水鏡女学院と達磨・月英の共同生活。
「---という訳で、今日からこの二人が一緒に勉強します。」
「菩提達磨です。」
「...(ぺこ)」
「この子は黄月英。短い間、お世話になります。」
「「「....。」」」
始めは、達磨の風体に生徒達は警戒していた。
ほとんど浮浪者のそれには無理も無い。
第一印象が決まる割合はほとんど、見た目になってしまうのだから。
「よろしくね、月英ちゃん!」
「....(こく)」
その代わり、月英に対しては快く受け入れられていた。
これは諸葛亮から貰った服のおかげだろう。達磨が浮いている分、私塾で馴染んでいた。
黄忠の娘・璃々の時はこんなことにはならなかったのだが、流石に達磨も色々思うことがあるようだ。
「月英ちゃん、これはね?こう考えるの。」
「....(こく)」
基本的には文字の学習なのだが、合間合間で普段生徒が習っている事も教えられていた。
飲み込みも良いので、教える側も楽しく勉学に励んでいた。
ちなみにその間、達磨はひたすら文字の読み書きを行っている。
達磨が浮いていた理由は他にもある。
食事は一緒に食べず、月英を残してどこかへ行ってしまっていたからだ。
同じ釜の飯を食った仲というように、食事というのは人間関係の構築をするのにとても良い。
逆に言えば、親しくなる機会を自ら投げ出した達磨に近寄ろうとする者は少なかった。
「水鏡さん。薪はどこに置けばいい?」
「ええと、離れに小屋がなかったかしら?いつもはそこに集めているのですが。」
「いや、もう一杯になったもんだから他にないかと思って。」
「はい?」
達磨は生活の中で力仕事を請け負っていた。唯一の男性であり力もある。
こういった事をしていても、誰かが近寄る事はまあない。
「ずっと俺がいる訳じゃないから、今の内に溜めといた方が良いからね。」
水鏡がその小屋を確認すると、辺り一面に薪が積まれていた。
「嘘...。たった一日二日で出来る量じゃなかったはず...。」
「コツを掴めば誰だってできるよ?まあ、大人限定だけど。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「他に何かある?」
「いいえ、今まではこれで大分時間を割いていましたので。自由にして頂いて結構です。」
「じゃあ、読み書きでもすっか。部屋を借りるよ?」
達磨は頭をボリボリ掻きながら屋敷へ向かう。
「勤勉ですのね。...もう少しみんなと交流を深めて頂けませんか?」
「うーん、月英に人付き合いを知って欲しいから引き気味にしてるんだよね。」
「分かっています。しかし、私としても皆に良い刺激を受けて欲しいのです。毎日勉強していても同じような事の繰り返しでは駄目なのです。上辺だけを学んでいても本当の力にはなりません。」
「とりあえず検討はするって事で。でも、放っても来る奴は来る。あの二人とかな。...なんか覗いて見てるし。」
達磨は後ろ向きのまま指し示した方向に、こそこそしている人影があった。その人影は小さく、それだけでも推測できた。
「はわっ!ばれちゃった!!」
「あわわ、どうするの?朱里ちゃん」
「こうなったら...雛里ちゃん耳かして..。」
「うん...うん..それならいけるよ、朱里ちゃん。」
「面白いなぁ。」
なにかこう、小動物を見ているかのような気分になる。
その二人を見て微笑んでいた達磨。
「あの二人はこの私塾でも特別な二人でして群を抜いています。将来が楽しみです。」
「まったくだね。それじゃ、失礼。」
「あらあら、あの二人を放置しておくのですか?」
「二人が一生懸命考えた事を、楽しみに待ってる事にしただけさ。」
カラカラと笑う達磨の後姿を水鏡もにこやかに見送った。
結局一度も振り向かず、屋敷に帰ってしまった。
「ああ!いっちゃった!!」
