言い訳は活動報告に書いてあります。
では続きをどうぞ。
「うっ、おおおおおおあああああーーーーっ!!」
咆哮を轟かせ、天王寺瑚太朗は疾駆する。
その両腕にはオーロラブレード。
魔物の群れの中で適当に振り回すだけで、いとも容易く敵を屠れる。
「瑚太朗!!」
「遅いぞ」
「終わりましたか」
瑚太朗の登場にちはやは安堵し、ルチアは遅刻を咎め、咲夜は「待っていた」と言わんばかりの反応だ。
「悪い。さすがに手こずった」
「言い訳は必要ありません。働いて下さい」
「へいへい」
瑚太朗は文句を言いながらも上司・咲夜の言い付けを守る。
来る魔物を次々と屠る。
その度に魔物は塵となる。
「せっ!!」
魔物使いを気絶させ、迫り来る魔物は数を段々と減らしていく。
キリがない…………とは言わない。
ここまで皆が数を減らしてくれていたのだ。
途中参加の瑚太朗にも優しい状況だ。
連戦なので疲れているとは言えない。
西九条には朱音と長居の護衛を頼んでいる状態だ。
ナイフを持ち、適度にこちらの魔物をピンポイントで潰してくれる。
戦闘能力よりかは経験値の差か。
頼もしい限りだ。
互いに成長したなと思うだろう。
瑚太朗は見た目に変化は全く無い。
「けど、まだ終わりじゃないかもな」
瑚太朗には懸念事項がある。
ここまで現れなかったのが気になる。
「何だ。サプライズを御希望か? 天王寺瑚太朗」
「っ!!」
出口の付近に懸念事項が立っていた。
マーテル潜入に際し、瑚太朗の邪魔をしたフードの人物。
声音からして恐らく男性。
「誰だ?」
ルチアが瑚太朗に問い掛けてくる。
「ここへ潜入する直前に戦った奴だ。だけど、会った事はない…………と思う」
正直なところは瑚太朗にも判断が付かない。
100%と断言できる程ではないからだ。
「こっちも天王寺瑚太朗と会うのは初めてだからな。認識は間違ってないぞ」
相手方からの御墨付きを貰った。
しかし、言葉は「ただな」と接続詞で続く。
「素顔を見たら驚くかもしれないのは確か、だな」
「そうか。なら、拝ませて貰おうか」
勇ましく、瑚太朗が踏み込もうとした。
「待って下さい」
「? 咲夜?」
制止を掛けたのは誰あろう咲夜であった。
その事に疑問を抱きつつ、瑚太朗は彼の横顔を伺う。
彼にしては珍しく、焦りの感情が見えている。
「そうか。“居たっけかな”」
「ええ。居ましたとも」
不可思議な会話。
しかし、フードの男と咲夜の間では“それだけで会話が成立する。”
「これはまた厄介な」
「どうします? 手を退きますか?」
「そう、だな……」
フードの男の頭部が動く。
表情までは分からないが、視線を瑚太朗や咲夜に向けたかと思えば、ルチアにちはや、西九条、朱音、長居――――順々に面々を見ていく。
今ので朱音は目を覚ましていた。
しかし、まだ寝惚け状態だ。
「こっちの狙いは天王寺瑚太朗だけだし。素直に彼を置いていくなら構わないが?」
「そうしたいのは山々なんですがね…………」
「絶対にダメです!!」
「それは、認められないな」
「…………と言う訳でして」
咲夜の主とその友人の言葉を無下には出来ないし、意向に逆らえない。
いや、きっと最初から“彼だけを置いていくつもりは無かった。”
「彼にはまだお説教の続きをしなければなりませんから」
「げっ。まだするつもりだったのか」
咲夜の再三の呼び出しを忘れていた事のお説教に関して、忘れたものだと思っていた。
この万能執事な最強の魔物様の記憶からは残念ながら溢れてはいなかった。
「ええ。精々こきつかってあげますから」
「ひぇぇぇ」
何とも緊張感の皆無なやり取りか。
「なるほど、な。そうなると、こっちとしても面倒な事になりそうだ」
フードの男としてもこの展開は予期していない。
それよりか、歓迎ムードではないようだ。
―――あれだけ、強かったのに?
