『王女の軍師』【完結】   作:OKAMEPON

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END⑤【たった一つの、冴えたやり方】(上)

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 何処までも広がる砂漠を越え、ルキナとロビンは着実に『竜の祭壇』へと近付いていく。

 そして、それと同時に。

 

 ロビンを苛む『何か』が、より一層強くなっていった。

 

 時折、苦悶の呻き声を上げて『何か』に耐えているロビンから、ルキナの肌を粟立たせる様な恐ろしい『何か』を感じる様になって。

 それはほんの一瞬の事であり、直ぐ様その恐ろしい『気配』は霧散し、何時もの優しいロビンの気配に戻るのだけれども。

 ロビンが『何か』に苛まれる間隔が、どんどんと短くなっていた。

 

 まだ『竜の祭壇』に辿り着いていないのに、これなのだ。

『竜の祭壇』に足を踏み入れた時、ロビンはどうなってしまうのだろう。

 ロビンは、ロビンのままで居られるのだろうか……。

 

 そんな不安が、ルキナの胸を押し潰す。

 だが、一番辛いのは、一番苦しいのは、ロビンなのだ。

 それが分かっているから、そして、そんなロビンを救いたいから。

 ルキナは何も言わずにただロビンに寄り添い続ける。

 

『何か』に苛まれている時に必死に耐えているロビンの手をルキナがそっと握ると、それに縋り付く様に……だけれどもルキナを傷付けない様な優しい力で握り返される。

 恐ろしい『何か』と必死で戦いながら、ロビンはルキナを傷付けない様にと、守っているのだ。

 それが、胸を締め付ける程に分かってしまうから。

 

 もしかしたら、ロビンが何時か『ロビン』では居られなくなってしまうのかもしれなくても。

 ルキナは、その手を離す事は出来ない。

 

 ロビンを苦しめる『何か』を討ち祓う力が自分には無い事が、耐え難い程辛くても。

 ロビンが、『ロビン』であり続けようと、戦い続けてくれているのならば。

 ルキナもその傍で、例え何も出来ないのだとしても、支え続けたいのだ……。

 

 

 自分が傍に居るのだと、この手を絶対に離さないのだと、何があっても貴方を独りにはしないのだと。

 そう語る様に、祈る様に、誓う様に。

 ルキナはロビンの傍に在り続けた。

 

 どうか、と、ルキナは祈る。

 それは神竜ナーガに対しての祈りなのかもしれないし、今は亡き父や母などへの祈りなのかもしれないし、大好きだった『ルフレおじさま』への祈りなのかもしれないし、誰でもない『何か』への祈りなのかもしれない。

 

 どうか、私からこの人を。

 何よりも大切で、ずっと傍に居て欲しい、掛け替えのないたった一つの『宝物』の様な愛しいこの人を。

 奪わないで下さい、と。

 彼が『彼』で在り続けられる様に、守って下さい、と。

 そう願い、祈り。

 

 そして。

『覚醒の儀』を終えて『ギムレー』を討った後も、ずっとずっとロビンと居られる事を、心の支えとして信じて。

 ルキナは、『何か』に蝕まれつつあるロビンを支えている。

 

 

『竜の祭壇』は、もう目前に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 まだ『竜の祭壇』の内部へと足を踏み入れていないにも関わらず、ルキナは身に突き刺さる様な嫌な気配をひしひしと感じている。

 少し離れた場所へ飛竜を降り立たせ、ロビンとルキナは砂漠の只中に静かに立つその神殿を見上げた。

 自分達の他には、周りには誰も居らず屍兵の姿も見えない。

 だが、この地に染み付いた怨念が、渦を巻くようにルキナ達を取り囲み見詰めている様な気すらも起こる。

 

『竜の祭壇』に向かうロビンの顔色は、悪い。

 立っている事すらも辛そうな顔なのに。

 それでも、ロビンは立ち止まろうとはしなくて。

 ルキナに出来るのは、そんなロビンを繋ぎ止めようと、その手を繋ぐ事だけであった。

 

