「っで? 何で俺は西九条先生の車に乗ってるんだ?」
正確に言えば俺と静流の2人が西九条の車に乗っているのだが……まあ、そんな事はどうでも良いか。
後部座席に2人で並んで座る。
「静流ちゃんから聞いてない? これから連れていきたいところがあるって」
「まあ、聞きましたけどーー具体的にどこへ連れていくつもりなんです?」
まさか急にNASAなどと言うまい。
前回の記憶通りなら静流の家だけど、俺はまだ静流がガーディアンの一員なのを聞いてない。
「その前に静流ちゃんから話す事があるんじゃない?」
「そうだな。コタロー」
静流が俺を見る。
う、うむ……何だか照れ臭いな。
「私はガーディアンなんだ」
「そ、そうなのか? そうは見えないんだけど……」
「コタローは人を見た目で判断するのを止めるべきだ」
「それよりも静流ちゃんがガーディアンなのに驚かないのね?」
「ガーディアンのメンバーも街に居るようでしたし、学校にルチアに西九条先生の2人も居ましたから他に居ても不思議はないな〜って思いまして」
これ以上尤もらしい台詞もあるまいて。
「ひょっとして、静流がガーディアンなのと関係があるのか?」
「へえ、意外と勘が鋭いわね」
西九条の言い方は俺の発言を肯定している。
「これから行くのは私の家だ」
静流が横で俺にも覚えがある展開を口にしてくれた。
着いたのは海岸沿いの街だった。
俺と静流は西九条を残して街を歩く。
「着いた」
静流が指差した先には一軒家があった。
「近寄らなくて良いのか?」
「ここで良い」
あれが静流の家なのだろう。
だが、距離は何メートルもある。
2階のベランダの窓が開いた。
洗濯物を干している女の人がいた。
髪の色が静流と同じだし、目元も静流にそっくりだ。
「お母さん……」
ポツリと、隣で静流が呟いた。
俺は何も聞かずに静流の母親を見ている。
「行こう、コタロー」
まだ何か言いたい事が、伝えたい事があるだろ?ーーそう続くはずの俺の言葉はなかった。
「なあ、良いのかよ?」
自分の家に背を向ける静流。
その間際に静流の悲痛な顔が見えてしまった。
知らず知らずの内に拳を強く握りこんだ。
「良いんだ。みんな……私の事を忘れているから」
「どういう意味だよ?」
問い掛けると、静流は近づいてきて指を俺の額に当てた。
「コタロー、私の名前は?」
「何を言ってんだよ、お前の名前は……」
そこまで言い欠けて出てこない。
そうだった。そういう毒を作り出す能力があったんだ。
やがて指が離れると静流の名前を思い出した。
「コタロー、私もルチアと同じ能力者なんだ」
そして、静流は哀しさを滲み出した表情で告げる。
「教える。私が何者なのかを……」
先程よりも一層の悲哀に満ちた目で俺を見てーー告げるのだった。