Rewrite if   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

めっちゃ長いし、読みづらいかもしれません。

今回は独自解釈、オリジナル要素マシマシです。

あと前々回、朱音は気絶した感じだったのに前回は起きていたので、「騒ぎで起きた」と付け足しておきました。

では、本編どうぞ。


先駆者①/咲夜①

「まず話すには段階を踏まないとな」

 

白夜はまだ残る魔物使いへ視線を向ける。

手のひらをヒラヒラとさせ、こう切り出した。

 

「お前らは散れ。あとは私がやっておくから」

 

そんな言い出しにあっけらかんとなる。

魔物使いとて首を縦にはさせられまい。

何せ加島桜の命でここに居るのだから。

 

「安心しろ。加島桜には許可を取ってある。何か言われるなら私の名前――――白夜を出せば良い」

 

加島桜と協力関係にある事は想像に難くなかったら、

しかし、あの彼女から「許可を貰った」の一言が余程大きかったらしい。

魔物使いはこの場から散っていく。

 

「さて、と。次はそっちだな。この話をするには天王寺瑚太朗の秘密を暴露する必要性がある」

 

「瑚太朗の秘密?」

 

「秘密だと?」

 

ちはやとルチアが揃ってこちらを見てくる。

秘密の内容とやらに心当たりのある西九条と、目を覚ましたがまだ疲れの取り切れない朱音は無言でいる。

特に朱音は白夜が登場してから一言も発していない程には疲弊しているのが分かる。

それだけ長居の、津久野の救出に尽力してくれたのだ。

 

しかしながら、これから話すとなるには内容には彼女等も知らない点がある。

そう考えると、とんでもない隠し事をしているなと今更ながらに思う。

 

「そうさ。話すつもりになったなら、伝えないといけないんだが…………この場に居ない面子も居るからな」

 

篝は全て知っており、小鳥も聞かされている。

ミドウ達、あとは静流と吉野になる。

 

「この場の面々だけに伝えるのはフェアじゃない、よな?」

 

せっかく伝える気になったのに、抜け駆けで教えるのはどうかなと白夜の方から申し出てくる。

 

「だから、それを無くす為に“呼んでおいて正解だったかな”」

 

「どういう――――」

 

意味だ? そう続く筈の言葉は止まった。

白夜の発言の意味を即座に理解したから。

 

「コタロー」

 

「瑚太朗君」

 

「天王寺、呼び出しやがって」

 

静流、小鳥、吉野――――3人が真向かいの、白夜の後ろの扉に立っていた。

何故、この場に居るのか分からない。

 

「俺? メールも何も送ってないけど?」

 

3人が口を揃えて「瑚太朗」の名前を出した。

しかしながら、瑚太朗は身に覚えが無い。

 

「私が呼んだんだ」

 

「は? 何でまた。いや、どうやって呼び出した?」

 

「秘密を暴露するなら纏めての方が効率が良いだろ? それと私がお前のアドレスを知ってたから使っただけだ」

 

「無断使用かよ…………と言うか、何で俺のアドレスを知ってやがる?」

 

「そこは追々、ネタバレしてる内に分かるだろ」

 

白夜は飄々としている。

今しがたの「秘密の暴露」の部分は静流と吉野は初耳だろう。

全てを知る小鳥は無言を貫く。

瑚太朗の判断に任せるつもりなのだ。

 

「ほれほれ。さっさと自分の事を話してしまえ。そうしないと話は進められないぞ?」

 

「分かってる、よ」

 

こちらが要求に応えない限りはネタバレはしないつもりだ。

どのみち、彼女等には知る権利がある。

しかしながら、内容が内容だ。

 

「正直、聞いたら色々な意味で後戻り出来なくなる。それでも良いか?」

 

「「「「もちろん」」」」

 

ちはや、ルチア、朱音、静流の4人の少女は即答する。

吉野は「早くしろ」と言ってきた。

咲夜もスタンスとしては瑚太朗に任せるつもりなので無言。

西九条は黙って瑚太朗を見ていた。

 

「一応、かがりんにも繋がってるよ。他の人達は周囲を警戒してるから居ないみたい」

 

