Rewrite if   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

続きです。


此花アカリ②

 アカリの成長速度には目を見張るものがあった。

 起きた時にはたどたどしかった日本語も1日で話せるようになり、次の日には読み書きも出来、気づけば瑚太朗達と同じ勉強をしていた。

 これらが一週間もしていない短期間にマスターされたのはさすがに驚きだ。

 瑚太朗もアカリの成長の程は知っていた。

 だが、まさかこれ程とは思っても見なかった。

 

 今日も今日とて、病室にてルチアから勉学の手解きを受けていた。

 

「良いか。ゴミの分別はだな――」

 

 ルチアの影響を受けて第二の地球委員長になりかねない勢いでいる。

 

「あの……ルチア」

 

「どうしたのだアカリ? お腹でも空いたのか?」

 

 彼女らを知る人が見ても、どうしても双子の姉妹にしか見えない。

 それほどまでに瓜二つの姿で仲も睦まじい。

 

 姉はルチアで、妹はアカリといった様相。

 妹が姉に何かを要求するように、モジモジしながら言う。

 

「私、学校に行きたい」

 

 瑚太朗達には当たり前の事を、アカリは中々に許されない。

 今、彼女が学校に通う事を申し出たのも意味合いは含まれる。

 アカリには一世一代の大勝負に出る気持ちで一杯の筈だ。

 

 本当は許可は出ないかもしれない。

 それでも、諦めきれずに言葉に出していた。

 

「アカリ……」

 

 彼女の気持ちはルチアには伝わってきた。

 しかし、これまた簡単に解決に持っていける話かと言えばNOではある。

 勉学に関しては吸収力を見れば何の問題もない。

 ルチアと容姿が瓜二つな事や戸籍も誤魔化せはする。

 学校への手続きだってガーディアンの手に掛かれば行かせる事なんて雑作もない。

 

 一番の問題点――アカリの存在が明るみに表沙汰になる事だ。

 

 もちろん、ガーディアンがそんな事はさせまい。

 しかしながら、テレビの報道などでアカリの姿がブレンダ・マクファーデンに知られでもしたら面倒な事になる。

 あの手この手を用いてアカリを捕まえに来るだろう。

 

 その事をアカリは知る筈がない……いつかは知らなくてはならないが、今は早い。

 

「西九条“先生”」

 

 ガーディアンの仲間としてではなく、一教師の大人としてルチアは彼女の名前を呼ぶ。

 

「何かしら? ルチアちゃん」

 

 だから、西九条の口調も自然と学校のものと同じ雰囲気だ。

 

「アカリを学校に連れていけないだろうか?」

 

 ルチアの懇願は珍しい事だ。

 西九条は間を置き、落ち着いた声音で「どうして?」と問う。

 

「ここに居ればアカリは確かに安全かもしれない。だけど、それだとアカリはこの狭い世界しか知らない」

 

「だから、広い……外の世界を見せてあげたいと?」

 

「はい。その通りです」

 

「ルチア……」

 

 我が事のように西九条に頼み込むルチアの姿を見て、アカリは目を丸くした。

 自分と容姿が似ているだけなのにどうしてこうも一生懸命でいてくれる?

 

「誤魔化すなよルチア」

 

 そこへ割り込む瑚太朗。

 ルチアの本音が雲で覆われているのだと指摘せんばかりだ。

 

「本当は妹と一緒に学校に行きたいだけだろ?」

 

「瑚太朗……」

 

 見透かしたような瑚太朗の指摘にルチアは驚嘆した。

 その通りだ。

 切っ掛けは容姿が似ていた事からだが、それでもアカリと一緒に居ると妹みたいに思えていた。

 そんな彼女と同じ学びの園へ赴きたい。

 そう思うのは――不自然なのか?

 

「私も、アカリと学校へ行きたい。友達だから」

 

「静流……」

 

 いつもの笑顔で静流は言った。

 ルチアの方は胸が熱くなる。

 友は、既にアカリを受け入れる姿勢を見せている。

 

「ってな訳だ西九条さん。アカリをどうか学校に連れて行けないもんかね?」

 

「う~ん」

 

 腕組みして思案する西九条だったが、頬には笑みがあった。

 きっと、既に決断をしているのだ。

 それは表情からルチア達にも喜ばしい結果。

 アカリの事で必死なルチアと静流は気付いていない。

 

「アカリちゃんが一人暮らし出来る――という条件はどうかしら?」

 

 西九条の提案を聞いた3人は満面の笑みとなった。

 そこから3人で学校の事を話始めるテンションへと早変わりだ。

 

「ありがとな」

 

 その間に、瑚太朗は西九条に小声で礼を述べた。

 話し方も“気の知れた仲間に言う”もののそれだった。

 西九条の纏う雰囲気も一変し、ガーディアンのものとなる。

 

「全く……こんな事をさせられるだなんて思わなかったわ」

 

 西九条の方も砕けた口調だった。

 

 アカリの件は、彼女が勉学に勤しむ間に瑚太朗が依頼したもの。

 その際、瑚太朗は身の内を西九条に伝えた。

 自分が訓練生時代に西九条と同僚でガーディアンに属していた事を。

 西九条に頼み事をするなら、真摯に向き合おうと決めていたから起きたのである。

 

「何にしたって、あの笑顔を見れたなら安いものだろ?」

 

「間違いないわね」

 

 クスリと笑い、西九条は談笑しあう花の乙女達を見つめた。

 とても微笑ましく、落ちている問題を棚上げしてるように見えなくもない。

 

 けれど、それで構わない。

 今、彼女達には真実は必要ない。

 必要なのは――未来を繋ぐ為の笑顔なのだから。

 

 




如何でしたでしょうか?

アカリの成長速度は原作もかくやのスピードになっておりますです。

次回の更新は再来週の土曜日を予定しております。
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