クロスアンジュ 因果律の戦士達   作:オービタル

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第11話:孤独の林檎

 

雨が降るエンデラント連合、薄暗い上空を飛空するセイレーンは林檎畑のある街上空へ来ていた。

 

「父さんと母さんが旅行で連れて来てくれた思い出があるなぁ、変わらない風景だ……」

 

キオは上空で街を眺めていると、リンゴ林のある小道に二台の警察官のパトカーが止まっており、その近くに人垣ができており、何だと恐る恐る覗いてみれば…一人の女の子が警官達にボコボコにされている場面だった。

 

しかもその時警察官が女の子の顔を踏みにじったモノだからキオの中にある怒りメーターは瞬時に振り切り、セイレーンからヘイロージャンプで降下し、その場にいる警官達を全員射殺した。雨水で射殺した警察官達の血が排水溝に流れ、キオは女の子を助け起こす。この時女の子は一瞬目をパチクリとさせるが、次の瞬間には敵意剥き出しの表情となり、自分に殴りかかってきたのだ。

 

……余程人に恨みを持っているのだろう。憎しみまみれの彼女の拳は大した威力はないものの、酷く冷え切っていた。自分を殴った後力を使い果たした女の子はそのまま気絶してしまった。

 

「強引だなぁ……あれ?この子、確か……」

 

キオは数日前の事を思い出す。アルゼナル甲板で第一中隊の中に、赤いツインテールの少女がいた事………。

 

このままでは風邪を引かせてしまうと思い、キオは彼女と一緒にセイレーンに乗り込み、人気のない場所へと移った。

 

 その後人気のない森の中にまでやってきた俺はそこ古い空き家を見つけ、少しばかり借りる事にした。暖炉もあるし、近くに水辺もある。寝具も埃まみれだがまだ使える状態になっているし、一休みするには十分な環境だった為、自分は彼女を横に寝かしてドラゴンの時と同様に看病を始めた。

 

今は自分の後ろで健やかに寝息を立てている。脱がした服も暖炉で乾かしていることだし、朝には目を覚ますだろう。

 

……一応言っておくが、彼女の服を脱がしたのは風邪をひかせない為の必要な処方であってやましい理由や気持ちなど断じてない。

 

そもそも意識の無い女の子に手を出すなど外道の所業。精神的にも弱っているみたいだしこのまま一晩様子を見ることにしようと思う。

 

雨が降り終わり、月の光が窓に差し込む中、キオの服の中に隠れていた妖精が肩に乗ってきた。

 

「?」

 

「キー…」

 

“キー”キオと言っているのか、妖精はキオを呼ぶ。

 

「……そう言えば、君はあのテレシアと一緒にいたけど、君は何者なんだ?」

 

「?」

 

「……名前は?」

 

しかし、妖精は首を左右に振る。

 

「……“フェイ”」

 

「?……ふぇ〜…い?」

 

「フェイ……君の名前だ♪」

 

「……フェイ♪フェイ♪フェイ♪」

 

妖精は改め、“フェイ”は喜びながらキオの周りを飛ぶ。

 

「フフ♪……」

 

月夜を眺めるキオは光り輝く三日月を眺める。

 

「あぁ…千の時の 輪廻の旅 繋ぎ合う 手と手 探 し求め 心交わし 息吹く風よ 新たな世界を飛べ……。」

 

キオはあの大地の時、ヒカリとメツを呼び覚ました歌の続きを歌う。

 

「(何だろう…何で俺この歌を知っているんだ?俺の知っている“あの歌”とは違うなぁ…)」

 

キオが歌っていた譜に興味を持つ。

 

 

 

 

 

「う…ん…」

 

ヒルダがぼんやりと目を開ける。まだハッキリしない頭の中、最初にその目に飛び込んできたのは見たこともない天井だった。

 

「…っ!」

 

次第に意識がハッキリして、ヒルダが上半身を起こした。

 

「痛った!」

 

全身に暴行を受けたときの痛みが走る。皮肉にもその痛みが現状を現実と認識させた。顔をしかめながら、ヒルダは辺りを見渡す。

 

「?…ここは…?」

 

高級そうな内装に日の光を多く取り入れるように造られた窓。ソファーにテーブル。そして自分が今、身を委ねているのはフカフカのベッドの上だった。隣を見ると、自分が休んでいるのと同じようなベッドがもう一つ設えられている。