 そして、二人は『竜の祭壇』の入り口に立つ。

 何かの呻き声と、怨嗟の声が。

『竜の祭壇』の奥地から流れてくる風に乗って、ルキナの耳に届いた。

 それを追い払おうと、ルキナは微かに頭を振る。

 

 

「ルキナさん、もしも、『僕』が──」

 

 

 ポツリと、ロビンが言おうとした言葉の続きを、ルキナはその手を強く握り直す事で止めた。

 何を言われようと、何が起ころうとも。

 ルキナには、その手を離すつもりが無い事を、ロビンに伝える為に。

 

 

「ロビンさんが、何者であっても私は構いません。

 例え、本来の貴方が『ギムレー』の手の者であったのだとしても……。

 ロビンさんは、ロビンさんです。

 私の『軍師』は、私の『半身』は…………。

 貴方だけなんです。

 どんな時でも、何があっても。

 私は貴方を信じます。

 だから、この手は絶対に離しません」

 

 

 だからこそ、『ギムレー』に負けないで、と。

 何度でもこの手で貴方を引き留めるから、何があっても絶対に諦めないで、と。

 そんな想いを籠めて、ルキナはロビンの横に立った。

 

 そのルキナの言葉に、ロビンは辛さを隠せていないまま、それでも嬉しそうに優しい微笑みを浮かべる。

 

 

「有り難うございます、ルキナさん。

 貴女のその言葉が、その想いが。

 何よりも『僕』の力になる、『僕』を引き留めてくれる……。

『僕』はこんな所で消える訳には、いかない。

『覚醒の儀』を見届けるまでは、絶対に……。

 大丈夫、です。

『僕』は、何があっても、貴女を守ります」

 

 

 そっと握り返されたその手は、温かくて。

 この手を喪いたくないと言う気持ちが、溢れ出してしまいそうになる。

 だが、今は。

 進まなくてはならないのだ。

 

 だからルキナとロビンは、繋いだ手を決して離さない様に固く結んで。

『竜の祭壇』の内部へと、足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

『竜の祭壇』の内部は、不気味な紫炎によって、明るくも怪しく照らされていた。

 一体あの紫炎は何なのだろうか、と。

 ルキナはそう思うのだが。

 それを確かめようと目を凝らそうとすると、ロビンはその目を優しく塞ぐ様にしながら強くそれを押し止める。

 そして、「見てはいけません」と低く抑えた声音で忠告するのであった。

 

 

「あれを見続けていれば、魅入られてしまうかもしれません。

 だから、ルキナさんは前だけを見て下さい。

 あの炎に意識を向けてはいけません」

 

 

 揺らめくその紫炎の中に、一瞬だけ怨嗟に満ちた人の顔の様なモノが映った様な気がして。

 ルキナは慌ててロビンの言葉に頷いて、その紫炎の事から意識を逸らした。

 

 アレは、屍兵などよりも遥かに悍ましい何かだ。

 炎の様に見えているが、そんな生易しいモノでは無い。

 ルキナはそう本能的に理解してしまった。

 そして、ロビンに導かれるままに、奥へ奥へと進んで行く。

『ギムレー』の領域の中心地であるだけに、『竜の祭壇』の危険さは他の場所とは文字通り桁が違った。

 徘徊する屍兵も、ルキナでは太刀打ち出来そうにも無い程に強力な個体である事が遠目にも分かるモノばかりで。

 そんな屍兵がそこらかしこに蠢いているのだ。

 ロビンの道案内無しだと、ルキナは直ぐ様命を落としていたであろう。

 立ち止まって時折物陰に身を隠したり、隠し通路の様な場所に潜り込んで屍兵を回避したり、と。

 ロビンは屍兵と戦わずに済む様に、細心の注意を払いながら進んでいた。

 

 だがしかし、そうやって着実に奥へと進んではいるものの。

 ロビンの顔色は刻一刻と悪化していた。

 時折発作を起こした様に息を荒くして胸を押さえたり、目をきつく瞑って『何か』に耐える様に苦悶の呻き声を上げる。

 ルキナに出来るのは、ロビンの名を呼びながら彼を抱き締める事位だった……。

 

