クロスアンジュ 因果律の戦士達   作:オービタル

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第3話:孤島のタスク

 

アルゼナル甲板に着陸したキオはヘルメットを脱ぎ、顔を露わにした。

 

「……?(何?この状況……)」

 

キオはそんな事を思っている中、

 

「………………、」

 

藍色のツインテールの少女は固まられ。

 

 

「はわ…はわわわわわわわわ…」

 

片目が髪で隠れた少女には震えられ。

 

 

ヴィヴィアン「へー、ふーん…おおー…!」

 

赤いショートカットの髪が特徴で、常に棒付きキャンディを舐めている少女にジロジロ見られ。

 

 

「………は、初めて見たぜ………」

 

橙色のショートカットの少女にも珍しがられ。

 

 

「………………へぇ~」

 

赤いツインテールの髪が特徴の少女に妖しい輝きを投げかけられ。

 

「………………ポッ///」

 

ピンクの長髪の少女にジロジロと…いや何か違うような?

 

他にも甲板の少女達も、キオを見て呟く。

 

「お、"男"よねあれ多分…いや絶対…! 」

 

「何で?何で男がこの基地に来るの? 」

 

「ここ、"ノーマ"の施設なのに…。 」

 

「本当に居たんだ、男って…。 」

 

ヒソヒソ…ヒソヒソヒソヒソ……。

 

 

他にも何か色々な感情が綯交ぜになった視線で、四方から射られているような感覚を味わい。

 

「……………、」

 

何故だろう。

別に法を犯したワケでも無いというに、この場に物凄く居辛い空気が立ち込めているのは気の所為か。

女所帯に男性である自分が紛れ込んでいるのが矢張り彼女達の不安を駆り立てているのか。

 

…いや。

 

原因はもっと別の…根本の部分から"自分"と"彼女"達の間で、何かが決定的に噛み合っていないような。

 

だが、今はそれを問うてるべき時では無い。

 

「…失礼、自分の顔に何か?」

 

キオは諸々生まれた疑念をあえて身の内に押しやりつつ、話を進めるべく努めて冷静に声をかける。

 

 

 

「―――はっ…?え?い、いいええ!!別に、別になんでもあり、ありま、あり…!」

 

「(ガチガチじゃねえかよ…)」

 

普段見ることのない副長の姿に、思わずロザリーは額に手をやる。

緊張の余り声が上ずっているのがバレバレだ。

 

「(…………へぇ、"あの"堅物サリアがねぇ)」

 

「失礼よヒルダちゃん、サリアちゃんだって乙女さんなのよ?」

 

「…口に出してないのに、人の思考を読むの止めてくんない?」

 

「あら、ごめんなさい♪」

 

エルシャが舌を出してテヘペロをすると、ヴィヴィアンがキオの前に出る。

 

「なあなあなあ、兄ちゃん名前なんてんだい!?」

 

「な!ちょっ…―――ヴィヴィアン!?」

 

ある種空気の読めてないヴィヴィアンの行動に驚く一同。

だが男(キオ)はその勢いのある質問にたじろぐ様子もなく、ごく自然体で質問を返す。

 

キオ「…そういう君は、ここの職員か?」

 

ヴィヴィアン「おう、アタシはヴィヴィアン!よろしくだにゃ!!」

 

言って、彼女はキオの目の前に右手を差し出す。

 

「ヴィヴィアン………!?」

 

「(あんの、ノーテンキ娘……)」

 

幾ら何でも気安すぎるその態度に、サリアの表情が真っ青に染まり。

ヒルダもまた眉根を潜めてヴィヴィアンを見据える。

 

…"男"が自分達"ノーマ"からの握手なんて、受ける訳がないだろうに…。

 

しかし……。

 

「……キオ。キオ・ロマノフだ」

 

キオは(無表情のままだったが)不快感を全く顕にせずにその手を握り返す。

 

「え……?」

 

「……は?」

 

―――どよ…どよどよどよどよ……!!

 

 

各々の予期せぬその結果に、周囲が重くどよめいた。

 

「(…何なんだ)」

 

自分からすればごくごく一般的な行動を取っているだけなのだが。

どうもそれが尽く彼女達の"ナニか"に触れてるようで…。

 

ヴィヴィアン「………、」

 

握手を受けている"ヴィヴィアン"と名乗った少女も、何故か呆けたようにこちらを見ている。

先程からこちらにおいて、全く話が進む気配が無い。

 

「……(どうしたものか…)」

 

などと、キオが思案している所に…。

 

「お前達、揃いも揃って何をやっている!!!」

 

甲板中に響き渡らんかという硬質的な、それでいて凛とした声。

 

それを耳にした少女達は、どよめきを一瞬にして止め。

奥の人垣を割るようにして中から現れたのは、憲兵を引き連れた…片腕に義手と思われるアタッチメントを装着した相齢の女性。

 

「帰還後の自由はある程度許されているとはいえ、規律を乱す行いを推奨した覚えは無いぞ?」

 

《い、イエス・マム!!!!!》

 

統率性を多分に含んだ物言いに、瞳の奥に輝くは強い意志。

もしかしなくとも間違いない、自分の眼前に現れたこの女性こそが…。

 

「……さて。部下共が失礼したな、キオ・ロマノフ……私がこのアルゼナル基地の司令官を賜らせて戴いている"ジル"だ」

 

 

「…キオ・ロマノフです。受け入れを感謝致します、司令」

 

