瑚太朗とミドウの戦闘を引き続きどうぞ。
戦いの第二幕が上がった瞬間、瑚太朗は動いた。
ミドウがフォゴのご加護を受けている以上、通常攻撃は通用しない。
叩くなら密集している最中……ミドウを一気に。
「け、ど……っ!?」
瑚太朗は歯噛みした。
結局、ミドウに近付いても強大な一撃を見舞うだけの準備が整わない。
(倒すためにはまたオーロラの獣を使わないと……)
あれも結構集中力を使う。
「オラオラッ!! さっきまでの勢いは消えたか!!」
ミドウの勢いは止まらない。
瑚太朗を燃やそうと火柱が真横から発生する。
「何処でも御構い無しかよ!!」
オーロラブレードを展開し、火柱を受け止めた後に上へと力を反らした。
「あぢぃっ!!」
炎が振り撒く熱が瑚太朗を襲う。
それは簡単に耐えられるものでもなく、思わず口に出してしまう。
「ほれ!! 次行くぞ!!」
掛け声を出してまで言ってくるのは舐めているのか……いずれにしてもミドウ側が優勢なのは否定できない。
「そうこうしてる間に辺りは火の海になりかけてるぜ!!」
ミドウに言われてはっとなる。
先程に避けた炎が木を燃やし、隣にある木に燃え移っていた。
ここには瑚太朗だけではなく、小鳥に一般人の吉野まで居るのだ。
(いや、大丈夫だ。落ち着け)
隣に篝が待機している事を思い出す。
彼女にアイコンタクトを送り、コクりと頷いてくれた。
小鳥と吉野を守る手筈を整えてくれた。
それに向こう側でも予想をしていたらしいテンマとテンジンも行動を起こしていた。
火の海になれば自分達も死ぬ。
そうならない為の結界を周囲に施しているようだ。
これで最悪の事態は免れると瑚太朗は一先ずの安心を抱く。
だけど、楽観視はまだ早い。
炎から身を守れても発せられる熱や煙は別だ。
(退路は確保してある。逃げる事はできる)
吉野をここまで連れてきておいて虫の良い話だが、状況が状況だ。
人命を第一に考えるのは当たり前だ。
「お前ら、逃げろ!!」
腹の底から声を絞り出す。
こうしてる間にもミドウの怒濤の攻めは収まらない。
飛んでくる火の玉はオーロラブレードを振るって切り裂く。
切り裂かれると同時に消えていく火の玉。
(けど、切りがねえ!!)
オーロラ――正式名称はアウロラは瑚太朗の血液を用いている。
ここまでに何度用いたのか思い出せない。
今は立っていられても、その内に貧血に陥りそうだ。
(早く、逃がさないと……)
ここに来て瑚太朗は己の犯した過ちを嘆く。
どうして他人を巻き込んでまでやって来たのか?
吉野の覚悟を示すなら別の方法を取れば良かった。
後悔が押し寄せ、如何にして彼らを逃がすのかを策を練る。
「ふっ、ざけんな!!」
しかし、ここで怒号が響いた。
発したのは他でもない……吉野自身だ。
「お前は俺を“こっちの世界”に来るかどうか判断させる為に此処へ連れてきたんだろ?
だったら最後まで見せろよ!!