 ルキナの目には見えぬ『何か』が。

 この場所に満ち満ちている『ギムレー』の力が。

 ロビンを急速に蝕んでいる。

 

 仕えるべき『ギムレー』を裏切り、神竜ナーガの力を受けた聖王の末裔のルキナに手を貸している事への報復なのか。

 それとも、もっと別の何かなのか……。

 それはルキナには分からないけれど。

 この場所に留まる事自体が、ロビンを苦しめ苛んでいるのは疑いようも無い事実であった。

 

 早く、早く、早く、早く──

 

 そう祈る様に進み続ける内に。

 ふと、とても広い空間に出た事に、ルキナはその空間の中程まで進んでから漸く気付いた。

 

 

「これで、やっと……」

 

 

 その空間の最奥。

 そこに設けられた祭壇に奉られた闇色の輝きを放つ『宝玉』を見て、ロビンは苦し気ながらも息を吐く。

 

 あれが、最後の『宝玉』、『黒炎』。

 妖し気な輝きを放つそれは、確かに『宝玉』であるのだろうけれども。

 この場が『ギムレー』の力に支配されているからだろうか。

 何処か、底知れない恐ろしさがそこに渦巻き、ルキナを静かに見つめ返している様にも感じてしまう。

 そして、黒炎を護るかの様に。

 あの悍ましい紫炎が、祭壇には灯されていた。

 

 

「『僕』が、『黒炎』を取ってきますから。

 ルキナさんは、ここで待っていて下さい。

 この先は、とても危険なんです……。

『僕』が、貴女を守れないかもしれない程に……」

 

 

 全てを呑み込もうとするかの様に揺らめくその炎を睨みながら、ロビンはそう言ってルキナの手を離そうとする。

 

 ロビンのその言葉に、ルキナは僅かに迷う。

 恐らく、ロビンの言う通り、『黒炎』の近くには、今までの道で見掛けた屍兵なんかとは比べ物にならない程の危険が待ち受けているのだろう。

 ルキナはまだ『黒炎』からは離れていると言うのにも関わらず、ビリビリと背筋を凍らせそうになる程の悍ましい力がそこに集まっているのを感じるのだ。

 きっと、ロビンはルキナを守る為に、その手を離そうとしている。

 それは、一々言葉で言われるまでもなくルキナにも分かる。

 だけれども……。

 

 ここで、この手を離してしまえば。

 

 ルキナは、もう、二度と。

『ロビン』の手を掴む事が出来ないのではないか、と。

 そんな、予感もするのだ。

 

 

「ロビンさんは……」

 

 

 ルキナは、思わずロビンに訊ねる。

 

 

「そんな危険があるんだとしたら。

 ロビンさんは、どうなるんです……?」

 

 

 例えロビンが本来は『ギムレー』の側に属する人間なのだとしても。

 現にここまで『ギムレー』と思わしき『何か』に蝕まれているロビンが、あの祭壇に近付いてただで済むとは、ルキナには到底思えないのだ。

 既に酷く『何か』に蝕まれているロビンが、祭壇に渦巻く恐ろしい力に耐え切れるのか。

 もしかして、『黒炎』を手に入れる事と引き換えに。

 ロビンは…………。

 

 そんな最悪の予感が、ルキナの頭から離れない。

 

 恐ろしい予感に苛まれているルキナに、ロビンは。

 その右手を繋いだまま、左手で優しくルキナを抱き寄せた。

 そして、「大丈夫です」と優しく囁きながら、ルキナを安心させる様に頭を優しく撫でる。

 

 

「『僕』は、何があってもルキナさんを守ります。

 何をしてでも、貴女だけは絶対に傷付けさせない。

 そして、その為にも。

『黒炎』は、絶対に貴女の手に届けます。

 だから、『僕』を信じて下さい……」

 

 

 そう言って、辛そうにしつつもロビンは優しく微笑む。

 ルキナを、安心させるその為だけに……。

 

 途端に、あぁこの人は、と。

 ルキナは、泣き出したくなる様な激情に駆られた。

 

