クロスアンジュ 因果律の戦士達   作:オービタル

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第21話:兄妹の原覚醒・後編

 

一方、サラはようやく目を覚ます。

 

「「姫様!」」

 

「ナーガ?……カナメ?……っ!キオは!?」

 

「あの悠妃のファルシスと!」

 

ナーガの指差す方向にテレシア化したキオとファルシスが争っていた。

 

「あれ…あれが、あのキオ?」

 

ドラゴンとは思えない異形な怪物へと変貌したキオ。するとサラの記憶に研究所で暴れるテレシア化した幼いキオの姿を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー《回想》ーーー

 

12年前。壮大な水で溢れた湖『エルト海』幼きキオとサラはそこで普通に遊んでいた。するとそこに現れたのは白い礼装をした者達と黒い礼装をした神官兵達がキオとサラを囲む。

キオはサラを守ろうとするが、神官兵は神託杖を振り下ろし、キオを気絶させる。サラは取り押さえられ、頭から血を流すキオも連れて行かれる。

あの大地ではない何処かの研究室、実験台に一緒に寝かされ、二人の頭に装置を被せられていた。

 

『どうだ?ティオル第二皇太子と龍姫のシンクロ率は?』

 

『完全に適合しています。やはり二つに分けられた“ゾハル”を取り出すのは不可能では?』

 

『無理という事か?』

 

すると一発の銃声が響く。

 

『私の前に不可能や無理という言葉は口にするな……即刻ゾハルを取り出せ!!』

 

謎の老人が科学者に命令を下すと、機械が動き、キオとサラの首や四肢に拘束具が取り付けられる。

 

『安心しろ、あの様な“異常でハレンチな民”の様には扱わない』

 

老人はがそう言った直後、キオの断末魔の叫び声と共に、大咆哮が響く。拘束具が破れる音、研究室内を暴れまわり、拘束されているサラの拘束具を破壊し、サラを連れ、研究室から脱出する。燃え盛る研究室内の機械に埋もれていた老人が現れ、焼け爛れた顔で逃げるキオとサラを睨みつける。

 

『追えぇぇぇっ!!!』

 

老人の命令が辺りに響き渡り、悠妃のファルシスがテレシア化したキオを追うのであった。

 

 

ーーー《回想終了》ーーー

 

 

 

 

 

 

 

サラは12年前の記憶を思い出し、テレシア化し暴れるキオを見る。

 

「思い出した……あの時、私を助けていた光の獣…あれは、キオだったのですね。」

 

サラは立ち上がり、決意する。

 

「ナーガ、カナメ……キオの所へ行きますわよ!」

 

「サラマンディーネ様!?」

 

「あの者はもはや“怪物”です!姫様にもしもの事があれば、行方不明のミレイ様に!」

 

「それでも!彼を放ってはおけません!」

 

サラはそう言い、ナーガとカナメを護衛に付け、ファルシスと戦っているキオへと向かう。

 

ファルシスは振り払おうと、キオの尻尾に噛みつき、振り回す。だがキオもただ振り回される訳でもなかった。遠心力を利用し、ファルシスの翼に噛み付く。ファルシスは悲鳴を上げ、倒れる。キオはファルシスの顔を押し付け、鋭い爪でとどめを刺そうとする。

 

「♪〜♪〜」

 

「『!?』」

 

すると何処からともなく歌声が聞こえて来る。キオはとどめを刺すのを止め、歌声が聞こえて来る方向を見る。焔龍號から下り、歌いながらキオの所へ歩いて来るサラであった。

 

「姫様!」

 

「サラマンディーネ様!」

 

ナーガとカナメが必死に止めようとするが、サラは勇気を出し、キオに近づく。キオはサラの『永遠語り〜風ノ歌〜』を聞き、一歩一歩と後退りしていく。するとキオの体が小さくなって行き、尖った耳、鋭い牙と爪、光の翼と尻尾を生やしたテレシアを模した龍人へと変わる。

