チャールズによって、眠らされたキオは夢を見る。元皇女であったアンジュリーゼが何処かの軍事施設で仲間達と共に、ドラゴンを倒したり、ドラゴンの世界に行って美しい女性と出会ったり、黒い武人と戦っているキオの姿が浮かび上がる。
そして目の前が真っ白になり、キオは目を覚ます。
「……ここは?」
キオが寝ていた場所は、色んな機械や機材が並んだ医務室であった。キオは起き上がり、側に置かれている衣服を着用すると、ドアが開く。
「ん?」
「あ!目が覚めたんですね?」
「よかったですも!心配したですも!」
現れたのは黒髪の少女と人間の膝程度の大きさの丸っこい体系に全身体毛が生えており、グルグル眼鏡を掛けたぬいぐるみのような生き物がはしゃいでいた。
「何!?」
キオはぬいぐるみ見たいな生き物に驚き、マナの光を展開しようとする。
「マナの光よ!…………あれ!?」
しかし、キオのマナの光の障壁が全く展開できなかった。
「何でマナの光の障壁が!?」
キオは慌てていると。
「驚くのも無理もないわ、元々あなたのマナは天の聖杯の力で維持していたから……。」
「誰!?」
扉から現れたのは、白い長髪に赤いバトルスーツを着た女性がキオに声をかけてきた。
「驚かさせてごめんなさい、私はエルマそしてこっちがリン、そしてノポンのタツ……あなた、キオ・ロマノフね。」
「え?はい…………って!俺の名前を知ってるんだ!?」
キオは自分の名前を知っていることに驚くと、エルマが説明する。
「チャールズとマリアが教えてくれたわ……あなたが二人が拾った【天の聖杯のドライバー】って……」
エルマの言葉に、キオは呟く。
「父さんと母さんが……俺を拾った……?」
「そう……あなたは18年前、天空の彼方からセイレーンと共に隕石のようにマーメリア共和国の山奥へ落下し、それを見ていたチャールズはそこへ行き、赤子であったあなたとコアクリスタル化したセイレーンと出会ったのよ。」
「…………」
「それから18年……あなたの邸を襲った奴らの狙いは、キオの持つそれ……」
エルマが指差す方向にキオは見る。それは肌身離さず持っていた翠のクリスタルであった。
「俺の……ペンダント?」
「それは普通のクリスタルじゃない……【天の聖杯】と言うか特殊なブレイドなの…。」
「ブレイド?…それって何ですか?」
「私たちをサポートするパートナーの事よ。本来はこのコアクリスタルって言う結晶の中で眠っているの。」
エルマはそう言い、ポーチから蒼く輝くクリスタルを取り出す。
「これって……翠のクリスタルと同じ…」
「そう、普通のコアクリスタルは蒼なの、だけど……あなたのコアクリスタルは翠なの。そしてブレイドはドライバーと同調させることによって、パートナーを得るの。因みに私のブレイドは【スザク】。」
「私のブレイドは【カサネ】って言うのよ♪」
リンも説明するとタツが呟く。
「前線では何も使ってませんが……」
「何か言った?」
「もも!!いえ!何も!!」
「良ければ、この大型戦艦インフィニティを案内するわ♪」
「あ、分かりました」
キオは医務室から出て、エルマ、リン、タツに大型戦闘艦『インフィニティ』の艦内を案内される事になった。
大型戦闘艦インフィニティは全長5000メートル超(約5,694.2m)もある事に、そして驚くのは戦闘艦だけではなかった。艦内にはスパルタンがいて、ブレイド同調やドールの訓練をしていた。邸を守っていたスパルタンやメイド隊は元々、キオのいた世界の兵隊ではなく、エルマやリンが所属する同盟軍『エーテリオン』は現在キオの世界を暗躍する組織『デウス・コフィン』の総裁"X"がエンブリヲと言うキオの世界を裏でノーマをアルゼナルと言う軍事施設で、並行世界から来るドラゴンを戦わせていると。
「それって、良いんじゃないのですか?」
「確かにそう思うかもしれない。だが、ドラゴンは取り戻そうとしているの……アウラを……」
ドラゴンは並行世界=本来の世界の人間が遺伝子改造され、穏やかに暮らしていたが、エンブリヲは彼らのリーダー的存在とも言えるドラゴン【アウラ】を奪い、彼女達であるノーマにアウラを取り戻そうとするドラゴンと戦わせ、凍結させた大型ドラゴンの心臓を抉り取り、中からドラゴニウムと言う本来の世界で起こった戦争のエネルギーをアウラに充填させ、永遠に続くマナの光を生み出していると……。
事実を知ったキオは呟く。
「結局は人を贄に差し出しているみたいじゃないか!」
「えぇ、チャールズとマリアはあなたと出会ってから四年後に、私たちと交流を果たし、真実を受け入れ、あなたを生かす事を考えていたの」
「生かす?」
「そう、さっきも話した様に…あなたはあの世界の人間ではない。何故ならキオ……あなたこそが、かつてデウス・コフィンが恐れられた存在【天の聖杯】のドライバー『アデル』の子だから……」
「アデル?」
「キオさんのお父さんです。」