小鳥はスマホを向けてきた。

ビデオ通話中となっており、スマホは吉野の物。

結界越しに電波が届くように調整されている。

 

『話すのですね』

 

「全てを、話すよ」

 

電話口に立っている篝が問う。

瑚太朗は覚悟の上だと返す。

 

『分かりました。あなたが望むの通りにやってみなさい』

 

「ああ、そうするよ」

 

篝も瑚太朗との付き合いはいい加減に長い。

彼が決めたのなら折れる事は無いだろう――――それが分かったのだから止めない。

 

いずれ、彼女等には語るつもりだったのだ。

そのタイミングが今なだけ。

 

篝からも背中を押され、天王寺瑚太朗は口を開く。

 

「まず話しておくと、実は昔にガーディアンに居たんだ。それで西九条とは同期で同年代なんだ、俺」

 

「はっ、えええええええええっ!?」

 

瑚太朗の爆弾発言にちはやが大きな驚きを見せる。

吉野は固まり、ぎるは首を傾げ、ぱには「ええっ!?」と短く驚く。

 

しかし、驚かない人物達も居る。

西九条は良いとして、小鳥、朱音、静流にルチアだ。

 

「な、何で驚いてないんですかぁっ!?」

 

「私はコタさんとは幼馴染みだからね~。知ってたんよ」

 

「私も昔に瑚太朗とは会っていたの」

 

「私と静流は以前に聞かされた」

 

「ジィに聞いた」

 

小鳥と朱音は以前から。

静流とルチアは姿を眩ましていた際に江坂を通じて接触し、その時になし崩し的に話す事に。

 

「俺の身体がお前らと変わらないのは昔に『鍵』――――篝と出会って、死にかけた所で体内にアウロラを仕込まれた影響、だ」

 

静流とルチアの時にも篝に殺されかけた話はしていない。

あの時とは状況は異なる訳で――――

 

「駄目だ。嘘で誤魔化すな。アウロラを仕込まれた時に何があったのかを、きちんと話せ」

 

しかし、白夜が「真実を話せ」と突っ掛かってきた。

それはまるで、瑚太朗と篝の出会いを知ってる口振りだ。

 

『構いません。いずれは話すべき事ですから』

 

篝の方から許可が出た。

そうなると、瑚太朗も拒否は出来ない。

 

「…………篝を捕まえるか、処分しようとして返り討ちにあった。その時に小鳥がアウロラを右腕に埋め込んで契約する形で蘇生したんだ」

 

この話は小鳥と篝しか知らない。

改めて知らされた面々は驚かされる。

 

「パワースポットから生命力を与えられて生きてるから半分魔物みたいなものだ」

 

書換能力者(リライター)』は力を使いすぎれば似たような事になるのだから半分魔物なだけマシな気がしてしまう。

その事はひっそりと瑚太朗の心の内に留めておく。

 

「けど、それだけじゃない。肝心な部分が残ってますね」

 

「分かってる」

 

話は「これで終わり」ではない。

まだ肝心の、触れてはならない部分に着目する必要性がある。

 

「それで、俺は今から少し未来の記憶があるんだ。しかも、その未来ってのが1つじゃなくて複数あるんだ」

 

更なる燃料の投下を行う。

今度こそ、予め事情を把握している小鳥以外の面々がフリーズした。

 

「悪いな。無理矢理に話させる事になって」

 

『ですが、それが必要な事なのでしょう?』

 

白夜に対して篝が淡々とした口調で返す。

ビデオカメラ越しの映像ではあるが、何処か悔しそうな表情にも見える。

 

「そっちも知りたくて仕方無いらしい。だから、話には口を挟まなかったみたいだからな」

 

『ホモサピエンスを、オカ研メンバーを、地球救済研究会を舐めない方が良いですよ』

 

即座に篝がそのような返す刀の言葉を叩き付けた。

何を言うのかと思ったが、少女達、それに西九条や吉野の反応を見て分かった。

 

驚きこそあれど、天王寺瑚太朗へ「信頼」の想いを向けている事に。

全員の表情は「笑み」が共通して作られていた。

 

『全員が天王寺瑚太朗へ寄せている「想い」は、天王寺瑚太朗が寄せる皆への「想い」は何物にも壊せませんので』

 

