神様頼りはまだ先とおく   作:moti-

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漢字
幕間


 カラカラと音を立てて滑車が回る。水の圧力で回転するそれは試作段階の物で、わりかし平和になった村の水汲み用にと帰省組から聞いた情報でとりあえずとつくって見た物だ。数分間回り続け、これ完成だろうかと考えたところで滑車が何故か内部から爆発する。

 

「なんでやねん……」

 

「ラグくん、また駄目でしたね」

 

「これで都合四つ目なんだが崩壊のバリエーション富んでない?」

 

 上に落ちていくのが一つめ、アッー!! と何故か叫びを上げて割れたのが二つめ、着火して回り回って森の方へ飛んで行ったのが三つめ。四つめは今の爆発である。

 

「なんだろう。俺、絶望的に物作り向いてねぇのかな」

 

「火薬も無いのに爆発とは少し奇妙なものがありますね」

 

「なんか変な化学反応でも起きたんじゃねーの」

 

 はあ、と声も交え息を吐き出せばそっとサトリさんが持っていた水を渡してきた。それを受け取り飲み干せば、近くで畑をいじっていた【細胞】が駆け寄ってくる。

 

『親方! 畑から女の子が!!』

 

「どうも、龍脈の影響で女の子になった人参です」

 

「龍脈便利すぎかよ」

 

 【細胞】にそいつの処理は任せ、やっぱこいつらここ呼んでよかったな、と思う。単純に人手が増えた。食事の賄いは竜の肉をあげればよく簡単なので酷く助かっている。

 

 それに、見た目で言えば、かわいい猫だし。【銃裏憂羅】をここに呼んだのはアタリである。地味に戦闘力もあるので村長の過労がなくなったのが一番の功績。

 

「いやぁ……、ここで銃裏憂羅が受け入れられて良かったです」

 

「まぁ、村長なら銃裏憂羅程度殺せるしな」

 

 相性の問題だ。村長は暗殺特化である故に火力が無いのだが、生命力の少ない【銃裏憂羅】の種族なら根絶やしに出来る程度には強い。

 

 時間を掛ければ、とつくが。津々浦々の化物は伊達では無い。

 

「ほんと、平和だなぁ……」

 

 大きく伸びをして呟き一つ。

 

 

 ーーー例の一件からそろそろ二月が経とうとしていた。

 

 

 ◇

 

 

 帰郷組も休みを消化しまた森の外へ出ていったため二月前と顔触れは特に変わりない。【銃裏憂羅】の一属を交えた程度にしか面々に違いはなく、しかし二月もあれば変わるものは変わるもので、自分の背も能力の覚醒の影響なのかは知らないが(加護説については怪物に否定された)二桁程度伸び、身長はもう少しで2メートルの大台に乗るほどだ。ミルは150半ばなので身長差が相当開いた。

 

 また、村にも外の技術を取り入れ利便化してきている。詳しいことは知らないがバリケードの進化がどうとか。まぁそこには詳しくないし、まだまだ段階的には低い。歳月を掛ければ外とかわりないほどにはなるだろうが、外の技術も進歩しているので差は縮まらない可能性もある。

 

「おー、居た、ラグ」

 

「ん? ああ、どうした村長」

 

 話しかけてきたのは村長だ。村を見て回っていた俺を探していたらしいことは言葉から判断できる。装備が狩り用になっているのでおそらく外に出るのだろう。

 

「ちょっと狩り出るから手伝ってくんないかなぁって。堅い敵出てきたら面倒だし」

 

「……了解。じゃあ行こうか」

 

 武器は要らない、と言うことはもう村長も理解しているので話が早い。暗殺特化は速度・隠密特化。足音無く駆け出していく村長の速度は常識外れのものだ。あっと言う間に姿を消すそれを、

 

「ーーーよいしょ……っ!!」

 

 跳躍し、追い掛けて行った。

 

 

 

「んー? いや、速いねぇ。速いと早くて助かるよ」

 

 追い付いたのはバリケードの外に出て立ち止まっているところにだった。こう言うところ、やはり本職、特化型には敵わないなぁと思いつつ常識の外にある速度であると考える。そうして回りを見て既に【銃裏憂羅】の【細胞】が集っている辺り、狩りには直ぐに向かえそうだと判断し、しかし今回は村長の手伝いだ。故に村長の指示を待つ。

 

「いやぁ、こいつら【一属】の大本はルドなんだよね。こんな便利なの使役してるんだったらもっと早く貸してくれたらよかったのに」

 