「追いかけようよ。」
「うん。」
二人は達磨を追っていった。見失わないように死角に入り、様子を窺う。
「がぁー!食べちゃうぞー!」
「「きゃぁぁぁぁ!」」
達磨は死角に隠れて二人をタチの悪い冗談で脅かした。
特に鳳統が一番衝撃を受け気絶し、諸葛亮も影響され一緒に気絶していた。
「「......うーん」」
「やべっ。やり過ぎた?」
「ああいう事をしなければ、もう少し馴染んでるはずなのですが...。」
このやり取りを見た水鏡は頭を抱えた。
当然ながら、達磨の朝は早い。
達磨に寝床は無く野宿である。朝の水汲みも仕事の内であり、人数分の水を汲みに出る。
それが終わると月英が起きてくるので、それからは日課を行っている。
物音で水鏡や生徒が起きないように、わざわざ山内の川まで行ってである。
いつも通り体を流し、お経を唱える。月英はその場で聞くだけ。
後は、達磨の指示に従い修練に入る。と言っても、月英は簡単な事しかしていないが。
山から戻れば、私塾の皆が起きており、掃除や朝ごはん作りが始まっている。
「あ、菩提さんに月英ちゃん、おはようございます。」
「おはようございます。」
「(ぺこり)」
水鏡に出迎えられ、そのまま皆の手伝いに回った。月英は炊事、達磨は...特に無かった。
薪割りは既に終わっており、これ以上は収める場所がないのだ。
皆と無理に混ざろうとすると、生徒達の表情が固まる。特に鳳統が酷い。完全に外様扱いである、間違っていないが。諸葛亮も守ろうと、懸命に体を張り、作業が捗らない。
と言う事で、達磨は座禅を組んだり、絵を描いたりして過ごしていた。
一方、月英は達磨の分を埋めようと頑張っていた。
炊事は小さな頃から、母を手伝っていたりして経験があった為、テキパキと手を動かしていた。
「へぇー、月英ちゃん上手だね。」
「あ、本当だ...。」
「...(ふるふる)」
諸葛亮や鳳統が褒めてくれているが、その二人もかなり料理慣れしており、月英としては大した事じゃないと思ってしまう。
基本的に月英を諸葛亮と鳳統が気に掛けてくれて、何をするにも一緒にしていた。
三人は同じ部屋で寝ている。今のところ悪夢を見ていないので、達磨が居なくても良い様だ。
人見知りの鳳統が自然に話せるようになったのは三日目から、会話はできないが鳳統の過剰な内股がなくなったのでそう判断できる。
三人が作った朝御飯を皆で食べて、勉強の時間になった。達磨は既に別で食事を行い、勉強といってもひたすら文字だけの繰り返しで同じ教室に居る訳ではない。
月英は達磨と違って文字にそれなりな親しみがあったので、簡単な言葉は書けるようになった。授業を受けながら、分からない文字を教えて貰う事で、理解度の発展を目指した。これは水鏡が同じ事をずっと行ってもあまり効率が良くないことを考えて、達磨と別にした。
という訳で、今は孫氏の兵法書を使い、戦術に関する事を学んでいる。
「-----という訳です。分かりましたか?」
「「「はい!」」」
円滑に授業が進む中、月英は黙々と黙読し、理解に努めた。
水鏡はそんな月英に違和感を覚えていた。
「(徐々に着いて来れるようになってる?)...この子も稀代の傑物なのでしょうか...。」
最初はどの授業もぼんやり聞いているだけだった。それは仕方が無い、今まで勉強と言う事を行った事がないのだ。急に求められても出来る訳が無い。
理解してしまえば誰でも同じだが、どうすれば理解できるかその方法は人により微妙に違う。
月英はこの三日間で学び方というものを身につけていた。
「(....そうですか)慧学...。」
水鏡は月英の速い理解力の根源を理解した。
達磨の影響か、達磨と比べる事も出来ないくらい弱いが、月英は物事の正しい見極め方を身につけ始めている。