裁定者の役割を担う篝が、人の心をこうまで「信頼」している。

 

「いや、本当。イレギュラーが起こる訳だよ」

 

白夜はと言えば、苦笑しながらそのような呟きをする。

 

「イレギュラーだって?」

 

「そう。イレギュラー」

 

白夜の放った一言を瑚太朗は拾い上げる。

あまりにも引っ掛かる言い方だ。

 

「ここからは突っ込んだ話をしよう。正直、残り時間が微妙なところだから。分からないところは後で天王寺瑚太朗か篝に問い詰めてくれ」

 

白夜の物言いからタイムリミットが存在する事が窺える。

となると、だ。

全てを知る瑚太朗と篝へ向けての設問の可能性が高い。

 

「あと前提として言っておく。今回の事は本当に様々な偶然が重なった結果の『奇跡』や『バグ』が生じた事柄なのは頭に入れておけ」

 

これは瑚太朗と篝へ向けた言葉だ。

本来なら有り得ない事柄が起きた――――と言う事か。

 

「まずは確認だ。率直な疑問だが“何処から何処まで覚えてる?”」

 

「何処からって…………」

 

何とも曖昧な問い質し方だ。

 

「さっきも言ったように西九条達と同期だった事、その後に篝を巡っての争いの中で俺が怪我を負ってしまって肉体の変化が止まるか、もしくは篝を逃がして〝良い記憶〟を求めて奔走してた」

 

「他にも、あるだろ? 例えば――――裏側の世界で加島桜と戦った事とか」

 

「っ!?」

 

そこまで知っているのか。

いや、その考え方は明らかに間違いだ。

 

月の世界での出来事を知るのは普通は無理な話だ。

干渉が出来たのは加島桜及び咲夜のみ。

あの世界はそれだけ不可侵の領域なのだ。

白夜はその領域へ到達できる存在と言える。

 

皆も瑚太朗達の会話には割り込まない。

彼等から走る空気が緊張感を張り巡らせ、結果として全員の二の足を踏ませている。

 

「じゃあ、逆に“記憶が定かではない時もあったんじゃないか?”」

 

「……………あったな」

 

頷くのは癪だが、そうしないとこれまでの傾向から話は進まなそうだ。

本当に以前の事、瑚太朗はぎるとぱにをあろうことか「ギル」と「パル」と覚えていた。

カタカナ表記は良いとして、相方の名前を間違えていた。

 

それに逆行した時からだが、皆とそれぞれ恋仲になっていた世界の出来事が曖昧なのだ。

勿論、嬉し恥ずかしのハプニングや瑚太朗の抱いた感情も思い出せる。

しかし、全体の記憶を覚えているのかと問われると「NO」なのだ。

 

この他にも“特に疑問に思うべきだった部分もある。”

これは逆行し、出会った時にこそ気付くべき事柄だった。

なのに“自然な事と受け取ってしまっていた。”

 

「なるほどなるほど。逆行はしているが、“やっぱり”記憶は全部が全部定かではない訳だ」

 

瑚太朗の身に起きている出来事を白夜は「なるほど」と連呼して納得の様子だ。

いや、それより――――今彼は「やっぱり」と言わなかったか?

瑚太朗が訝しむと同時、白夜の方から立て続けの質問があった。

 

「天王寺瑚太朗。お前は『ここ』へ来て疑問に思った事は多いんじゃないか? 疑問よりかは矛盾、だな」

 

瑚太朗から情報を引き出しているのもあろう。

情報の擦り合わせだろうか?

何にせよ、教えるつもりはあるようなのは何と無くだが分かる。

咲夜と外見が似ているからなのだろうか?

少し考えて、白夜の質問に答える決意をした。

 

「疑問は、尽きないな」

 

「例えば? 咲夜や篝関係以外で」

 

いきなりそう言われると瑚太朗が即座に思い付く事は限られてくる。

 

「長居の記憶が戻った理由、それから加島桜の件だ」

 

パッと出てきたのはこの2点だ。

特にこの中では加島桜の件が一番気になる。

 

「多分だけど、加島桜の一件はそのまま長居の記憶が戻った事と関係してる……違うか?」

 

「ほう。察しが良い」

 

瑚太朗の推測に白夜は満足げに頷いた。

それに長居だけではない。

天王寺瑚太朗の記憶があやふやな理由にも繋がってくるのではないか?

