小鳥「小鳥さんの~」
瑚太朗&小鳥「仲良しレイディオ~」(パチパチパチ)
小鳥「しかし、前回は吉野君じゃなかったかい? もう浮気かい?」
瑚太朗「いや~、昨日メールで『来れない』って連絡が来たから」
小鳥「おう!? 吉野君は随分とマメな性格だよね~」
瑚太朗「うん。ここで面白い内容だったらネタにしようとしたのに残念だよ」
小鳥「瑚太朗君ってばえげつない」
瑚太朗「そんな事はないさ。俺は常に清らかで、美しく、そしてイケメ――」
小鳥「はいはい。ワロスワロス」
瑚太朗「小鳥さんが話の腰を折るだけじゃなく、普通に流した――だと!?」
小鳥「幼なじみだからね。言いたい事は分かってるから」
瑚太朗「つまり、小鳥は俺の全てを理解しているんだ。2人はゆくゆく恋人に――」
小鳥「ならないからね」
瑚太朗「ジーザス!!」
小鳥「さて、お腹空いたしご飯を食べようか」
瑚太朗「俺のは軽くスルーですか。まあ良いよ、どっかに食いに行くか」
小鳥「ふふん。実はお弁当を用意したんだよ。小鳥さんのお手製さね。瑚太朗君の分もあるでよ」
瑚太朗「ひゃっほぅ~。小鳥サイコー!! さすがにVenus」
小鳥「んじゃ、そこで食べようか」
瑚太朗「ゴチになります」
吉野「お前ら、本当は付き合ってるだろ」
森の中で①
「――ってな訳だ。どう思う?」
『天王寺君の言う事が本当だとしたら、そこには誰かが住んでいた可能性がなくもないわ。もしくは未だに誰かが暮らしているか』
今は連休前の金曜の夜中。
あれからまた時間が経ちましたさ。経ちましたとも。
夜中に電話している相手? 井上だよ。
俺がこの前に見掛けた虹色の泉だか湖だかの話をしてやってる。
まあ、いずれにしろ井上だったら勝手に森に行くと思うから先に手を打たせてもらう他はない。
『興味が沸いたわ。明日は森に行く事にする。そうと決まったら準備しなくっちゃ。それじゃ天王寺君。また月曜日ね』
ツーツーと無情にも切れた通話。
「どうかしたのか?」
「まあ、ちょっと――」
携帯を持ったまま固まってる俺にぎるが問い掛けてくる。
人の話は聞けっての。
まあ、これで井上が明日行く事を知ったから良しとするか。
「この前の部活動で手紙を見付けた時から毎日のようにノートに色々と書いていましたが……今日は良いんですか?」
ぱには目ざといな。だけどここで話す訳にもいかない。
「ああ、もう終わったから」
そう――俺は篝の手紙を貰って以降、そこに書かれた内容をずっと考えていた。
その内容とは『この世界に仇成す者が居る。オカ研メンバーと一緒に見付けて欲しい』と。
ここから推測するに、オカ研メンバーは白だ。
残るはガーディアン、ガイア内の誰か。もしくは新たな登場人物が出て来るのか。
詳細は不明だが、いずれにしろ一筋縄では行くまい。
それよりも明日の事だ。
「明日なんだがな――」
俺は2人に明日の事を説明する。
翌朝。俺はリュックサックを背負って、森の前で井上を待ち構えていた。
「ふぁ〜、遅かったじゃねえの」
「天王寺君……どうしてここに?」
案の定、井上は口をあんぐりとさせたままこちらを見ている。
「んなの、心配だからに決まってるからだろ」
「とか言って……私の調査を邪魔しようって言うんじゃ……」
「関係ないよ。俺は純粋にお前が心配なだけだ」
「そう。なら邪魔だけはしないでよね」
「分かってるって」
先に歩きはじめた井上の肩を軽く叩いて、俺も横並びに歩く。
「見付からないわね。もうちょっと奥かしら?」
「多分な」
井上の後ろを着いていく。
こうしてるとストーカーみたく見えるけど――気付かないフリしとこう。じゃないと色んな人が草陰から現れて捕まえてきそうだ。
「何か暑いな」
「今日は気温が高いって天気予報で出てたから」
「そういや、昨日は天気予報見る余裕なかったんだよな~」
主に急に入った予定をどうこなすのかしか考えずに準備を始めたからな。