それによ、もし俺を巻き込んだと思うならお門違いだ。俺は“自分の意志で来てる。”
誘われたから来た。その事に後悔はない!! もし、お前が罪悪感を抱くならさっさと守って見せろよ!!」
吉野の怒号が木霊する。
(はっ、俺は馬鹿か……)
そうだ。吉野晴彦は“こういう男なのだ。”
友を大切に思う……本当に最高の男だ。
そんな彼が“瑚太朗の勇姿を見届けると言ったのだ。”
逃げないと。
「私も連れてきてるんだから、策は当然あるよね?」
小鳥が意地悪な質問をしてくる。
そんなの、本人が一番に知っていよう。
どちらにせよ、小鳥も吉野も意思表明は決まったようだ。
「そこまで言われたら……応えない訳にはいかないよな」
瑚太朗は笑って言う。
だとしたら、“遠慮は無しだ。”
「小鳥、それに篝も!! あとは頼むぞ!!」
吉野が覚悟を示すなら、瑚太朗は“ミドウに有効な攻撃手段を用いてやる。”
「はあっ!! ごちゃごちゃうるせえから燃やしてやるよ!!」
ミドウ側としては瑚太朗と吉野のやり取りが気に入らないのだ。
友情だの、正義だの、そんな綺麗事をミドウは好まない。
「さっさとくたばれ!!」
ミドウの正面に炎の塊が浮かび上がる。
そこから光線のように解き放たれる炎。
一直線に、瑚太朗と対角線上にいる小鳥と吉野へ向けられていた。
「そんなもの――」
瑚太朗は駆ける。
炎の光線へ突っ込んで――“行かなかった。”
直前で瑚太朗は横へ跳んで“回避したのだ。”
後ろには護衛対象がいるにも限らず。
「はっ!! 我が身可愛さに避けたか」
「いや、違う!! “信じてるだけだ”」
瑚太朗の弁に「何を言っている?」という顔を作るミドウ。
いや、分からないだろうと瑚太朗は無視をした。
吉野達に迫る炎の手――瑚太朗は構わずにミドウに突っ込む。
遂に見捨てたのだとミドウは思った。
それが間違いなのだと気付くのは遅かった。
吉野、小鳥の両名以外にもこの場には頼もしい仲間がいる事をミドウは知らない。
2人の手前で“見えない壁が炎を阻んだ。”
それを行ったのは不可視化している篝だ。
彼女はミラクルリボンを束ねて炎を受け止めたのだ。
「な、何だと!? なにがどうなってやがる!?」
篝が見えていないミドウには驚きの連発だろう。
だが、それは大きな隙でもあるが代償に森一帯に炎が蔓延してしまった。
「さっさと倒すぞ」
瑚太朗は右腕にオーロラブレードを展開する。
「馬鹿の一つ覚えかよ? オレには通用しねえって言っただろうが!!」
さすがに幾多の戦場を渡り歩いてきただけの事はある。
即座に狙いを瑚太朗に絞った。
「上等だ!!」
ミドウに物理的な攻撃は通用しづらい。
否、実質不可能と言っても差し支えない。
(ああ、どのみち今の俺には届かない!!)
そうと分かりながらミドウが放った炎に合わせてオーロラブレードで切り裂く。
「でやぁぁぁっ!!」
雄叫びと共にオーロラをミドウめがけて伸ばしていく。
自棄っぱちの行動とも取れたが、そうではなかった。
伸ばされたオーロラの先端が獣の形を模したのだ。
「またか!!」
先程に炎を食い千切られた事を思い出し、舌打ちを見せる。
火の玉を飛ばすが、獣に噛み千切られて無意味となる。
あっという間にミドウの元へと辿り着いてしまった。
「けどよ、テメェは無防備だよな?」
直後、瑚太朗の足下から火柱が間欠泉よろしく地面から飛び出した。
唇を噛み締めながら条件反射に横へ跳んだ。
回避には成功したが獣の操作に歪みが生じた。
力が抜け、ミドウの手前の辺りで止まってしまう。
何とかオーロラは解除せずに済んだ。
「オラァッ!! 死ねぇぇぇえええええっ!!」
ミドウの叫びに呼応し、横合いの地面から斜めに火柱が噴き出す。
「やられるかよ!!」
瑚太朗は“左腕にオーロラブレードを展開した。”
火柱を真上に飛ぶように向きを調整して受け流す。
(上手く行った)
篝のアウロラは右腕に宿っている。
だけど、それ以外から出せるかもしれないと瑚太朗はオーロラの獣に続いて特訓を重ねてはいた。
その成果を見せる時が来た――という訳だ。
「くそったれが!!」
「怒鳴ってる暇はねえぜ!!」
そう。瑚太朗のオーロラは已然としてミドウの眼前にあるのだ。
獣を一気にミドウへ押し込んでいこうとする……が、二酸化珪素の壁に阻まれる。
「ぶっ壊す!!」
オーロラの獣が大口を開けて、二酸化珪素の壁にかぶり付いた。
ガキィッ!! と壁にヒビが入る。
「いっけぇぇぇえええええーーーーっ!!」
獣が遂に二酸化珪素の壁を噛み砕いた。
そのまま、ミドウへと向かっていく――
「そうは行くかよ!!」
しかし、ミドウの身体が炎となって霧散した。
「これなら……どうだ!!」
ありったけの血を用いてオーロラを更に巨大にした。
人を1人は簡単に呑み込める程だ。
それが大口を開き、ミドウを丸々と喰い千切ろうと――
――したが、結局は身体全体を炎に変えて回避された。
「ダメ、か!!」
瑚太朗は苦虫を味わう。
ある程度の予測はしていたが、フォゴの能力がオートで使われている。
ミドウという細胞組織が炎となり、勝手に散り散りになる。
結局は堂々巡り――いや、じり貧になるのは瑚太朗の側のが早い。
(どうする?)
