神様頼りはまだ先とおく   作:moti-

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有為転変(無為全編)

 ーーー大きく息を吸う。

 

 階段を昇っていく。現世と隠世のその境。そこで俺は何時の日だったか、ミルとはじめて出逢った時のことを思い出していた。

 

 こんにちは。うん、こんにちわ。最近はどうも外が慌ただしいね。ええ、そうね。どうだい? 君は外へ出てみたくなったことはあるかい? ……いいえ、全く。そうか。俺もないよ。ただ将来外へ出ることになるのかなぁとは。へぇ、そう。私もいつか外の世界にいくことになるのかしらね。たぶんそうだろ……いいや、この話打ちきり。まったく酷い戯言だからな。戯言ってなにって? うん……ふざけた物言い、みたいな感じの言葉だよ。戯言と書いてぎげんともたわごとともざれごととも読めるんだ。へぇ、物知りなのね。いいや、ただただ影響されやすいだけさ。ふーん。そうだよ。そうなんだ。

 

 無知と無恥を鞭で無茶させた時代の、要は幼少の、言ってしまえば他愛ない日常の戯れを進んでいる頃の。

 

 どうでもいい少年と少女は出合わなければまともでいられたのに。

 

「ーーー……無意味な感傷だ」

 

 過去に縛られるのは愚者の所業。その感傷は不要で無用なものであり、今ここにこうしていることが完全に事実でいいではないか。

 

 そう、それはどうでもいいからこそ酷く輝いて見えるものでーーー

 

 ーーー階段を登り終える。

 

『来たか。待ちくたびれたとは言わん。そもそも来るとすら思っていなかった故な』

 

 そこにいたのは龍。赤い鬣、青の瞳、頬を撫で付ける粉塵。

 

 それがテオ・テスカトルと言う名の古龍であると言うことの証明。

 

『ふむ、来たと言うのならば……貴様は本気で我々十龍を討伐できると思っているということか』

 

「…………」

 

 言葉には答えない。

 

 剣を構えることで返答した。

 

『嘗められたものだ。しかし我は慈悲深い故、せめて一瞬で殺してやろう!』

 

 高速。それを表すにはどれだけの弁を尽くせばいいのか? 軌跡は追えないほどに複雑。縦横無尽に駆け巡るその龍は音を越えるだろう速度で空間を飲み喰らっていた。

 

『この速度! これが龍脈の力! 人間の貴様に越えられる道理は無い!!』

 

「…………俺が人間ならな」

 

 それだけ呟き瞬きした瞬間、

 

 テオ・テスカトルは既にそこにあった。

 

『ぐ、ぉぉぉおおおおおッ!?』

 

 剣にその身を食い込ませた状態で。

 

 手に重厚な感触。金属が悲鳴を上げ、けれどしっかりと役目を果たしテオ・テスカトルの体を鼻から上下に分断する。

 

 ーーーそう。

 

 そもそも体当たりと言う攻撃を取った時点でこいつは負けていたのだ。体を相手にぶち当てると言う攻撃方法上攻撃の終点は俺の体であると確定している。そのため攻撃が来るであろうと分かっていたタイミングで、重心を移動させ範囲から逃れつつ、床をつかんでいる左足に力を込め、相手の勢いを利用しつつ割断。腕には酷く負荷が掛かったが、まぁこの程度問題ではないし仮に折れたとして一瞬で治るので考えるだけ無駄である。

 

「セルフギロチンご苦労さん」

 

 一体目。

 

 ーーー階段を上る。

 

『おや、はやい。ふむーーー戦闘力は並み以上と見える。しかし私は知っているぞ、貴様は未だ自身の体の運用に慣れてはいないと言うことをな』

 

 嵐、いや、台風ーーークシャルダオラか。

 

 剣は早くも壊れかけだ。強度が足りないにもほどがある。しかし投げれば使えるには使えるだろう。

 

『何故なら貴様は未だ迷っているからだ! そう、故に貴様は死ぬ!!』

 

「……言い回しが陳腐だよな」

 

 軽口。そして剣を投げた。

 

『甘い! それが既になまくらであることくらい既に見抜いているわ!』

 

 ただただ敵を殺すことのみに集中する。

 

「それがどうした」

 

 駆け出し、ーーークシャルダオラの顔面前に拳を引いた状態で間合いに入り、

 

