「お久しぶりです江坂さん」
「うむ。随分と久しぶりだね天王寺君」
時間は人が少ない夜をチョイスした。俺と江坂さんはラーメン屋をやっていた公園にまで来ていた。
「そのリュックサックには何か入っているのかい?」
「はい。その通りです」
江坂さんの指摘通りにリュックを背負ってやって来ている。前回に井上と森の中を探索した際に放置してきたから、こいつは二代目だ。いや~、無駄な出費をしてしまったよ。
「おい、大丈夫なのかよ?」
「ぎるちゃん!! 静かにしていて下さい」
リュックの中にはぎるとぱにが入っている。
ぎるが痺れを切らしたのか、小さな声で俺に訊ねてくるのをぱにが諌めていた。
まあ、2人からしたらガーディアンの人間との接触ではあるから心配な事はこの上なかろう。
江坂さん相手に適当な事を言ったとしても通用しないのは火を見るよりも明らかだ。それにぎるとぱにへ返答しては怪しまれてしまう。
「ふむ、どことなく堅くなっているね。緊張でもしているのかい?」
さすがは年の功とでも言おうか、江坂さんは全てを見越している。
俺はと言えば図星を刺された事で多少ながらも言葉に詰まってしまった。ど、どうしよう……
「はっはっはっ。そんなに堅くならないでくれ。それでも緊張するというならば私の最高峰のGAGを披露しよう」
「い、いえ大丈夫です」
「むっ、そうかね」
俺が断りを入れると江坂さんは肩を落とす様子を見せた。
そんなにGAGを披露したかったんですか……。
「それよりも天王寺君。君は私に見せたい生物が居ると言っていたが……それはそのリュックの中に居るのかね?」
「はい。その通りです」
「見せてもらっても構わないかね?」
江坂さんの目は本気の様相だった。
ここで俺が「はい」と了解してしまえばぎるとぱににどんな危害が及ぶかは想像するに容易い。
「構わないです――――が、条件があります」
「条件?」
鸚鵡返しに聞いてくる江坂さんに俺はコクリと頷いた。
「俺も立ち合わせてもらう事と……絶対に危害を加えようとしないで下さい」
「ほう……」
江坂さんの目付きがより一層に鋭さを増していた。
俺の真意を確かめたいのだろう。リュックの中からぎるとぱにが緊張しているのが伝わってきた。直接に江坂さんと向き合っている俺なんかは口の中が乾いて水分を欲している。
逸る心臓の鐘を抑え付けて、俺は口火を切った。
「それを呑んでいただけるなら……構わないです」
「なるほどね」
俺の言葉がどこまで本気なのかなんて江坂さんには伝わるまい。けど、ぎるとぱにを助けた時からガーディアンと接触する際には敵対したって構わないと思っていた。
「分かった。その条件を呑もう」
江坂さんの目には嘘は無い。彼はこういう時には嘘を吐けない性格であるのを俺は知っている。
緊張の糸が切れ、俺は江坂さんと向き合う。
「じゃあ、会わせましょう」
俺のその言葉は合図でもあった。リュックの中からぎるとぱにが出てきて、それぞれが俺の両肩に止まる。
俺は鳥が休まる為の電信柱か何かかよ。
「初めまして。ぱにです」
「ぎるだ」
「ほう……これは」
2体の妖精を目にした江坂さんの反応は「意外」の二文字が塗られていたことだろう。
「これは一体どういう事なんだい?」
江坂さんに事の次第を説明する必要があろう。
俺は上手く説明できるかどうかを心配になりながらも、口を開き始めた。