Rewrite if   作:ゼガちゃん

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ちょっと喉を痛めてしまったので早めの投稿。

それでは続きをどうぞ。



地球救済研究会⑥ 来訪

「終わったな。ミドウ」

 

 

仰向けに倒れるミドウに瑚太朗は歩み寄る。

 

 

「殺せ……お前みたいなガキに負けるなんざ、あっちゃ困る」

 

 

「最初に言わなかったか? 俺はお前を殺さない。仲間になってもらう」

 

 

「テメェ……正気なのかよ?」

 

 

心外だな――瑚太朗は心底呆れたように再び呟いた。

 

 

「俺はお前の力を借りたい。生け簀かない奴が居るからぶっ倒したいんだ」

 

 

「はっ……生意気言うぜ。そんな事を言うアマチャンの癖によ」

 

 

アマチャン――瑚太朗に対して評した言葉としては的確すぎた。

様々な経験をした。

篝を捕まえようとして身体の成長が止まった後の世界、見逃して様々な経験を経た世界――どの世界でも天王寺瑚太朗は他では滅多に味わえない体験を確かにしてきた。

 

 

ここに今立っている天王寺瑚太朗は幾多もの世界に存在する彼が集合した個体とも言えた。

だが、だからといって万能ではない事を分かっている。

現在の天王寺瑚太朗は特殊な力を持つ事を除けば平凡な高校生とさして変わらない。

 

 

だが、経験だけはしっかりと彼の中で確かな芽吹きをしている。

でなければ、クリボイログにキリマンジャロ、ミドウの操るフォゴ相手に戦えてなどいない。

瞬殺される事さえ有り得た。

 

 

ただ、自分は「大丈夫だ」という確信を持って挑んだ。

その果てに天王寺瑚太朗の死があったとして、死に直面していたとしても誰1人殺さずに……違うな、殺せずにいたはずだ。

 

 

「俺はアマチャンだよ。プロ程に鋼の精神で俺を律せやしない」

 

 

プロの超人集団に属していた経験はある。

その時に辛い想いも、悲しい想いも、苦しい想いも――全てその目に焼き付けた。

ミドウは物心ついた時から既にそんな世界に片足を突っ込んでいたんだ。

 

 

「けど、それを分かった上で俺は前に進む」

 

 

ミドウと天王寺瑚太朗は似ている――かつて、ミドウ自身はそう言っていた。

今なら意味が分かる。

確かに悲しい想いを辺りに撒いてきたんだ。

天王寺瑚太朗の歩む道の上にある『希望』という石ころを蹴飛ばしていた。

 

 

食べたい、寝たい、強くありたい、賢くありたい、生きたい、願いを叶えたい――そんな人ならば誰もが持つ『希望』を天王寺瑚太朗は潰してきた。

 

 

かつて神戸小鳥の両親の魔物の命を奪ってしまった。

 

 

かつて鳳ちはやの執事の命を奪ってしまった。

 

 

かつて此花ルチアの心の拠り所を奪ってしまった。

 

 

かつて中津静流の命を奪ってしまった。

 

 

かつて千里朱音の望む世界を奪ってしまった

 

 

かつて篝が「見たい」と願った〝良い記憶〟は奪ってしまった。

 

 

かつて天王寺瑚太朗が望んだ未来は天王寺瑚太朗自身が奪ってしまった。

 

 

他人どころか自分さえも身勝手で消し去ってきた彼が、これまで様々な人を殺してきたミドウと何処が違う?

確かに違うだろう。

天王寺瑚太朗自身が望んで失ったものではないと言えば。

だけども、そこではない。

 

 

もっと根っ子の部分。

天王寺瑚太朗がその結果に行ってきた事柄が似ている。

全て彼女達にとって大切なものを奪ってきたという点だ。

 

 

「俺は甘い。“だからこそ、お前から学びたいんだ”」

 

 

「はっ!? 学びたいだと!?」

 

 

ミドウの声が今度こそ驚愕に満ちる。

瑚太朗が本気で言っているのだと分かったからだ。

 

 

「ああ、お前には俺にはない“生きる執念”がある。つまりは生き残る為の嗅覚があるって事だ」

 

 

ミドウにあって瑚太朗にはないもの――生への執着。

死ぬ事に覚悟はあるが、生きる為の抵抗を彼は絶対に諦めない。

そんな自分とは違う精神的強さを瑚太朗は持つべきだと判断した。

 

 

「それにお前は利害の一致しそうな依頼をすれば断れない筈だ」

 

 

「……何の話だ?」

 

 

顔は雄弁に語る――口とは裏腹にミドウは嫌なものを見る目で瑚太朗に舌打ちした。

知っていたとはまた別の意味になる。

とある世界――言語が何やら「おっぱい」になってしまった世界での中だ。

ミドウは生徒会長になり、テンマとテンジンも生徒の頼まれ事の解決に奔走していた。

それが「生徒や学校の為に動きたい」ミドウ側と「部活がしたいのにできなくて困っている」と感じた部活側。

ミドウ利害が一致していたから彼らも動いたんじゃないかと感じた。

性格がその時と全然違うと言えば違う。

だけど、それもミドウの一部だと思う。

強いて言うなら自分に“利害があるならば彼は動く。”

瑚太朗は構わずに続けた。

 

 

「だから、俺はお前と取引がしたいんだ。お前にも、俺にも利益のある取引を……な」

 

 

「はっ、はははっ!! ただのガキだとばかり思って舐めくさっていたぞ!!」

 

 

ミドウの笑いは止まらない。

瑚太朗の弁はそれだけ笑いに満ちていた。

もしも、本当にミドウ側にも一考すべき取引だと言うのなら、乗らない手が何処にある?