飲み物や緊急時の食料はきちんとあるから平気だろうが。
しかし、それよりも問題は魔物が出た際の対処だ。
俺1人なら別に気にする必要性は皆無なのだが……井上が居るとなると話は変わるぞ。
やっぱし、ここは逃げの一手だな。
「どうしたのよ天王寺君」
「ああ、ちょっとな」
ひょっとしたら、とんでもない事に巻き込まれるかもしれないし、ガーディアンやガイアに目を付けられるかもしれない――が、やっぱし俺は井上は放っておけないんだ。
「とにかく、もっと奥を見ましょうか」
「そうだな」
井上の提案に乗っかって、俺も森の奥を目指す。
歩く事、数時間――そして、俺の見覚えのある場所にたどり着く。
「何だかきな臭いわね」
ジャーナリストの勘ってやつか? 井上は言い当てやがる。
俺だって覚えていなきゃ「怪しい」だなんて思わなかった。
出来れば当たって欲しくないんだが……“そうもいかないんだよな。”
「何よ……あいつらは?」
会いたくなかった。遭遇したくなかった。こんな状況で井上を巻き込むだなんて事はしたくなかった――が、現実となった。
使い魔の黒い狼と黒いフードを被った人が列を作って歩いていた。
少し遠くから木の陰に隠れて見ている。
「どうやら賭けは天王寺君の勝ちみた――」
「シッ!! 今はそんな事はどうでもいい」
距離が遠いからと言って、気付かないだなんて言い切れないからな。
「離れよう。スクープかもしれないが命あっての物種だ。それに――こんなの信じる奴はほんの一握りだけだ」
「そうね」
井上も同意してくれたようだ。離れようとしたところで――
「どこに行くつもりだ?」
背筋がゾッとする。
この声は確か……保志――ミドウか!?
でもガイアとは縁がないはずなのに――いや、詮索は後だ。
こんな場所で能力を発動されたら、堪ったものじゃない。
「ヤバい。走るぞ!!」
手で引っ張ると走る速度は遅い。
だから、井上をお姫様抱っこして森の中を駆ける。
「て、天王寺君!?」
「喋るな!! 舌噛むぞ!!」
何かを言おうとしたが、俺には構ってる余裕はない。
人の気配はない――が、追っ手がいない訳じゃなさそうだ。
黒い狼が左右に2匹ずつ並走している。
くそっ、迎撃するしかねぇ。
「井上。ちょっと我慢してくれ」
「え……っ!?」
井上の回答を待たずして、お姫様抱っこからどのようにしたのかも分からない。気づけば井上をおんぶしていた。
同時に右腕にオーロラブレードを展開する。
背中で井上が息を呑んでいるのが分かった。
恐らく疑問を抱いてるだろうが、残念な事に構ってる暇はない。
「せやっ!!」
黒い狼が2匹並んでるのを良い事にブレードを伸ばす。
1匹の脇腹に刺さるとそのまま貫通して、もう片方にも突き刺さる。
まずは2匹殲滅。砂となって、霧散して消える。
続いて残る黒い狼が襲い掛かってくる。
「直線的過ぎるぞ!!」
足で急ブレーキを掛けると、勢い付いた黒い狼達が目前を通り過ぎる。
「らあっ!!」
右腕に展開したブレードで1匹を胴を一刀両断する。
続けざまに、残る1匹の首を切り落とす。
2匹は同時に粒子となって消え失せる。
「助かったの?」
「いや、まだだ」
井上を背負ったまま、俺は森の中を再び駆け抜ける。
次の敵が迫っているから――と思った矢先、それは“下から現れた。”
地面が盛り上がり、木々を根元から引きちぎるかのように倒す。
出て来たのは、形容し難い容姿の存在――化け物だ。しいて言うなら、巨大なザリガニに近いかもしれない。名前はクリボイログ――だったか。
「何よこれは?」
背中の井上が恐怖で頭が埋め尽くされているのが分かる。歯と歯を何度も噛み合わせて、ガチガチと音まで出している。
俺1人なら化物クリボイログの相手は訳無いけど……井上が居るとなると話は別だ。
背中の井上を降ろす。リュックを背負っていたのでおんぶしづらかったよ。
