さて、新年一発目!!
続きです!!
休み時間になる度、アカリはクラスメイトと積極的に話に行った。
瑚太朗はそんな彼女をフォローすべく、然り気無く付き従っていた。
本来なら犬猿の仲だろうちはやも、ルチアの代わり様に驚いていた。
まあ、中身は全く別人なので仕方無いと言えばそれでか。
「昼休みだ。瑚太朗」
この長い休み時間では誰かと一緒に昼食を取るとばかり思っていたのを、真っ向から蹴飛ばしてきた。
瑚太朗は拒否をするつもりはないので二つ返事で了承した。
向かった先は食堂。
アカリにはどうしても食べたいものがあるのだと言うのだ。
「これを、食べたかったんだ」
アカリが注文したのは――巨大なパフェだ。
甘ったるいものかと思いきや、真逆の口から火が飛び出そうな程の激辛なパフェ。
天王寺瑚太朗と此花ルチアが関わるのに“大きな影響があったものだ。”
これが無ければ瑚太朗とルチアは話す事は無かっただろう。
それは実はこの時間でも変わらない。
重要なファクターは、人知れずに一通りはこなしてきた。
「なるほどな」
瑚太朗はアカリの求めるものがよく分かった。
彼女は此花ルチアと天王寺瑚太朗が過ごした足跡を追っている。
“ルチアの記憶を共有できているアカリが。”
この世界では、天王寺瑚太朗は此花ルチアとは結ばれていない。
しかし、彼女が憎からず瑚太朗を想っているなら少しややこしい話になろう。
そして、大事なものが1つある。
「なあ、本当に“パフェを食べたかっただけなのか?”」
「ああ、そうだ」
口調も何処と無くルチアのものと似通っていた。
確かに外見はルチアそっくりだ。
それでも……どうしたって天王寺瑚太朗には此花アカリにしか映らない。
決して、彼女を此花ルチアには見れない事も意味する。
「なあ、“ルチア”」
辺りを気にしてこちら側からは偽りの名前を、彼女自身にとっては“当たり前の名前を”呼んだ。
「今は、今だけは俺はお前をルチアと呼ぶ」
「瑚太朗、何を――」
「俺にとって、此花ルチアって女の子はこの世界には1人しか居ない」
まるで、アカリの心情を見透かしたような発言だ。
それに言うまでもなく彼女は戸惑いを見せる。
同姓同名の人達だって、探せば居るだろう。
それでも姿もそっくりな同姓同名など、ほぼ居ない。
悪い――等とは絶対に言わない。
これは必然の出来事で、天王寺瑚太朗にも覆せない事実だから。
周りの喧騒から外れたようだ。
この一角のみ、向こうとは隔離されたかのような錯覚を抱く。
「瑚太朗……何で?」
アカリから溢れたのは“問い。”
驚きのあまり、そこから続きは出てこない。
何故、天王寺瑚太朗が此花アカリの心情を察したのかが気になった。
「俺がお前の事を知ってるのが不思議か?」
瑚太朗の質問にアカリは頷く。
その行為を確認した後、瑚太朗はゆっくりと話し始める。
「俺はなアカリ。今とは違う世界から来たんだ」
「え?」
瑚太朗の真剣な顔付きから冗談ではない事が窺えた。
「言っちゃえば『もしも』があった様々な世界。ルチアと付き合っているとか、俺はガーディアンで働いてるとか……そんな世界を旅して、“今ここに”それらの記憶を全て保持した天王寺瑚太朗が居るんだ」
しかし、何でこんな話をし始めたのか?
