クロスアンジュ 因果律の戦士達   作:オービタル

47 / 53
第43話:最凶の神

アンジュとサリアの目の前にレイジアに乗ったジルが現れたことに二人は驚いていた。

 

「ジル!?」

 

「ふっ、久しぶりだなぁ、サリア」

 

「何しに来たの?」

 

「会いに来たのだよ…昔の男に、」

 

「!?」

 

「聞いてなかったのか?……私がエンブリヲの愛人だって言うことを」

 

「!!」

 

サリアはジルの言葉に驚いた。

 

「さっ!退いてくれるかい?」

 

「あなたの事は!もう信じないわ!!私はエンブリヲ様騎士!ダイアモンドローズ騎士団、団長!サリアよ!あの方を元へは行かせない!」

 

「だそうだアンジュ…」

 

「は?」

 

「アウラの元へは行って良いらしい、」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて!」

 

アンジュはヴィルキスを動かしアケノミハシラへと向かった

 

「待ちなさい!アンジュ!」

 

クレオパトラがヴィルキスにビームライフルを向けるとレイジアが前に来て、ビームライフルをクレオパトラに向ける。

 

「私の相手をしてくれるんだろ?」

 

「邪魔をするなら!斬るわ!」

 

「ほぉ?」

 

クレオパトラがラツィーエルでレイジアに降り下ろし、レイジアはラツィーエルで防御する。

 

 

 

 

 

 

そして艦隊では多数来る敵を迎撃しており、リザーディアが報告する。

 

「時空融合終焉率83%」

 

「十字方向、数12」

 

「了解!」

 

アウローラはその方向にいる敵をヴィヴィアンと一緒に迎撃する。

 

「飛んで火に入るカブトムシ!!」

 

何故かヴィヴィアンは間違っている言葉を言いながらネビュラメイルとピレスドロイドを撃ち落とす

 

「続いて二次方向、数5!」

 

「了解!」

 

「右舷から大群が来るよ!」

 

「了解!」

 

「落としても、落としても切りがないにゃ」

 

「泣き言を言ってる暇はないよ!この船で皆を乗せて帰るんだからね!しっかり守りな!」

 

《イエス!マム!》

 

 

 

 

 

 

一方、真なる地球でも時空融合の影響は着実に広まっていた。大巫女はじめ避難してきた面々全員の顔に不安の色が浮かんでいる。

 

「っ!」

 

ドラゴンが次々と時空融合に飲み込まれていくのを見るたびに、大巫女が不安に瞳を揺らしていた。

 

「頼んだぞ、サラマンディーネ…」

 

大巫女の期待を一身に背負ったサラはその頃、途中に襲ってくるピレスロイドを蹴散らしながらメインシャフトからアウラの許へと降下を続けていた。

 

「全く、無駄な抵抗をする」

 

同時刻、ミスルギ皇城の上でエンブリヲはタスクと対峙していた。

 

「世界の崩壊は止められないというのに」

 

「止めてみせる!」

 

ライフルを撃ちながらタスクがエンブリヲへと突っ込む。

 

「アンジュと約束したからな。この世界を護るって!」

 

「哀れな男だ」

 

エンブリヲがブレードを展開すると迎え撃つようにタスクへと突っ込んだ。

 

「アンジュは、私と共に新世界にゆくのだよ!」

 

「っ!」

 

反論することなく、いや、する気も起きないのかタスクはそのままエンブリヲのブレードを受け止めた。

他空域ではヒルダとロザリーがクリスと鎬を削っていた。

 

「こんのーっ!」

 

ロザリーが両肩のキャノン砲から次々に砲弾を放つが、クリスは平然と避けながら近づいてくる。そこに上空からヒルダが斬りかかった。

 

「フン」

 

が、クリスはこれも平然と受け止めると、そのボディに蹴りを入れて落下させる。

 

「くっ!」

 

「はっ、弱」

 

侮蔑した口調で吐き捨てると、続けざまにロザリーが放ってきたライフルの砲撃を盾で受け止める。そして、お返しとばかりにライフルでビーム砲を発射した。

 

「その程度で私を力づくで連れ帰るとか、笑わせないでよ!人の事見殺しにして!」

 

「あの時は、助けに行きたくても行けれなかったんだ!」

 

「助ける価値もなかったんでしょ?」

 

ロザリーが説得を試みようとするものの、今のクリスの心には届かない。

 

「弱いから、虐げられて、利用されて、馬鹿を見るんだよ!」

 

