時間を投稿日を間違えたのは内緒www
続きです。
開幕からルチアの鉄拳が飛んできたが、そこは愛の鞭と勝手に解釈した。
さて、現在はプレゼント授与式を執り行っている。
ルチアは例によって例のごとく、自分自身の好きなものをアカリにプレゼントした。
一瞬だけアカリの表情に陰りが見えたが消えた。
ルチアは記憶を共有されている事を知らない。
でも、決して悪意を持ってのプレゼントではないから無下にも出来ずにいる。
「アカリ、これ。お前の為に用意したものだ」
瑚太朗は「アカリのもの」という部位を強めて言った。
アカリに手渡したのは――向日葵色のシュシュ。
「今度皆に紹介する時にルチアと一目で区別が出来るようにな。それを付けていればお前は“此花アカリなんだ”」
「…………」
きっと、複雑な心境なのだと思う。
これまでの彼女はルチアとの記憶の共有によって自分を「此花ルチア」として見てきた。
でも、好意を持っている相手から「お前は此花アカリ」だと否定される。
それはある種の残酷な仕打ちとも呼べた。
それでもアカリは“瑚太朗を信じた。”
記憶は確かに「此花ルチア」のもので、自分を「此花アカリ」だと言い切る事が出来ずにいる。
しかし、瑚太朗は記憶の共有を何とかし、あまつさえ「此花アカリ」という確固たる存在にすると言った。
今はそれを信じるのみ。
「ありがとう……瑚太朗」
「どういたしまして」
そして、これは「此花ルチア」ではない自分――「此花アカリ」として見ているとの釘打ちとも言えた。
やはり、自分は「此花ルチア」としての生は歩めない事を瑚太朗から言外に突き付けられる。
自然と感謝の言葉は出はしたが、戸惑いも混じっている。
そんな時だった。
「西九条先生からメールだ」
ルチアは携帯を取り出す。
黙読でメールを読み上げていき、彼女は瑚太朗とアカリを交互に見てから口を開く。
「すまない瑚太朗、アカリ。ガーディアンまで来てくれないか?」
ルチアの提案に一も二もなく瑚太朗は頷いた。
アカリは瑚太朗がこちらを見てきて、それで何となく察したので首肯したのだった。
ガーディアンの基地まで瑚太朗達はやって来た。
案内されたのはモニター室だ。
そこで西九条と静流が神妙な顔付きになって沈黙している。
「西九条さん、静流も」
先生ではなくて「さん」なのはガーディアンとしてのスイッチが入った事を意味する。
呼ばれた西九条、側にいた静流もこちらを見る。
「ルチアちゃん、天王寺君にアカリちゃんも来てくれたのね」
西九条の反応から薄々察する。
全員が重々しい空気に同調する。
そういった空気は伝播していき、その中で西九条は重々しく言葉を紡ぐ。
「単刀直入に聞くわねアカリちゃん。あなたはルチアちゃんとの記憶を共有しているわよね?」
その言葉に酷く狼狽えたのはルチアだった。
静流も聞いていたようで、特に驚かないものの目線を逸らしていた。
「瑚太朗は……知っていたのか?」
「ああ、知ってた」
「何で……」
教えてくれなかったのか?――紡ごうとした言葉は果たして満たされなかった。
そんな事を言ったところでどうにもできない。
アカリ自身、バレた時にルチアから軽蔑される事を恐れたんだと悟る。
何せ彼女は「此花ルチア」という存在の記憶を共有しているのだから。
「アカリを……どうするつもりなんですか?」
ルチアとの記憶を共有しているという事は、言い換えれば彼女のプライベートに土足で踏み込んでいる事。
この風祭市からの退去を言い渡されるやもしれない。
「本来なら『此花ルチア』として別の所で生きていくのか、『此花アカリ』として生きていくのか……問うところなんだけれどね」