 分かってない。

 ロビンは、分かっていないのだ。

 ルキナが失いたくないのは、ロビンなのに。

 ロビンが居なくては、意味がないのに。

 ルキナの事ばかりを優先して、『黒炎』なんかをルキナの手に届ける為に。

 その身を削る事も、厭わない。

 厭おうとは、してくれない。

 こんなに蝕まれて、今にも倒れそうで。

 そんな状態で、あんな場所に近付いて無事で済む筈が無いのに、それを分かっているのに。

 それなのに、独りで行こうとする。

 そして、辛い筈なのに。

 ルキナを安心させる為だけに、微笑むのだ。

 そんな微笑みでルキナの不安が消える筈なんて、無いのに。

 ルキナを守る為に、ルキナを傷付けない為に、と。

 ロビンはそればかりを気にしていて。

 傷付き苦しむロビン自身を見て、ルキナが傷付き苦しまない訳が無いのに。

 それに、気付けないのだ。

 

 だからこそ、ルキナは決めた。

 絶対に、この手を離してなんてあげられない。

 危険なんて、そもそもこの旅に出た時に百も承知の事だ。

 今更、そんなモノに臆したりなんてしない。

 そんな『危険』なんかよりも、もっと恐ろしい事をルキナは知っている。

 もっと辛い事を、ルキナは知っている。

 

 大切な人を守れない事。

 大事な人を苦しみから救えない事。

 苦しむ『半身』に何も出来ず、寄り添うしか出来ない事。

 誰よりも大切で愛しい人が、消えてしまうかもしれない事。

 それ以上に恐ろしい事、辛い事、苦しい事など、無いのだ。

 繋いだその手の先を、永久に喪うかもしれないのなら。

 何れ程危険であろうと、共にこの先に進む事に躊躇いなどある筈も無い。

 ロビンがルキナを守ると言うのなら。

 ルキナがロビンを守り抜こう。

『ギムレー』なんかに、ロビンを奪われてたまるか。

 この手を離してなんて、やるものか。

 ロビンがルキナを守る為に自分勝手にこの手を離そうとするのなら。

 ルキナだって、自分勝手でもこの手を絶対に離さない。

 

 だから、ルキナは。

 繋いだ手を離そうとしたロビンのその右手を。

 ギュッと、力強く繋ぎ直した。

 

 戸惑った様にルキナを見るロビンに、ルキナは宣言する。

 

 

「私は、絶対に貴方を独りで行かせない。

 私がロビンさんを守ります。

 だから、ロビンさんが私を守って下さい。

 だから、二人で、一緒に、行きましょう」

 

 

 そして、ロビンに反論を許さずに、ルキナはその手を繋いだまま先へ進んだ。

 ロビンは慌ててルキナの前に出て、そして……。

 ルキナの意志が梃子でも動かない事を認めて、一つ溜め息を吐いた。

 

 

「……それが、ルキナさんが自分で決めた事であるならば、『僕』はそれに従います。

 だから、絶対に。

 この手は離さないで下さい。

 必ず、『僕』が貴女を守りますから」

 

 

 そう言って、ロビンはルキナと共に『黒炎』が奉られた祭壇へと近寄る。

 一歩進む毎に、悍ましく異様な威圧感がルキナの肌に突き刺さってゆくが。

 それでもルキナは顔を上げ続け、ロビンと繋いだ手を離さなかった。

 

『黒炎』の前に立ったロビンは、一つ息を吸って集中しようとしているかの様に目を閉じる。

 そして、目を開けると同時に、徐に『黒炎』へと手を伸ばした──。

 

 

 途端に、ルキナの背筋を粟立たせ身体を凍り付かせる程に恐ろしい『何か』の気配が、一気に膨れ上がる。

 

 

 傍に灯されていた紫炎が揺らめき、『黒炎』を手にするロビンへと襲い掛かろうとするが。

 ロビンの、息を吹き掛ける様な仕草一つで。

 紫炎は跡形も無く霧散してしまう。

 紫炎が消える時に憎悪と怨嗟の声が響いたが、ロビンはそれすらも意に介する事はなく。

 ルキナに振り返ったロビンの紅い瞳は、ゾッとする様な輝きを放っていた。

 