手馴れた敬礼の後、キオは差し出された"右手"を当然のように握り返した。

 

 

 

「おや?義手程度では物怖じせんか?」

 

「…戦いの場に身を置く者としては、見慣れた物ですので…」

 

「フッ……そうか」

 

若き司令は何処か喜々としたように目線を細めるが。

 

それも一瞬の事。 するとキオの目の前が光に包まれ、未来視が起こる。

 

ジルが彼女達を道具として扱い、エンブリヲに復讐している姿が映る。だが結果、彼女達は全滅する姿が目に映るのであった。未来視が終わり、キオは薄々と警戒する。

 

貴官が何者であり、こちらもまた何者であるか、互いに説明を求めねばならない事は数多いが…その前に」

 

言葉をそこで打ち切った司令は、キオの前に"あるモノ"を提示する。

 

「(……これは、何だ?)」

 

差し出されたのは白地に麻で編まれたごく変哲の無い…何処からどう見ても"唯のロープ"にしか見えないが。

一体コレを自分にどうせよと言うのだろうか。

 

「何、別段私は難しい事を言うつもりは無いさ―――」

 

貴官はコレを、"手を使わずに結べるか否か"。

それを訪ねたいだけだ。

 

「(……???)」

 

司令からの謎の問いに、無表情が常のキオが珍しく眉根を潜め当惑の表情を見せた。

 

出会い頭で、しかもこのような非常時にする質問にしては稚拙が過ぎる。

 

「(何かの符合か、まじないの類か?嫌……)」

 

しかし、いずれにせよ。

 

「…申し訳ありませんが、出来かねます」

 

「なんだと?」

 

「ですから、自分にはそのような呪い師もどきのような力などは無い。と言っているのです」

 

これがタスク辺りならまた別だろうが(アレは手品の類だが)、少なくとも自分はそんな芸当は持ってない。

 

それがキオ・ロマノフという男の共通認識であり、己の価値感から導き出した正当な結論だった。

 

 

だが。

 

その一言が、決定的となる。

 

 

ザワ…ザワザワザワ……!

 

 

周囲から再びざわめきが、しかし今度は珍しさからではなくもっと別の。

何か、見てはならないモノを見てしまったかのような驚愕に彩られた表情で、こちらを見ている。

 

ジル「フッ」

 

司令もまた、喜色なのかそうでないのか妙な雰囲気で口角を釣り上げる。

 

「(…何だ?)」

 

周囲の空気が突如硬質化して迫るような圧迫感。

まるで、大勝負の最中にカードを開く直前で大負けを提示させられたような……。

 

キオ・ロマノフのその予感は的中していた。

 

尤も。

 

ジル「憲兵!至急この男を拘束せよ!!」

 

キオを拘束しようと憲兵が警棒を振り下ろした直後、キオはアルヴィースを召喚し、光の大剣であるモナドを振るう。モナドからエーテルの波動が放たれ、憲兵が吹き飛ばされる。さらに空から警戒していたパラメイルがアサルトライフルを撃ってきた。キオは因果律予測を発動し、弾丸の軌道を読み取り、あっさりと回避する。

 

「何っ!!?」

 

キオはヘルメットを被り、スーツのバーニアで高く飛び上がり、パラメイルのコックピットに飛び移る。

 

「っ!!?」

 

キオはコックピットハッチを掴み、スパルタンとしての強靭な力でコックピットハッチを引き剥がした。

 

「嘘っ!!?」

 

ライダーが驚くと、キオは拳でコンソールを貫く。システムを破壊されたグレイブは回転しながら落ちて行き、ライダーを掴み上げて助け、飛び降りる。

 

「セイレーン!!」

 

キオはポーチからセイレーンのコアクリスタルを投げ、セイレーンを呼び出す。セイレーンはギリギリの所で飛翔し、ライダーを甲板へと投げ捨てた。華麗に舞い踊るセイレーンは海面をスケートのように滑り、光の速さでアルゼナルから姿を消した。

 

「己れっ!!キオ・ロマノフ!!」

 

ジルは拘束できなかったことに悔しがり、消えたキオに怒りを込み上げる。

 

 

 

ジル達から逃げ切れたキオは何処かの島で着陸し、次元の彼方にいるインフィニティに通信回線を開いていた。

 

『あ、キオさん!よかった〜、無事で♪』

 

「思っていたよりも、アルゼナルは厄介な人達だらけだった。ただ人を助けただけなのに、拘束しようとしたんだ」

 

『そりゃ、そうですよ!怪しまれるのは当然です!』

 

「はぁ……」

 

キオがため息をしたその時、背後から誰かの気配を感じた。キオはすぐさま振り返り、ホルスターからハンドガンを抜き、森の方へ構える。

 

『どうしたのですか!?』

 

「俺の後ろに……誰かが隠れている。姿を見せろ!」

 

キオが警告を言うと、森の中から現れたのはキオぐらいの身長のある青年であった。

 

「ご、ごめん…驚かすつもりはなかったんだ」

 

「……所属は?名前は?」

 

「俺はタスク…」

 

「?……お前がタスクか?」

 

「え?」

 

『タスクさん!お久しぶりです!』

 

「リン!?とすると君は?」

 

「あぁ、エーテリオン所属のキオ・ロマノフ。天の聖杯のドライバーだ」

 

ようやくタスクと出会ったキオは島で彼の事情を話すことになった

 

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