状態では動きづらいと判断してのことだ。

 

 

 

 

 

 

 まさか、その直後に背中から押される事になるとは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

「とっ、とっ!!」

 

 前につんのめりそうになるも、両腕を広げてバランスを取りながら転倒を回避する。

 それよりも起きた出来事の究明の方が大事だ。

 いや、誰がしたかなど当の昔に分かっている。

 

「長居…………」

 

 瑚太朗が解放してやると同時に起きたのだ。

 そんな事が出来るのは長居を置いて他に居ない。

 

 その推理は正しかった。

 だが、長居の目は何処か虚ろだった。

 眼鏡を掛けているから――――等という理由では無さそうだ。

 簡単に言うなら目に光が宿っていない。

 虚空を見つめているかのような感覚だった。

 

「まさか、操られてる?」

 

「その可能性は高いですね」

 

 瑚太朗の冷静な判断は正しいだろうと、横から咲夜が言う。

 両者は共に戦闘体勢に入る。

 

 だが、ここで問題が天王寺瑚太朗に発生するのはすぐに分かる事だった。

 

「瑚太朗君。あなたに彼女を“殺す覚悟はありますか?”」

 

 すぐ隣の咲夜の発した爆弾。

 それを聞いた瑚太朗の視界が真っ赤に染まり、咲夜に突っ掛かる事は明らかだ。

 

「お、ま――――」

 

「ええ、分かっていますよ。あなたの言いたい事は」

 

 瑚太朗が怒声を放つよりも真っ先に咲夜が先回りするように告げる。

 

「けれど、それだけの、それ位の覚悟が無くては…………彼女に殺されるのはあなたですよ? 天王寺瑚太朗君」

 

「……………」

 

 押し黙るしか瑚太朗には出来なかった。

 咲夜の言う事は尤もだ。

 精神操作を受けただろう彼女を救う方法が本当にあるのか?

 これまで様々な経験をしてきた瑚太朗にだって分からない事なのだ。

 

「…………」

 

 無言の長居は爪を伸ばしていた。

 超人の彼女の伐採系の能力だ。

 しかし、彼女の能力は消失したと聞いている。

 

 如何なる形か、彼女は相対する組織側(ガイア)の中で相対する組織側(ガーディアン)の能力を発動させた。

 

 長居は曲がりなりにも訓練を受けてきた。

 あの時、チームとしては落ちこぼれの一員だった彼女に戦う力があるのかは疑問だが…………今、戦うのだとしても天王寺瑚太朗には迷いがある。

 

「何とか、しないとな」

 

 彼女を助ける為に来たのに、最後の最後に彼女に襲われる羽目になるとは……とんだ仕掛けがあったものだ。

 気合いを入れ直す。

 ここからは先程までとは違った技術が必要になる。 緊張感は更にピークを迎える。

 

 

 

 

 

「そうね、この後の同窓会の為にも何とかしないと困るわね」

 

 

 

 

 

 不意に、緊張感を丸ごと消し飛ばすかのような少しの間延びした声がする。

 

「な、え?」

 

 声は後ろの方からした。

 有り得ないと、この場には居ないと瑚太朗は勝手に思っていた。

 だけど、彼女は“来てくれた。”

 

「来てくれたのか」

 

「まあ、同窓会をやりたくてね。そうしたら天王寺がピンチだって言うから来たけど、元気そうね?」

 

 連絡などした覚えはないが、犯人は隣の万能執事さんなのはすぐ判明した。

 

「さて、と…………その為にもまずはあなたを助けないとね、長居」

 

 風祭学園の教師、ガーディアンの戦士、天王寺瑚太朗と長居の元チームメイト――――西九条灯花はそう宣言した。

 

 




如何でしたでしょうか?

もはやちはやの怪力は原作の域をも越えてるような、瑚太朗も何だかんだで人外に踏み込みつつある。
まるで平凡な高校生と呼ばれるツンツン頭君のような……ゲフンゲフン

本編は遂に西九条さんも合流。
はたしてどうなるのか…………次回ものんびりと待っていてください。
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