 

「さて、本題に入る前に…………おかしいと思った事はないか?」

 

「おかしいって?」

 

「質問を質問で返さず答えるべきだぞ天王寺瑚太朗――――本当は分かってるんだろう?」

 

瑚太朗は分かっている筈だと決め付けた物言い。

しかし、それは実際のところは…………

 

「確かに。ずっと目を反らしてたな」

 

正解だと、瑚太朗はすぐに言葉を切り返した。

本当なら目を向けなければならない事柄なのに、いつの間にか都合が良いからと考えないでいた。

 

「本来なら、もう地球は『再進化』は行えない筈なんだ。なのに、こうして形を変えて新しく始まってる」

 

破壊と再生の繰り返し。

しかしながら地球の資源が枯渇していた結果、あと一度だけしか『再進化』は行えなかった。

最後の最後、確かに一歩及ばずに滅びは始まった。

 

「ちなみに滅びが始まって以降の事は、覚えているか?」

 

「最後に篝と会えた所までなら…………」

 

「なら、その前後は?」

 

「…………少しだけなら」

 

白夜は何かを思い出させようとしている。

瑚太朗も朧気ながら記憶をほじくり返す。

 

「変わった事が起きてただろ?」

 

「…………あったな」

 

正直に答えたくはない。

だが、白夜には有無を言わせない気迫があった。

それでも答えるべきかと思案し、訳知りの篝と咲夜へ視線を送る。

 

咲夜は真正面に立っており、こちらを一瞥もしない。

小鳥は扉側――真向かいに居り、ビデオ通話越しに篝へアイコンタクトを送る。

彼女は肯定の意思を示して小さく頷いていた。

今は情報を得るべきだと言うのが篝の見解だろう。

 

「その内容は覚えているか?」

 

「確か、声がしたんだ。これ以上『書換能力(リライト)』を使う事のデメリットを説かれていた気がする」

 

しかし、瑚太朗はその制止を振り切った。

そして、篝の下へ辿り着いた。

 

「そうだ。その時の声は――――」

 

咲夜に似ていた――言葉が自然と続いた。

先駆者である彼がどんな顔をしているのかは分からない。

反応も依然として無い。

 

「そうだ。天王寺瑚太朗。本来ならあの世界…………『月の世界』と呼称しようか。あらゆる世界の『咲夜』という存在は最終的に『月の世界』に辿り着くようになってしまっている」

 

加島桜の送り込んできた魔物の集団を撃退すべく、咲夜は文字通りに「全て」を懸けて戦いの場へ赴いてくれた。

彼はあらゆる未来の終着点を『月の世界』にしてしまった。

それ故に『月の世界』に縛られ、彼は『地球』に辿り着けなくなった。

 

「待てよ。まさか、ここは『月の世界』?」

 

「いや、それも違う。間違いなくここは『地球』さ」

 

白夜は瑚太朗の推測を即刻否定した。

そもそも月篝――『月の世界』の篝の略称――がアウロラを使う事で地球へ送り出したのだ。

滅びの起こった世界から『月』へ辿り着くのは相当に困難な筈だ。

 

―――本当に?

 

自分の出した結論を否定するような自問自答。

実際、彼の中に湧いて出てきた疑問だ。

しかし、答えは見付からない。

一旦、この疑問は脇に置いておこう。

 

「じゃあ、何で咲夜がここに?」

 

「それは私がこの場に居る事の理由でもある」

 

見た目だけでなく、やはりこの2人は通じている点がある。

しかし、白夜はまだ踏み込もうとはしてこなかった。

 

「話が少しばかり脱線したな。けど、確認は大事だからな。数学なんかも基礎の公式が大事になる事の方が多いし」

 

「急に日常的な例えが出てきたな」

 

白夜の例えが日常的過ぎて、思わず脱力してしまいそうになる。

この話振りから、話題の中心を変えようとしているのが分かる。

 

「ようやく加島桜への疑問を紐解く訳だが…………天王寺瑚太朗の抱く違和感は?」

 

「正直、最初は『そういうもの』と思い込んでた。だけど、今にして思えば『おかしい』とはっきり分かる」

 

何故、あの時は何も感じなかったのか?