「え!?、俺の……本当の父さん?」
「そう、アデルはかつて……アルストと言う世界で英雄と呼ばれた存在。そしてある国の皇女と共に恋をし、駆け落ちし、あなたが生まれた。そして…」
「そしてあっちの世界でチャールズとマリアに拾われ、育てた。」
エルマ達の後ろから、アーマーを着た男性が言う。
「ほぉ、コイツが天の聖杯のドライバーか……」
男性はキオの眼を見る。
「良い目をしてやがる。気に入ったぞ♪」
「ジョンソン、あなたまさか…キオを?」
『エイブリー・J・ジョンソン』エーテリオンの曹長であり、皆からは『鬼のジョンソン』と呼ばれている。
「そう言うな、エルマ…キオ、お前……スパルタンになってみる気はないか?」
「え?」
「エルマ、ラスキーやキースには伝えている。キオのデータはもう既にチャールズに見せて貰っているからなぁ♪」
「はぁ、あなたと言う人は……」
エルマは頭を手を当て、首を左右に振る。
「それとエルマ…チャールズとマリアのビーコンがまだ消えていない。」
「本当に?つまり奴らは、二人を捕虜としたのね……」
「何の話ですか?」
「キオさん、落ち着いて聞いてください。チャールズさんとマリアさんはまだ……生きています。」
リンが説明すると、キオは驚く。
「本当に!?」
「はい!」
「どうやらデウス・コフィンは、二人を捕虜して連行したかも……助けたい気持ちは分かるわ。けど、今のあなたの力では無理かもしれない。だけど…スパルタンとあなたのコアクリスタルを同調させれば、二人を助ける事は出来る。」
「そう言う事だ……元々、お前が今まで使っていたあのマナは、天の聖杯であるそのコアクリスタルから放出していたからなぁ。同調すれば、もう二度とマナの光は使えなくなる。どうする?」
二つの選択肢にキオは迫られるが、本人はもう、決意している。
「確かに…マナの光は人間である証……けど、それは人を殺すことによって出来る力………良いよ、俺……スパルタンになる。二人が本来の親ではない他人だけど、俺にとって二人が今の俺の両親なんだ。だから、二人を助けたい!」
キオの決意に、ジョンソンが笑い出す。
「ハハハハ!!!良い決意をしたじゃねぇか!気に入ったぞ!良いだろ、お前の履歴はチャールズから教えられている。覚えていないか?今まで、剣術や格闘、サバイバル知識、dollシュミレーター教習をやった事を?」
「え?……はい、って!?あれってまさか!?」
「そうだ。チャールズやマリアはお前をスパルタンにさせるために、お前が思い込んでしていた訓練は全て、スパルタンにするための適正試験であったのだ♪」
「あれ?じゃあ、俺が今まで家にあったサンドバックやバトルシュミレーターゲームも?
「そう、全てはデウス・コフィンとエンブリヲを倒すためにな……さて、お喋りしすぎたかな?早速医務室へ来い、スパルタンにさせてやる。」
ジョンソンはキオを医務室へ連れて生き、超兵士のバイオ手術を開始した。手術は成功、キオの身長が2メートル超へ伸び、与えられたスパルタンアーマーは【アスロン】であり、着用後、サンヘイリ人の通称"エリート"の五体を模擬試験で圧倒する事になるのであった。そしてキオはセイレーンの操縦訓練も物にしてしまい、3日で試験を終え、最年少のスパルタンと呼ばれた。翌日、キオは身につけていた翠のコアクリスタルとの同調を始める。コアクリスタルが光り出し、現れたのは銀髪の青年であり、手に持っているのは中央の空洞部のガラス状のプレートを付けた青く輝く大剣であった。
「僕を呼び出したのは君なのかい?」
青年は陽気な言葉でキオに問う。
「そうだ……俺の名はキオ・ロマノフ。お前は?」
「僕はモナド……名前は色々あるけど、気軽にアルヴィースでも良いよ♪」
アルヴィースは大剣をしまい、キオに手を差し伸べる。
「よろしくな、アルヴィース」
キオもアルヴィースに手を差し伸ばし、握手で交わすのであった。
ハンガーでセイレーンに乗ったキオ。アルヴィースはコアクリスタル状に戻り、いつでも呼び出せるようになっている。
『任務は分かっているね?あの世界でドラゴン達と戦っているアンジュと彼女達の支援、それに私たちの仲間である【タスク】にエーテリオンからの招集に呼びかけて。』
「わかりました」
キオはそう言うと、セイレーンがカタパルトデッキへ移送される。トレースシステム式のコックピットで深呼吸するキオは決意を胸にする。
「(父さん……母さん……絶対に助けに行くから……)」
『キオ・ロマノフ、発進スタンバイ』
オペレーターの指示と共に目の前のカタパルトデッキが開き、射出システムがオフになる。キオはセイレーンを動かす。激しいGが襲うがキオは押されなく、インフィニティから射出され、空間を飛び回る。
「さてと……腐った世界に行きますか!」
キオはそう呟き、偽りの世界と繋がる特異点へと入って行くのであった。