クロスアンジュ 因果律の戦士達   作:オービタル

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第41話:歪んでいく世界・前編

各地で時空融合が開始して、各地に甚大な被害が及んでいた。

それにはサラ達の世界も影響が及んでおり、アウラの民達は宮殿へと避難をしていたが、時空融合の嵐が宮殿にまで迫っていた。

 

ミスルギ皇国に居るエンブリヲは大きな地図の上に人形を置いて、卓上を見ながらニヤリと笑う中、外では新たな世界の創造の犠牲者が刻一刻とその数を増していった。もう人間の世界のかなりの地域が破壊され、そしてそれに比例するかのように、夥しい数の人間がその計画に巻き込まれて生命を落としていた。

 

「重力波干渉計が、急激な振動を検出」

 

「始まったのですね、時空融合が」

 

「マナが使えなくなったのは、アウラの全エネルギーを時空融合に注ぎ込んでいるためでしょう」

 

アウローラのブリッジで、状況の分析が行われている。混乱しているのは何も人間の世界だけではない、真なる地球でも遂に始まった時空融合を、大巫女以下の全ての面々が固唾を飲んで状況の推移を見守っていた。

 

「エプトンの放射強度より予測される時空融合の境界分布、出ました」

「予想される、時空融合の中心点は?」

 

サラが一番重要な点を尋ねる。

 

「ミスルギエリア、暁ノ御柱です」

 

データが示した地点は、やはりと言うか当然と言うかエンブリヲのいる場所、そしてアウラのいる地点だった。

 

「二つの地球が混ざり合った時、全ては破壊され死に絶えるでしょう…その前に何としても、アウラを奪還せねばなりません」

 

「ヒルダ!アンタまだアンジュを!?」

 

「んな訳ねぇだろ!地球がなくなったらぶっ壊す世界も無くなっちまうしな!アウローラ、機関全速!目標、暁ノ御柱!」

 

ヒルダの指示を受けてオペレーターの一人、オリビエがアウローラを起動させる。と、その途中で不意に電子音が鳴った。

 

「通信です!スピーカーに切り替えます」

 

振り返ってオリビエがそう報告した直後ノイズが走り、そして次に、

 

『アウローラ、聞こえる?こちらアンジュ』

 

アウローラに懐かしき声が響いたのだった。その声に、ブリッジの面々が顔を綻ばせた。

 

「これより帰投する。アウローラ、返事しなさい!」

 

相変わらずの怒鳴りに通信を聞いていたキオ達は呆れてしまい、チャールズ達はキルグナスを浮上させる。

浮上して来たキルグナスを見て、タスクとアンジュはモモカを連れてキルグナスへと入って行った。

 

収納された三人は格納庫で待っているレオン達に向かい入れられる。

 

「「アンジュ!!」」

 

「お帰り!!」

 

すぐさまヒルダ達がアンジュの元に行き、アンジュは笑顔でヒルダ達に言う。

 

「ただいま皆、遅くなっちゃってゴメン」

 

「たくっ!何処ほつき歩いてたんだ!てめぇはよ!」

 

ロザリーが相変わらずの意地悪風な言い方でアンジュは安心し、キオ達はタスクに近寄る。

 

「待ってたぜタスク。遅い帰投だったな」

 

「あはは…、ちょっとね」

 

タスクは苦笑いをしながらキオ達に言う。するとエマがやって来てモモカの姿を見て安心した。

 

「モモカさん!無事だったのね!」

 

「監察官さん! あっ…お酒やめられたのですね?」

 

モモカはその事をエマに言い。エマは目線を反らすも何とも情けない表情で言う。

 

「飲んでいる場合じゃないわ…、私もリベルタスに参加します!!知ってしまったもの…人間とマナの真実を」

 

「…そう、エルシャが。それと、随分と派手な服装になったね。」

 

アンジュがキオの新しいスーツを見て呆れる。

 

「随分?……あっちの世界で6000年以上生きて、師匠と共に修業して帰って来た俺は、エンブリヲの数千倍以上強くなったからな。期待しておけよ」

 

キオは拳を胸に当て、ぐーサインを出す。

 

「あれ?ヒルダ、司令は何処?」

 

「あ?今の司令は“私”」

 

「え?じゃあジルは…?」

 

 