天王寺瑚太朗にとっても疑問が尽きない。

加島桜の件が先程に白夜から問い掛けのあった「記憶の齟齬」で、瑚太朗が「疑問に思うべきだった」事柄である。

 

 

 

 

 

 

「本来の時間軸なら加島桜は廃人になってた筈だ。なのに“ここでは廃人になってないのは変だ”」

 

 

 

 

 

これは恐らく天王寺瑚太朗にしか答えられない問題だった。

朱音も当然のように思ってしまっていた。

 

瑚太朗がアウロラを仕込まれる時間軸では加島桜は廃人となっていた。

しかしながら、瑚太朗が西九条や今宮、長居と同期で、江坂にしごかれていた時に出会った加島桜は廃人とはなっていなかった。

今回、加島桜の状態は後者だ。

 

「廃人になってたのは『月の世界』に干渉してたのが原因だったな」

 

本来なら知る事の無い咲夜の運命を知るからこそ、この場の天王寺瑚太朗は加島桜の廃人の原因を覚えている。

ここまで話していて、中心にある事象に気が付く。

 

「…………全ては、『月の世界』に直結してる?」

 

「少なくとも発端は『月の世界』なのは間違いない」

 

これは白夜にとっても確定的な要素ではない。

彼は言った。

現状は「奇跡」が起きた事なのだと。

 

「アウロラの事を『命』や『奇跡』なんて呼んでたから起きた事なのかもな」

 

白夜はそうぼやく。

 

「また話が反れるが勘弁してくれな」

 

前置きされ、話題の転換を予め宣言される。

 

「『地球』に赴く直前に『月の世界』で何をしていたのかも覚えてるよな?」

 

「『命の理論』の構築だったな」

 

『命の理論』とはざっくり言うと生命が存続する為の可能性の模索だ。

無数にある枝世界――並行世界――はシミュレーションの結果だと言えよう。

 

篝は『命の理論』を構築し、一度だけ再進化が可能な程度に回復した地球へ全てをアウロラにして還した。

そして、その篝は『月の世界』に居た訳で――――――

 

「あっ!!」

 

そう思い至ってしまった。

この篝は様々な枝世界の結末をも知っていた。

それも奇妙な話なのだ。

 

枝世界を観測し、干渉していたのは『月の世界』の篝――――月篝なのだから。

この場が『地球』であるのなら、この篝が全ての事象を把握しているのはとても奇妙な現象である。

 

『恐らく瑚太朗の考える疑念は私にも正解は導けていません』

 

篝も瑚太朗の至った疑問には辿り着いていた。

では、一体何がどうして?

 

『『命の理論』に組み込んだ小理論が関係している…………そう睨んでいます』

 

「小理論…………それって」

 

いつかまた君に会いたい――――『月の世界』で天王寺瑚太朗が軽い気持ちで『命の理論』の隅に残したコメントだ。

その理論を組み込む事で生命の存続できる『命の理論』は成功をした。

 

「そうさ。天王寺瑚太朗と月篝は見事に再会を果たしたんだ」

 

「再会を果たしたって……」

 

「やっぱり、覚えてないか。『書換能力者(リライター)』の末路の後の、しかも“こうなる前の時点での話だからさ”」

 

それは月篝によってアウロラに乗せられて『地球』へ送られた時の話をしているのだろう。

 

「末路としては他の『書換能力者(リライター)』と同じだ。力の使いすぎで樹木になっただけの事だ」

 

と、言う事はだ。

 

「咲夜みたく、俺は樹木になった後に呼び出された?」

 

「そうなるな」

 

咲夜が先駆者である事は承知している。

彼の身に起きた出来事、ガイアで『最強の魔物』と呼ばれるのだから魔物のカテゴリーに居るのは把握している。

つまり、本来の天王寺瑚太朗は咲夜と同様に魔物となった。

その後に“何か”が起きて天王寺瑚太朗は月篝と再会した。

しかし、月篝と再会した記憶は定かではない。

 

