魏伝 ~曹洪の章~   作:碓氷

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第四話 顔合わせ、遠征準備

―陳留城―練兵場

賊討伐からの帰還と隼が去ってから一週間、桂花に渡された正式な辞令は『曹洪隊軍師』の肩書きだった、それ故に夏焔は桂花を練兵場へと、曹洪隊兵士の集う場所へと集めていた。

 

「と言う訳で、本日より我が隊の軍師へと正式に就任した荀彧だ・・・・皆宜しくしてやってくれ」

「荀彧よ、宜しく頼むわ」

 

ペコリ、と一礼をする桂花・・・・の猫耳フードがピョコん、と揺れる。

 

『うぉおおおおおお!!!よっろしくお願いしっまぁああああああす!!!』

 

元気よく・・・・普段から有り得ないほどに元気よく挨拶をする。

 

「え!?な、何なの!?」

 

困惑する桂花、騒ぐ兵たちの言葉に耳を傾ける夏焔。

 

「猫耳軍師萌えぇええええ!!!」

「あれが噂のツンデレ軍師か」

「ツンデレとか萌えって何だ?」

「北郷隊長が言ってたんだが天の国の言葉らしい」

「よくわからんがしっくりくるぞこの言葉」

 

ふぅ、とため息を一つ吐き出し一刀の肩を掴んだ。

 

「諸悪の根源はお前か」

「えぇええええ!?俺ぇ!?」

 

ちなみに追記にはなるが一刀は部隊長へと昇格した、街の治安向上の成果を認められての事でありこれは曹洪隊の面々からも歓迎された。

 

「お前ら全員練兵場三十週だ!!」

『うぇえええええ!!?』

 

文句を言いつつ取り敢えず走り出す一同を見送る。

 

「さて、騒がしくてすまないな桂花」

「い、いえ・・・・大丈夫ですが・・・・」

「まぁあれも歓迎された証拠、その歓迎にはこれからの行動で返して行けば良い」

「・・・・はい!」

 

―同日夕方―陳留城―太守府

会議室に集まっているのは華琳、秋蘭、夏焔の主要人物三名。

 

「成程、で留守を春蘭、秋蘭に任せて華琳と俺を主軸に遠征って訳か」

 

事の始まりは朝廷より発せられた勅にある。近頃数を増してきた賊、全員が黄色の巾をまいている事から黄巾賊と名付けられたのだが・・・・今まではこの対応は各地方の刺史、太守、県令などに委任されてきたのだが総数が百万を超えたという情報が入った事により事態を重く見た朝廷側が董卓、盧植、皇甫嵩、朱儁などの将を各方面に派遣、各地の軍勢との連携を密にして事にあたるようにと勅令を発したのだ。

それで陳留軍もそれに即した動きをするために領内警戒と領外へと遠征する軍を編成する事に決まったのだ。

 

「ええ、そうよ・・・・守備及び陳留近域の警戒を秋蘭を中心として春蘭、景、隗、煉次、円楽で、遠征軍を私、夏焔、季衣、桂花、一刀で行うわ」

 

護りを古参中心で、攻めを新人中心で、ならば新しい人材を登用する事も考えているんだろう。

 

「ならば発表は早い方が良いだろうな、遠征に連れて行く兵士たちも長く家族と離れる事になる・・・・」

「そうね、ならば明日朝一で発表して頂戴」

「了解だ・・・・連れて行くのは・・・・俺の隊と虎豹騎(華琳の親衛隊)、後は・・・・新兵が500か?」

 

曹洪隊が500、虎豹騎が200、新兵が500で併せて1200・・・・現地登用などをする事を考えたならば最終的にはもう少し増えている予定だろう。

 

「そんなところね、多少春蘭と隗がゴネるでしょうが・・・・」

 

まぁあの春蘭(華琳命)(妹命)は最悪他の連中に抑え込ませよう。

 

「季衣の調子はどうだ秋蘭」

 

季衣の育成は春蘭と秋蘭で担当していたはずだが・・・・

 

「う・・・・む、武に関しては問題無い。姉者との鍛錬で洗練されつつある・・・・が問題なのは指揮傾向までそれに引きずられつつあるという事で・・・・」

「それは拙いぞ」

 

春蘭は放置していると「全軍一丸となって突撃すればなんとかなる」と言わんばかりの猪思考で戦う傾向がありそこに頭を悩ませている・・・・のだが季衣までそんな猪になられてはかなわない。

 

「仕方無い、遠征中に桂花と一緒に軍学講義をしておこう」

「うむ、頼む・・・・私はどうも教えるのが苦手なようでな」

 

苦笑する夏焔と秋蘭、そこで華琳が咳払いをする。

 

「此度の遠征、各将の実力向上や兵の練度向上、経験を積ませる機会となるわ」

「この後に待ち受けるは乱世か?」

「ええ、十中八九来るわね」

「それに備えたいってわけか・・・・将、兵どれほど揃えたい」

 

それによって自分の動きも変わってくる、と夏焔は見ている。特に将は数多く求められるならば色々と動き回らねばならないだろうし、少なく求められるならば腰を据えて今いるメンツに数人を加え鍛えなければならないだろう。

 

「来る者拒まず去る者追わず、かしらね」

 

増えるならばそれでも良し、離れる者がいるならばそれも良し・・・・つまりはその時その時で対応しろという事だ。

 

「じゃあ遠征軍の詳細な編成と発表は任せるわ」

 

華琳は華琳で他の仕事もあるのだろう、太守自らの遠征という事で不在中の対応も考えなければならないのだろうし。

 

「・・・・」

 

しかし、予感があったとは言え流れが早い・・・・何か得体の知れない力でも働いているかのような・・・・

 

「・・・・いや、今は良いか」

 

間違い無く乱世は近づいているのだ、そんな時に余計な事を考えていれば何時命を落すかもわからない・・・・今は今の事を考えよう。

 

「・・・・良し・・・・行くか」

 

取り敢えずは一刀と王忠、牛金あたりに出兵準備をさせて・・・・と遠征の事に考えを集中させるのだった。

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