森で事件が起きた翌日。
書換能力
だけど、気絶はしちまったらしくて気付けばベッドで寝ていた。
「おはようございます瑚太朗さん」
「おはようぱに。ぎるは?」
「寝てますわ」
家主よりマイペースしてるな。
身体に倦怠感を残しつつも、学校に行って確かめておきたい事がある。
携帯で時間をチェック。以前に静流と恋人だった時と同じように1ヶ月過ぎてましたなんて事もなかった。
「悪い。時間がないから学校に行く」
「分かりました」
俺がどうしてベッドで寝ているか疑問はあるが、それよりも確かめたい事がある。
学校に着き、俺が真っ先に確認したのは部室が開いてるかどうかだが、案の定というか鍵が掛かっていた。
考えてみればここからガイアの本拠地に突入できるけど……リスク高いから止めとこ。
「朱音はいないか」
この分だとちはやも居ないはずだ。
「なら次はーー」
小鳥は篝と一緒だから居ないと思う。
ルチアと静流だが……本人達を探すよりも西九条を見付けるのがベストだ。
目的地を職員室に定め、西九条が来ているか確認したがーー結局は居なかった。
これは完全に俺が自ら行かなければいけないフリらしい。
「仕方ない。放課後辺りに行ってみるか」
俺が最初に向かう場所は決めている。
助力を仰ぐ意味でも最適な2人がそこに居るのだから。
時が経つのは早いもので、気付けば放課後だった。
西九条が居ないからルチアと静流は来なかったと判断しつつ、俺は事件の原因であり、小鳥と篝に会うべく森の中に足を踏み入れた。
ぱにとぎるに連絡すべきだったーーと思いつつも、俺は後の祭りだと考えた。
右腕にオーロラブレードを展開して、辺りに気を配りながら歩みは止めない。
一歩、また一歩と奥に進んでいく度に鼓動が高鳴る。
『来ましたね』
脳に、心にーー話し掛ける声があった。
俺が彼女の声を間違えるはずがなかった。
逸る気持ちを落ち着かせて、更に奥に進む。
やがてーー道は開けた。
どのくらい歩いたのか、どれだけ時間が掛かったのか……そんな考えは全て押し潰された。
やっと会えた。ここまで辿り着くのにこれだけの時間を有した。
俺がオカ研以外で救いたいと心から願っている存在ーー
「篝……」
一本の大樹の下にいる少女に向けて、そう呼んだ。
呼ばれた少女は無機質な表情を綻ばせて笑顔で返してくれたのだった。
「こ、瑚太朗君!? どうして此処に!?」
俺と篝の再会には“彼女も居なければいけない。”
そう、古くからの顔馴染みーー俺と幼馴染みの神戸小鳥が立っていた。
「心配ない。私が呼んだ」
篝が笑顔から無表情に戻る。
しかし、どことなく緩んでいる気がするのはーー間違いじゃないだろう。
おうおう、小鳥が驚きの表情で俺と篝を交互に見やる。やっぱ篝がこんな事をするのは珍しいだろうからな〜。
「彼は全て知っている。ガーディアンも、ガイアも、私の事も、あなたの事も……そして、オカ研メンバーの事情も」
いつもより饒舌な篝にこれまた鳩が豆鉄砲喰らった状態でいる小鳥。
とりあえず、ここまで喋るって事は俺の知っている篝で良いみたいだな。
「そ、そうなの?」
恐る恐る訊ねてくる。
ふむ、こんな小鳥も良いものだーーゲフンゲフン。
「ああ。小鳥の……その、両親の事も」
「……」
さすがに言うべきか悩むべきだったが、俺は言ったーー言ってしまったというのが正しいかもしれない。
「今は、その話は後にしましょう」
篝が割って入ってきた。
「ですがその前に小鳥に聞いて欲しい事があります」
「聞いて欲しい事?」
「はい」
篝がこのように言う事も小鳥には初の経験のはずだ。しかも下の名前を呼ぶというフレンドリーっぷりだ。
惚けてしまっているが……小鳥は篝の話にきちんと耳を傾けていた。
俺と篝が未来から来たーーという話を。
それには小鳥も目を丸くしていたが、非日常に骨を埋めていたからか、簡単に納得した。
「だからこの瑚太朗君は全部を知っているんだね」
コラコラ、人を物みたいに指を差すんじゃありません。
「っで? 私は何をすれば良いの?」
「協力してくれるのか?」
俺が言うのもなんだが、かなり頭が行ってるんだぜ?
「うん。私は瑚太朗君を助けたいから」
おお、良い子や。実に良い子や!!
さっすが俺の幼馴染みだ!!
「小鳥には私と共にここに居て欲しい。瑚太朗はーー」
「言わなくても分かる。“良い記憶”をお前に見せる事だろ?」
本来の彼女の目的を俺は忘れない。
「任せろ。お前に見せるべきものは決めてある」
せっかくの再会だからもう少し雑談したい気持ちはあるが……そんな衝動を抑え込み、俺は告げた。
「お願いします」
「頑張ってね瑚太朗君」
「ああ!!」
名残惜しいが、ここは小鳥に任せる。
さあ、“良い記憶”を手に入れに行こうか。