何なら、本当に再会したのかも疑わしいと思っている。

魔物化した天王寺瑚太朗には過去の記憶はスッポリと抜け落ちてしまっていた。

 

「俺が咲夜と同じように魔物になったとして、契約したのは誰だよ?」

 

「神戸小鳥、鳳ちはや、此花ルチア、中津静流、千里朱音の5人だ。しかもオカ研を発足した上で呼び出してる」

 

瑚太朗の質問に白夜は即答する。

オカ研メンバーが呼び出した。

しかも、オカルト研究会を立ち上げたと言う。

どうやらオカルト研究会はメンバーとの絆らしい。

その事に目頭が熱くなる。

 

「天王寺瑚太朗の起こした数々の『バグ』と『奇跡』があって――――」

 

「待て。何でそんな事まで知ってる?」

 

言葉を無理矢理に遮り、瑚太朗は白夜へ問い詰める。

バグの部分は自分でも特に忘れもしない。

『月の世界』の天王寺瑚太朗は篝に対する反作用として生まれた。

本来ならば天王寺瑚太朗は月篝を「殺す側」として存在していたが、月篝との触れ合いの末に「守る側」として君臨する事になった。

 

プログラムからしたら確かにバグに違いない。

しかし、これは『人の想い』が『現象』を飛び越え、打ち勝った瞬間でもある。

白夜はこの事まで知っている。

 

そこまで知る咲夜にそっくりな白夜は何者なのか?

 

「長くはなったが、話に必要な情報は思い出せて貰ったからな。そろそろ本題に行こうか」

 

何度かの脱線、これまで起きてきた事象の復習をしただけだ。

分かったのは『月の世界』の部分に大きな伏線が張られている事か。

 

「あとはそうだな。天王寺瑚太朗が月篝との再会を果たした時の事だな。厳密にはその方法だ」

 

瑚太朗にはその時の記憶は既に無い。

 

「契約して呼び出された天王寺瑚太朗は『地球』から『月』へと伸びる橋を作ったんだ」

 

「随分と突拍子もない事が出来たんだな。魔物の俺は」

 

白夜の話が本当なら天王寺瑚太朗は後にそれだけの能力を有する事となる。

咲夜の存在を思えば、案外と可能なのではと思ってしまう。

 

「小理論が働いたのか。天王寺瑚太朗は月篝との再会を頭ではなく、心で覚えていたから向かったんだ」

 

「それで、俺は篝と再会したんだな?」

 

「そう。“再会したまでは良かった”」

 

何とも妙な言い回しをする。

再会した“まで”は良かった、とは?

 

「問題は再会した時に起こった。その時点での天王寺瑚太朗は身長は今よりも伸びていて、顔が見えない位に髪が伸びていた」

 

なのに――――と一拍置かれる。

 

「月篝との再会の際、間違いなく“今現在”の天王寺瑚太朗の姿があったんだ」

 

今現在――即ち、高校生の姿をした天王寺瑚太朗の事を指しているのか?

 

「正直、それは偶然かもしれない。その時点で心の奥底に残っていた天王寺瑚太朗の魂の欠片が呼び起こされたのかもしれない」

 

けれど、そこには間違いなく天王寺瑚太朗は存在していた。

 

「待て。待ってくれ。その話が本当だとして、“何で記憶が抜け落ちてるんだ?”」

 

今までの白夜の話振りでは最終的に魔物化した瑚太朗はそれまでの記憶を持っていない事となる。

より正確には「人間だった頃の記憶」が、だ。

けれども、先駆者として以前までの記憶を有する咲夜の存在がある。

これは過剰なまでに『書換能力(リライト)』をした結果が故なのか?