確かに人数も上だし、何なら質も高い。
そんじょそこらの奴等には負けるつもりもない。
けれど、何だろうか。
“言い知れぬ違和感があるのも事実だ。”
「そうだな。それなら、天王寺瑚太朗に質問がある」
「俺に?」
「そう。それに堂々と答えられたらOKを出そう」
「内容によりけりだな」
「何、そんな大層な質問じゃないって」
いきなりそんな事を言われても警戒するなと言うのが無理な話だ。
結論から先に告げると、悪い意味で的を射ていた。
「なあ、何だって全員に“全てを打ち明けない?”」
「っ!?」
そう来たか――――どうやら思っている以上にフードの男は瑚太朗の現状を把握しているらしい。
実に嫌らしいタイミングで質問を投げ付けてくれるものだ。
「その方がもっと楽に、スマートに話を進められるんじゃないか?」
「…………」
無言を貫く。
下手な言い訳をしても無意味だろう。
視線が突き刺さる。
ちはやも、ルチアも、朱音も、西九条も、ぎるも、ぱにも、咲夜も――――
―――咲夜は、見てない?
真っ直ぐ、真正面の相手に集中している。
瑚太朗がどんな答えを出すつもりなのか、待っているだけだ。
「…………俺が、言わない理由、か」
瑚太朗自身も「何故か?」と問われると困る。
小鳥に関しては篝から話したのもある。
彼女がドルイドである以上、結局は話す事になるのだが。
「俺、は…………」
言葉に詰まる。
どう答えても言い訳にしか聞こえないのかもしれない。
正直な気持ちを告げるなら恐れているのだ。
これまでの事態を知っており、知らぬ存ぜぬを貫き通して辛い道を選択させた後悔もある。
「何を悩む必要があるんですか?」
唐突に咲夜が言葉を叩き付けてきた。
「あなたは、“何のためにここまで突っ走ってきたのですか?”」
「何の、為?」
「失敗や後悔なら、これまでもしてきたでしょう? それでも、あなたは前に進む為に顔を上げた」
咲夜の――――先駆者の顔は見えない。
だが、彼の背中が雄弁に語ってくれていた。
「全てをたった1人で背負って、前に進んできたのだと、あなたは断言できるのですか?」
いつから天王寺瑚太朗は1人で戦っているつもりになっていたのだ?――――と、咲夜は告げる。
勿論、厳しい兄貴分の彼は口にしない。
けれども、天王寺瑚太朗の背中を強く押した。
そうだ。何を自分だけで躍起になっていたのだろう。
思えば、瑚太朗は1人で全てを解決してきた訳ではない。
教えるべきではないと断じていたのに篝が小鳥に時間を遡った事を伝えたり。
自分の勝手で巻き込んでミドウとの戦いの場に引き込んだ吉野に渇を入れられたり。
アカリをブレンダに連れていかれたり。
その全てで誰かが手を貸し、背中を押してくれた。
何より、オカ研の存続は天王寺瑚太朗1人では成し得ない事ではないか。
小鳥が居て。
ちはやが居て。
ルチアが居て。
静流が居て。
朱音が居て。
吉野も入れて。
咲夜がやって来て。
しまこや長居も呼びつけて。
ついでに井上が取材に来て。
西九条に頼み込んで風紀委員兼任で顧問させたり。
篝も輪に入ってきて。
「簡単な、事だったな」
そうだ。ここへ戻ってきてから全部が全部、自分だけで成し遂げられた事の方がずっと少ない。
「ちょっとだけ、雰囲気が変わったな」
瑚太朗の雰囲気に変化が起きたのをフードの男は敏感に察知した。
「っで? 答えは?」
「多分さ、怖かったんだ。結局のところ、オカ研は存続の危機に陥ったし、俺の考えの甘さで危険の只中に入れてしまった奴もいる」
これまでとは異なり、様々な天王寺瑚太朗が重なった現在の天王寺瑚太朗であっても失敗はする。
いつの間にか未来を知っているアドバンテージは消えていき、気付けば誰かを危地に巻き込む事も増えていた。
そして、誰かに打ち明ける事で“奔走して失敗するのを恐れた。”
本能的に何人もこっちの事情に巻き込んで要らない危険へ巻き込むのを恐れたのだ。
「でもさ、俺はこうやってこれからも誰かに背中を押し続けて貰うよ」
しかし、瑚太朗は何処かで他人の助力を求めた。
だから、無意識の内に“誰かを巻き込んでいたのだから。”
結果的に助けられていく。
だが、それは“実に人間らしい事ではないか?”