 

「あたし…何で…こんな…」

 

意識を失う前にハッキリと覚えているのは舗装されていない畦道である。そこと現状のここは何をどうしたって繋がりようがなかった。

現状を理解するために再び視線をあちこちに走らせる。

 

「気がついたか?」

 

「えっ!?」

 

不意に声を掛けられビックリしたヒルダが慌ててその方向に目を向ける。そこには、見慣れた顔の男が立っていた。

 

「あんた!あの時の!」

 

「覚えていたか…」

 

近くにあった椅子を引いてそれに腰掛けた。

 

「傷の具合はどうだ?」

 

キオの服装は白と灰色のタートルネックと藍色のジーパン、キオのお気に入りの私服を着ていた。

 

「え…あ、ああ…」

 

一応答えたものの、今一つ状況が飲み込めずに答えることが出来ない。そんなヒルダにキオは言葉を重ねた。

 

「幸いにして内臓破裂や骨折といった重篤な症状は見られなかったんでな、俺が応急手当てをしたんだが、そこは勘弁してくれよ」

 

「え?…お前が?」

 

「ああ」

 

コクリと頷く。

 

「本当は医者に見せるべきなんだろうが、診療中に万一お前がノーマだと言うことがバレてしまうとまた大事になるからな」

 

「……」

 

ノーマ。その言葉を聞いただけで顔を伏せ、ヒルダは唇をかみ締めていた。そもそも自分がノーマだからこそこんな目にあったのだ。このときほどヒルダは自分がノーマであることを恨んだことはなかった。

 

「それと、手当てをするためにお前をそんな格好にしたが、そこは怒らないでくれ」

 

「格好…?」

 

ヒルダが己の身体を見下ろす。包帯やら何やらで確かに手当てされているが、それよりも身に付けてるのが上下の下着にTシャツ一枚であった。

 

「っ!」

 

少し全裸に近い格好になっていることに気付いたヒルダが慌てて布団を引っ張ると己の身体を隠す。そして、キオをキッと睨みつけ、彼に向けて強烈な蹴りが炸裂した。

 

「ゴベェッ!!」

 

キオは倒れ、ヒルダは下が見えないよう隠しながら、怒鳴る。

 

「この変態!スケベ!エッチ!!何勝手に私の服脱いでんだよ!!」

 

「あ…あ……」

 

キオの頰にヒルダの蹴り跡が残っていた。その時、キオからアルヴィースやヒカリ、メツ、コスモスが出てくる。

 

「あ〜あ…やっぱり」

 

「だから言ったのに、私がやろうかって?」

 

「こいつは女にデリカシーって言うのはないのか?」

 

「理解不能……」

 

アルヴィースやヒカリ、メツ、コスモスに散々言われる羽目になるキオ。その様子にヒルダは何が起こっているのかアルヴィース達を見て動揺する。

 

「な!?何なんだコイツら!?」

 

ヒルダは下がりながら、古いテーブルの上に置いてあったキオのハンドガンを向ける。キオは起き上がると、ヒルダがこっちにハンドガンを向けている事に慌てる。

 

「ば!バカ!こっちに向けるな!」

 

「うるせー!!」

 

ヒルダは構わずハンドガンを発砲する。キオは急いでスパルタンスーツを着装し、全身を覆う傾向シールドが弾丸を防御する。

 

「うわぁ!危ねぇ!これ着装してなかったら死ぬところだったぞ!!」

 

「あんたが私の服を脱がしたからだろうがぁ!!」

 

ヒルダはさらにエスカレートし、ハンドガンを発砲しまくる。

 

「お、落ち着け!!」

 

キオは必死に抵抗しながら、ヒルダに接近し、取り押さえる。

 

「くっ!」

 

ヒルダもキオに抗う。そしてヒルダの拳がヘルメットのバイザーに直撃する。バイザーにヒビが入り、キオはよろける。

 

「フン!ザマァ見ろ!」

 

「痛つつ……」

 

キオはヘルメットを脱ぎ捨てる。額から血を流すキオは腰からバイオフォームを取り出す。

 

「全く、世の中はこんな可愛い女の子まで乱暴な人に変えるのか?」

 

バイオフォームで血を流している額に向けながら治療すると、ヒルダの手を見る。

 

「……手ぇ貸せ」

 

「ちょっ!」

 

キオは怪我をしたヒルダの手にバイオフォームを流し込む。

 

