「はあ……何でこんな事になってんだ?」
やあ、皆。いかがお過ごしかな?
俺は絶賛校舎裏の草むしり中だ。
念のため言っておくと、ボランティア精神溢れる爽やかな少年じゃない。
むしろこういった事はサボるタイプなのだが――
「何をブツブツ言っている? さっさと終わらせるぞ天王寺」
横にいる我がクラスの委員長――此花
こうなった経緯は別段複雑なものじゃない。
単純に遅刻の罰で校舎裏の草むしりを命じられ、委員長のルチアが監視を申し出たのだ。
自分の素行の悪さは知っているから仕方ないけど。
ルチアと恋人だった事があったのも覚えてはいるが、どんな内容かは靄が掛かったように思い出せない。
何やら忘れてはならない事を忘れてる気がする。
思い出せないものを無理に思い出す必要もないな。
「でも委員長は監視役なんだろ? 草むしりを手伝わなくても良いのに……」
「そう言うな。手伝わせてくれ」
「それならお言葉に甘えるとしようかな」
ルチアの好意を無下に断る必要も理由もない。
「何よりルチアと一緒に居れるのは嬉しいからな」
やっぱり恋人だった時の事を思い出すとルチアも愛おしく思え――
「な、なななな何を言い出すんだ!! 天王寺瑚太朗ぉぉぉおおおっ!!」
「ぶべばっ!?」
ルチアの渾身の右ストレートが俺のどてっ腹を殴り付けた。
世紀末的な悲鳴が上がる。
うぅ……い、痛い。
「な、何をなさるの……ですか?」
「それはこちらのセリフだ!!」
何を訳の分からない事を言い出すんだ?
「きゅ、きゅきゅきゅ急にわた私の事を、ルルルルチアと!!」
「あ〜」
今まで委員長としか呼んでいなかったから違和感を感じたのだろう。
ってか、無意識に言っちまったんだな俺。
「そ、それに私と一緒に居れると――その、嬉しいとか……言い出すし」
最後の方はゴニョゴニョと小さかったが、内容が分かると本当に愛おしくなってくる。
これから他の奴に会ってもこの感情が出るのかと思うと、プレイボーイだな〜とか思うよ。
「そりゃあね。ルチ――委員長は自覚ないかもだけど、俺からすれば十分に『可愛い』の部類に入るんだから」
「私が!?」
ルチアの顔に赤いペンキが塗られていく。
最近もこんなのを見た気がするんだが。
「まあ、この話は終わりだ。さっさと済ませよう」
「て……天王寺」
俺を呼んだルチアは何だかよそよそしいというか、モジモジしているのが非常に可愛らしい。
「その、お前が呼びたいのなら別にルチアでも構わないぞ」
「え?」
それは意外だった。
恋人にもなっていないルチアから了承が出るなどとは。
「な、なんでもない!! さっさと終わらせるぞ!!」
俺が聞こえていないと勘違いしたのかルチアは草むしりを再開した。
後日、その時言ったように「ルチア」と呼んだら50コンボパンチを喰らった。
理不尽だ……。