途中、妙に言葉を区切ったところまではガーディアンとしての鋭さを込めていた。
だけども、後半になるにつれて“楽し気な表情を見せた。”
西九条は子供に優しい。
厳しいところもあるが、それは思い遣りだ。
共に苦しさも楽しさも分かち合ってくれる。
そんな彼女が1人の少女の人生を左右するこの段階で微笑んだ。
「天王寺君に言われていてね、“予め調べておいたの”」
「瑚太朗……が?」
ルチアはあっけらかんとした目で瑚太朗を見た。
本来ならば“有り得ない情報源。”
複数の世界の事を知る天王寺瑚太朗だからこそできるチート的な手段。
「もしかしたら、アカリちゃんにはルチアちゃんとリンクした何かしらがあるんじゃないかと疑っていたの」
「それで、記憶を共有できる装置みたいなのがある事が判明した」
西九条の言葉に続いて静流が補足説明をしてくれた。
「装置は“アカリちゃんが退院する段階で切ってあったのだけれどね”」
「ちょっと待て西九条先生。俺もそこのところは聞いてなかったんだけど……」
「あら? 私はアカリちゃんが自分で言うって言ったからてっきり伝えたものだとばかり思っていたのに」
ジーッ、睨み付ける相手は決まっている――アカリだ。
何処と無く、彼女は所在無さげに虚空の辺りを見ていた。
大量の冷や汗も見える。
「記憶の共有はもう無くなってたんだな?」
「うっ……」
アカリは両手の人差し指を合わせる。
「本当は瑚太朗に言うつもりだったのに知ってたから言いそびれたのもあるし、それに――瑚太朗の本音も聞きたかったから」
上目遣いにこちらを見る。
ルチアの記憶を垣間見ているのならば、アカリには瑚太朗がルチアに次いでの心の拠り所だ。
そんな彼がアカリを本心から嫌ってしまうのか知りたかった。
結果は予想だにしない方向から瑚太朗が本音をぶつけたのである。
「そうだったのか……」
瑚太朗自身もアカリの不安は分かる。
だからこそ強く言えない……言えないのだけれど。
「だからってな、言いなさいよ。結構心配したんだぞ」
「ごめんなさい」
心配してきた事は謝らせる。
瑚太朗はとりあえず息を吐き、西九条と向き合う。
「それで? アカリの記憶の件でないなら何があるんですか?」
「ブレンダ・マクファーデン。彼女が日本に来ているのよ」
その一言で瑚太朗は全てを察した。
ブレンダ・マクファーデンは此花アカリが此花ルチアの記憶を共有している事を知っている。
だとすれば、どちらかを狙われる可能性は大いにある。
「ブレンダは何をしようとしているんだ?」
「恐らくルチアちゃんかアカリちゃんを拐いに来る筈よ」
己の実験の研究対象である両名を狙う事も十二分に考えられる。
「あなた達には不自由かもしれないけれど、ブレンダ・マクファーデンが見付かるまでは此処で大人しく――」
「待ってくれ西九条」
その言葉を遮ったのは瑚太朗。
彼は顎に手を当てて何やら考え込んでいた。
身を潜めるのは簡単だ。
でも、それでは“何も解決されない。”
そして、1つの考えに至る。
自分の為、ルチアとアカリの為――何よりも今後の為。
きっと、全員がすっとんきょうな反応を示すと思う。
それでも瑚太朗は提案してみる。
「なあ、ブレンダ・マクファーデンを取り込まないか?」
その後、全員から「何を言っているのか!?」と指を指されるのは明らかだった。
如何でしたでしょうか?
瑚太朗君、マクファーデンを仲間に誘うの巻www
さて、アカリの記憶共有は実は既に無くなっておりました。
装置という事はオンオフが可能な訳で……今後に役立つのか否か。
ですがアカリの件は綺麗に片付いてはおりません。
はたしてどうなるのか
次回の更新は再来週の月曜日の予定です。