Rewrite if   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

続きです。



ダブルチア⑤

「ここ、は……?」

 

 意識の底から浮上し、ゆっくりと瞼を開く。

 真っ先に目に入ったのは見覚えのない天井。白いので病院かとも思われたが、隣には手術室にでもありそうなライトが置かれていた。

 

「お目覚めかしら?」

 

「っ!? マクファーデン!?」

 

 アカリとしては直接に相対するのは初めてだ。

 身体を起こそうとしたが、拘束されている事に今更気が付いた。

 手術台のようなものに仰向けに寝かされ、気を付けの姿勢で鉄で造られた輪っかで置かれていた。

 

「ごめんなさいね。力では勝てないから拘束させて貰ったの」

 

 ブレンダ・マクファーデンは謝罪の言葉を口にするが解放する気など端から無いらしい。

 

「私を……どうするつもり?」

 

「アサヒハルカの詳細なデータが欲しいの」

 

 率直に回答は貰えた。

 だけども、それは実に背筋の凍るような想いだった。

 

「アサヒハルカ……いえ、此花ルチアの心を揺さぶるのが手っ取り早いと思っていたのだけれど、そうでも無さそうなのよね」

 

 計算外だわ――と、落胆するブレンダ。

 それもこれも、あの天王寺瑚太朗が絡んでからだ。

 彼と出会って前向きになった心は、アカリとの邂逅で更に強さに磨きを掛けた。

 

 当初は先程にブレンダが言ったようにルチアの心からアサヒハルカの部分を呼び起こし、揺さぶるのが最適な手段だと考えられた。

 そうする事で、彼女の能力を暴走させて世界を彼女の毒で充満させてしまおうという魂胆もあった。

 端から見ても分かる程に、今の彼女は揺らがない。

 もし揺らいだとして、あの天王寺瑚太朗が介入するに違いない。

 

 どう転んでも詰みであるところに此花アカリという此花ルチアのクローンが現れた。

 つまり、最初からルチアに狙いは絞っていない。当初から“此花アカリの誘拐だけが目的だったのだ。”

 

「そう……だったのですか」

 

 アカリの声音が妙に落ち着いていた事にブレンダは疑問を抱く。

 何故?――その疑問が周囲を飛び回る。

 此花ルチアの性格も彼女には備わっている。だとすれば、怒りを見せてもおかしくはない。

 だと言うのに、何故こうも落ち着き払っている。

 

 チリッ……頭の中に僅かに生まれる違和感を擬音語で表すなら的確なものだ。

 

「マクファーデン司祭」

 

 呼び捨てではなく、あえて“此花ルチアと同じ呼び名を使う。”

 

「あなたの研究への探究心、諦めない情熱は認める」

 

 口調、態度……果ては雰囲気までもが此花ルチアのものと類似していた。

 

「けれど、だからといって何でもしていい理由にはならない」

 

 当たり前だ。彼女は此花ルチアのクローンだ。

 身体を調べても彼女が此花ルチア本人ではない事は証明済みだ。  ならどうして彼女が此花ルチアだと思えてしまう?

 

「だから、あなたには償いをしてもらう」

 

 まるで親が子を諭すかのような物言いだった。

 彼女が何を言っているのかもブレンダには不明だ。

 

ただ分かるのは、この期に及んでも此花アカリは希望を捨てていない事だ。

 

「あなたにそんな事を言われる理由はないわ。私が罪を償う理由すら思い至らない」

 

ブレンダ・マクファーデンは罪から逃れたいとか考えてはいない。

 

“自分には償うべき罪など無いと本気で思っている。”

 

「そう……なら、仕方無い」

 

 大きな溜め息を吐かれる。

 まるで、駄々を捏ねる子供に呆れているように。

 そんなにも下に見るのかと、ブレンダがいよいよ怒りの感情を表に出そうとした時だった。

 

 

 

 

 

 ドゴォンッ!! と、凄まじい騒音が背後で起こったのは。

 

 

 

 

 