 

事実を知ったアンジュはアレクトラを謹慎している司令室に入る。

 

「良く帰ってこれたな…」

 

「えぇ、皆のおかげよ.……」

 

「んで、私を笑いに来たのか?」

 

アレクトラはそう言うが、アンジュは、

 

「聞いたわよ、エンブリヲの手込めにされていたそうだね」

 

「っ.…….」

 

「ま、貴女みたいなお馬鹿な人は、漬け込まれるからね」

 

「喧嘩を売りに来たのか?」

 

「聞きたいことがあるのよ.エンブリヲの殺し方を教えて…」

 

「何?」

 

「アイツは死ぬ度に多重存在と入れ代わる…タスクから聞いたわ….貴女、言ったわよね…ヴィルキスじゃなければ殺せないって。」

 

アンジュの問いに、アレクトラは返答する。

 

「……その不確定世界の何処かに、奴の本体があるんだ。」

 

「そう、それで?これから貴女はどうするの?」

 

「……私はもう、司令官の任を剥奪されたよ」

 

アレクトラの言葉に、アンジュが怒鳴り、アレクトラの胸ぐらを掴む。

 

「腑抜けた事を言ってるんじゃないわよ!貴女の勝手な復讐のせいで、何れだけの死人が出たと思っているの!!?」

 

「フンッ!私に何が出来ると言うのだ?革命にも失敗したこの私に…」

 

 

パシュッ!!

 

 

アンジュはアレクトラの頬を平手打ちし、あることを言う。

 

「私を助けてくれたの…サリアよ」

 

「何?」

 

「哀れだったわ……貴女を忘れようと、あの男に漬け込まれちゃってる。.責任、ないとは言わせないわ…アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ…」

 

アンジュはそう言い、司令室から出ていく。

 

 

 

 

その頃格納庫では、チャールズがフェイトにある物を渡す。

 

「これは?」

 

それはキオと同じ黒いコートであった。

 

「キオに頼まれて、お前用に裁縫したのだ。黒いコートは無法者であり、ヤクザを意味をしているからなぁ」

 

「ヤクザ……無法者……エルダー皇家は神に祝福されし種なのだ。こんな野蛮人の服を着るだと?」

 

「んな事気にすんなって!!」

 

グダグダ言っているフェイトを拳骨するキオ。頭をさするフェイトと笑っているキオの所に、黒いコートを着たココがやってくる。

 

「お兄ちゃん!」

 

三兄妹が並ぶと、マリアがカメラで三人の並ぶ姿を撮った。

 

「フフフ…いい写真が出来たわ♪」

 

写真が乾くと、三人の写し絵が出来る。

 

「……こんな時に、何を?」

 

「何って?本来の兄妹写真じゃないか、もしかしたら……もう会えなくなる為の。」

 

「…………大事にしまって置く。」

 

フェイトとキオ、ココは写真を御守り代りとしてポケットの中に入れる。

 

その頃、時空融合が迫る中、ドラゴン達は時空融合を抑えようと雷撃を放つが、時空嵐の引力に引き寄せられ、他のドラゴン達と共に巻き込まれていく。迫り来る時空融合の嵐に危険を察知した大巫女は大声で民達に言う。

 

「皆の者下がれ!!エリュシュオンへと避難するのじゃ!!」

 

また偽りの世界でも、マナを失った人間達は自分だけが助かりたいと、ローゼンブルム王国専用の輸送機に乗り込もうと押し掛けてくる。

 

 

 

 

その頃、キルグナスから海が見える場所でキオとサラが二人っきりで眺めていた。

 

するとキオはポケットからある箱を取りだす。

 

「サラ、これ…」

 

「キオ、これは?」

 

「……開けたら分かる。」

 

キオは頰を赤くし、サラが箱を開ける。

 

「……これ」

 

箱に入っていた物。それは紅色の宝石をつけた指輪であった。

 

「……向こうの世界で徹夜して作ったんだ、サラの為に。だからその……」

 

キオは自分の心の迷いを振り切り、サラに言う。

 

「サラ!この作戦が終わったら……俺と結婚してくれ!」

 

「……」

 

「……(だぁ〜〜っ!!言った!ついに言ってしまった!!これで成功すれば……)」

 

キオがそう思っていると。

 