 

「それに、ここにいる俺はこれまでの記憶を全て保持してる。それだっておかしな話にならないか?」

 

「だから、言っただろう? これは『奇跡』であり…………『バグ』でもあると」

 

ネタバレを本格的に行う直前の言葉を反芻する。

本来なら『地球』は再進化が不可能なのだから有り得ない『奇跡』が『バグ』によってもたらされている――――そう言いたげだ。

 

「魔物化した天王寺瑚太朗が一時的とは言えど『地球』と『月』を結んだ。ここまでは良いな?」

 

コクリと頷く。

それを行ったのだと、白夜からは聞かされている。

 

「そして、一瞬だけ起こった天王寺瑚太朗の身に起きた異変――――これが『奇跡』と『バグ』をもたらした」

 

白夜は瑚太朗を指差し、ここからは「お前にも関係してくる」と暗に告げているようであった。

 

「あの時、樹木から呼び出されたばかりの天王寺瑚太朗は力が不安定だった。だが、その時には天王寺瑚太朗は樹木と繋がっていた。樹木は“『地球』の大地と密接に繋がってるとも言える”」

 

さて、ここで質問だ天王寺瑚太朗――――白夜はそう問い掛けてきた。

 

「お前風に言うなら逆行する直前、その時は“意識があったか?”」

 

「あった。何処か暗いところで篝と話して……………」

 

言葉はそこで止まる。

そうか。そうだ。

“あの時の言葉は何処かおかしかった。”

何で“あのような言い回しを瑚太朗と篝はしていたのか?”

そう、あの時は確か――――

 

「『世界が書き換えられた頃か』と考えた」

 

『私も「書き換えれば良い」と告げました』

 

2人して、至る。

この物語の始まり、プロローグにあった僅かばかりの言い回しの違和感に。

 

「そうさ。その通りだよ天王寺瑚太朗。そして篝」

 

正解へと至れた2人へ白夜は喜びに満ちた声音で告げる。

 

 

 

 

 

「この世界は月篝と瑚太朗が再会した瞬間、樹木を伝って、繋がれた橋を使って、天王寺瑚太朗が『地球』と『月』を『書換能力(リライト)』したんだ。再進化ではなく、再構成と言う形で」

 

 

 

 

 

とんでもない事だ。

いや、本当にそんな事が有り得るのか?

 

「オカ研メンバー達がその場に居たから天王寺瑚太朗は無意識に彼女等の事を考えて世界を再構成したんだろう」

 

再進化ではなくて再構成。

既に篝からアウロラを仕込まれた状態からのリスタートであった。

一から造り直した内容ではないから再構築ではなくて再構成だ。

 

再構成の理由としてはその場には小鳥達も居たことで、無意識にオカ研メンバーの事を考えたが故の結果だ――――そう白夜は推測した。

 

「天王寺瑚太朗は神戸小鳥と千里朱音とは小さい頃から会っていた。恐らく、覚えていないだろうが鳳ちはや、此花ルチア、中津静流、そして吉野晴彦にも会っている。

 チラッとでも『皆と過ごせたら』と考えた結果に『地球』の再構成が行われたのだろう」

 

「そんな事が、可能なのか? ましてや『書換能力(リライト)』をその時の俺が使えてたとは考えにくいんだが?」

 

「何度も言わせるな。『奇跡』や『バグ』が生じていると」

 

このやり取りを何度やらせるか、と白夜は言い放つ。

 

『これは私の推測ですが、小理論に組み込んだ言葉が瑚太朗との再会の際に機能したとも考えられませんか?』

 

篝が話に飛び込んでくる。

小理論とは『いつかまた君と会いたい』だったか。

 

『天王寺瑚太朗の能力の事も把握していました。もしも、白夜とやらの話が本当なら再会と同時に小理論が瑚太朗の中で溢れ、同時に能力が一時的に再発動したとは考えられませんか?

 私と瑚太朗の再会をトリガーとした時に小理論の逆流で『書換能力(リライト)』が発動し、組み込まれていた枝世界、『月の世界』の記憶、樹木と『地球』に刻み込まれていた我々の記憶が組み込まれていたとしたら…………説明が出来ませんか?』

 

「大分力業(ちからわざ)な説明だけど、私としても同じ意見だ」

 

篝の導いた結論は白夜にとっても同じものだ。

本当に『奇跡』と『バグ』から成り立った、偶発的なものでしかない。

枝世界の記憶を保持しているのも『奇跡』の結果で、『地球』での記憶は『バグ』によるもの。

そう考えておくのが良さそうだ。

 

「世界は再進化じゃなくて再構成されて、それは俺と篝の再会をトリガーにした、と?」

 

「事の始まりはそうさ」

 

