俺と朱音はすぐさま鳳家に出向く事になった。
ただ、向かう事を提案したはずの朱音が「ダルくなってきたわ」と言うものだから首根っこを引っ張った。疲れるなら最初から提案しなければ良いものを。
まあ、朱音がちはやを遠ざけなければ俺と朱音の過去をちはやに知られてしまう恐れもあったのだから、その辺りの配慮は嬉しかった。しかしこう言っては何だが聞いたとしてもちはやの脳では処理は追いつかないのではないかと思っていた。
「や、やっと……着いたわね」
目的地を前にして朱音は膝に手を当てて疲弊した姿を隠さずにいた。おいおい、学校からここまでそんなに疲れる程には歩いてないぞ。どれだけ体力が少ないのか分かる。もしもこれがRPGゲームで、満身創痍の状態でボス攻略に挑むようだったらどうすると言うのか。
あれ? なんか10階層とかスキルとかクリーミィかがりちゃんとかの単語が出てきたんだけど……気のせいか?
「朱音、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」
強がって見せるが、朱音の顔は今にも倒れそうな程に青ざめてるぞ。仕方ない。咲夜に頼んでリビング辺りで話す事にしよう。
インターホンを鳴らし、現在住宅中の2人に到着をした旨を伝える……が、誰も出ない。どうなってるんだ? ちはやはともかくとして、咲夜ならロケットエンジンでも付いてるんじゃないかと思える速度でやって来るんじゃないかと思っていたんだがな。
朱音と顔を見合わせ、互いに不思議に思いながらもドアノブを回すと、無用心にも扉は開いたのだ。
俺の直感が「何かある」と告げていた。咲夜は高スペックなのだからこのような凡ミスをするとは思えない。これは咲夜とちはやの身に何か起こったのではないかと悟った。
「朱音はここで待っててくれ!!」
俺は靴を脱ぐことも忘れて鳳家に突入をする。咲夜でも手に負えないとしたら静流クラスの強敵が現れたと考えて良いはずだ。
問題なのはちはや。咲夜のおかげで腕力や頑丈さが上がっていたとしてもそれだけた。防御に徹すればそれだけ時間は稼げるだろうが、仮に咲夜が手古摺る相手だとしたらそんな暇すら与えてはくれまい。鼓動が早鐘のように鳴る。
そして、奥の方から咲夜とちはやの叫び声がする。
くそ、どっちかが傷ついたっていうのかよ!!
俺はオーロラブレードをいつでも展開できるように準備して、2人が居るだろう部屋に飛び込んだ。
「ちはや!! 咲夜!!」
自分でも慌てているのは承知していた。それだけ心配していたというのがあるが……部屋に飛び込んだ俺の目に映ったのはかなり衝撃的なものだった。
まず目に付いたのはうつ伏せに倒れ伏す最強の魔物と名高い咲夜、目線をそこから上に上げると――――
上が下着姿のちはやと、隣にはしまこの姿があった。
瞬時に俺の脳はこの映像をファイリングした。このようなチャンスは一生にあるかないかだ。
「こ、ここここここここ瑚太朗ぅぅぅぅぅっ!!」
ちはやがパニックに陥ったのか、顔を真っ赤にさせて叫ぶ。そして、手近にあったソファを俺に投げ付けてきた。
ゴンッ!! と嫌な音を奏でて、俺は床に倒れ伏したのだった。
ああ、分かった。咲夜が倒れていたのもちはやの下着姿を見たのが原因だろうな。
ちなみに、ちはやが上を脱いでいたのは虫が服の中に入ったからで、咲夜が倒れていたのは俺の予想通りだった。