「女の子は綺麗な手が一番だ。バイザー殴って、血が出ている手をそのままにするわけにはいかないだろ…」

 

「ハッ、お優しいこって」

 

大仰に肩を竦める。

 

「…そう言やあ、あのポリどもはどうしたんだよ?」

 

話の流れから自分を暴行した警官たちのことを思い出し、ヒルダが尋ねた。

 

「知らないな」

 

「はぁ?」

 

キオの返答に、思わずヒルダが面食らった。

 

「知らねえわけねえだろ! あの連中があたしをそのままにしておくかよ!」

 

「言葉が悪かったな。今どこで何をしているかは知らないって意味だ」

 

そしてキオが当時の状況を説明した。

 

「お前を見つけたとき、ボロ雑巾のお前を囲むようにして何かろくでもないことをしようとしていたからな、遠慮なく殺してやった。恐らく、今頃は仲良くどこかの病院の霊安室で眠っているんじゃないのか?」

「……」

 

こともなげにそう言うキオにヒルダは一瞬、二の句が告げなかった。が、すぐに自嘲気味に呟く。

 

「ハッ、ノーマのあたしを助けるためにポリぶちのめすなんて、テメエは馬鹿かよ」

 

「この世界では女である前にノーマなのかもしれないがな、俺にとってはノーマである前に女だ」

 

そう言い切り、淡々と言葉を続ける。

 

「相手が誰であろうと、どんな理由があろうと、何の抵抗もしない女性を集団で暴行するような輩にかける情けはないし手加減してやる義理もない。この世界の常識など知ったことか」

「……」

 

ヒルダは何も返せず、俯くとギュッと布団を握り締めた。

 

(何でこいつは、一々…)

 

こうなんだろう…。思わずヒルダは涙をこぼしそうになったが、グッと堪えた。そのまましばし静寂があたりを包む。

 

「何も…聞かねえのかよ…」

 

どれぐらい経ってからだろうか、ポツリとヒルダが呟いた。

 

「聞いて欲しいのか?」

 

同じようにキオもポツリと呟いた。

 

「自分から言い出さないということは、聞かれたくないということだと思ったから憚っていたのだがな。それに…」

 

キオはチラリとヒルダの姿に目をやった。

 

「その姿を見れば大方の想像はつく。芳しい結果にはならなかったんだろう?」

 

「フン」

 

つまらなそうにヒルダが鼻を鳴らした。

 

「あーあ、今思えば馬鹿な真似をしたもんだ。思い出だけに頼って、ママが待っていてくれるなんて」

 

「……」

 

「あたしらの居場所なんざ、この世界の何処にもないんだ。今更ながらに思い知らされたよ」

 

「……」

 

「もういっそ、このまま死んじまおうかな~」

 

自暴自棄になり、投げやりな態度でそう呟くヒルダ。すると、ここで始めてキオが行動を起こした。椅子からすっくと立ち上がると、ヒルダのベッドに腰を下ろしたのだ。

 

「な、何だよ…」

 

いきなり近寄られ、何をされるのだろうかと若干警戒するヒルダ。するとキオはいきなりヒルダの後頭部に手を回すと、そのままグッと力を入れて自身の胸に彼女の顔を抱いたのだ。

 

「なっ!」

 

予想外の行動にビックリして逃れようとするものの力を入れているのかビクともしない。

 

「て、テメエ、一体何を…」

 

ようやく顔を上げてキオを見上げると、ヒルダが文句を言う。だが、キオはそれに対して返答しようとはせず、ただ一言、

 

「泣け」

 

とだけ言った。

 

「はぁ!?」

 

何言ってんだこいつと言わんばかりにヒルダが怪訝そうな表情になった。

 

「何言ってんだ、お前?」

 

思ったことをそのまま口にするヒルダ。キオは視線を落とし、ヒルダの顔を見た。不意にその真っ直ぐな瞳に射抜かれたヒルダは何故か心臓が高鳴り、視線を外さざるをえなかった。

 

「母親から手酷い仕打ちを受けたんだろう?」

 

思わずヒルダの身体が小刻みに震えた。思い出したくないのか、表情も曇る。

 

「脱走なんてしたらどうなるか、わからないお前じゃないだろう。にもかかわらずお前は脱走をした。全ては母に会うために」

「……」

 

独り言のようなキオの言葉を黙って聞いている。

 