「俺の本業はそもそも素手だ」

 

 全力で、何も考えず拳を振り抜いた。

 

 顔面が拳の形を表現するように凹む。波紋のように肉が波打ち、拳が前方へそのまま押し込んでいく間に凹んだうちの何処かが割けたのか血が溢れてきた。顔面に突然働いた力に下半身は付いてはこれず、顔面が体を置いていくように後ろに吹っ飛んでいき、

 

 ぶちん、という音を幻覚するほど鮮やかに、滑らかに、清らかに、淀みなく容易に千切れた。

 

 頭部を失った肉体、首の断絶口から血が溢れ出す。あっと言う間に地面を染めていくそれを冷めたように褪めたように醒めたように眺め、そうして呟いた。

「死ぬのはお前だったみたいだな」

 

 次へ。

 

 三匹目は誰だ。

 

 ーーー階段を上る。

 

『霧、否、霞ーーー正体不明に怯え死ぬがよい』

 

 オオナズチ。

 

 毒の霧が散布された殺戮場で、体に激痛が走る。人間神経を制御できるわけがないし痛みとは耐えるものではないのだろうが、その痛みは一切思考を鈍らせない。それは単純に破綻の証か、いいや、それはどうでもいいことだ。

 

「殺気が隠せてねぇんだよ」

 

 殺そうと言う意思は透明になっても消えることはなく、殺意が向かう終点は俺と言うことになりーーーテオ・テスカトル同様に動きを読みやすい。

 

 故に右側後方に姿を消したままのそいつが着地するのを理解し、体を回しその勢いで蹴り飛ばす。顔面が大きく左へ。それに吊られて体も吹き飛んでいき、そして首が半分千切れたそいつを先回りして掴む。

 

 投げた。

 

 上へ向かって投げ、その体を遥か上空へと吹き飛ばす。

 

 このまま落ちれば死ぬだろう。

 

「ま、生きててもいいけどな」

 

 毒の煙を抜け、階段へ足を掛ける。

 

 上へ。

 

 ーーー階段を上る。

 

『寝言、譫言、戯言、絵空事ーーーそう取られてもおかしくない程度の発言を今からするけど『殺さない』って選択肢はないのかな?』

 

「あるわけねぇだろ。死ね」

 

『その殺意はどこから来るんだ全く』

 

 シャガルマガラのばらまくウィルスを雑に払い殺しつつ平和的解決を望んでいるらしいそいつの言葉に返す。

 

「脳から」

 

『キチガイだ』

 

「うっせぇ……で、なんだ。どうする? 俺はお前をスルーしていいのか?」

 

『死にたくないからそれでもいいけどねーーー忠誠なんてないし。ただこれ見逃すと殺されそうなんだよなぁ……社畜は辛いよ』

 

「ブラックとか言う次元じゃねぇ」

 

 とりあえず消し飛ばしておき、次。

 

 上へ。

 

 ーーー階段を上る。

 

『どかーん! どかーんどかーん!! わははは龍気砲だぁ! どかーん! どっかーん!!』

 

「……スルーしていいかな」

 

『お? おー! 来た! 来た来た! どうぞどうぞお通りください僕まだ死にたくないです! 古龍だからまぁ生き返ることは出来るんだけどね!! グラン・ミラオスとかいるしね!!』

 

「じゃあ殺す」

 

『いやー!! ばかー!! やめろー!! 死ぬー!!』

 

「おめーさては元気だな?」

 

 そんな風に叫びつつ空中を回転して逃げるバルファルクを見つつ、上を見つつ、最後にもう一度バルファルクを見て、

 

「てい」

 

 真上を通ったバルファルクに対し足を振り上げることでその動きを停止させ、その足でそのまま蹴り殺す。

 

『びぎゃっ』

 

 わりかし新参だからかは知らないが最後までギャグレベル高かったな、と思いつつ、

 

 上へ。

 

 ーーー階段を上る。

 

『ーーー名をキリン。はじめまして……いえ、では無いですね』

 

「ああ……ラージャンに殺されてた」

 

『筋肉には勝てなかったよ……』

 

 そんなことを言い、その角に雷光を閃かせる霊獣キリンは華やかで艶やかで魅了される者がいるのも理解できる。

 

 ただこいつラージャンに殺されてたからな。明らかな力関係で言えば俺の圧勝だぞお前。

 