 

「♪〜♪〜(お願い…元の貴方に戻って…)」

 

「『ああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』」

 

キオが突然暴れ出し、歌っていたサラを払いのけた。

 

「「姫様!!」」

 

キオはサラを殺そうと牙を向ける。

 

「♪〜♪〜」

 

「『っ!!』」

 

サラは倒れても、歌い続ける。するとキオとサラの周りにエーテル粒子が溢れる。

 

「♪〜♪〜……うっ!」

 

歌っているサラに首を掴み、唸り声を上げるキオ。サラは掴まれてもキオの頰に触れる。

 

「殺してもいい……だからお願い。あの時の“約束”…それだけは忘れないで…」

 

サラの言葉に、キオは思い返す。

 

 

 

 

─────────幼いキオは龍のサラの歌を聞いていた。

 

「綺麗な歌だね♪」

 

「うん、私の世界の始祖“アウラ”様から教えられた歌なの♪」

 

「アウラ?」

 

「私達を支えてくれる聖龍様なの!」

 

「会ってみたいなぁ……でも僕たちはこの世界でしか会えない存在…君の世界に行こうとしても、それぞれの世界の出入り口は僕と君を入れさせてくれない…」

 

「……ねぇキオ」

 

「?」

 

「二つプレゼントがあるの♪目を瞑って♪」

 

サラは無垢な笑顔をキオに見せる。キオはさの言うことに従い、目を閉じる。キオの唇にサラの唇を重ねたのだった。

 

「っ!?」

 

キオは慌てて、サラに言う。

 

「な、何!?」

 

「これが一つ目♪キオ、大〜好き!!」

 

「うわぁ!」

 

サラは大好きなキオに抱きつき、告白する。

 

「二つ目は!私、キオの“お嫁さん”になりたい!」

 

サラの告白に、キオは……。

 

「うん!僕もサラちゃんと一緒にいたい!だからサラちゃん!将来僕の“お姫様”になってください!」

 

「うれしい!」

 

幼きサラ頰を赤くしながら、キオと共に将来を誓い合ったのであった。

 

────────────────────────

 

 

 

将来誓い合ったサラとの約束、キオの瞳が赤から翡翠色へと戻り、目を覚ます。

 

「……っ!!」

 

目の前にサラの首を掴んでいるキオは驚く。

 

「サラ!!!」

 

キオは半分テレシア化した姿のままサラを解放し、心配する。

 

「……キオ?」

 

「あぁ!俺だ!」

 

「本当にキオなのですか?」

 

「……ごめん、お前を傷つけようとしていた。」

 

「良いのです。貴方が戻って来れて…」

 

サラの無事にキオは安心していると、ファルシスが起き上がる。

 

「サラはあの異空間を何とかして……俺はファルシスを倒す。セイレーン!!」

 

セイレーンのツインアイが光り、再起動する。キオはセイレーンに乗り込み、ファルシスへと向かっていく。サラも焔龍號を呼び、すぐに発生した異空間へと向かい、バスターランチャーを放つ。しかし、迫り来る異空間にバスターランチャーの粒子収束が歯が立たなかった。

 

「どうすれば!」

 

『撤退するのじゃ、サラマンディーネ』

 

「大巫女様?」

 

思い掛けない通信に思わず眼を見開く。

 

『龍神器はアウラ奪還の中心戦力、万が一があってはならぬ』

 

「っ…ですがっ」

 

その言葉に一瞬、息を呑むも、サラマンディーネは口調を荒げる。

 

『リーベルの民とたった今、エーテリオンの全勢力がそちらへ向かっている。後は彼らに任せるのじゃ。』

 

通信モニターにリーベルの民とエリュシュオンごと移送する複数の艦隊が映し出される。しかし…。

 

「それでは間に合いません!」

 

大巫女の指示も分かる。龍神器にもしものことがあれば、今後の作戦に支障をきたすことはサラマンディーネがよく理解している。だが、今からではドラゴンの部隊とエーテリオンが到着するより前に事態が悪化してしまう。

