Rewrite if   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

続きです。



千里朱音④

瑚太朗、朱音の両名は加島桜の付き人に案内されて、彼女の部屋の前に立っていた。

 

「では、これで失礼します」

 

無機質に革靴が床を踏む音を残して立ち去っていく。

一方、瑚太朗と朱音は共に余裕を作るべく深呼吸を繰り返していた。

これから挑むべく相手は加島桜、マーテル……ひいてはガイアの頂点にあたる女性との対面を意味する。

 

「今更だけど聞いておくわ。瑚太朗は加島桜にあった事はある?」

 

「何度か」

 

若い頃、老いた頃……2つの加島桜と出会ったのは世界広しと言えど天王寺瑚太朗位なものだ。

どちらの加島桜も油断のならない……もっと言うなら隙を見せれば喰われると思っていた。

 

「どのみち覚悟を決めないとな」

 

心臓が早鐘のように鳴り響く。黒篝の時とはまた違った緊張感に支配される。

 

「いくぞ」

 

「ええ」

 

冷や汗は止まらない。それでも前に進む為に扉を開いた。

 

「よく来ましたね」

 

部屋はそこまで広くない。占いの館よろしく、真ん中に紫色の丸テーブルと瑚太朗と朱音が座る椅子が横並びに用意されていた。

真正面に居るのは勿論だが加島桜だ。

 

「お久し振りです」

 

「本当に久しぶりに顔を見たわ」

 

朱音が真っ先に一礼する。瑚太朗も続いて頭を下げる。

 

「どうぞお座りになって」

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

加島桜の言葉の1つ1つに力を感じる。

瑚太朗と朱音は内心で取って喰われるんじゃないかとビクビクしている。

 

「それと……あなたにも挨拶をしておかないとね」

 

加島桜の双眼が瑚太朗を捉えた。初対面という体で動こうと思っていたので自己紹介をしようとした――

 

 

 

 

 

「お久し振りですね。天王寺瑚太朗」

 

 

 

 

 

しかし、瑚太朗の自己紹介は加島桜の手で遮られた。

唐突に名前を言われた事への驚きもさることながら、こんな自分を覚えていた事にも驚きだ。

 

「何故、自分の名前を?」

 

「マーテルの――ガイアの聖女として、名前を覚えるのは当然です」

 

それにしたって、もう何年も前に除名は受けた筈だ。

 

「勿論、他にも要因はあります」

 

「それは何かしら?」

 

瑚太朗に少しでも落ち着いて欲しいと願い、不躾かと思いながらも朱音が切り返す。

それを汲んだ瑚太朗も何とか平然を装う為に心を落ち着かせて――

 

 

 

 

 

「そうですね。遠い所から見ていたとでも言いましょうか」

 

 

 

 

 

瑚太朗が感情を表に出さなかったのは朱音のフォローのおかげだった。

朱音の方は「何が何やら」といった様子だが、瑚太朗からすればとんでもない話だ。

“知っているのだ。”この世界には無数に枝分かれする平行世界が存在するのを。

かつて、月に居る篝を見付け出して攻撃を仕掛けてきた時のように、何もかもをお見通しという訳か。

 

(加島桜は俺の事を知っている……それなら)

 

そこまで見抜いているなら――これから瑚太朗が投げるのは爆弾だ。

 

「分かってるなら隠す意味もないな」

 

下手に芝居をして、ボロを出す位なら自分から手札を1枚見せてしまう。

隣で朱音が一瞬だけ驚いた顔を作るが、すぐにしまった。瑚太朗の考えを読んでくれたのだ。

 

「なるほど……潔いのね」

 

「バレてるならバレてるで別に構わない。俺も加島桜がどれだけ出来るのか知りたかったし」

 

負け惜しみではなく、紛れもない本心を口にする。

障害となる存在を列挙していくと、加島桜は確実にリストの上位陣に入ってくる。

瑚太朗は見極めるつもりなのだ。加島桜の腕前の程を。正直、時間は与えすぎたので“いくつの世界を見てきたのか皆目検討が付かない。”

 

「ところで、俺達を呼んだのは世間話をする為ですか?」

 

「それともお茶をくれるのかしら?」

 

瑚太朗が目一杯の虚勢を張り、続く形で朱音も乗っかる。

彼女が瑚太朗の虚勢を見抜けてないとは思わないので、こうやって援護をしてくれているのだろう。とてもありがたい。

 

「そうね。世間話とは違うわ」

 

「という事はマーテルとか――ガイア絡みですかね?」

 

ストレートに素直に訊ねてみる。

瑚太朗の問い掛けに笑みを溢しながら加島桜は告げる。

 

「最近、聖女候補としての自覚が足りないのでは無いですか?」

 

突如、話の矛先が朱音へと向いた。

別段に驚くでもなく、朱音は涼しい顔を見せて言った。

 

「そんな事はないわ。常に聖女たれが私の心情よ?」

 

先程から感じてはいたが目上に対する加島桜への物言いとは思えない。

オカルト研究会として接する千里朱音そのものだ。

 

「その割にはソーシャルゲーム等をやってはいませんか?」

 

「…………それは社会を知る為の一貫よ」

 

朱音は目を逸らしながら言うものの、さっきみたいな覇気はない。

痛いところを突かれてしまい、何も言い返せなくなっているのだ。

 

「いけませんね。危うく本題から逸れる所でした」

 

加島桜は「失礼」と付け加えながら、話を切り出した。

 

「天王寺瑚太朗。『鍵』をこちらに引き渡して下さい」

 

単刀直入。まさしく変化のない直球勝負と来た。

切れ味の鋭い“目付き”という刀を抜いていた。

きっと、断らないと思っているか。いや、断ったとしても加島桜は自信があるのだ。圧倒的な力を持つ自分が負ける訳がないと……

 

「そうですね」

 

考えるふりをして、瑚太朗は決まっていた答えを出した。

 

 

 

 

 

「断る」

 

 

 

 

 

短く、瑚太朗はキッパリと拒絶した。

瑚太朗の返答を予想していたのか、加島桜は「そうですか」と落ち着いた様相だった。

 

「だとしたら……“余計に帰す訳にはいきませんね”」

 

加島桜の放つ雰囲気が一変する。

その後、彼女の背後から魔物の群れが姿を現した。

 

「朱音!!」

 

彼女の手を引いて立ち上がらせ、瑚太朗の後ろへと回り込ませる。

 

「叶わないなら実力行使……ってか?」

 

「ええ、その通りです」

 

「そんな事……させると思うか?」

 

瑚太朗はスイッチを入れる。

今回、敵を全滅させる必要はない。朱音を引き連れて、マーテルから脱するのがミッションクリアの条件だ。

 

「さあ、始めようか」

 

瑚太朗の言葉がゴングを鳴らした。




如何でしたでしょうか?

加島桜ってこんなキャラでしたっけ?

いまいち思い出せない。

気を取り直して次回の更新は来週の土曜日の予定です。
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