「それじゃ、お願いできますか?」
「OK。このスーパー庭師・小鳥さんに任せなさい!!」
朝の教室に入るなり、ちはやと小鳥が何やら約束事をしていた。
それは良いが小鳥。そこってば俺の席なんだが。
「あっ、おはよう瑚太朗君」
「おはようございます瑚太朗」
「おはよう2人共。朝っぱらからガーデニングの話でもしてたのか?」
「良く分かったね瑚太朗君。ひょっとしてエスパーとして覚醒しちゃってる?」
「まあ、そんなところだ」
ってか、一応は超能力者
「さっき小鳥が『庭師』って言ってたからもしやと思っただけだがな」
「そうなんです。実は家の庭が手入れされてないのを聞いた小鳥が――」
「目を爛々に輝かせた訳か……」
いつだかにも見た事のある光景だな。
「んで? いつやるんだ?」
「明日が休みだから、明日にでもしようかな〜って」
「よし、分かった」
これは丁度良い機会かもしれない。
上手くフォローできるかは分からないが、やるだけやってみよう。
「それじゃ、明日の部活動は鳳家のガーデニングだ!!」
言いながら、オカ研メンバー+吉野にメールを送る。
何で吉野を呼ぶのかって?
そりゃあ、面白い展開になりそうだからさ。
「ああ、そう思った時期が俺にもありましたとさ」
はあ~、そうだよ。すっかり忘れていた。
ちはやの家にはスーパー万能執事・咲夜が居るんだった。
一応、この世界ではちはやの家に住んでる事は知らない設定+ガーディアンメンツと小鳥は初対面なので自己紹介も済ませる。
っで、話を戻す。俺はさ、皆で協力すればガーディアンやらガイアとかに関係なく仲良くなれるって思っていたんよ。
けどさ~
「1人でここまでやるかね」
「実際にやっているのだから現実を受け止めなさい」
俺の呆れに律儀に返してくれるのは朱音。
現状を説明していなかったな。
まあ、言わずもがなちはやの家の庭だ。
そしてオカ研メンバーwith咲夜だ。
我等が吉野は前回と同じように帰ってしまった。
っで、これまた前回のように咲夜1人で庭の手入れをしてしまっている訳だ。
踊るように――それこそ尊敬の念を絶やさないTK先生みたいなダンシングを披露してくれる。
しばらくは行方不明だったが、つい最近に彼に似た姿の男性を見掛けた。
しかし、これでは木を植える時にしか皆で協力できそうにないな。
「お前ら、先に飯の用意しといてくれ」
この分だと昼前には終わりそうだ。
委員長が居るし、味付けは静流がしてくれるから大丈夫だろ。
めっさ生き生きしている咲夜に手間は掛けさせるのは気が引ける。
たまに咲夜の方角から「これが私の全力ではない!!」とか「岡崎サイコー!!」とか聞こえたけど……気のせいだよな?