『仇を売ってくれた方にこうして刃を向けるのは心苦しいですが、これも命令ですので……』

 

 そう言って降ってきた雷を受け、一瞬動きを止めたところに前方範囲を凪ぎ払うように射たれた雷がやってきた。それをそのまま拳を震い粉砕し、駆け出し、眼球に手を突き入れ奥まで差し込むことによって脳を破壊する。脳の位置は生物である以上、頭に存在するーーー故に動物の弱点は顔面に存在しているので、そこを破壊した。それだけでキリンは体を支える力を失い、どころか意識さえ消滅し死亡する。

 

 殺害終了。

 

 上へ。

 

 ーーー階段を上る。

 

『グガァァァァァァァぁぁぁぁぁあああああああああああああアアアアアアアアアアアッッ!!』

 

 それは巨大な龍だ。

 

 ラオシャンロン。

 

 それが正気を失ったかのように、狂気的に、呪われたように叫びを上げる。

 

「あいつ……面倒な置き土産を」

 

 恐らくこれはシャガルマガラが犯人だろう。単純に見境が無くなるだけでなく、問答無用で自分が傷付くことすら許容する、怪物。

 しかしラオシャンロンは幸い巨大だ。故にこそ、動作は鈍く、殺しきれる。

 

 後ろに回り、振られる尻尾を掴み、そのまま尻尾の上へ乗り跳躍。背中に降り立つと同時に下へ向けて拳を振るい地面に縫い付け、顔面へと向かう。そのまま踏み潰して頭を破壊した。

 

「これがーーー七匹目?」

 

 ともあれ、

 

 上へ。

 

 階段を上る。

 

「ーーー……巨大龍ラッシュって感じで」

 

 地面には油が、……粘性の油が一面を覆い尽くすようにして撒かれている。ならばつまりこいつは恐らくゴグマジオス。

 

 そう考えると同時、油が赤くなり、破裂する。それだけで大規模な爆発が起こった。当たり前だ、地面を覆い尽くすほどの物である。火が付けば爆炎へと昇華することくらい推察出来るもの。

 

 その爆発で視界が眩むが、そのままゴグマジオスへ向かって走り、腕を振るう。

 

 一撃目で両足を引き裂き、

 

 そのまま倒れるそいつを体を捻るように空中へと持ち上げ足で腹部を蹴り、そうして腹に風穴を開ける。

 

 そしてもう片方の足を傷口に埋め、、足を広げることでその体を真っ二つに引き裂いた。

 

「ーーーこれで死んだだろ」

 

 八。

 

 上へ。

 

 ーーー階段を上る。

 

 それは巨大な蛇で、それについてごく普通のように、ごく当たり前のように俺は疑問を口にした。

 

「……お前どうやってここ来たの?」

 

『……………………』

 

 向けられる視線がどこか「頭おかしいんじゃねーのこいつ」と訴えるようなものになったがそれを無視してそのまま問い掛ける。

 

「いやほんとさー。その体でよくここまでこれたよね。見た感じここの空間そんな広いわけでもないし……」

 

 そういって下半身部分が足場から明らかにはみ出して下方へと垂れ下がっているのを目に入れ、

 

「ごめんなさい」

 

『……………………』

 

 解ればよろしい、と言う目になった。そしてなにげに先ほどから落ちてくる物が怖い。なにこれ、隕石?

 

「あの、これ降らすのやめてもらっていいっすか?」

 

 降ってくる岩を殴り砕きつつそう問いかけたが駄目なようで、ならこれ体の下入ればいいんじゃね? と考え蛇の体の下に入る。これで肉壁ができた、と安心したのも束の間、

 

 ごく当たり前のように蛇の体を貫通してきた岩が頭を打つ。

 

「すりぬけ搭載とかハブネークかよ……っ!」

 

 割と痛かったので半分キレつつ殴り殺す。

 

 ここらへんに来るとほんとに物理法則ってなんだと言う風に謎現象が起こってくるようになるのか、と驚嘆しつつ、

 

 上へ。

 

 ーーー階段を上る。

 

 そこに居たのは騎士。

 

 黒の騎士。ーーー黒騎士。

 

「剣くれたのはありがとうな。でもちょっと強度がゴミ過ぎやしないかな」

 

『いや、そもそもここまで登ってきてラスト一人に掛ける言葉がそれでいいのか……?』

 