何とも妙な事だ。

けれど、我が儘な話だが皆とこうして青春を送れるのは心の奥底では嬉しいと思ってしまっている。

 

「さて、次は加島桜と咲夜の件だが…………まずは私が何者なのか、伝えるべきか」

 

話の段階としては「それが妥当か」と呟く。

白夜が何者なのか、確かにいい加減に気になる。

 

ここまで瑚太朗達の事を、何なら軌跡さえ知っている。

普通なら有り得ない…………そう、普通なら。

 

「分かりやすく告げるなら私は『書換能力者(リライター)』さ。何なら一文明は前で、そこの咲夜よりも先輩のな」

 

「は?」

 

思わず間抜けな声が出る。

彼はそれだけこちらを驚かせる内容を放り出したのだから。

だが、まだ終わりではない。

 

「じゃあ、俺の『書換能力(リライト)』が咲夜をこの場に留まらせ、白夜も呼び出した?」

 

「そう。先駆者として、役割を終えた我々の事まで『書換(リライト)』してしまったようだね」

 

それが『書換能力者(リライター)』の因果までをも書き換えた。

天王寺瑚太朗が世界を再構成し、先駆者の咲夜とバトンタッチをする理までも書き換えたようだ。

 

「けど、咲夜はともかくとして、俺は白夜の事なんて知らないぞ?」

 

「そうだな。こればっかりは本当に偶然だよ」

 

瑚太朗の弁は正しかったようで、白夜もそこは頷いていた。

 

「本当はこの身体も“ツギハギだらけの借り物”だからな」

 

「ツギハギ? 借り物?」

 

「そうそう。天王寺瑚太朗が“かつて用意してくれたものだよ”」

 

「俺が、用意した?」

 

借り物だと言うのだから作ったものとなる。

それが咲夜の姿と似ていて…………咲夜?

 

「おい。待ってくれ。まさか、その咲夜の身体って…………」

 

あった。

自分が造り出したタイミングが。

 

 

 

 

 

「『月の世界』で俺が咲夜の代わりに呼び出した咲夜もどきか!?」

 

 

 

 

 

「ご名答だ。天王寺瑚太朗」

 

瑚太朗が正解に辿り着いた事に拍手が送られる。

口をあんぐりとさせる。

 

「ただ、より正確にはこの身体も粉々になった際に『命の理論』に偶然にも組み込まれた代物さ。それを意識が復活した私が偶然にも見付けて繋ぎ合わせて作り直した――――それだけの事さ」

 

とんでもない話をサラッとしてくる。

どうやら白夜は瑚太朗の想像を遥かに越えていた。

 

「まだ話せそうだ。なら、続きと行こうか」

 

実に楽しそうでいる。

彼の規格外の存在感を目の当たりにさせられた。

 

そして、それはこの後の話でも思い知らされる――――。




如何でしたでしょうか?

にじファンから書き始めて約10年近く、ここまで辿り着けました。
そう。プロローグにこそヒントがあったのです!!

そして20話辺りかな? その辺りで「ギル」「パル」と表示したのも、瑚太朗の記憶があやふやなものである事の示唆でもありました。

ただ作中でも言及してあるようにアウロラによる『奇跡』、そしてMoon瑚太朗の使命に反する『バグ』の行動こそがもたらした『偶然』によるものです。

樹木に繋がってるなら地球と繋がってね? とか言う理由で地球を書き換えました(テヘペロ)って感じです。

本当はこの部分は『奇跡』だけで片付けるつもりでした。

ですが作成当時はなかったリライトのHF及びアニメで変えました。
特にアニメ最終回で瑚太朗と篝の再会の演出を見た際に「これは使える」と思い、そのまま本編で利用させて貰いました。
姿が元に戻る『奇跡』があるなら地球を書き換える『奇跡』位ならやってのけるでしょう。

『命の理論』に関してはこれで合ってるかな?
間違ってたら教えて下さい。

元リライターは瑚太朗や咲夜以外にも居ると思い、オリキャラとして使いました。
そして身体はMoonで呼び出した咲夜もどきと言うサプライズ。

果たしてどうなるのか?

今回の話は大分強引な説明も多々あります。
次回も説明回ですが恐らく力業になりますがよろしくお願いします。

ではまた次回に。

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