「……よ、よろしくお願いいたします。」

 

「え……?結婚……してくれるのか?」

 

「……はい♡」

 

「っ!!!!!やった〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

 

キオが告白に成功すると、通路の角の陰に隠れていたオスカー達が飛び出す。

 

「お、お前ら!!?」

 

「すまん、キオ。見てたわ♪」

 

「キオ!おめでとう!!」

 

《おめでとう!!》

 

オスカー達とエルマ達や兵達が拍手する。するとアンがキオの背中を勢いよく押し、サラの方に向ける。

 

「いっそのことだ!今ここで結婚したら〜?」

 

今度は反対側からカナメがサラを押し、二人を強引にくっつけた。

 

「先ずは付き合ってからですよ!姫様!」

 

困惑する二人に、

 

「好きと言えば切り殺す!!」

 

っとナーガが暴走しながら割って入ってきた。

 

「それとも、お姫様が嫌いなのか?」

 

アンが問いながらキオの背中を指でつつく。

 

「嫌いでも切り殺す!!」

 

っとナーガはキオを睨む。追い詰められたキオは意を決して大声で叫んだ。

 

「だっ、大好きだ!!既に一線も越えているし、キスもした!!」

 

《…………いえ〜〜〜〜〜い!!!!》

 

衝撃の言葉に皆んなはさらに拍手や指笛吹を吹く。サラの頰がじんわりと赤く染まる。

 

「貴様〜〜!!!」

 

キオはナーガに切り殺されると思いきや、すぐに何本もの救いの手が伸びて、ナーガを引っ張っていく。サラはキオに顔を向けると、はにかみながら小声で言った。

 

「……嬉しいです……不束者ですが、よろしくお願いします…」

 

その言葉に女達から「ひゅ〜〜〜〜!!」と言う冷やかしの声が飛び、男どもは「もう一度愛を確かめるん為、キスしろ!キスしろ!」の大合唱。無責任に盛り上げて、キオをサラに向かって突き飛ばした。つんのめって出てきたキオにサラはニコッと笑いかける。

 

「や、やめろ!切り殺されたいのか!?」

 

オスカーとダグ、ラオ、アンに羽交い締めにされたナーガが暴走しながら叫ぶ。

 

「……言われなくとも、分かってる!」

 

キオは決心し、サラとキスをする。

 

《イエ〜〜ッ!!》

 

大盛り上がりの外野の歓声、羽交い締めされていたナーガは尊敬する姫を奪われた事に肩を落とす。

 

「皆んな!この戦いが終わったら!俺とサラの結婚を祝ってくれ!!」

 

《おお〜〜〜〜!!!!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

役者が揃い、そしてアウローラやキルグナス、インフィニティ、エーテリオン艦隊がミスルギ皇国へと進行していた。

 

「敵艦隊、捕捉!」

 

キルグナス格納庫、キオが皆んなに宣言する。

 

「皆…聞こえるか、アンジュに代わって、総司令のキオだ。俺達はこれからミスルギに突入しアケノミハシラに向かい、時空融合を停止させる。エンブリヲが創り出す勝手すぎる世界など一体誰が想像するか? ただ自分の想像する世界なんて、そんなの願い下げだ。

それに世界は....誰かが導かなきゃ幸福にはなれないって誰が決めた? 誰も決めていない...自分達の未来は自分達で見つけて歩まなければならない、ノーマやアウラの民に古の民、そしてエンブリヲの世界を拒絶し共に戦ってくれているエーテリオンとそれに何よりゼニスから自ら離れ戦ってくれる者達がスゲェよ!エンブリヲ…そしてゼニスことアルフォンス・斑鳩・ミスルギから世界を護る為に今こそ、立ち上がる時が来た! 作戦名は....『ラスト・リベルタス』!相手が神だろうが、何だろうが、俺達の手で野望を壊し、 共に戦い!生きて帰ろう!未来へと歩むために!」

 

《おおお!!!!》

 

キオの宣伝に皆は賛同するかのように声をあげて、アンジュは通信回線をキオに繋ぐ。

 

「結構いい言葉じゃない、上の立場の事。理解してるじゃない」

 

「一応ね……さぁ、行こう!!」

 

キオはグノーシスに乗り込み、皆んなは戦闘を開始するのであった。

 

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