学び始めた時期は遅いが、その内今の役人を追い抜く位には間違いなく成長するだろう。
仏教が本物かどうかは分からないが、少なくとも達磨は本物であると認めざるを得ない。
当の本人は月英同様、いやそれ以上に黙々と文字を理解しようと書き続けている。常人なら休憩を挟まなければ、とっくに集中力が切れている。
月英の目の高さが他とは違いすぎるのだ。正に諸葛亮や鳳統のように。
故に疑問もある。達磨は月英が軍略を学ぶ事に対して渋っていた。結局、月英の希望があった為、学んでいるのだが。
「(何故...?)」
「水鏡先生?」
「あ、ごめんなさい。続けますね?」
時間を忘れて悩んでいると生徒から声を掛けられ、授業を進めた。
十日目ともなると、授業どころか諸葛亮、鳳統の話にさえ着いていけるようになっていた。
二人から色々と教えてもらっているのだろうが、この飲み込みの速さは異常。
このまま続ければどうなるのかと、水鏡は好奇心が沸いていた。
しかし、二人は勉強方法を身に着けて、もう間もなく旅立っていく。
「水鏡先生?菩提さんとも一緒に勉強したいんですが...。」
諸葛亮からの希望もあり、元々達磨から生徒に何かしらの刺激を与えて欲しいと思っていた水鏡は達磨を説得した。
達磨は今まで一切の関わりを作らず、月英を見守っているだけだった。
直接話した水鏡はともかく、諸葛亮と鳳統はほとんど接触できていない為、より近くで観察しようともちかけたのだ。
話を持ちかけると達磨は少し困った顔をした。
「水鏡さん。悪いが少し出てくる。直ぐ戻るから、それまで月英を頼めないか?」
「何か急用ですか?」
「この近辺に住む人々にちょっくら話を聞きにね。まあ、心配は無用。」
「まあ、よろしいですが...。そういえば、どうして月英ちゃんに軍略を教える事を渋ったのですか?彼女は並大抵の才ではありません。」
達磨は詳細を言おうとしないので、別の質問を行った。
「まあ、そうだろうね。あの子は実に素直に吸収していく。でも、そんな無垢な子に戦の仕方なんて必要なのだろうか?」
「...そう言われてしまえば何も言えませんが。それでも、この国を、親しい人々を守る力でもあります。」
達磨が婉貞に頼まれたのは、単純に月英の幸せ、それだけなのである。
月英がその道を選んでしまえばそれまでなのだが、自分で選択できるようになるまでは達磨の責任なのである。
故に、戦に関わるような知識や技術は覚えて欲しくなかった。
「力ね...。とにかく、決めるのはあの子だ。それに異論はない。仮にここに残るといってもね。」
「また、私の考えを?」
「いや、なんとなくそう言う可能性もあるって話さ。」
水鏡が少し考えていた事。月英が本物なのは分かった。だから、ここで伸ばせるだけ伸ばしてみたいという事である。
総合では諸葛亮、軍略なら鳳統、なら月英は?そう思うといても立ってもいられない。
まるで、好きな書物の続きを渇望するようなそんな期待を持っていた。
「どの道を歩もうが最後に笑っていられれば、それでいいんだと思うから。」
「...そうですね。」
「それじゃあ、行ってくる。」
水鏡のみの見送りを受けて、達磨は出て行った。
直後月英が、置いていかれた事にショックを受けていた。
「....!!...!?」
もうそれはてんやわんやで、収拾が付かなかった。
いくら水鏡が説明しても俯いたまま、隙を見て逃げ出そうとする始末。
そこで水鏡は達磨の意図を全てではないが、理解した。
月英は達磨に依存している。達磨はそれではいけないと、自立を促したかったのだ。
確かに、幼い少女相手に多少強引で酷いかもしれないが、このまま成長しても意味がない。
あろう事か、それを水鏡に擦り付けていったのだった。
「(どこかで埋め合わせをしてもらおうかしら...)」
