魏伝 ~曹洪の章~   作:碓氷

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第十三話 反董卓連合、アイツの名は・・・・

二ヶ月に一度行われる全体会議、今回の参加者は華琳、秋蘭、冬莉、稟、夏焔、桂花、一刀の七名だ。

 

「夏焔、五錮からの報告を」

 

五錮とは夏焔が独自に使役している情報収集を専門とした集団だ。

 

「霊帝が崩御した、それに伴い洛陽の状況は泥沼化。現在何進一派と十常侍の一派がそれぞれ劉弁、劉協を担ぎ上げて争いを繰り返している」

「それぞれの派閥の主要人物を」

「劉弁派は何進を筆頭として袁紹を中心に名家連中が、劉協派は十常侍を筆頭に盧植、朱儁、皇甫嵩、董卓・・・・といったところか」

 

今は、まだ洛陽内で済んでいる政争だが何れ洛陽外にもこの影響は波及するだろう。

 

「それぞれどう動きそうかしら?」

「分からん、が・・・・・・・・!石岐か」

「はっ」

 

仮面で顔を覆い、黒い布で全身を覆う男が天井裏から降り立つ、名を石岐、五錮の長である。

 

「洛陽の部下より報告」

「構わん、話せ」

「劉弁、及び何進が暗殺され袁紹一派は洛陽を脱出、また同時に十常侍が討たれ洛陽の主権は董卓を筆頭にし盧植、朱儁、皇甫嵩らが握りました」

「了解、以後動きがあれば随時知らせろ」

 

僅かな影に溶け込むように消えた石岐。

 

「・・・・」

 

そんなやり取りを聞いた一刀の脳内に渦巻く一つの出来事、『反董卓連合』。今回は董卓はあくまで劉協擁護のために三将軍と組んだようだが・・・・

 

「一刀」

 

夏焔が一刀の様子が少しおかしい事に感づいて声をかけた。

 

「何か気になる事でもあるのか?」

「・・・・袁紹、と言うか袁家だけどさ・・・・結構影響力あるんだよな?」

「?ああ・・・・袁家は冀州を本拠とする名門だ、三公を排出しただけあり影響力は強い」

「袁紹って結構自尊心とか強かったよな?」

「・・・・!!?」

 

そこまで来て、気づいたのは夏焔、華琳、桂花、稟、の四名だ。

 

「ならさ、袁紹が他の連中を煽って董卓たちを潰そうとする可能性だって・・・・あるよな?」

 

―二週間後―陳留城

果たして一刀の言葉通り、袁紹が各地の諸侯、有力者たちに一通の檄文を飛ばした。『董卓は三将軍を抱き込み洛陽を私物と化し悪政を敷き民を虐げ全てを欲しいがままにしている、これを許すは漢王朝の臣に在らず、大義を取り戻し悪逆非道の輩を討て』と。

 

「全く、面倒事ばかり増やしてくれる」

 

結局、戦地が近領である事もあいまって曹操軍は参加を決意した。無論、別の思惑を抱えつつだ。

 

「正直驚きましたけどねぇ、あれは」

 

城壁の上から練兵風景を眺めていた夏焔の隣に煉次が立つ。

 

「華琳と董卓の関係性、か」

「全く、幼馴染だったとは・・・・」

 

檄文が届いた時の華琳の姿は普段見れないものだった。

 

『あの袁紹のバカを攻めるわよ!!』

 

「いやはや、後にも先にもあそこまでお怒りな華琳様はそうそう見れませんって」

「確かに」

 

キレた華琳を夏焔と隗、秋蘭、冬莉の四人でなんとかなだめながら事情を聞くと、何と二人は幼馴染であったらしい。董卓の父親が華琳の父曹嵩と古い付き合いであり、幼少の頃には董卓と二人で遊んだ事もあるらしいのだ。

 

「とは言え・・・・」

「面倒には変わり無いが面白い、ですか?」

 