 ブレンダは振り返る。

 何が起きたのかを確かめたいが為に。

 知った時、ブレンダ・マクファーデンは愕然とした。

 彼女に(くみ)していた超人が全員倒れていた。

 ただ人陰が3つあった。

 

「よう。さっきぶりだな……ブレンダ・マクファーデン」

 

 彼女の名を読んだのはガーディアンでもガイアでもない……全くの別枠。

 その人物の、少年の名は天王寺瑚太朗。

 

 彼の後ろに控えるのは此花ルチアと西九条だ。

 

「どうして、此処が……!?」

 

「アカリにプレゼントした髪飾りにGPSを仕込んでおいた」

 

 あっさりと教えたのは瑚太朗。

 ここまで来れば種明かしもしてやる。

 逃げ場のない場所で、ブレンダ・マクファーデンを追い詰めているのだから。

 

「終わりよ。ブレンダ・マクファーデン」

 

 いつもは糸目の西九条が見開いていた。

 その眼光は鋭く、突き刺してしまうのかという位だ。

 

「くっ!! こんな事が!!」

 

 超人は全滅、ブレンダを守る術は何もない。

 

「まあ、お前を捕まえたところで何の問題も解決しないのは分かってる。どうせ自分が悪いとは思わないんだからな」

 

 突然、瑚太朗がそんな風に口火を切る。

 知った風な口をと言いたくなるが、どんな事が起ころうとも彼の言った通りの態度なのは違いなかった。

 この場の全員がブレンダに良心なんてものが無いのを理解している。

 

「せっかく最後に“ルチアが慈悲を与えてくれたのに”無駄にしやがって」

 

 ちょっと、待て。

 天王寺瑚太朗は今なんと言った?

 ルチアが慈悲を与えてくれた――と。

 

 まさかとは思う。

 此花アカリが此花ルチアに見えたのは決して錯覚なんかじゃない。

 アカリがルチアの記憶を読み取る機能を利用し、直接に呼び掛けていたのだ。

 

 ブレンダは知らぬ事だが機能の方はオフにしてあった。それを再びオンにしたに過ぎない。

 

「これでもマクファーデン司祭にはお世話になりましたから」

 

 瑚太朗の言葉を肯定するようにルチアが一歩前に出る。

 そして、彼の発言が正しいものだと証言する。

 

「でも本人に反省の色は無いみたいだからね……とりあえず拘束させて貰うわ」

 

 西九条の口調は普段とは違い、薄ら寒さを抱く。

 それ程までに強烈な殺気が空間を包んだ。

 

 それに当てられたところでブレンダは憮然としていた。

 既にマッドサイエンティストとも取れる彼女が殺気程度で怯えるタマだとは思わない。

 

 しかし、目に見える力の差は歴善ではあった。

 ブレンダの拘束はごくあっさりと出来てしまった。

 手錠を填め、彼女は西九条に大人しく連行されていく。

 

 それでも、決して綺麗な解決なんかじゃない。

 ただブレンダ・マクファーデンを拘束しただけで根本的な、彼女の根城を全て叩いたとは思えない。

 

 毅然とした姿だが、ルチアとアカリ――特にアカリには怖い思いをさせてしまった。

 きっと気にするなと言ってくれそうだ。

 だとして、瑚太朗はそれを背負ってしまいそうだ。

 

(だから、俺は……)

 

 西九条に連れられるブレンダの背中を見届ける。

 天王寺瑚太朗の胸中に(わだかま)る「やるべき事」を言葉にする。

 

「さて、2人をちゃんと安心させてやろうかな」

 

 それは天王寺瑚太朗の我が儘。

 でも彼は、その我を通したかった。




如何でしたでしょうか?

今回は救出はできたけれども、肝心の犯人の心は全く揺らいでおりません。

これまで多少なりとも和解はしてきましたが、ブレンダに関しては一切そんな事がありません。

果たして、瑚太朗君は何を思うのでしょうか?

次回は再来週に……出来たら良いかなと。
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