憎しみに凝り固まったクリスがヒルダに突っ込んで斬りかかる。ヒルダも、何とかそれを受け止めた。

 

「だから、エンブリヲ君は私を強くしてくれたの!」

 

 

クリスの猛攻がヒルダとロザリーを襲う。その猛攻に、二人は表情を歪めるしかなかった。

また、そこから少し離れた空域ではジルとサリアが激しく交戦していた。

 

「ラグナメイルと騎士の紋章。それで強くなったつもりか、サリア?」

 

ジルが挑発する。が、サリアは動じる様子はない。

 

「エンブリヲ様は、私にすべてを与えてくれたわ! 強さも、愛も、全て!」

 

ジルを憎しみの表情で見つめる一方、エンブリヲのことを語るときは穏やかな表情になるサリア。ジルはサリアに対してフォローらしいフォローをしなかったという点で、サリアはエンブリヲの本性を見抜けなかったという点で互いに自業自得なのだが、その結果二人は空しい戦いを続けることになった。

 

「愛だと?」

 

サリアの発した『愛』という単語にジルが反応して嘲笑する。

 

「奴は誰も愛したりしない。利用するためにエサを与え、可愛がるだけだ」

 

「!」

 

サリアの瞳が揺れた。思い当たる節があるからだろう。

 

「私もそうやって弄ばれ、全てを失った。目を覚ませ、サリア!」

 

だが、

 

「言ったでしょう? 貴方の言葉は信じないって!」

 

それでも今のサリアにはジルよりもエンブリヲに対する比重が大きかった。ブレードを構えてそのまま突っ込んでくる。そして二機は、激しく鍔迫り合いを繰り広げた。

 

「私を利用していたのは、貴方よ!」

 

恨みをぶつけるかのように何度も斬りかかる。だが、そうしながらも不思議とサリアは落涙していた。

各所でそれぞれの思惑の入り混じった戦いが繰り広げられる中、エンブリヲとタスクの戦いが激しさを増していた。

 

「決して穢されることのない美しさ…しなやかな野獣のような気高さ…実に飼いならしがいがある」

 

「!」

 

エンブリヲのその言葉に、タスクが青筋を立てる。

 

「お前は知るまい、アンジュの乱れる姿。彼女の生まれたままの姿を」

 

挑発するエンブリヲ。だが、

 

「知ってるよ」

 

そう返され、エンブリヲの表情が歪む。更に、

 

「アンジュの内腿の黒子の数までね」

 

タスクのこの言葉にエンブリヲの表情の歪みが増した。

 

「お前は何も知らないんだな、アンジュのことを」

 

挑発に挑発で返し、タスクがエンブリヲに突っ込む。

 

「アンジュは乱暴で気まぐれだけど、良く笑って、すぐ怒って、思いっきり泣く。最高に可愛い女の子だよ。彼女を飼いならすだって? 寂しい男だな、お前は!」

 

振りかぶって斬りかかったタスクを、エンブリヲは盾で受け止めた。

 

「ほぉ、以前の貴様ではないようだな?……っ!?」

 

その時にはいつもの余裕ある態度に戻っていたエンブリヲだったが、接触したことでタスクから何かを感じ取ったのか、エンブリヲの表情が再び歪んだ。

 

「貴様、アンジュに何をした!?」

 

「アンジュとしたんだよ、最後まで!」

 

「何!?」

 

「触れて、キスして、抱きまくったんだ、三日三晩!」

 

その内容に呆けてしまったエンブリヲのボディに蹴りを入れる。エンブリヲはショックからか少しの間流されるままにしていたが、すぐに体勢を立て直すとブレードを今まで以上に展開させた。

 

「下らぬホラ話で我が妻を愚弄するか!」

 

激昂するエンブリヲ。いつの間にか妻になっているが、そんなことは調律者様には些末なことなのだろう。だが、タスクも負けてはいない。

 

「真実さ。アンジュは俺の全てを受け止めてくれたんだ。柔らかくて、温かい、彼女の一番深いところで!」

 

「!」

 

それが真実だと分かったからか、その内容が余りにも度し難いものだったかはわからないが、エンブリヲの動きが止まる。そのエンブリヲに、タスクが再び斬りかかった。エンブリヲもライフルで牽制するもののタスクはその間隙を縫って距離を詰める。

 

「俺はもう、何も怖くない!」

 

エンブリヲはなんなくタスクの斬撃をかわしたが、その表情は今まで以上に歪んでいた。相当の怒りが見受けられる。

 