月英の錯乱状態を鎮めた水鏡は、そんな事を思っていた。
これには諸葛亮と鳳統も尽力しており、月英を慰めていた。
「大丈夫だよ、月英ちゃん?私はそこまで知らないけど、あの人はいきなり置いていくような酷い人?」
「(ふるふる)」
「だよね?きっと本当に何か用事があるんだと思うよ。」
「そうだよ?きっとすぐに帰ってくるよ。」
「....(こく)」
二人に抱きしめられた月英は、目尻に涙を溜めながら頷いた。
諸葛亮はふとした疑問を投げかけた。正確には疑問というか、なんとなくそう思っただけなのだが。
「ねえ...月英ちゃん。私達ってどこかで会った事あるかな?」
「....?」
何故そんな事を考えたかは諸葛亮にも分からない。
将来軍師、またはそれに連なる者としてはどうか分からないが、そう直感した。
月英にはそんな覚えはないが、ただ否定はしなかった。
「ううん。やっぱり気のせいなのかな。月英ちゃんってもう直ぐ行っちゃうんだよね?」
「...(こく)」
「そっか...寂しくなるね。」
鳳統は、諸葛亮の感覚を理解できないが、月英との別れを惜しんでいた。
それは皆同じであり、それほどこの数日は充実した日々であったのだ。
「だからさ。私の真名を預かって欲しいんだ。...どうかな?」
「...(こく)」
「あ、私も。」
ここで強い友愛を誓うべく、三人は真名を交わした。
「私の真名は朱里。」
「私は雛里。」
「....。」
月英は、筆を取りさらさらと字を書いた。
「朔。へぇ良い名だね。」
そして月英はもう一度、筆を動かした。
謝謝、と。
今までに教わった文字を使って、月英は自分に出来る最大の事で感謝を伝えた。
達磨が見たら号泣ものである。
「ううん、私達はお友達だからね!」
「うん!離れてても、変わらないよ。」
過ごした時間は短いけれど、その誠意は二人にも伝わっていた。
月英は初めて、友達というものに出会えた。
今まで、母と二人だけの生活に新たな色が芽生えた。
これから先、大きな動乱がこの友情を阻む事があったとしても、今はただその幸福を抱き続けていた。
それから。
達磨が戻るまでの数日は、正式な生徒のような生活を送った。
勉学に励み、炊事洗濯と家事をも楽しんでいた。傍にいた二人の友と一緒に。
達磨がいない事に多少の寂しさと不安もあったけれど、この時間も月英にとっては掛け替えのないもの。
諸葛亮と鳳統に象棋を教わりもした。まあ、勝てる訳もないのだが。
そんな折、達磨が帰ってきた。
「----!!」
月英は達磨に飛びつき、ひっしとしがみついたまま離れようとしなかった。
「おう、ただいま月英。勉強、頑張ってたか?」
「(こくこく)」
「そうか。良く頑張ったな!偉いぞ。」
達磨は月英の芽の高さまで腰を落とし、やさしく撫でた。
「で?今は何をしてたのかい?」
「お帰りなさい、菩提さん。今は象棋をしていました。」
「何だこりゃ?」
月英を抱きかかえた達磨は諸葛亮の方へと向き、挨拶がてらに目の前にある物に付いて聞いてみた。
諸葛亮と鳳統は簡単に説明していると、水鏡が聞きつけて出迎えに来た。
「あら、おかえりなさい。どうでした?」
「やはり、実際に暮らす人々の話は参考になるね。」
「そうですか。それでは?」
「ああ、明日にでもここを旅立つよ。」
諸葛亮と鳳統は分かっていた事だが、寂しさは誤魔化せなかった。
「しょうがない..よね?」
「うん、どうしようもないんだよね?」
二人が俯いている中、達磨は月英に尋ねた。
「月英、どうする?お前にいて欲しいって願ってる人がいるぞ。ちゃんと返事はしたか?」
「...。」
「じゃあ、分かるな?」
「(こく)」
月英は達磨の腕から降りて、二人と向き合う。
達磨は察して、月英に木の皮と筆を渡した。
『わたしも ここでみんなと 過ごしたいと 思った。でも 私はまだ達磨様と一緒に この大陸を見てみたいの。』