 

なにより、眼の前で危機に瀕している民や都を放って置いて見殺しにしてしまう事になる。

 

『撤退せよ』

 

サラマンディーネの気持ちに大巫女の声も硬くなる。揺れているのは同じなのだ。だが、それでもドラゴンを纏める者として、毅然と遮る。

 

「民を見捨てるなど、私には……!」

 

『これは命令じゃ』

 

サラが戸惑っているその時、異空間から飛ばされてきた向こうの世界のエアリアのスタジアムから吸い込まれたエアバイクが無数に舞い上がり、焔龍號に降り掛かった。

 

「っ!!」

 

反応の遅れたサラマンディーネが眼を見開くと、焔龍號の前にヴィルキスが現れ、エアバイクをラツィーエルで粉砕する。

 

「何をぼけっとしてるの!サラマンドリル!!」

 

「アンジュ!」

 

その時に皆の目に異変の空間が人々を飲み込んで行く様子にレオン達はくぎ付けとなる。

 

「何なの!?」

 

アンジュとサラがそれに言葉をこぼす中でタスクがそれに説明する。

 

「エンブリヲだ!」

 

「「え!?」」

 

その事に二人は驚く。

 

「エンブリヲは時間と空間を自由に操る事が出来るんだ! 俺の父さんも仲間も石の中に埋められて死んだ…あんな風に!!」

 

タスクの説明を聞いたアンジュ達は驚いている中でアンジュがヴィヴィアンとラミアの姿を見つけた。

映像にはラミアがエアリアのバイクに下敷きになっていた。

 

「ヴィヴィアン!!」

 

「ヴィヴィアンの方は私に任せて!」

 

ノアがヴィヴィアンの所へ向かうが、迫り来る異空間に手も足も出せないアンジュ達。

 

「どうすれば良いの!?」

 

『「方法なら一つあります」』

 

「「っ!?」」

 

するとそこに、ココを連れたキオの本当の母親『レイナス・オルド・エルダー』改め、終焉のテレシアが現れる。レイナスはココを意識を乗っ取り、翻訳していた。

 

『「あなた方の歌と私の歌……そしてキオの誠の目覚めが必要です。」』

 

「キオが!?」

 

『「信じなさい…」』

 

レイナスは優しい眼差しでサラの方を向く。

 

「……分かりました。」

 

そして丁度そこへファルシスを投げ飛ばしてきたセイレーンが飛来する。

 

「キオ!」

 

「それで?俺が必要?」

 

キオが必要と問いかける。

 

「え?」

 

「早く歌ってくれ!」

 

キオはそう言い、異空間へと向かう。アンジュとサラはモニターを見て互いに頷き、『永遠語り〜光ノ歌〜』と『永遠語り〜風ノ歌〜』を歌い出す。

 

「「♪〜♪〜」」

 

アンジュとサラ、二人が歌い出すと、レイナスも歌う。

 

『「♪〜♪〜♪〜」』

 

三人の歌姫の歌が重なり合い、異空間へ向かっているセイレーンに異変が起こる。セイレーンの後方にアルヴィース、メツ、ヒカリの紋章が浮かび上がり、セイレーンが光の剣を持つ。キオはそれに驚き、自分の手に持っているアルヴィースのモナドを見る。

 

「やるか?」

 

『あぁ、やれるとも…』

 

「良し!!」

 

キオはアルヴィースのモナドを持ち、空中に三角形を描く。三角形に『神』『滅』『聖』それぞれの漢字が浮き出る。そしてモナドを抜刀の構えをし、一気にモナドを振るう。

 

「三位一体!!トリニティ・スプリーム・ブレイカー!!!」

 

緑、紫、黄色に輝くΔ状のビームが回転し、ファルシスや異空間に炸裂する。ファルシスを包み込むビームがファルシスを塵に変え、異空間諸共消滅させていく。

 