1人では限界があるのだから。
「そして、誰かの背中を押してやる。“これまでと何も変わらない”」
そして、そこから成長し、未来を切り拓く力を見せようとする――――〝良い記憶〟の在り方ではないか。
「だから、話すよ。お前のおかげで目が覚めた」
「そうか。スッキリした顔を見せよってからに」
瑚太朗の選択にフードの男は満足している感じがした。
「せっかくだ。そっちが疑問に思ってる事に答えよう」
人差し指を立て、フードの男は答えた。
「良いのか?」
「どうせ、私の顔を見たいだろ? そうしたら知りたくなる気持ちが強くなるだろうし。何より驚いた顔が見たい」
「何だか悪趣味です」
太っ腹だなと思ったが、どうにもフードの男は趣味が悪い。
「あなたは…………!!」
「遅かれ早かれ、皆に教える事だろ? 咲夜?」
咲夜の過剰なまでの反応に瑚太朗も驚く。
しかし、それ以上は何も言わない――――いや、“言えないのか。”
―――何にしても、おかしい。
フードの男が現れてから咲夜は“動かないのだ。”
瑚太朗はそんな彼を不思議に思う。
行動を起こさせるつもりがないなら咲夜程の実力者なら実行出来る筈だ。
この場の面々の力を借りれば、難しくはあるまい。
なのにしない…………“出来ないのだとしたら?”
「そろそろネタバらしといこうか」
そして、フードを取り、その顔を目の前にし――――
「咲夜……?」
名前を呼んだのは主のちはやだ。
だが、呼んだ相手は瑚太朗の近くにいる咲夜にではない。
先程まで「フードの男」と仮称していた男を「咲夜」と呼んだのだ。
「は? え?」
思考が追い付かない。
咲夜が“2人も居るのだから。”
しかし、見た目に関しても多少ながら違いがある。
髪は白く、頬や眼の付近が目に見えて血管が浮き出ている。
「確かに殆んどそこの咲夜と似ているが…………“中身は似てないだろ?”」
口調は咲夜に似ていない。
だが、瑚太朗は直感的に“似せてないようにも見えた。”
ちはやに手を出そうとしなかった事を忘れやしない。
「名前は
そんな瑚太朗の考えなど知った事はなく、咲夜に似た顔の男は名を「白夜」と呼称する。
黒篝と掛けて名前を作ると言ってくる。
つまり、奴との関係の濃さを表している。
「さあ、伏線の回収をしよう。それぞれに張られた伏線を。時間の許せる限り、な」
白夜はそれはそれは楽しそうにしていた。
如何でしたでしょうか?
せめてここまで書けていれば悶々とした状態に出来たのに。
天王寺瑚太朗は逆行しても失敗を何度かしてきました。
でも彼はこれまで同様に前を向いて走ります。
それを教えたのは咲夜なのは良いとして?。
そして敵対する咲夜に瓜二つの白夜なのは皮肉なところ。
そして、改めて白夜に関して。
咲夜の姿に似た存在。
黒篝に掛けて「白」と咲夜を繋げて「白夜」
黒篝と呼称している理由、その他諸々のこれまで放置していたゲーム本編との矛盾点に入っていこうと思います。
きちんとした内容に出来ると思いますが……上手く説明できるよう頑張ります。
ではまた次回に。
なるべく、続きを早く出せるよう頑張ります。