月英は意志を伝えようと懸命に手を動かす。
『もし なくした言葉を ひろえたら そしたらちゃんとお話がしたい だから 私は行く。達磨様が 手伝ってくださるって言ってくれたから。だから その時まで 待って欲しい』
「うん!勿論だよ!!」
「きっとお話しようね!」
月英の文字は決して綺麗な文章ではなかった。それでも、月英がどんな気持ちで綴ったかは分かる。
二人は、月英の手を握り、再開を約束した。
「...水鏡さん。お酒って飲める方?」
「ふふ、いいですよ。偶には私もお酒を嗜みますから。」
「そうかい。それじゃあ、食事の後にでも。」
達磨は足元にある盤面の駒を1つだけ、何気なく置いてその場を水鏡と去った。
月英の心は間違いなく成長している。それだけでも、祝杯を挙げたくなってしまったのだ。
その日の晩御飯は達磨も同席した。肉が食べられないながらも、最後くらいはと談笑に混じっていた。
大半の生徒はビビっていたので、少し後悔していたが。
その後、水鏡と静かに酒を飲んでいた。
「これから、どちらに?」
「ああ、本来だったら南に、交州に行くつもりだったんだけど、まあ事情があって西に向かうつもりなんだ。」
達磨はこのまま益州に向かうと言う。
水鏡が事情を察するのは、猛しばらく後の事。
「益州ですか、あそこは南蛮の民族との争いが絶えない聞いています。それに統治している役人にも良い噂を聞きません。どうかお気をつけて。」
「ああ、どうも。そうだ、ひとつ言っておくけど。何かしら置き土産もあるかも知らないけど、気にしなくても良い。」
「....?はあ?」
「貴方には直ぐ分かるよ。そうだ、礼を申し上げたい。勉強方法が身に付き、なにより月英のあの顔を作っていただいた。感謝いたします。」
達磨は急に姿勢を正し深く頭を下げ、水鏡はそれを受け入れた。
「はい。またお越し下さい、そしてまた貴方の見たこの大陸を聞かせてください。」
「勿論。」
結局、達磨と深く話したのは水鏡のみだった。
諸葛亮や鳳統は興味深そうに達磨を見ていたが、達磨とすれば探られるのは日常茶飯事なので特別相手にしなかった。
あれほどならば、勝手に察するだろうし、月英をより向き合って欲しかったからであった。
夜が更け別れの時。
最後まで月英との別れを惜しんでいた諸葛亮と鳳統。昨晩も一緒に寝ていたようだ。
達磨が帰ってきた時の様子から心配していたが。
「それじゃあ、またね朔ちゃん。」
「またね。」
「(こく)」
女学院の制服は頂いたらしく、今も着ていた。
数日も着ていたのだ。もう違和感もなにもない。昔から着ていたかのように。
「それでは。縁があれば、また。」
達磨が旅立っていった後、気になることがあった。
一つ目。この辺りで最近賊が出るようになったのだが、聞くところによると壊滅したらしい。
全て捕縛され、町の脅威が無くなったと、人々は喜んでいた。
だが、その過程を誰も知らなかった。何時、何処で、誰が、全てが謎のままであった。
「置き土産...ね。なるほど、そうですか。」
水鏡はひとり納得していた。
二つ目。
鳳統が昨日行った象棋の片付けを忘れていた事から始まった。
諸葛亮と二人で、置きっぱなしになっていた盤上を見ると、恐らく駒が動いている事に気が付いた。
動いていたのは、月英の駒。
問題なのは、その1つの変化によって盤上の戦況が劇的に変わっていたことである。
「何...これ...。」
「..朔ちゃんなのかな?」
「どうかな...。」
その先の展開を考えると、徐々に優位になっている。見た目は悪手に見えるのに。
月英にそこまでのことができたのだろうかと、想い耽っていた。
しかし、月英の行いというのがどうにも納得できなかった。
月英の人格形成の回でした。