「いや、村長。【銃裏憂羅】を見て普通にそんなこと言えるのはどうかと思う」

 

「まぁ殺そうと思えば殺せる程度だからねぇ。肉質柔いし」

 

『【一属】が近くにいるのにそんにゃ恐ろしいことを言わないでほしいにゃ……ほんとにできる人に一番言ってほしくない言葉なのにゃ』

 

 その言葉を聞いて村長は一瞬黙り、

 

「よし、今夜は猫鍋だ」

 

『ここでそれはギャグでも笑えないのにゃ!? と言うか狩りに行く前なのに空気緩すぎにゃ……』

 まぁ幕間なので仕方ない。今回はギャグパートなのだ。一話から急展開過ぎるので箸休めは必要だろう。

 

『メタ発言してると例のキチガイが寄ってくる可能性あるから止めるのにゃ』

 

 その言葉と同時に何もないはずの空間から紙が現れる。

 

【読んだかい?】

 

『読んでねぇにゃ。異世界の果てで勝手に涯を迎えてろにゃ』

 

 【細胞】があっと言う間にその紙を飲み込んでいき、完全に消失したのを見届けてから【銃裏憂羅】は言う。

 

『……さぁ、狩りへ行こうにゃ!』

 

「私的にはちょくちょく話題にあがる例のキチガイが誰だか知りたいのだけれど」

 

『名前を読んではいけない例のあの人にゃ』

 

 それだけ言って【銃裏憂羅】は顔を逸らしこれ以上話すことはない、と言うことをアピールする。

 

 はぁ、と村長が息を吐いて森の方へ目を向ける。

 

「……じゃ、行きますかぁ。銃裏憂羅は自由行動。ラグは私に着いてこい」

 

 その言葉に了解、と返し走り出した村長に着いていくため全力で走ることにする。

 

 

 

「まずはこれで一匹目ーーーっと!」

 

 リオレウスの翼を千切り、頭部を踏み砕く。その翼を投げ、射線にいるジンオウガの顔面に当て怯ませ、そのまま生きたジンオウガをナルガクルガへ向けて投げる。ナルガクルガが潰れ、生きているジンオウガを簡単に始末して三匹達成。

 

 こんな程度でいいだろうか? と村長の方へ問い掛けると十一匹のイャンクックを仕留めた村長が今日はこれくらいで終了と言った。

 

「……あっと言う間に終わったねぇ」

 

「なんで俺が三匹始末してるうちに十一匹も殺せるんだ……?」

 

「ま、慣れの差だね」

 

 村長はそういい、やって来た【銃裏憂羅】の引く車に乗り、

 

「あんたは地力が強くても結局やってることはただのゴリ押しだからねぇ。肉が固すぎて私じゃ殺せないけど。……所謂重戦士タイプ、但し肉弾砲も撃てるみたいな感じさ」

 

 だからこそそこでは効率的な対処方を理解できてる私の方が強いってわけだ、村長がそう言うのを頭に入れつつ自身も車に乗る。【銃裏憂羅】は自分で帰れよとか思ってるかもしれない。だがしかし動かずに目的地へとたどり着けると言う快感を知れば動く気にはなれないと言うわけだ。

 

「ま、ラグは技術を磨かない方が強いだろうけど」

 

 その言葉を切っ掛けにしたのか、車が村へと走っていく。俺自身も技術なく馬鹿であった方がいいと感じているので意見が一致した。

 

「……………………」

 

 ーーー平和だなぁ。

 

 平和に過ぎて、明日にでも世界が滅んでしまいそうだ。

 

 なんて。

 

 洒落にならないことを。

 

 思った。

 

 

 ◇

 

 

 村に戻れば子供が遊んでいるのが見えた。

 

 村自体が少人数なので遊んでいる子供は二人である。まあ、子供と言えどその潜在能力は馬鹿にならないものだ。次世代に向かえば向かうほど体は適応し進化していく。この村は相当昔から続く系列があるため、子供たち次世代組は少なくとも祖父等の世代よりは強くあるだろう。

 

「下手すれば俺より強くなるのがいるのかもな」

 

 小規模な村なので名前は当然覚えている。記憶を脳から引っ張り出しながらその子たちを呼べば、まるで親になつく雛のように駆け寄ってきた。

 

 俺は屈んで適当に頭を撫でてやり、そこから言葉を紡ぐ。

 

「ーーーよ、ハツ、ツイ」

 

「よ! ラグのにーちゃん!」

 

「こーちわ、です」

 