 そんなことを言われつつ、今までで人型であるそいつに質問を投げ掛ける。

 

「なんでお前は人型なんだ?」

 

『人間の姿だったらミルちゃんに抱きつけるよね! って』

 

「古龍はいったいどこを目指しているんだ……」

 

 今まで見た十匹は文句無しにすごいキャラしてたのだが(個人的トップはバルファルク君だ)こいつは一目見てわかる(或いは一言聞いて解る)。

 

 変態だ。

 

 

 ◇

 

『ーーーいやぁ、何がどうかわいいって自分が化物だって気付いたから子供の頃からずっと好きだった男の子と一緒にいちゃいけないと思って別れようとする健気で無邪気なところよね! ただミルちゃんとあったのほんとに最近だから魅力を知り切れてないのよね! よかったら教えてくれない!?』

 

 俺は答えない。

 

『しかもミルちゃんほんとは追い掛けて来てくれたあなたに今すぐに抱きつきたいってくらいそわそわしてたのにそれを必死に隠そうとして隠し切れてないところがかわいいのよね!!』

 

 俺は答えない。

 

『しかし君もすっごいかっこいい子ねぇ! 好きな女の子のために正面から常識を捨てて古龍の群れに喧嘩を挑みに来てるのよ!? いいなぁ……っ! こんな恋愛がしたかったなぁ……っ!!』

 

「キャラ崩壊起こしてんぞてめぇ!」

 

 人が意識を向けづらい左側を執拗に狙ってくるのにストレスを溜めつつ、突き出されるナイフをどうにか交わしていく。首筋左脇脇腹太股足の腱。相当良質な素材でできているだろうナイフは軽く撫で付けられるだけでも皮を割き肉まで達し血が溢れる。故に防衛するにしても相当やりづらい。

「くっそ! くっそ! 外道! 害悪! 性悪! 腐れ外道!!」

 

『ところで君おっぱいに興味あったりしないの? なんなら鎧脱いで触らせてあげようか?』

 

「脈絡無さすぎるしそもそもまずお前女かよ!? 鎧脱いでくれたら今でも早いのに絶対もっと早くなるだろいい加減にしろ! あと俺は貧乳派だ!!」

 

『いや、ロリコンでしょ? ミルちゃん見た目幼女だし』

 

「俺と同い年だからノーカンだよ! てか暫く前から身長が伸びてないあいつの方が謎なんだよ!!」

 

『ほらそうかっかしない。おねーさん鎧脱ぐよー』

 

 パージされた鎧の中身は黒髪が似合うきょぬー美女でした。

 

 鎧と言う重りがなくなったことにより一層素早さを上げたそいつは最早視界で追えない。故に感覚のみでナイフを防御する。

 

 縦横無尽に動き回るそいつのナイフの煌めきで首を狙われていることが解る。何とか逸らして回避し、と思えば注意が散漫になった足を払われ体勢を崩す。やば、と考えた瞬間に反射で右手は動いていた。返す刃で心臓への刺突の軌道に乗るナイフを持つ手を掴み、そこに力を込め足を地面に着けつつ親指で刃を破壊する。そして腕を取った俺は突き飛ばし、そうしてその手を体の後ろで押さえることで拘束しようとした。そう、しようとしたのだ。

 

 さて、ここで俺は腕を伸ばした。それは突き飛ばそうとしたためであり、そのため俺は腕を勢いよく胸部へと伸ばしたのである。

 

 ここで問題となるのがこいつの通常サイズ以上の胸だ。突き飛ばすと言う判断は位置的に殴ることができないと言う判断に基づくものであり(部位は頭だ)、故にそれに従ったが、そう考えれば当然体から出ている胸は手が届く位置にあると言うことであり、

 

 つまり何が言いたいかと言うと、

 

「……つ・か・ま・え・た☆」

 

「ああっ! 手が! 手が胸に拘束された! 手ぇ抱き締められた! やっば、堪能する余裕ねぇわ。絞まってる絞まってる手ぇ壊死する。痛いよ馬鹿」

 

「身長的に手は届きそうだったのにね? 左手で殴るって選択肢が出てこなかったからこうなるのよ。ともあれ巨乳派に転向するまでこの手は放さない……!」

 

「お前その執念なんなの!? 胸に興味ないって言われたこと地味に気にしてんの!?」

 