手が皆無という訳でもない。
出来るかどうかは……瑚太朗のイメージ次第だ。
(やってやる)
ちはやとの世界では出来なかった。
だけど、今は“出来なくては死ぬ。”
瑚太朗だけではない。吉野も、小鳥も……。
「テメェ……何のつもりだ?」
炎が集まり、ミドウの姿となる。
オーロラを消し、怒りに満ちた眼差しで瑚太朗を睨む。
「今のは“本気を出せばオレを殺せただろ?”」
ミドウの言う通りだ。
ありったけの力を込めたのみで、ミドウを殺さないように細心の注意を払っていた。
「俺の目的はお前を殺す事じゃない」
何度も言わせるな――との意味合いを込めて瑚太朗は告げる。
「俺は、お前らをぶん殴って仲間に引き入れるんだ!!」
なんと乱暴な目的だろうか。
しかも前者の部分は完全な私怨が混じっている。
「じゃあ、テメェはオレをどうやって屈服させるつもりだ?」
身体が炎となるミドウに攻撃は通用しづらい事実は分かっている。
「言った筈だぜ……お前をぶん殴るって」
瑚太朗は一歩、足を踏み出す。
用意周到な敵側のおかげで火の手は瑚太朗が想像するより遅いものの、時間は限られていると見て良い。
あまり時間を掛けては周囲が火の海になって沈む。
なら、迷いは振り切れ。
「瑚太朗君!! その〝力〟は駄目だよ!!」
瑚太朗の少しようとしてる事が何かを察した小鳥は悲痛な声を上げる。
彼女には『書き換え(リライト)』については話してある。
それが最終的にどんな結末を生むのかは知らない筈だ。
だが、薄々は気付いているのかもしれない。
「天王寺瑚太朗」が「天王寺瑚太朗」であり続ける為には使ってはならない。
でも、今使わずに後悔をするなら結局は「天王寺瑚太朗」ではなくなる。
「悪い。小鳥」
息を吐き、リラックスをした状態で瑚太朗はリライト――書き換える。
(集中しろ――)
瑚太朗は意識を自身の底へと沈み込ませるようにしていく。
深く、深く、深く――
「何をしようとしてるか知らんが……やらせるか!!」
危機だと直感したのか、ミドウが行動に打って出る。
火の玉を飛ばしてくる。
だけども、夢遊病みたく意識をフワフワとさせている瑚太朗は紙一重で全て回避する。
まるで全体を見透かしているかのようだ。
今の彼の状態は寝起きで睡魔と戦ってるのと同様だ。
意識半分は起きていないが、半分は起きていてミドウを見ている。
それが瑚太朗の無駄な力を省いて柳のように静かにミドウの攻勢を回避するに至る。
(落ち着け。だが集中だ)
リライトの先駆者とも言うべき咲夜からのアドバイスを思い出す。
イメージ。リライトの使用にはそれが重要となる。
そして、今回試みるのは一度瑚太朗が失敗している事柄。
だけど、不可能とは思えない。
「行くぞミドウ」
チャンスはそうそうない。
瑚太朗じしんだってうもうとっくに限界は越えている。
これは単なる男の意地を貫き通すだけだ。
「そろそろ燃やし尽くしてやる。覚悟しろ天王寺瑚太朗!!」
ミドウはありったけの魔力を放出した。
彼の頭上にこの一帯を燃やし尽くしてもおかしくない程の炎の塊が出来上がる。
必死に火の手が広がらないように準備していたテンマとテンジンも涙目だ。
だが、位置的には協力者である2人には当たらないよう配慮はしているようだ。
なんだ仲間想いだな――本人は否定するだろう事柄を心の中で口にした。
「ひゃはははっ!! これで全員火炙りにしてやる!!」
「いや、それは出来ない」
ミドウの宣言に瑚太朗は水を差す。
妙に落ち着き払った瑚太朗の態度が気に入らない。
「お前の炎は消えるからだ」
瑚太朗の言葉に合わせてオーロラが炎へと向かっていく。
そのオーロラは細く、まるで竹ほどの細さだった。
「はっ!! そんな細いもんで消える程に柔な力を込めちゃいねえぞ!!」
確かに外面だけを見ればそうかもしれない。
だが、瑚太朗の放ったオーロラも“普通ではないのだ。”