「何たる卑猥で破廉恥な真似を…!許さんぞ、我が妻を凌辱するなど…。貴様の存在、全ての宇宙から消し去る!」

 

そして、二人の男の戦いはいよいよ激しさを増したのだった。

 

 

 

 

 

 

ようやくサラがメインシャフトの最深部に辿り着いていた。そこには、彼女たちが求めて止まないアウラの姿があった。

 

「アウラ! アウラなのですね!」

 

喜びに顔を綻ばせると、サラは早速アウラを戒めから解放するためにライフルを発射する。が、それはアウラの周囲に張られたフィールドによって無効化されてしまった。

 

「!」

 

それに驚き、すぐさま得物をブレードに変えて斬りかかる。が、やはりフィールドによって弾かれてしまった。

 

「くっ!」

 

アウラのところまで辿り着ければ救出できると思っていたサラが唇を噛む。そのサラを排除するため、大量のピレスロイドがサラめがけて降り注いできた。

 

「邪魔を…するなーっ!」

 

言葉通り邪魔者を片付けるため、一旦アウラから離れてサラがピレスロイドに向かっていった。

 

「量子フィールド、50%に低下!」

 

アウローラでも増えてくるピレスドロイドやバグズに苦戦していた。エーテリオンの艦隊が次々に火を吹き、撃沈されて行く。

 

「残存艦隊が四割へと減少!このままではインフィニティもキルグナスも持ちません!」

 

「今更引き返すのか?残存している爆撃隊に通信しろ!カタストロフィー艦隊を始末するっ!!?」

 

インフィニティ艦体に揺れが起きる。ピレスドロイドやバグズは拉致があかないと自立から自爆モードへと切り替え、艦隊に向けて特攻を開始していた。

 

「フィールド、突破されます!」

 

「左舷隔壁、来ます!」

 

エマたちが報告した直後、アウローラの艦体を激震が襲った。被弾個所が爆発し、その場所にいた隊員たちが被害を受ける。

 

「被害状況は!」

 

振動が収まった後、ジャスミンがすぐさま状況の把握に努める。

 

「第一エンジン、停止!」

 

オリビエが報告した直後、アウローラが左に傾いた。そして重力に従って降下し始める。

 

「アウローラ、高度低下!」

 

「立て直せ!」

 

思わずジャスミンが命令した。が、

 

「駄目です! 降下、止められません!」

 

返ってきたのは不可能の返事だった。

 

「チッ!」

 

ジャスミンが即座に全艦に向けて通信を開いた。

 

『これから海面に不時着する! 総員、衝撃に備えろ!』

 

ジャスミンの命令に、アウローラの総員はすぐさま着水の衝撃に備えた。この辺りは流石に軍事組織と言ったところである。程なくしてそのままアウローラは海へ突っ込み、海面に不時着したのだった。艦内のそこかしこで悲鳴が上がる。それは、ブリッジでもそうだった。着水の影響で電源が落ちて一瞬真っ暗になったが、すぐさま予備電源に切り替わって照明が点灯する。

 

「…損害状況は?」

 

衝撃で頭を押さえつつも、ゾーラが報告を求めた。

 

「着水時の衝撃で、第二・第三・第七ブロック破損」

 

オリビエがそう、被害状況を報告する。その頃、マギーは医務室から飛び出し、近くに倒れている隊員たちの被害状況を把握することに努めていた。その後ろにはモモカが手伝いとしてついていた。

 

「モモカ、鎮痛剤を頼む!」

 

「はい!」

 

マギーとモモカはそれぞれ己の役割を果たすために走り出した。

 

「量子フィールド、消失しました!」

 

「対空火器も沈黙!」

 

「くっ、丸腰って訳かい」

 

その、ジャスミンのやり取りを聞いていたエルシャが、思い詰めたように表情を強張らせた。

 

「メイ!」

 

だがジャスミンはこの状況下と言うことも相まってそんなエルシャに気付くこともなく、メイへと通信を入れた。

 

「直せるか?」

 

『任せて!』

 

被弾個所である第一エンジンへと急行したメイがゾーラの通信に答える。

 

『20分で片付ける!』

 

「頼む!」

 

そこで通信を切ると、メイは早速修理に取り掛かり始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

その中で、アウラの許に辿り着いたサラは自分に襲い掛かるピレスロイドを撃墜することに労力を割かれていた。と、不意に自分を援護するかのようにビーム砲が放たれて、数基のピレスロイドが爆発四散する。

 

「何てこずってるのよ、こんなおもちゃに!」

 