 どんな時にだってその瞳に浮かんでいた優しさや穏やかさなどは、何処にも無くて。

 何よりも、纏う気配が。

 この空間に満ちる恐ろしい『何か』その物のモノであった。

 

 違う、これは、ロビンでは、無い。

 今目の前に居る『ソレ』は、断じてルキナの『半身』などでは無かった。

 まさか、ロビンは、もう……。

 

 一瞬、そんな弱気な考えが頭に浮かぶ。

 だがその程度でルキナが諦める事など出来る訳が無かった。

 ルキナはロビンの手を強く引き、全力で呼び掛ける。

 

 

「ロビンさん! しっかりして下さい! ロビンさん!!」

 

 

 戻って来て、と。

 そう叫んだ瞬間に。

 

 ロビンの目に穏やかで優しい輝きが甦り、途端に咳き込む様に胸を押さえて苦しそうに喘いだ。

 まだ恐ろしい気配はロビンに残ってはいるが、それも先程と比べるとずっと弱くなっていて。

 ロビンは必死に、『何か』に抗っていた。

 だからこそ、ルキナはその身体を強く抱き締めて、ロビンを連れていかせまいと引き留める。

 

 

「ロビンさん、大丈夫です、私が此処に居ます。

 絶対に貴方を離しません。

 貴方を蝕み苦しめているのが、『ギムレー』であるのなら。

 この剣で、それを断ち切ってみせます……!」

 

 

 手に握ったファルシオンには、未だ完全なる力は戻らない。

 それでも、それが神竜の牙であると言うのなら。

 どうか、どうか……! 

 ロビンを蝕む『ギムレー』を、祓ってくれ、と。

 そう願い、剣を強く強く握り締める。

 

 ……一瞬だけ、ルキナの想いに応えるかの様に、僅かにファルシオンが輝いた様な気がした。

 そして、懐かしい父の気配を少しだけそこに感じる。

 その途端に、ロビンの荒い息が幾分か穏やかになった。

 苦しそうにしながらも、ロビンはしっかりとルキナの手を握り返す。

 

 

「ルキナさん、有り難う、ございます。……これ、を」

 

 

 喋れる程にまで回復したロビンは、手にしていた『黒炎』をルキナへと差し出した。

 それをルキナが受け取るや否や、ロビンは力尽きた様に倒れそうになる。

 それを慌てて支えると、ロビンはまだ辛そうな顔で困った様に言った。

 

 

「すみま、せん……。

 どうも、抑えるのに、精一杯で。

 今は、動けそうには……」

 

「なら、私が貴方を背負います!」

 

 

 ロビンの方が背は高いが、幸いルキナはかなり鍛えているし、ロビンはどちらかと言うと華奢よりの体格である。

 ロビンが動ける様に回復するまで、『竜の祭壇』の外へ辿り着く位までなら、きっと背負って行ける筈だ。

 今はとにかく、一刻も早くこの場を離れなければならない。

 急場は凌いだとは言え、ここに居続けてはロビンに負担が掛かり過ぎてしまう。

 

 ルキナはロビンを背負って歩き始めた。

 大丈夫だ。

 ロビンと共に来た道は、ちゃんと覚えている。

 

「すみません」と謝るロビンに、「良いんです」と首を横に振る。

 何時だってロビンに助けて貰ってきたのだから。

 今度は、ルキナの番なのだ。

 

 ルキナ達を探して徘徊する屍兵に見付からない様に警戒しながら、確実に確実に、ルキナは外への道を辿って行く。

 

 幾度となく危うい場面があったが。

 背に感じるロビンの温もりと重みが。

 そして彼の命を預かっているのだと言う責任感が。

 そこを切り抜ける知恵と勇気を与えてくれた。

 

 そして、行きよりもずっと長く感じる道程の果てに。

 漸く、ルキナとロビンは。

『竜の祭壇』からの脱出を果たしたのであった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

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