バァァァンッ!! オーロラが炎の塊へと飛び込んだ直後、風船よりも重い音を奏でながら炎の塊と共に消失した。
「なっ!? え?」
おかしかった。
いくらなんでもお約束の度合いすら越えていた。
まさかの相討ち。
「お前……何をした?」
「なーに。少しオーロラの在り方を“変えただけだ”」
何気なく返した瑚太朗だが、内心ではとても焦っている。
アウロラは確かに瑚太朗の一部だが、前回はそのアウロラを強化するだけのイメージは湧かなかった。
だが、もっと簡単に……例えば「何でも切れるオーロラ」なんかを想像してみた。
これまでの経験も交わり、アウロラの書き換えに成功した。
今のは「アウロラと炎の塊がぶつかれば相殺して爆発を起こす」事を想像した。
しかし、これには欠点がある。
元々はアウロラは篝から譲り受けたものだ。
瑚太朗のものだが、篝のものでもある。
故にアウロラの書き換えは長時間は保てない。
更に付け足すなら、アウロラの書き換えにも集中力に並んで相当の血を必要とする。
正直、今ので瑚太朗の身体は倒れる寸前だ。
それでも目的の為に、仲間の為に踏み留まる。
「さあ、決着の時だ!!」
フラフラになり、瑚太朗の足下は覚束無い。
意識を保てるのが不思議な位だ。
「お前をぶん殴る!!」
瑚太朗は駆ける。
「させるか!!」
対するミドウは火の玉、火柱の乱れ撃ちだ。
瑚太朗はそれらを全て“避けていく。”
一々弾いていては瑚太朗の身が持たない。
「うっらぁぁぁあああああっ!!」
ミドウの元へと辿り着く。
なけなしの力を全て叩いて両手持ちのオーロラの棒を生み出した。
その効力は――
ドガンッ!! ミドウの二酸化珪素の壁を一撃で粉砕する。
「なっ、んだと!?」
さしものミドウでさえ驚きはする。
こんなにもあっさりと自身の防壁を破壊されたのだから。
「けど、それでもテメェではオレを倒せない!!」
フォゴの能力を身に付けているミドウには通用しない話だ。
しかしながら、瑚太朗は笑った。
「そいつは、過去の話だ!!」
オーロラにした棒をミドウの頭めがけて降り下ろした。
彼は直前に身体を炎にして受け流そうとして――
ミドウは頭部をオーロラで殴られた。
意味が分からない――突然の出来事だったのだ。
これまで通用しないと思っていた攻撃が直撃した。
「はっ、悪いな」
瑚太朗が想像したのは「どんなものにも通用するオーロラ」だ。
それに伴って二酸化珪素を打ち砕ける分までオーロラを生み出し、そのような書き換えを行った。
そのオーロラを自身の右手にグローブみたく巻き付け、ギュッと拳を握り込む。
「覚悟しろ!! これからお前の人生を書き換えるんだからな!!」
瑚太朗の拳がミドウの頬を捕らえた。
彼の身体は宙を舞い、地面に倒れ伏した。
勝者は一人。
敗北の運命を言い渡され、それを書き換えた者である。
いかがでしたでしょうか?
結局最後は瑚太朗無双にして丸投げにしました作者です。
相変わらず下手なので吉野君の覚悟の描写も半端な気もする。
結局、他のキャラは空気になる……。
今回、ちはやルートで瑚太朗が行おうとして断念した「アウロラの書き換え」を取り入れてみました。
正直、全てのルートを歩んできた瑚太朗さんなら不可能ではないと信じて行っています。
とは言え、きちんと制約などは考えてあります。
今後はそれらを紐解きながら瑚太朗君には戦ってもらいます。
さて、瑚太朗君とミドウの戦いは書けたし、もういいや(おい!!
物語はいよいよ佳境です。
ミドウの勧誘によりどのような事が起こるのか?
それは作者にも分からない(え?)
皆さんが忘れているだろう幾多もの伏線も回収していきますよ!!
作者の方も2年近く前の事柄なので伏線を貼ってたのを忘れていた位なので。
次回は早ければ来週の日曜日の予定です。
遅くとも来週の火曜日になります。