やってきたのは当然と言うべきかアンジュだった。

 

「遅いですよ、アンジュ!」

 

自分のすぐ側まで降下してきたアンジュに、サラは悪態をつく。

 

「ええ…?」

 

そんな返事が返ってくるとは想定していなかったのか、アンジュは戸惑いの声を上げた。

 

「おもちゃの相手は任せました」

 

そう言い残すと、サラはその場から離れる。

 

「ちょっと、あれを撃つつもり!?」

 

サラが何をやろうとしているのか悟ったアンジュがその顔を顰める。

 

「それしか、アウラを助ける方法はありません!」

 

「アウラごと吹き飛ばさない!?」

 

「三割引きで撃ちますから、ご安心を!」

 

いつぞやの真なる地球でのやり取りを彷彿とさせる。あの時はそんなことは出来なかったが、この短期間でそれが出来るようにしたのだろう。大した技術と実行力である。

 

「じゃあ、とっととやっちゃいなさい!」

 

アンジュの発破に答えて…と言うわけでもないだろうが、サラは口を開いた。そして、

 

「♪〜♪〜」

 

龍神器の力を解放する永遠語りを詠い始めたのだった。と、彼女の龍神器、焔龍號のモニターに時空収斂砲の文字が躍ったのだった。そしてそれは、外で戦っているエンブリヲとタスクの耳にも届く。

 

「この歌は!」

 

「サラマンディーネさんか!」

 

戦いが新たな局面を迎えようとしている中、他空域での戦闘も引き続き続いている。

 

「私には何もなかった!」

 

サリアが己の思いの丈をぶつけながらジルに攻撃を仕掛ける。

 

「皇女でもない、歌も知らない、指輪だって持っていない。どんなに頑張っても選ばれなかった! ヴィルキスにも、貴方にも!」

 

激情のままジルの乗るレイジアのボディに蹴りを入れて吹き飛ばす。ジルは苦虫を噛み潰したような表情で何とか体勢を立て直して踏みとどまった。

 

「そんな私を、エンブリヲ様は選んでくれた!」

 

引き続き猛攻を続けるサリア。そして、

 

「だからアレクトラ、貴方なんてもういらないのよ!」

 

涙を浮かべながらブレードを振るい、レイジアの左足を斬り落とした。

 

「っ! 強くなったじゃないか、サリア」

 

揶揄するようにジルが語り掛ける。

 

「っ!」

 

それが挑発に聞こえたのだろうか、サリアは休むことなくジルを攻め立てた。その間も、着々と時空融合は進んでいき、真なる地球でもその被害が徐々に増してきていた。

 

「くっ!」

 

好転しない状況に思わず大巫女が唇を噛む。その時、その耳に入ってくるものがあった。

 

「この歌は!?」

 

大巫女の耳に届いてきたのはサラの詠う永遠語りだった。それにつられるように思わず上空を見上げる。

そこには、灰色の空に幾つも開いたシンギュラー…真なる地球で言うところの特異点があったのだった。

 

 

 

 

 

「時空融合、収斂率91%!」

 

アウローラブリッジ内に、リィザの報告が響き渡る。事態はいよいよのっぴきならない状況に足を踏み入れようとしていた。

護衛部隊はアウローラを護り、メイを始めとする整備班たちは被弾個所の修理に懸命に従事する。そして、

 

「マギーさん、倉庫から包帯と鎮痛剤を持ってきました!」

 

モモカも必死になって自分の使命を果たす。と、不意にモモカの背後が爆発した。

 

「ひゃあっ!」

 

爆風に吹き飛ばされたモモカだったが、運よく被害は転倒だけで済んだ。隔壁が閉じてそれ以上の攻撃にさらされなかったおかげである。が、対照的に外の状況の悪化は危険水域に入ろうとしていた。

 

『はぁ…はぁ…はぁ…』

 

その旗色の悪さを感じ取ったエルシャは、両肩のキャノンをパージして機動性を上昇させた。

 

『えっ!?』

 

そのことに気付いたルーキー三人が驚いた声を上げる。

 

「ヴィヴィちゃんは、皆んなを連れて逃げて!」

 

通信を開いてそう叫ぶと、エルシャはそのままピレスロイドへと突っ込んだ。

 

「エルシャ!」

 

ヴィヴィアンが驚く間にも、身軽になったエルシャのハウザーはピレスロイドに突っ込み、そして自分の方へと誘導する。

 

「こっちよ、円盤ども!」

 