 

 

「分かった。天王寺瑚太朗に手を貸してやる。

 ただし!! テメェがオレの利益になる話ができりゃあな!!」

 

 

「後悔すんなよ!!」

 

 

あの信念の固いミドウを折らした。

ここでかなり手間取るとばかり思っていた。

前回はフォゴに自分を焼かしていた。

それが出来ない程にはミドウとフォゴをぶちのめしたつもりだ。

 

 

休めば体力を回復されてしまう。

その前にミドウから言質を取った。

約束は違えない男だ。

ならば早速に取引をしてしまおう。

瑚太朗が条件を提示しようとしたその時だった――

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

 

 

鈍い音がすると同時に“それ”は瑚太朗達の目の前に殺気を撒き散らしながら降り立った。

 

 

上空から降りてきた事に今更驚きはしない(吉野を除いて)。

だが、“それ”から発せられるオーラが段違い過ぎた。

まるで『世界』そのものが集結したような存在――殺気だというのに神々しいものではないかと錯覚してしまうではないか。

 

 

「ミドウ!! 今結界が壊された!! 早く逃げないと焼け死ぬぞ!!」

 

 

テンマの警告は尤もだ。

だけれど、残念な事に叶わない出来事でもあると瑚太朗は実感していた。

 

 

ミドウも仰向けの状態から無理矢理に身体を反転させて膝立ちになる。

 

 

恐らく結界を壊した犯人は今降り立った“それ”だ。

そして、逃げる事さえままなるまい。

それほどまでの相手が降臨した。

 

 

ミドウ達一派も肌で感じる殺気から察知していよう。

小鳥やこういった状況が初めてな吉野でさえ分かっていた。

ぎる、ぱにも緊張の色を濃くしていた。

 

 

「お前は……何で!?」

 

 

この中で恐怖ではない別の感情に囚われていたのは天王寺瑚太朗だった。

彼は小鳥の傍らに立つ篝に目を向ける。

普段は無表情な彼女でさえもこの時ばかりは「驚愕」の文字が読み取れた。

 

 

何故殺気を振り撒かれるのか、何故この場に現れたのか――様々な疑問は多く残る。

 

 

「ああ、ようやく会えました」

 

 

突然に降り立った“それ”は瑚太朗を見て安堵の色を見せた。

先程までの殺気は緩和され、空気が少しばかり軽くなる。

そんな事に気付けない程に瑚太朗の脳内は疑問が渦巻いていた。

 

 

「あなたには興味が尽きない――我、私に見せておくれ」

 

 

“それ”は小さな腕で必死に手を伸ばす。

袖口や襟元は白くて他は黒いワンピース、両手を繋ぐ赤いリボン。

頭には黒のカチューシャをした銀髪に黒い肌。

瑚太朗より頭1つ、もしかすると2つは低い身長だ。

 

 

「私はあなたを知る為にどうしたら良いのか分からない。だから――」

 

 

一人称はどうやら決まったらしい。

“それ”はゆったりと、言葉の続きをハッキリと告げた。

 

 

 

 

 

「あなたを知る為に、あなたの身体を分解させてもらう――」

 

 

 

 

 

とんでもない理論に飛躍し、堂々と瑚太朗へ「殺す」宣言をした。

それでも瑚太朗は「悪い夢」と信じて驚きの淵に追われていた。

 

 

 

 

 

「篝……なのか?」

 

 

 

 

 

目の前にいるのは、黒い肌な事を除けば紛れもなく小鳥の傍らに立つ篝と同じ姿だったから。

 




はい。ついに“それ”と瑚太朗君の邂逅が叶いました。
長かった……最初に登場したのが40話目の「行間」で、この頃は「小説家になろう」で書いていた時期なので、もう2年以上も前の話なんですよね~。
ああ~、色々とあったよ(現在は絶賛生活がピンチです。仕事が見付からなくて)
最初はハーメルンではメール投稿機能が使えなくて手打ちだったからペースを落としていたけど、メール投稿にしたらスムーズにできるできる。

さて、作者の感慨深い話は良いとして如何でしたでしょうか?
そう。“それ”の正体は篝と瓜二つの姿を持った“別の篝”です。
今まで登場し、瑚太朗と行動を共にしていた篝とは別の存在である事をここに念の為に記載しておきます。
一応本編でも分かるようには表記してあるけど自信がないので。

それとミドウがあっさりと仲間になったなあ~と作者が書いてて驚いています。
ゲーム本編では瑚太朗とミドウの対立は考えの違いから来てましたが、様々な経験を経て世界の哀しみとか喜びとかを知った瑚太朗さんならミドウとも分かり合えるはずという願いも込めてみました。
ただ、ゲーム本編の瑚太朗とミドウの戦いの最中で繰り広げられた舌戦だけはカット。
瑚太朗はミドウの弁を既知であるし、ミドウも瑚太朗の「甘さ」は理解しているが「厳しさ」も同時に見抜いたからゴチャゴチャと話をしません。
べ、別に作者がめんどくさがっていた訳ではないのであしからず。

あとおっぱいルートでのスージー・ミドウやテンマとテンジンの性格は確かに違うけれど、本来の彼らの性格なのではないかとも考えていたので、勝手に解釈しちゃってます。
まあ、でもぶっちゃけた話でミドウって利害が一致すれば手を組めると思うんですよ。

きっと、依頼されれば何でもやってくれるに違いない。

あとテンマとテンジンのどっちが無口か忘れちまったんで、最後の方のテンマのセリフが「実はテンジンだぞ」というのであればコメント下さい。修正しときますんで

長くなってしましましたが言いたい事は言えたかな?
次回の更新は来週の木曜日の予定です。
それではまた。
でもそういえば瑚太朗達って今周りが火の海なんだよな……


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