「その結果が、最悪といっていい形の結末を迎えたんだ。悲しくないわけがないだろう。虚勢を張っても痛々しいだけだ、見るに耐えない」

 

「だから…泣けってのかよ…」

 

「あぁ…存分に泣いていい」

 

キオが頷いた。

 

「悲しいときに泣けないのは不幸なことだ。それにここまできて、今更強がる必要もないだろう」

 

「っ、うるせーな! いいから放せよ!」

 

キオの拘束から逃れようともがくヒルダ。しかしその拘束はビクともしない。

 

「放せ!放せったら!」

 

さらにもがくヒルダ。しかし結果は変わらなかった。そのうち抵抗も弱くなり、そして……。

 

「う…」

 

さっきのキオの言葉で色々と思い出したのだろうか、目に涙が溜まってくる。それを見計らったというわけでもないのだろうが、キオがもう片方の手を背中に回してポンポンと背中を叩く。まるで幼い子をあやすかのように。そして、それが引き金となった。

 

「う…あ…あああああっ…」

 

ついにヒルダはキオの胸の中で泣き出してしまった。一度堰を切ってしまうとあふれ出た想いはそう簡単には止まらない。意識しようとせざると、ヒルダはキオの言葉通りその胸の中で泣き崩れることになった。

 

「……」

 

キオは黙ってそのままヒルダを抱きしめ、同じように背中をポンポンと叩いてあやす。本当の両親も知らないキオにとっては分からないのも当然、だが、キオは18年間も自分の子供として育ててくれた親の愛情を受け、ヒルダを励ます。二人は暫くの間、そうやって時間を過ごすことになったのだった。

 

 

 

 

 

「ZZZ…」

 

どれぐらい時間が経ったであろうか、キオに背を向ける格好でヒルダは寝息を立てていた。それを現すかのように肩が小刻みに上下している。

 

「泣き疲れて眠ってしまったか…」

 

キオは未だヒルダのベッドの上に腰を下ろしている。もっとも、彼女の邪魔にならないように隅っこに陣取る形ではあったが。

 

「……」

 

不意に、キオはヒルダに手を伸ばすと彼女のトレードマークであるツインテールに手を伸ばした。と言っても、キオに背を向ける形で寝ているので、片側だけしか手に出来なかったが。

そしてそれを掬い上げると、撫でるようにゆっくりと梳いた。

 

「お前に…いや、お前たちに何の咎があるって言うんだ…」

 

思わず口をついて出たそれは、前々から思っていた疑問だった。

 

「人を騙したわけでも、人を襲ったわけでも、ましてや人を殺したわけでもないのに、ただマナが使えないノーマというだけでこの仕打ち。そんなことがそれほど重要なことなのか?俺にはわからない…」

 

そのまま窓の外に目を向けた。往来を行き来する人々の姿が見える。

 

「あそこを歩いている連中とアルゼナルの面々。どんな違いがあるって言うんだ。マナの有無こそがこの世界で最も重要な意味を持つのかもしれないし、実際そうなのだろう。だが、やはり俺にはわからない」

 

もう一度ヒルダに視線を戻した。

 

「マナの有無で実の母親にまで拒絶され、裏切られて手酷い仕打ちを受けるとはな。…哀れな」

 

言葉通り、ヒルダを哀れむような目で見る。そしてその手に掬ったヒルダの髪をするっと滑らせて元に戻した。

キオはヒルダを起こさないようにゆっくりと彼女が寝ているベッドから立ち上がると、屋根の上に立つ。

 

『♪〜♪〜…♪〜♪〜…♪〜♪〜…♪〜♪〜』

 

星が見える屋根の上、キオは一人で歌い出す。

 

翔べるもの 安らかに 悲しみ 胸に 秘め

時の輪を 遥か超え この想い 届けたい

 

すべて 闇にのまれて 心なくして消える

でも あなたの 腕に抱かれ 吐息 蘇る

 

♪〜♪〜…♪〜♪〜…♪〜♪〜…♪〜♪〜…

 

翔べるもの とめどなく あふれる 涙 秘め

時の輪を 遥か超え 奇跡を 届けたい

 

すべて 闇にのまれて 夢を無くして凍る

でも あなたの 胸に抱かれ 吐息 蘇る

 

そして 永久に 包まれ 願い叶う場所まで

 