目論見は成功し、ある程度のピレスロイドはエルシャを追尾した。だがそれは同時に、エルシャの身が危険にさらされることと同義である。案の定、程なくエルシャはピレスロイドに囲まれ、そして、その生命を刈り取ろうとする攻撃を受けた。

 

「エルシャーっ!」

 

ピレスドロイドのチェーンソーが迫ったその直後不意に現れた“何か”が、自分の周囲のピレスロイドを瞬く間に破壊したのだった。

 

「え…?」

 

予期せぬ事態に呆然とするエルシャ。自体が理解できぬまま次にそこに駆け付けたのは、何頭ものドラゴン達だった。助かったとは言えども推進能力がなくなり、重力に引かれて落下しようとしていくエルシャのハウザーの両手を、ヴィヴィアンがキャッチして浮上した。

そしてその間も、ドラゴンやエーテリオン艦隊が次々と多数のシンギュラーを通って真なる地球からこちらへ駆けつけてきたのだった。

 

「何が起きてるんだい!?」

 

状況の変化についていけないジャスミンが思わず口走る。それに答えたのはリィザだった。

 

「恐らく、時空融合の影響で重力場が脆弱になり、特異点が自然解放されたのでしょう」

 

『聞こえるか…。偽りの…いや、ノーマの民よ』

 

モニターに誰かの声が響き、直後に一人のシルエットが浮かんできた。

 

『我はアウラの巫女、アウラ=ミドガルディア』

 

「大巫女様!」

 

モニターに映し出されたその姿…大巫女に、リィザが驚きを隠せず、口を開いていた。

 

『アウラの民とエーテリオンはこれより貴艦を援護する!』

 

その宣言通り、シンギュラーから続々と降り立ったドラゴン達とエーテリオン艦隊は次々にピレスロイド、バグズ、フォルトゥラー、カタストロフィー艦隊の掃討戦に加わる。そして。

 

「おお! すげー!」

 

ヴィヴィアンが目を輝かせた。それもそのはず、数体のドラゴンがアウローラの下に潜り、アウローラをその身体に乗せて浮上したからである。その、少し前までなら考えられない光景に、ヴィヴィアンのテンションが上がるのも仕方のないことだった。

 

 

「形勢逆転だな、エンブリヲ!」

 

ドラゴンに支えられながら暁ノ御柱へと向かってくるアウローラを目の当たりにして、タスクはモニター越しにエンブリヲを睨み付けた。だが、

 

「そう見えるか?」

 

エンブリヲは些かも動揺する気配はなく、タスクの相手をしている。そしてタスクをいなすと、不意にアウローラに向かって自機の左の手の平を開いて向けた。

 

「エンブリヲ、何を!?」

 

エンブリヲの狙いが読めないタスクは戸惑いを隠せない。と、次の瞬間、

 

『クリス!』

 

ヒルダとロザリーが自分の目の前から突然クリスが消えたことに驚き、

 

『ええっ!?』

 

ナーガとカナメも同じく、今まで目の前で戦っていたターニャとイルマがいなくなったことに驚きを隠せなかった。そして同様に、

 

『!』

 

ジルと対峙していたサリアも、ジルごと瞬間移動させられる。彼女たちが飛ばされたその場所は、ドラゴンたちの編隊の真っ只中だった。

 

「!?」

 

「エンブリヲ様!?」

 

「これは!?」

 

事態の急変についていけないクリス、ターニャ、イルマの三人。そんな三人に、エンブリヲは遂に本性を露わにした。

 

「君たちは、私のために時間を稼いでくれたまえ」

 

にこやかに微笑みながら彼女たちを切り捨てたのである。ドラゴンたちの中に放り込まれたダイヤモンドローズ騎士団に、当然の如くドラゴンたちが相次いで襲い掛かる。

 

「仲間を囮に使ったのか!」

 

エンブリヲの所業にタスクが怒りを隠しきれない様子だった。が、エンブリヲは気に留める様子も見せずに抜け抜けと、

 

「私は、花嫁を迎えに行かねばならない。後は頼んだよ、皆」

 

そんな戯れ言を吐き捨て、ダイヤモンドローズ騎士団を見捨ててメインシャフトへ急行した。

 

ドラゴンたちの真っ只中に放り込まれたダイヤモンドローズ騎士団にも異変が起こっていた。

 

「コントロールが…効かない!」

 

時空融合の影響か、それとも用済みになった道具だからエンブリヲが何か細工したのかは知らないが、ターニャの機体は上空を漂うだけの状態になっていた。その彼女に、当然のようにドラゴンが襲い掛かる。