彼の言葉には不思議と、惹かれるものがある。
「最初は皆を助けられると思って張り切ったんだ」
それは完全な独白。
聞いていようがいまいが、瑚太朗は話す事を止めはしない。
「でもさ、どんなに頑張っても歴史通りに事は進むんだ」
ダムが決壊し、貯まっていた水が放水された。
それを止める術を――瑚太朗は使えなかった。
「だから落ち込んだ。落ち込んださ。俺は……天王寺瑚太朗には世界を、運命を変える力なんてないっさ」
朱音に大言壮語を突き付けたばかりだ。
森での仲間割れの一件は、どう逆立ちしても避けられないのを察した。
気付いたと言って良い。
「でも、“俺は変えられたんだ”」
そう、何とか変える事が出来た。
弱気になったが、吉野に叱咤されて、アサヒハルカの事件や静流の家族の話を聞いて奮い立てた。
結果、井上と共に森へ乗り込み、彼女が行方不明になる事が無くなった。
記憶喪失という事もない。
今は口封じをさせ、江坂さん辺りに噂程度に話を流して秘密裏に見張ってもらっている。
「変えられた? 何を?」
「運命やら世界かな? ともかく、出来なかったと諦めそうになった事が達成できたんだ」
ぎるとぱにが居たのがあり、必死になっていたからのもあって感覚は完全に麻痺していた。
でも、あの時の天王寺瑚太朗は何処か焦っていた。
話を
でも、良い結果を1つ手に出来た。
それは瑚太朗の中で糧となり、自信という葉となって育った。
「だから、俺はお前も“運命を変えられると思ってる”」
「私……が?」
突然言われ、アカリは戸惑う。
何故なら彼女は――
「“ルチアの記憶を共有しているんだろ?”」
「っ!? そこまで知っているのか?」
アカリにはとことん驚きしか無かった。
これならば、他の世界の記憶を持つなどと言っている瑚太朗の言葉も頷ける。
「アカリはルチアの記憶を持ってるから色々と考え込む事も」
別の世界で“此花アカリは言っていた。”
此花ルチアには天王寺瑚太朗はいる。けれども、此花アカリには天王寺瑚太朗はいない――と。
ルチアにとっての心の支えが天王寺瑚太朗で、同じ記憶を持つからこそ持ってしまった苦しみ。
最終的には「此花アカリとしてこの街で生きる」もしくは「此花ルチアとしてこの街を出ていく」という二択を迫られる。
アカリの取った選択は後者。
自分は「此花アカリではなく此花ルチアである」事が彼女をそうさせた。
「でも、それでも俺にはお前は此花アカリで。此花ルチアは1人だけ」
突き付けられた現実にアカリは愕然となる。
彼女の成長速度の正体はルチアの記憶が影響している。
同時、ルチアの思い出が流れ込む以上はアカリはきっと此花アカリとしては生きていけない。
「だから、これからはアカリの……アカリだけの記憶を作ろうぜ。そんで、ルチアの記憶共有もストップさせる」
「え?」
瑚太朗のまさかすぎる答えにアカリは呆然となった。
「今すぐってのは難しいけど、ルチアの記憶をこれ以上流し込ませない方法なら無くはない。
それまでは俺と一緒に楽しい記憶を作ろう!!」
ルチアのプライバシー侵害も極まる。
何よりもアカリがどんな選択を取ろうと、“苦しい想いはして欲しくないのだ。”
「瑚太朗……」
涙ぐむアカリ。
瑚太朗は慌てるが杞憂のものだと彼女の続けざまの話で分かった。
「ありがとう。本当に、ありがとう」
多分、これまでで一番の笑顔だ。
「甘いぜアカリ」
チッチッチッ!! と口で言う。
不敵な笑みを浮かべ、瑚太朗はアカリを ビシッ!! と指差す。
「礼を言うなら今度ドキドキメイドパーティーの格好をして出迎えてくれ」
「分かった!!」
アカリを励ます為の冗談。
それを嬉しく思ったアカリは笑った。
瑚太朗は宣言内容を遂行する事を誓ったのだった。
如何でしたでしょうか?
ドキドキメイドパーティーを言わせたかっただけです。
サブタイトルにアカリを使う事が多いだけあって彼女の出番が多めになっております。
そしてパフェの件、忘れていた訳なんてないですよ、ええ(汗)
実は気付かない内に消化していたのですよ、ええはい(大汗)
さて、次回の更新予定は再来週の日曜日です……多分。
最近遅れ気味なので(実はこれも当日に書いて完成させてますので)気を付けないと。