 

 

 

事態が一段落して、ヴィヴィアンはラミアに抱き付きながら泣きついて、ラミアもヴィヴィアンを抱きながらヴィヴィアンの頭をなでていた。

その様子を集まったオスカー達が優しく見守っていた。

 

そしてキオ達がアウラの塔の前に集まって話し合った。

 

「何とか収まったみたいだ」

 

「ええ、そうね」

 

キオの問いアンジュも頷きながら言い、サラマンディーネも頷きながら言う。

 

「あなた達のお蔭で、民は救われました。本当に感謝しますわ、キオン、タスク殿、アンジュ」

 

するとサラマンディーネは自分でも少しばかり信じられない表情をする。

 

「まさか私達の歌がキオのにを与える事に…、それもアンジュのあの歌が……」

 

「え?」

 

「貴女が歌ったのは、かつてエンブリヲがこの星を滅ぼした歌……貴女はあの歌を何処で…?」

 

「お母様が教えてくれたの、どんな時でも進むべき道を照らす様にって」

 

アンジュは自分の歌を教えてくれた母の事を言い、それにサラマンディーネは言う。

 

「なるほど、わたくし達と一緒ですね?」

 

「えっ?」

 

「"星の歌"…私達の歌もアウラが教えてくれた物ですから。何て愚かだったのでしょう、貴女は私の所有物だなんて……」

 

「アンジュは元皇族。上に立つ者が皆を動かす指導者。誰かが困っていたら、助けるのは当然。」

 

キオはアンジュを見ながらそう言い、それにアンジュは少々照れくさそうに顔を逸らす。

そう話す中でサラマンディーネは髪をおさえながら言う。

 

「アンジュ…私はあなたのお友達になりたい、共に学び…共に歩く友人に……」

 

「長いのよね~、サラマンデンデンって…」

 

「えっ?」

 

っとその事にキオ達はアンジュの方を振り向き、アンジュはサラマンディーネの方を向きながら言う。

 

「『サラ子』って呼んでいいなら」

 

「……では、私もアンジュの事を『アン子』と」

 

「それはダメ」

 

アンジュの呼び名を否定するアンジュ。半身テレシア化したキオは気を失っているココを自分の膝枕で寝かしつけ、終焉のテレシア……本当の母親に問いかける。

 

「まさか……お前が本当の母さんだったなんて。」

 

終焉のテレシア……レイナスは悲しい表情で首を伸ばし、キオの額と自身の額と触れる。

 

『本当にごめんなさい……あなたやココル、フェメルを総裁Xから守りたかった。ですが、私にはあの世界でやり残したことがあります。』

 

レイナスはテレパシーでキオにそう告げ、ワームホールを展開し、未開大地『ウル』へと戻る。

 

キオはココを抱き上げ、真なる母親を見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エルダーゴア・キャッスルの格納庫で漆黒のフェイトは首に身に付けているロケットの写真を見る。それは母であるレイナスと共に幼きフェメルの写真であった。

 

「母上……」

 

フェメルが悲しそうな表情をしていると。

 

「おやおや…今は亡きレイナス様ではありませんか。」

 

「っ!?」

 

現れたのはオラクルの一人『メシア』であった。

 

「メシア……いつから。」

 

「まぁ、そう気にしないでくださいよぉ〜。それより、お前に……良い上官を連れてきた。」

 

メシアがそう言うと、現れたのは全身が黒いプロテクトアーマーを装着した黒騎士であった。

 

「誰だソイツは?」

 

「総裁“X”様から君にプレゼントと……最強にして究極の『黒騎士』でございます。」

 

「……どれぐらい強い」

 

「それはもう、トリニティ・プロセッサをも超える程でございます。あぁ、それと……」

 

メシアがある物を渡す。

 

「このバンシー・デバイスの強化も…」

 

「………」

 

フェメルは首を傾げ、メシアは喜びながらフェメルのバンシー・デバイスの改造を急ぐのであった。

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