 

「う、ああああああああ!!!!」

 

ターニャを乗せたビクトリアにドラゴンが噛み付き、コックピットごと潰された。

 

「ターニャ!」

 

その僚友の姿にイルマも動揺を隠しきれない。だが彼女も直後、ドラゴンに襲われ、絶命する。

 

ターニャとイルマのその姿にサリアも動揺を隠せない。そのサリアを、一体のドラゴンが亡き者にしようと襲い掛かる。

 

「サリアーっ!」

 

そんなサリアを、ジルが身を挺して救った。

 

「これがエンブリヲの本性だ!」

 

そして、ここぞとばかりにジルがサリアに説得を試みた。

 

「目を覚ませ、サリア。私のように、全てを失う前に」

 

アレクトラはレイジアの出力を上げ、エンブリヲを後を追う。

 

「アレクトラ!!」

 

 

 

 

 

その頃クリスはエンブリヲに見捨てられたと感じ、もう何もかも信じられずにいた。

 

「嘘…嘘だよ…エンブリヲ君? また捨てられた…また裏切られた!うわああああああああああ!!!!!」

 

クリスはビームライフルを撃ちまくる、そしてクリスを探していたヒルダ達がクリスを見つける。

 

「やめろ!クリス!!」

 

「来るな!!!!死ねぇ!!!!」

 

クリスはヒルダ達にビームライフルを撃ち、ヒルダ達はビームを回避する。

 

「へっ!ざまあねぇな」

 

ヒルダが言った事にクリスは一瞬驚き、ヒルダはクリスに言い続ける。

 

「自分から友達だと名乗る奴が、本当の友達な訳ねぇだろう!!騙されやがって!」

 

「ッ…!あんた達が…あんた達がアタシを見捨てたから!!」

 

「アタシは!見捨ててねぇ!!」

 

ロザリーが必死にクリスに言う。

 

「寄って集ってアタシを見下したり、バカにして!アタシがこんなに苦しんでいるのに、どうして分かってくれないの!!?」

 

「グダグタ文句ばかり言いやがって!いい加減しろ!このねくらブス!!」

 

アーキバスがテオドーラを取り押さえ、コックピットハッチを強引に剥がした。

 

「そうだよ!!言わなきゃ分かんねぇよ!アタシ、バカだから!」

 

ロザリーのグレイブが飛翔形態になり、テオドーラへと向かっていった。

 

「来るなぁぁぁぁぁ!!」

 

クリスが叫びながらテオドーラでヒルダのアーキバスを振り払い、ビームライフルをグレイブに撃ち、グレイブのウィングがやられる。

 

「ロザリー!!」

 

それでもロザリーはテオドーラに向かっていき、そしてグレイブからテオドーラへと飛び込んだ。

 

「こっのぉぉぉぉ!!クリス!」

 

そしてロザリーはクリスをしがみつき、そのまま落ちていった。

 

「お!落ちてる!離して!」

 

「良いよ!一緒に死んでやる!」

 

するとロザリーはクリスにキスをする。

 

「アタシはアンタが居なくちゃ困るんだよ!」

 

「でも、私を見捨てて…」

 

「見捨ててねぇ!!アタシは!アンタを見捨てる訳がねぇだろ!こんなにもアンタを信じてるのに!アタシ達じゃないか!アンタの胸のサイズも!弱いところも!ヘソクリの隠し場所も全部知っているのは!!」

 

「ロザリー…」

 

「もう一回信じてくれよ!もう一回友達になってくれよ!クリス!」

 

するとヒルダのアーキバスが猛スピードで落ちているロザリーとクリスへと向かいそして二人を庇うようにアーキバスの手で守り、陸に不時着した。

 

「てぇぇぇぇぇい!!!」

 

「ごめんな...ごめんよクリス…」

 

「許さない、新しい髪止めを買ってくれるまで」

 

「い!一番良いのを買ってやる!!!金はバンに払わせる!」

 

「ゲームする時もズルしない.…?」

 

「しない!」

 

「お風呂の一番…譲ってくれる?」

 

「ああ!」

 

「でも私、取り返しのつかない事をしちゃった…」

 

「良いんだよクリス…」

 

「バカみたい、世界が終わろうって言うのに…何してるんだろう。アタシ達…」

 

「仲直り…だろ」

 

突然、ヒルダがロザリーの台詞を取り、ロザリーが怒る。

 

「ああ!それアタシのセリフ!!」

 

