「さあ!! 部活をしよう!!」
「「お〜っ!!」」
「お〜」
俺の掛け声と共に力強く挙がる腕と声。それに相反してめがっさテンションの低い会長殿。
「会長――いくらなんでも部長なんですからもっとテンション上げましょうよ」
「良いじゃない。そこの2人はやる気満々の様子よ」
「いや、まあそうですけど……」
部室には俺と会長の他に小鳥、それにちはやも居る。小鳥は俺が誘ったってのもあるが、ちはやが最初っからいるのはどういう事なんだ?
あっ、別にちはやが嫌いとかそんな事はないぞ。ちはやの可愛さは今から語るにしても時間が足りない位で――って、
「そんな事を言って騙されませんよ」
「何を騙すのよ?」
朱音が呆れたように言う。
むう、そうだった。朱音は魔女だったな。そうやって知らない間に俺の思考を別の方向へと……
「何だか私が悪いような方向になっているのは気のせいかしら?」
「多分……気のせいじゃないかと――」
「瑚太朗君の悪い癖さね」
「何か言ったか?」
「「「いや、別に」」」
何か言われたような気がするんだが――勘違いだったか? まあ、いいや。
「それで……部活をするのは良いんですが、何をするんですか?」
「ふむ、それは良い質問だよちはや君」
仁王立ちで俺は踏ん反り返る。
めちゃくちゃ偉そうな俺の態度に全員がシラけている。
「この辺でツチノコが発見されたって情報を入手したんだ」
「じゃあツチノコを探すの?」
「イエス!! さっすがミスター小鳥」
「私、女だからミスターじゃなくてミスだよ」
小鳥からの正しいご指摘が入りました。
「でも信用できる情報なんですか?」
「いえ、全然!!」
俺が自信満々に言うと二度目の全員からのシラけた視線を喰らう。
「お前は全く信頼性のない情報を宛にするの?」
「まあ、会長の言う事も最もだけど」
俺は拳を力一杯握り込む。
「夢は――見るもんなんだ!!」
「わあ、瑚太朗君の後ろに何やら真っ赤な炎が見えるよ!!」
「いや、それは気のせいよ」
せっかく小鳥が乗ってくれたというのに――肝心の会長はノリが悪い。
「まあ学校の近辺なら近いんだし、探すのは良いですよ」
ちはやが俺の意見に賛同してくれた。
「私も。学校なら遠くないから構わないよ」
「私はこの部屋から出たくないからパス」
朱音はそう来ると思ってたよ。
この後にまた世話になるだろうし、今回は見逃してあげますか。
「無理には誘いませんよ。なら3人で行くか」
「「お〜っ!!」」
2人が天高く腕を突き上げる。
「やっぱりツチノコの目撃情報はないですね」
「分かってはいたんだけどね〜」
学校の廊下でちはやと小鳥がそう言う。まあ、俺も分かっちゃいたが。
「そういう事らしいな」
「おい、何だってお前は俺の両腕を縛ってやがるんだ?」
俺の隣には吉野が縄で腕を後ろにして縛られた状態で立っている。
「いや、なんとなく」
「なんとなくで俺は拘束されてるのかよ!!」
やはり無理に連れてきたのは問題だったようだな。
「それなら今度吉野の応援歌を作ってやるよ」
「いらんわ!!」
なんだよ、結構な評判だったと隣町の岡崎やアッキーが教えてくれたんだぞ。試しに動画サイトに載せたら最高の出来だとの意見をハンドルネーム『プリンセスアスカ』からいただいたんだ。
あっ、なるほどな。吉野は俺の作った応援歌の出来を知らない。知ってくれれば吉野も気が変わるだろう。
「任せとけって。最高の出来になる事は間違いない」
「作る事を前提に進めてるんじゃねえ!!」
全く、吉野ってばツンデレなんだな。仕方ない、期待に答えて作ってやるか。
「瑚太朗君ってばろくな事を考えてなさそうだよ」
小鳥が溜め息を着きながら何かを呟いた。はて? 何と言ったのだろうか?
「ってか、お前らはツチノコを見つけなくて良いのかよ?」
「見付けようにも目撃情報がなさすぎるって話だ」
「それなら中庭はどうなんだ?」
「中庭?」
吉野は何かしらの情報を入手していたのか?
「そこで蛇みたいのを見たって話だ。真実は知らないがな」
「よしっ!! 現場に向かうぞ」
「うん」
「分かりました」
小鳥とちはやが頷いて中庭に走る。俺も行かなきゃな。
「ちょっと待て!! 行くなら縄を解いてからにしろぉぉぉおおおおおっ!!」
「ここら辺に居るかと思ったけど――いないな」
「とりあえず、おいしい棒のキムチ味を買って来ようか?」
「いや、たいやき味を頼みたいんだが」
「なんですか、その微妙な味のチョイスは……」
ツチノコが見付からないせいでくだらない漫才する始末だ。
「ねえ瑚太朗君。あれって……」
小鳥が指差す方向――花壇に見た事のない蛇が、ツチノコが。
「ちはや、君に決めた!!」
「私はポケ○ンじゃないですよ!!」
とか言いつつもちはやはツチノコに向かって走り出す。
しかしツチノコは右へ左へと木の葉みたくヒラヒラしながらかわすのだ。
「さて、と――」
花壇の後ろへと回り込む。種は分かってるし、いちいち付き合う義理はない。
「なぁ〜に、やってんですか」
「わあっ!?」
よほど驚いたのか、女性は手に持っていた釣竿を落としてこちらを向いた。
「瑚太朗、ツチノコを捕まえ――って、この状況はどうなってるんですか?」
ちはやが“ツチノコの人形”を手に戻って来た。
「まあ、種明かしをすればこの女の人がその釣竿を使って、あたかもツチノコが居るように見せ掛ける為にその人形を使ってたって所か」
「じゃあ、ツチノコは居ないって事?」
「そうなるな」
ちはやと小鳥は揃って大きな溜め息をつく。
女性がオロオロとしていたので俺が帰って貰うように言うと帰って貰った。
確かガイアの人だったな。島子は元気にしてるかな? 最後に会ったのも随分と前だから。
「どうかした? 瑚太朗君?」
「いや、何でもない。それよりも夕方だし帰るか」
「そだね」
「帰りましょうか」
両手に華とはこの事だな。俺達は帰路に着くのだった。
その日の夜――吉野から『てめえ、明日覚悟しとけ!!』と怒りを込めたメールが届いた。
やべ、吉野の事を忘れてたな。まあ気にする必要もないか。寝よう。