「いやぁ、ミルちゃんと私系列的には同じなのよ? だったら反応してくれてもいいんじゃないかしら……? ほらほらほらほら」

 

「どういう意味ってか今のお前からは威厳が見えない」

 

 ともあれ掴まれている手を少し横に反らし胸に触れる。軽く何度か揉んでみて、うん、と結論を出す。

 

「お前胸当てしてねぇな? 冷静になってみれば形状浮き出てるしやけに揺れるし柔らけーし熱が伝わるし柔らけーし。ただ揉むんならもっと正面から手を押し付ける感じでだな……」

 

「やけに詳しいけど何? もうミルちゃんに手を出してた感じ? それともサトリさんか村長のでも触ってた?」

 

「ちげぇよ。いや、子供の頃は親のおっぱい触ってたかもしれねーけどそんなの覚えてねーよ。と言うか一緒の布団に入ってぬくぬくした中でちょっと浮き出てるおっぱいを手で包んで肌の熱が手に伝わってく感覚が俺は好きだからな……って何語らせてんだ。と言うかさっきまでシリアスにバトってたはずなのに何をどう間違えるとおっぱい談義になるんだよ。馬鹿じゃねーのか」

 

 はいそうです俺が馬鹿です。

 

「……ま、君の口からおっぱいに関する情熱が聞けたから良しとしましょう」

 

 手を解放される。わりかし痛い。

 

 と、同時に左足が顔面へと伸びてくる。それを痛む右腕を使ってガードし、足をつかもうとし、しかし投げられた新しいナイフにそれを妨害される。

 

 身長的にこちらが屈む状態になっていたのを解除し、背は丸めたまま膝を伸ばす。既に後ろに回られていることを理解し、心臓を狙った一撃を体を右に少し傾けることで脇に通し、頭を捕らえようとした。しかし結果は解っていた通りに回避で終了。速重視型はやはり面倒だ。そして相手が龍である以上攻撃も自分を殺せるほどだと思っておいたほうがいい。

 

 つまり称するとすれば物理型、と言うことだろう。ASぶっぱ。S振りはありえない。

 

「おいお前! このボケモン野郎! やっぱ俺おっぱいも好きだが尻派だわ!!」

 

「物理最強型と言ってほしいね! そして付け加えたそれは意味があるのかしら!?」

 

「開き直ってセクハラしてやろうと思ったら速すぎて尻追えねぇじゃねぇかこの野郎!!」

 

「理不尽!!」

 

 赤面したそいつが顔面へ向かって刃を放ったのを避けて腕を捕らえそのまま抱き締める。

「やっぱ思った通りだった……おかしいと思ってたんだ、おっぱいについてあまりにオープン過ぎる癖して尻を話題に一切出さねぇんだからーーーそう、つまりお前は尻について何かあると見た」

 

「合ってるけど最低過ぎるよ!? と言うかシリアス顔してなんで人の尻触ってるのかな!? ミルちゃんに怒られるよ!?」

 

「おっぱいについて誘ってきたお前が言うとなぁ……と言うか完全に捕まえたので降参してくれると助かるんだが。ここまで色々アホやったやつを殺したくねぇし」

 

「わかった! 降参! 降参するから尻触るのやめて!」

 

 そう言われたので解放してやる。生まれて初めてセクハラしたので童貞臭さが溢れてないかちょっと疑問になってきた。

 

「なんで尻は駄目なんだ?」

 

 それは純粋な疑問で、しかし単純に女性に聞くことではないと思う。だからたぶん答えてくれないんだろうなぁ、と思っていたら案外すんなりと答えてくれた。

 

「龍の姿におっぱいはないけど、シュレイド時代に変なヤツが『龍の貴様に惚れた』とか言い出して、執拗に尻を狙われたことがあって……それ以来尻についてはトラウマがあって……」

 

「……………………」

 

 どの時代にも変態はいるものだな、と思いつつ掛ける言葉が見当たらないので何も声をかけず、階段を見る。

 

 最上段。

 

 一番最後のーーー彼女がいる場所。

 

 上へ。

 

 階段へーーー足を掛けた。




二年ほど物書きしてきましたがおっぱいと言う単語を使ったのはこれが初めてだったと思います。

これほどアホな戦闘シーンを書いたのも初めてです。ともあれ次回最終話。
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