するとクリスが大泣きするとロザリーも大泣きしながらクリスを抱き、ヒルダはそれを見て笑う。

 

 

 

メインシャフトの出入り口から光の柱が現れ、中からガレオン、ブリック級のドラゴンより大きく、白く回りが光る龍が現れ、吠えた。

 

「アウラ!」

 

その光景は全艦隊にも確認されていた

 

「あれが…!?」

 

「私たちの母なる始祖…アウラです。」

 

アウローラではリザーディアが言う。

 

「アンジュ!」

 

タスクは急いでアレスを動かしアンジュの所へ向かった。

 

 

 

 

 

そしてエンブリヲメインシャフトの最下層部にいた。するとそこにレイジアに乗ったアレクトラが現れる。

 

「アンタの負けだな、エンブリヲ。」

 

「アレクトラ?」

 

「出て行くんだろ?こんな世界を捨てて…」

 

「フフフ、愚かな女が……私が連れてい…ぐっ!!!」

 

「!?」

 

『やっと手薄になってくれた……』

 

「き、貴様は!!?」

 

「Xだ……」

 

「貴様、生きていたのか!!?」

 

「ハハハハハハ!!」

 

Xの高笑いしたその時、アウラが入っていたバイオカプセルから赤黒く揺らめく魂が無数に噴き出し、Xの体に吸収されて行く。

 

「何だ!?」

 

するとXの体に変化が起こる。何もない黒い煙から動脈から肉体、各部からそれぞれの身体へと変化し、皮膚が出来る。そして目玉も現れ、最後には白き黄金の長髪した少年へと変わった。

 

「ここまで愚民共の魄を集めてくれた事を礼を言わせてもらおう……エンブリヲ様」

 

「き、貴様は!!」

 

「そうだよ、思い出しましたかな?」

 

「538年振りですよ……ね?」

 

「アルフォンス・斑鳩・ミスルギ……この死に損ないが!!」

 

「ミスルギ!?どう言う事だエンブリヲ!!?」

 

「説明しなくても分かりますよ、元ガリア帝国第一皇女 アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ姫殿下。僕はアルフォンス……初代ミスルギ皇帝であり、ビルキスの元継承者であった者だ。」

 

アルフォンスの言葉にアレクトラは驚く。

 

「さぁ、エンブリヲ様……両眼の眼に焼き付けてください……僕の力の復活の瞬間を!!」

 

アルフォンスはそう叫び、消えた。その時、アレクトラの腹にアルフォンスの手が貫く。

 

「!!!」

 

「させんぞ!!!アルフォンス!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、キオ達は時空融合が一向に収まらない事に疑問を感じていた。

 

「どうなっているんだ?!アウラは助け出したのに何故?!」

 

「分かりません!一体これは!?」

 

キオ達が混乱していると。アケノミハシラから何かが猛スピードで吹き飛ばされてきた。煙が晴れると、飛ばされてきたのは各部が大破したヒステリカと血だらけのエンブリヲであった。

 

「エンブリヲ!!?」

 

大ボスがここへ飛ばされてきた事に驚いたキオ達。っと、彼等の背後にこの世とは思えない気迫を感じた。

 

《…………………………》

 

「…………アウラは時空融合の起爆剤だ、エンブリヲ様はそれを利用して、この世界とあの世界を融合させる。後はアウラのエネルギーなしでも勝手にしてしまう事になっている。それにしてももうちょっと本気出してくださいよ、エンブリヲ様。」

 

っとキオ達の背後に現れたそれはキオ達の死を錯覚させる。キオ達は振り向き、構える。

 

「お前は!?」

 

「初めまして諸君……僕はアルフォンス……アルフォンス・斑鳩・ミスルギ。」

 

《アルフォンス!!?》

 

「ようやく……僕の積年の願望が果たされる。」

 

アルフォンスが右手をキオ達の方に向けた。するとキオとフェイト、ココルが消える。っと、三人が三角形の陣形で拘束されていた。

 

「何だこれは!!?」

 

「グッ!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「“空”…“地”…“機”のゾハルよ…僕は望む。本来の力である“あれ”…ウルの影に封印されし最強の機体を甦らせよ!!」

 

キオとフェイト、ココの身体からアルヴィース、ザンザ、メイナスのコアクリスタルが現れ、三角形の中心点からワームホールが開く。その中からパラメイルやドールをも上回る全長の黒いドールデバイスが現れた。

 

「何だ!!?あの機体は!!?」

 