全員も納得してちはやに案内してもらい、キッチンへと向かう。
「さて――と」
俺としては咲夜には聞きたい事がある。
こっちに来た時も“咲夜が居るのが当たり前だと認識していた。”
けど、もう存在は消滅しちまったはずなんだ。
こいつが本当に俺の知る鳳咲夜であるかを、書換能力者リライターであるかを確かめたい。
知らなきゃ――ちはやを傷付けるのは嫌だからな。
「よう、咲夜。ちょっと良いか?」
「なんですか? 与太朗君?」
俺が軽口で咲夜の名前を呼んだ事に疑問を感じず、俺の名前をいつも通りに間違えるのは――咲夜だ。
そこで咲夜は手を止める。
俺の声音に真剣味があった事に気付いたからだろう。
「今ならちはやも他の連中も居ない。腹を割って話せる」
「私にはありませんが」
「俺にはある」
逃がしやしない。
俺には今の咲夜が何者かを知る義務がある。
「お前は――
ピタリと、咲夜は動きを止めてしまう。
どうやら当たりのようだ。
「何故――
咲夜は俺を睨んで来る。
まあ、当然の反応だわな。
「そりゃあ決まってるよ」
パフォーマンスにしてはコストが大きいかもしれないが……どうせ後に使う必要が出て来るんだ。早いか遅いかだけだ。
ほんの、小指に粉を付ける程度なら支障がない――と思う。
すると、咲夜の顔が驚愕に変わる。
「まさか、瑚太朗君……君は、」
「まあ、察しの通りだ。俺も同じだよ」
「そんなポンポンと使うものじゃありません!!」
「大丈夫だよ。ほんのちょっとだけだから。秒針を動かしただけだから」
咲夜がこんなにも真摯に言うのは珍しい。
「という事は君はガーディアンですか?」
空気が重くなる。
「ガーディアン? なんだそりゃ?」
「じゃあ、君は野良の……」
野良とか、なんつう言い草だよ。
俺がガーディアンに入っていない(正確には除籍に近いが)から嘘は言っていない。
「っで? どうなんだよ?」
「…………そうです。私は書換能力者リライターです」
「もう一つの質問だ。お前は“どう書き換わった?”」
しかし、咲夜が何かを答える事は全くなかった。
とりあえず、それで察しは付いた。
恐らく咲夜は今回も今までと同じで魔物化したはずだ。
「すまん。変な事を聞いた」
「いえ――大丈夫です」
咲夜だって答えたくないんだろう。
再び咲夜は作業に戻る。
その背中に、俺は語りかけた。多分、期待を胸に膨らませたんだろうな。
「以前に……別の世界で一緒に戦った覚えはないか?」
「ないですね」
今度は速答。やっぱり期待したのが間違いだったか。
「悪かった。んじゃ、皆で昼飯用意して待ってるから」
「分かりました」
聞くべき事は終わった。
あとは、俺が導き出すだけだ。
昼は(主に)ルチアが作った飯だった。
味付けはそれとなく静流がしてくれて、美味しいものが出来上がっていた。
念のために言っておくが激辛料理は何一つとして作られていない。
っで、午後になってガーデニングをし始めた。
「ちー、その丸太はこっちだ」
「ふぇええ。す、すいません」
「会長さん。委員長。それ持って来て」
「それってどれの事よ……」
「これじゃないか?」
「頼まれていたものをお持ちしました」
ガーディアン。ガイア関係無しに――分からないからというのもあるんだろうが、それでも皆で手を取り合って一生懸命である。
「あとは篝……お前だけだ」
俺の我が儘かな?
何でも手を伸ばそうとする俺は強欲なのかな?
でもさ、この中にお前が入っちゃいけない道理なんてない。
地球救済ハンターだって男の子なんだ。
「ああ、そうか――」
なんとなく、良い記憶とやらが何なのか――何を示すのか分かってきたよ。
今までは漠然としたものだったけど、今回ので確信を持てた。
ちゃんと形となった。
あの時の俺は手遅れだった。あの時の俺も手遅れだった。あの時の俺も同じく手遅れだった。
その時の教訓が活かされてない訳じゃないんだ。
篝。ひょっとしてお前が望んでいたものは――
「今度は寂しい想いはさせねぇよ」
小さく、俺は宣言する。
誰にも果たせないというのならば、俺が絶対にやってやる。
理不尽と決められた運命を書き換えてやる。
誰かが居なくなる運命なら書き換えてやる。
友を傷付けるだけの運命は書き換えてやる。
桜が枯れてしまう運命など書き換えてやる。
誰かが悪役になる運命なら書き換えてやる。
友のいなくなる運命なんて書き換えてやる。
大切な人がいなくなるなら書き換えてやる。
そんな世界が訪れる運命なら――俺が世界ごと運命を書き換えてやる。
覚悟なら決めた。
やってやる。やってやるぞ!!
俺がやるんだ。
何かを無くさなきゃならない運命なら、世界なら……この俺が書き換えてや――
「瑚太朗君。手が止まってるよ」
「すいません」
締まりのない主人公でごめんなさい。