決して 心 見失わず 翔びつづけ 還る

 

♪〜♪〜…♪〜♪〜…♪〜♪〜…♪〜♪〜…』

 

歌を終えると、夜空にはいつのまにか流れ星が降り注いでいた。綺麗な星空を眺めながら、キオは眠りにつく。

 

 

 

 

 

夢境の中、幼いキオは龍の女の子の歌を聞いていた。

 

「綺麗な歌だね♪」

 

「うん、私の世界の始祖“アウラ”様から教えられた歌なの♪」

 

「アウラ?」

 

「私達を支えてくれる聖龍様なの!」

 

「会ってみたいなぁ……でも僕たちはこの世界でしか会えない存在…君の世界に行こうとしても、それぞれの世界の出入り口は僕と君を入れさせてくれない…」

 

「……ねぇキオ」

 

「?」

 

「二つプレゼントがあるの♪目を瞑って♪」

 

女の子は無垢な笑顔をキオに見せる。キオは女の子の言うことに従い、目を閉じる。キオの唇に女の子の唇を重ねたのだった。

 

「っ!?」

 

キオは慌てて、女の子に言う。

 

「な、何!?」

 

「これが一つ目♪キオ、大〜好き!!」

 

「うわぁ!」

 

女の子は大好きなキオに抱きつき、告白する。

 

「二つ目は!私、キオの“お嫁さん”になりたい!」

 

女の子の告白に、キオは……。

 

「うん!僕も─○○─ちゃんと一緒にいたい!だから─○○─ちゃん!将来僕の───になってください!」

 

「うれしい!」

 

女の子は頰を赤くしながら、キオと共に将来を誓い合ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ヒルダの心が落ち着いたのか、どこか最初よりもマシな顔になっていた。

 

「――サンキューなキオ、少し吹っ切れたぜ」

 

ややそっぽを向きながら、そう礼を述べるとキオはやや驚きに眼を見張ってる。その反応にヒルダは不機嫌そうになる。

 

「な、なんだよ、その顔」

 

「いや…君が礼を言うなんて…」

 

「なんだよ、あたしだって礼を言うぐらいできるぜ!」

 

不機嫌そうに言われるも、実際これまでの経緯を振り返っても予想できないだけに、キオは小さく頭を掻く。その時、キオにタスクからの通信音が鳴り響く。

 

「もしもーし…」

 

『大変だ!キオ!』

 

「どうした?」

 

『ミスルギ皇国でアンジュが捕まったんだ!』

 

「は!?」

 

「どうしたんだ、急に?」

 

「ちょっと待ってろ!……どう言うことなんだ!?」

 

タスクはキオにアンジュの事を詳しく説明する。実は数日前、アルゼナルにアンジュに仕えていた侍女“モモカ・荻野目”が侵入し、アンジュがその子を養っていたと。しかし、彼女の元に皇室の回線が送られ、アンジュはミスルギへと足を踏み入れたの事であった。しかし、それはミスルギ皇室の策略であり、モモカを餌にして、アンジュの兄である神聖ミスルギ皇国皇帝『ジュリオ・飛鳥・ミスルギ』がアンジュを絞首刑にしようとしているとのことであった。

 

『だから頼む!助けてやってくれ!』

 

「……分かった、今から最大出力でそこへ向かう。ビーコンを発信してくれ…」

 

『分かった!』

 

タスクは通信を切る。キオがヒルダに説明すると、もちろんヒルダもアンジュを助けに行くと承知してくれた。

 

「へっ、上等だぜ! こんなムカつく世界、なんの未練もないね。それに、アイツに命を粗末にするなって言ったんだ。ムカつく奴だけど、死なれたら胸糞悪いしな」

 

ややそっぽを向きながらそう悪態をつくヒルダに、キオは小さく嘆息する。

 

「好きにしろ」

 

何を言っても無駄と悟ったのか、そう促すと、ヒルダはワンピースを着直し、掛けられていた布を羽織る。

 

「セイレーン!」

 

キオは森林の中に隠していたセイレーンを起動させ、遠隔操作でこちらに呼び寄せた。キオはスパルタンスーツを着装し、セイレーンに乗り込む。

 

「乗れ…」

 

キオはヒルダをセイレーンに乗せ、そのままミスルギ皇国へと向かうのであった。

 




次回はちょっと番外編になります。内容はサラとアイロスの物語に設定しております♪
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