 ハツとツイーーー初と終の二人は元気に挨拶してきた。終はやっぱ『ん』が言えないのか、と思いつつ、

 

「お前ら、親には着いていかなかったのか?」

 

「ええ。わたしたちは。ま、明日にでも出ていきますけど」

 

「僕ら外でハンター目指すんだよね。年齢的にちょっと厳しそーだけど、きょーしゅーじょはねんれーせーげんノーだから。それで三年通って、そっからハンターとして仕事しよーかなと。こっちに残ってたりゆーはここらへんは体を作るのに向くからかな。ちょっと走ったりしただけでスタミナがちょー付くからさー。子供でも並みのせーじんだんせーよりかはもー働けるんだー」

 

「ま、お前らは言語機能に異常があるかわりに素質が優れてるからな。ハンター向きではあると思うぞ」

 

 まぁ、最悪今の状態でも覚醒前の俺より強い。そういう理不尽の類いなのだ、この二人は。

 

 ハツは母音の発音がうまく出来ないかわりに異常に技巧に優れ、そして地の能力だけでも他を圧倒するほどのーーー言うなら怪物的な子だ。性別は男である。

 ツイは『ん』の発声が出来ないかわりに素の力、そしてスキルが非常に厄介だ。スキル単体でもハツを超越するほどの強さなのだが……覚醒前なら惨敗だろうが、今ならエリアごと破壊すればいいだけなので余裕で倒せる。こちらも実は男である。ツイは親が怒濤の変態だったので女子として教育されていた美少年なのだ。

 

 その変態、外ではG級ハンターだと言うのだから人は変態である方が強いのかもしれない。【銃裏憂羅】に愛を叫んだ例の男性もどうやら朝の鍛練のせいで風を巻き起こし雲を裂くほどだったらしいので。

 

 ま、基本そんな強い人間は少ない。外のG級ハンターの数が数万、その中でも人間として上位に位置する人間はその一割にも満たない。故にちょっとこの村超人頻出すぎない? と疑問に言えるのだが。

 

 ともあれハツとツイならばハンター業で食って行くことはできるだろう。特に心配はないので応援しといたあと、何か餞別でも渡そうかと考える。しかしハンターとなるのならモンスターの素材を渡すのはいけない。初めて討伐したモンスターの素材をお守り代わりにするハンターもいると聞くので、下手に感動を薄れさせることはしたくないよなぁと思ったためだ。

 

 じゃあどうしようか? と考えるが、武器と言うのも駄目だろう。荷物になるのと、それを保管する場所が用意できない。教習所は寮があり、マイハウスを借りることはないだろうので武器は止めておくことにした。

 

 じゃあーーー何かあっただろうか? そう頭を悩ませ、

 

「あ、そうだ。【銃裏憂羅】を世話用に連れていけばいいんだ」

 

 勿論【細胞】だが。一匹いれば便利なアイルーである。癒し性能の非常に高いので寮でNGでなければ連れていけばいいのではないか?

 

「ラグにーちゃん。それはりょーがNGだよ」

 

「というか別に何ももらわないでいいですよ? わたしは父にねだるので」

 

「んー? でも何も渡さないってのもなぁ」

 

「じゃーハンターになったってほーこくにきた時に渡してくれればでーじょーぶだよー。ラグにーちゃんにはけっこー世話になってたし」

 

 本人たちがそう言うので俺もそれ以上は言わない。この二人、実はせっかちなので話が長いと怒るのだ。そのため早々にその話を打ちきり、彼らがハンターになった時に何を贈るかの候補を頭の中で上げつつ、

 

「ーーーそうだ、コンビでやっていくのか? 二人ならむしろ人数が邪魔になるだろうしそうだと思うけど」

 

「そーだよ。僕らはコンビ組んでやってけたらなーって考ぇてるんだ」

 

「実はパーティ名も決めてたりします」

 

 想像以上にノリノリだった。これ、将来的にすげー出世するんだろうな、と盲目になった親のような気分で考えつつ、

 

「それは?」

 

「当然ーーー【始終】っ!!」

 

 へぇ、とだけ呟いておく。

 

 それ、【死獣】に変換されないといいな、だなんて思いつつ、そうして彼らは荷物の整理に呼ばれたので集いを解散する。

 

 

 ーーー崩壊まであと数日もない。




終盤あたりでの息切れがみえるみえる(


もうそろそろで完結です。ちょっと次作への布石を打ちつつ、主人公の救済劇はほんとに悲劇で終わるのかなぁとプロット見つつ。
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