「ようやく戻ってきた……ついに戻ってきたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

アルフォンスが叫ぶと、上空に巨大な特異点が出現する。その中から大破したエルダーゴアキャッスルが現れる。

 

「あれは!!?」

 

「エルダーゴアキャッスル!!?」

 

エルダーゴアキャッスルが現れた事に驚くと、撃沈した筈のマデウスが起き上がる。

 

「マデウスが!!?」

 

「まだ終わらないぞ…仕上げは。」

 

アルフォンスはサラの方を睨む。そしてアルフォンスが煙へとなり、サラの焔龍號の中を擦り抜け、彼女の身体の中に入り込む。

 

「っ!!…ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!」

 

「サラ!!」

 

サラが苦しみだすと、彼女の服装や髪型、髪の色が変貌する。サラに憑依したアルフォンスは微笑む。

 

「「フフフ……傀儡のコアクリスタルをこの女に埋め込んで良かった。」」

 

サラの胸に埋め込まれているクリスタルが黒く染まっていた。ナーガとカナメはサラを助けようとする。

 

「「姫さま!!」」

 

「「邪魔だ…失せろ。」」

 

アルフォンスは焔龍號を操り、蒼龍號と碧龍號を蹴り飛ばす。

 

「アイツ……サラに憑依したな!!」

 

キオはアルフォンスを睨むと、コックピットが開き、アルフォンスがエルダーゴアキャッスルへと飛ぶ。そしてアルフォンスはエルダーゴアキャッスルに触れると、紅き血に染まった城が光だす。するとフェイトがある事に気づく。

 

「まさか……」

 

「あのエルダーゴアキャッスルって……」

 

そしてキオもエルダーゴアキャッスルの正体に気づく。

 

「そう、そのまさかだよ。このエルダーゴアキャッスルとは、僕が創り上げた【コアクリスタル】!……そして、僕はもう既にゼニスやアルフォンスでもない……。」

 

アルフォンスがエルダーゴアキャッスルこと巨大なコアクリスタルとの同調に成功し、コアクリスタルから光り溢れ、マデウスを吸収した。マデウスとエルダーゴアキャッスルが一つとなり、トリオン型の繭が出来る。そして繭が消え、中から現れたのはミスルギ皇国の大陸をも超える巨大な大地の魔神であった。

 

《僕の名は……【デミウルゴス】!!全ての時間と空間に永遠の恩寵を創りし創造神でもある!!》

 

巨躯のデミウルゴスはその悍ましき血に染まった紅き眼を光らせる。

 

「デミウルゴス!?」

 

「サラ……」

 

「な…何なのだ!?あの化け物は!!?」

 

エンブリヲがアルフォンスことデミウルゴスを見て、絶望を感じていた。

 

「手始めに、調律者 エンブリヲ……貴様からだ!!」

 

アルフォンスが叫ぶと同時に、デミウルゴスが咆哮し、手から光の剣を出現させる。

 

「あれは……モナド!!?」

 

フェイトが驚くと、アルフォンスが憑依したサラの手から天使の剣が出現する。

 

「僕のモナド……この剣こそ、【無法人類】に相応しき神の剣だ!!」

 

サラの姿が神々しくなり、白銀の長髪、側頭部に青色と赤色に分かれた白天使羽根、ドラゴンの翼から六枚の天使の翼、白と黒、そして黄金の巫女服、尻尾には白き鱗がびっしりと生えていた。神々しく禍々しい姿へと変貌を遂げた【アルフォンス憑依 “サラ”】は肉眼でも見えない速さで、エンブリヲの目の前に着く。

 

「っ!!?」

 

「貴方には返しきれない恩がありました。ですが……全て砕けてしまいました。貴方の傲慢な性格に!!」

 

アルフォンスは渾身を込めて、モナドを振り下ろした。

 

「お…おおお…」

 

ゆらゆらよろめきながらたたらを踏み、エンブリヲは真っ二つになって血を吹き出しながら倒れた。そして斬られたエンブリヲの体から粒子エネルギーが現れ、ヒステリカの機能が停止し、墜落する。アルフォンスは粒子エネルギーを吸収すると、翼が大きく成長する。

 

「これで……準備は整った。」

 

それにアルフォンスは笑みを浮かばせ、すぐに姿を消してアンジュを連れて行ってしまった。

 

「アンジュ!!!」

 

タスクは消えたアンジュに叫び、キオは目を見開く、っとキオの手元にサラに渡した婚約指輪が手に残り、それにキオは叫ぶ。

 

「クソォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。