曹操軍首脳陣は考え抜いた、連合に弓引かず、尚且つ董卓を助ける方法を。そして結果的に、連合には参加し劉備、孫策両陣営に事情を説明し助力を乞い隙を突いて董卓を助けるという案に至ったのだ。

 

「遠征組と留守居の編成は決まったんですかい?」

「ああ・・・・遠征軍は華琳自身が率いる二万、将は俺、春蘭、秋蘭、季衣、流琉、一刀、星、凪、真桜、でお前と桂花、水華、稟、留守居は冬莉が率いる一万二千、将は隗、景、円楽、風、沙和だな」

「・・・・成程、ハッキリと攻めと護りを分けて来ましたね」

 

春蘭は言うに及ばず、秋蘭も守りに向くわけでは無い、季衣、流琉も経験が浅い故に護りは不向きで一刀、凪、真桜も同様だ、星は基本万能にも思えるが護り続ける事を良しとする性分では無い、桂花も稟も水華も攻め重視の思考である。煉次とて築城が得意故勘違いされ易いが護りよりは攻めが得意なのだ。

対する留守居は冬莉は護りに関しては定評があり隗はやらせればどちらも出来る、円楽は見た目とは裏腹に繊細な用兵で緻密な守備を敷けるし風はのらりくらりと相手の攻めを回避する用兵を、沙和は発展途上ではあるが兵との連携を重視しておりそれも守りに必要な技能なのだ。

 

「桃香ちゃんとか雪蓮さんからも編成は届いたんでしょ?」

「ああ、雪蓮は美羽と合同で軍を出すそうだ、美羽もこの案件に関して飲んでくれた」

「そいつは頼もしい事で」

 

劉備軍は桃香に愛紗、鈴々、朱里、雛里、法正が兵八千を率いて、孫策袁術軍は雪蓮、美羽、蓮華、七乃、冥琳、黄蓋、程普、咲季、思春、蒋欽が兵三万を率いて来るのだそうだ。

 

「劉備軍は少ないっすね」

「むしろよく八千も出せた、治安が悪い土地と聞くからな」

 

桃香が現在居を構える平原は周囲に比べ比較的治安の悪い土地だ、こちらの陳留を避けた賊と北部の公孫賛を避けた賊が流れ込み易い場所にあるからだ。

 

「孫策軍は兵数少ないんすかね?合同ですけど」

「山越と江賊対策だろうな、韓当や朱治、祖茂といった歴戦の将三名を留守に残したのがそれだろう」

 

雪蓮の本拠秣陵は長江と隣接する都市だ、資源豊かであり水運に長けた土地ではあるのだが隣接地域に山越賊や江賊が出現するためにお世辞にも治安が良いとはこちらも言えない訳で。

 

「・・・・打てる手は全て打つべきか」

「・・・・『アイツ』を動かすんですね?」

「ああ、そろそろ復帰してもらうとするか」

「アイツ、とは?」

 

そこに現れたのは一刀、桂花、星、凪、水華ら任城からの遠征組だ。

 

「・・・・そっか、一刀以外知らねぇんだな・・・・一刀は覚えてねぇか?初代曹洪隊軍師」

「ああ!アイツ元気なの?」

「さぁな、だが便りが無いのがこの上なく元気である報せだ」

 

夏焔、煉次、一刀が思い出話に花を咲かせる。

 

「あの・・・・」

 

途中で、なんとか凪が口を挟む。

 

「それで・・・・その・・・・『アイツ』とは?」

「ああ・・・・初代曹洪隊軍師であり」

「河内の富豪司馬家・・・・だっけ?そこの当主で・・・・」

「後にも先にも、曹洪『の』唯一人の軍師」

 

三人が、口を揃えてその名を呼ぶ。

 

『司馬懿』




第三話以降出番の無かったあの司馬懿が次話・・・・かその次ぐらいから久しぶりに登場します。
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