「ぱに。井上を頼む」
「分かりました」
俺のリュックからぱにが出て来る。
「え? え?」
井上はパニックの連続で思考が追い付いていないようだ。
「この妖精は味方だ。こいつに協力してもらって、森を脱出するんだ」
「天王寺君は?」
「俺なら心配するな。このデカブツをさっさと潰して、すぐに追い掛けるから」
クリボイログを見据える。確かに強力な使い魔だが、今の俺には負ける要素はない。
「分かったわ。あとで会いましょう」
「こっちですわ」
ぱにに先導され、井上は森の中を駆けて行く。
「さて、と……」
俺は倒すべき標的へと鋭い視線を向ける。
クリボイログが右のハサミを振るって来る。
森の中であるが故に、木々が邪魔をしてくる訳なのだが……それさえも全て薙ぎ倒している。
「くそったれ!!」
木の陰に隠れながら、クリボイログの猛攻を避ける。しかし、それもいつまでも続くはずはない。
クリボイログがハサミを振るう度に周囲の木々が薙ぎ倒されている訳で、隠れる場所が無くなっているのだ。
「これだけじゃ……足りないか」
ただアクセルを踏むのは得策じゃない。篝のオーロラを展開するのを止めた。ブレードではあの装甲は砕けない。狙うは脆さがある隙間のみ。しかし、どこにあるんだか――。
「うぉいっ!?」
ハサミで俺を串刺しにしようと突きを放って来る。俺は強化した脚力で上空へジャンプする。
だが、それよりも早くにクリボイログがハサミを広げて、それで俺の胴体をちょん切ろうとしていた。
「ヤバいって!!」
右腕にブレードを展開。大きさよりも長さを優先だ。
それを下へ向けて――地面に突き刺さっても伸びる事を止めない。必然的に俺の身体は宙へ。
ハサミは一瞬遅れて、その役目を真っ当してオーロラブレードを切ったのだ。
「うぉっ!?」
宙では身動きが取れない。足から着地するように落下しているが、クリボイログはそんな状況の俺に狙いを定めてハサミを振るって来る。
「クソッ!!」
幸いにして、ハサミは右の片方のみだ。これならば何とかなる。
当たる直前に左足でハサミを蹴った。空中で踏ん張りが全く利かないが、それでも十分だった。
俺の身体はクリボイログから距離を取る形で離れ、地面に何事もなく着地した。地面に足が着けばこっちにも分がある。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
咆哮を上げながら、俺はクリボイログから見て右側にダッシュする。
その際にオーロラを発現する。あの装甲を打ち砕く位の威力のものが必要だ。俺が思い至ったのは両手持ちの『剣』だ。
クリボイログが右のハサミを振り下ろして来る。紙一重で俺は身体をズラす事で回避する。
そして懐に一気に飛び込む。
クリボイログはかなりの巨体故に一度内側に潜り込めば攻撃される事は少ない。
膝を曲げて、身体のバネを利用して真上に跳躍する。クリボイログに乗っかり、脳天に近いだろう装甲の部位に隙間があるのを発見した。
さっき高く跳び上がった際に遠目から確認できていたが……まさかビンゴだったとはな。
「これで――終いだ!!」
隙間に向けてオーロラの剣を突き立てる。
悲鳴にならない悲鳴と共に、クリボイログは暴れ出す。
「ぐぅっ、わあっ!?」
暴れた拍子に俺は振り落とされてしまう。すぐに迎撃に備えて地面に着地するや、クリボイログへと振り返る――が、
「居ない……」
消えた? 違う。地面に先程までなかった穴がある。逃げたか。
深追いは禁物だな。井上の方が心配だ。
「ぎる。ぱにの気配を辿ってくれよ」
「あいよ」
リュックからぎるが顔を出して来る。
ぎるとぱには互いに繋がっている。それを利用して、俺は井上にぱにを付けたのだ。
「急ぐぞ」
クリボイログはまだ生きている。早く井上を見付けなければ取り返しのつかない事になる。