後悔はしてない――多分
「吉野の応援歌を作ろう!!」
元気良く部室の扉を開けて、以前から企画していた事を部活メンバーに告げた。
その反応は揃って――
「……………………はい?」×5
唖然とした顔で全員が俺を見る。
「何だよ? 吉野の為に応援歌を作ってやる気にならないのか?」
「別に」×5
うぉいっ!! それはヨッシーノに失礼じゃねえか!!
「部活動の時に応援歌を作る約束してくれただろ!!」
「それって瑚太朗君が自分で勝手に約束しただけじゃない」
小鳥さん。それは言っちゃならねぇお約束よ。
「まあ、吉野君にはうちの瑚太朗君がお世話になってるから応援歌を作る事に反対はしないよ」
小鳥さん。人間ができている。さすが俺の幼なじみだ。
でも俺が吉野の世話になってるってのは聞き捨てならないが。
「具体的にはどうするの?」
朱音を始め、部活メンバーが俺を見てくる。
「協力してくれるのか?」
「他人の為ならな、私利私欲でやるって言うなら手伝わないが」
ルチアが代表して答えてくれた。
おぉ、今俺は片膝を付いて崇めたい位に輝いてる。ルチアが輝いてるぞおおおおお!!
他の皆も協力してくれるなんて――こんなに嬉しい事はない。
「んじゃ、早速――」
俺の指示の下、吉野応援歌(改)の制作が始まった。
吉野の応援歌を作ると宣言した翌日に目的の物は完成した。
『吉野応援歌(改)』とか言ってた癖に結局は前回のものとほぼ瓜二つになってしまった。後悔はしてないけど。
そして放課後に鑑賞会を開いた。
鳩が豆鉄砲喰らった顔をしているところを見ると何だか誇らしくなってくる。
どうやら完成度も申し分なさそうだ。
「これ瑚太朗君が作ったんだよね?」
「何をおっしゃる小鳥さんや。俺の目の下の隈が全てを物語っているじゃあ〜りませんか」
徹夜で完成したは良いが、そっちばかりを気にしたせいで身体の事は完全に度外視していた。
「なんというか……」
「天王寺らしいわね」
ガイア連邦軍のちはやと朱音が苦笑しながら俺の吉野応援歌をそう評する。
「でもコタローらしくて良いと思う」
俺の作品を快く評価してくれる静流。さっすが俺のよ――ゲフン、何やら妙な電波を受け取ったようだ。
「一応聞くが……これを吉野に見せるのか?」
「ザッツライト委員長」
秀才っぽく見せようと英語を使ってみました。後悔はすごくしてます。
「私達は構わないが――」
「なら良いじゃんか。早速吉野を呼んでくるぜ」
勢い良く部室を飛び出して吉野を呼びに行く。
携帯? 学校には持って来てはいけません。俺は持って来てるけど。
「あれ見て吉野君が怒らないと良いけど……」
部室を出る寸前に小鳥のそんな呟きが聞こえた気がした。
10分後、俺は吉野を引き連れて部室へと到着した。
この前置き去りにしたのを怒っていたが、とりあえずスルーした。
本人もさほど気にしてる様子もないしな。
「何だよ天王寺。俺に見せたいものって?」
「ふふふっ、これだ!!」
と言って見せたのは1枚のDVDである。
「これをお前に渡したくてな」
「見せるというか渡すだけかよ」
ふむ、伝え方にかなりの語弊があったようだ。まあ構わないか。
「これには何が入ってるんだ? 言っとくがパソコンのゲームとかだったら俺はやらないぞ」
「そういうのじゃないって。俺の作った『吉野応援歌』が入ってるんだ」
「…………今、何て言った?」
「なんだ聞こえなかったのか。ならもう一回教えてやるよ。お前の応援歌が入ってる」
最初は歌だけにしようかと思ったけど、やっぱり動画も作るべきだと思って動画も作った。
自分で言うのもなんだが結構な完成度だと胸を張れる。
「本当に作ったのかよ」
「まあ、せっかくだし貰ってくれよ」
「ふん、ライバルにSugarを送るなんて余裕だな」
吉野がどこか照れ臭そうに言う。喜んではくれたようだ――が、
「吉野、相手に送るのはSalt(塩)であってSugar(砂糖)じゃないぞ」
「…………」
恥ずかしさで顔が真っ赤に染まる。
それを誤魔化すようにDVDをふんだくり、踵を返す。
「とりあえずこれは貰ってってやるよ」
なんというツンデレ。
そう捨て台詞を残して吉野は去って行った。
その日の夜、吉野から「天王寺ぃぃぃいいいいっ!!」と恨み篭った電話が来た。