ダンジョンで神様を嫁にする為に神を目指すのは間違っているだろうか   作:白人

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豊饒の女主人

 

ゾワッ‼︎

 

僕は、すぐに振り返る。

 

今、誰かから見られていた様な…。

 

「あの〜、魔石落としましたよ。」

 

その時、僕にそう声を掛けて来たのは、銀髪のヒューマンの女の子だった。

 

「えっ?僕ですか?」

 

「はい、貴方です!この魔石、落としましたよ?」

 

おかしいなぁ〜。

僕は昨日、全部換金したはずなんだけど…

 

「本当に僕が落としました?」

 

「はい、貴方が落としていましたよ?」

 

ここまで言われたなら、きっと昨日の換金したと思って残っていたのを落としたんだろうと思い直す。

 

「えっと、ありがとうございます。と言っても、お礼出来そうなこともないんですが…」

 

僕が少し気まずげにそう言うと、

 

「なら今夜、あそこでやっている"豊穣の女主人"という店に来てくれませんか?私、あそこで働いてるんです。」

 

すると、少し離れたところにそう書いてある酒場らしきものがある。

 

「あっはい、分かりました。必ず伺わせて頂きます。」

 

「あははっもうっ!堅いですよ〜。あっ、私シル・フローヴァと言います。シルって呼んでください。」

 

良く見ると、この人も綺麗な人だなぁ。

まぁ、ヘスティア様には、負けるけど…。

 

「ああ、僕はノヴァです。ノヴァ・イグニス、えっと、よろしくお願いします。シルさん」

 

「ノヴァさんですね。こちらこそよろしくお願いします。ところでさっき失礼なこと考えませんでした?今夜の私のお給金の為にも、お仕事頑張って来てくださいね!」

 

「ハハッ、頑張ります。それじゃあ、また後で、」

 

僕はそう言って、逃げる様にその場を後にする。

アレが世に聞く、女の勘というものなんだろうか?

ヘスティア様も装備してるのかな?

でもなんとなく、シルさんのものと比べたら鈍そうな気がするなぁ〜。

 

 

一方その頃、

 

「ぶぇーくしゅん!誰か僕の噂でも、してるのかなぁ?」

 

などと、廃教会の地下で言う声が聞こえたとか、聞こえなかったとか…。

 

 

 

 

 

「35匹」

 

ふぅ、今日もそろそろ帰ろうか。

ヘスティア様も、もう出掛けただろうか?

これから数日、ホームに帰ってもあの(ひと)が居ないのかと思うと、凄く憂鬱な気分になる。

って、ダメだダメだ。

彼女のことを待つことに決めたんだから、彼女が居ない間、ステイタスの延びが悪くなって、サボっていたと思われるのは避けたい。

それに今日は、約束もあることだし、しっかりしないと!

はぁ、とりあえず帰るか。

 

 

 

「こんばんは〜。」

 

僕は、初めて入る酒場に少しだけ緊張しながら入る。

 

「いらっしゃいませー‼︎あっ!ノヴァさん来てくれたんですか!」

 

店に入ると、すぐにシルさんが迎えてくれる。

 

「アンタが、シルの言ってた大食らいの冒険者かい?」

 

店の奥に行くと、恰幅の良い女将さんが僕にそう問いかける。

って、えっ⁉︎

 

「あの〜、僕は何時から大食らいになったんでしょう?」

 

恐らく、元凶と思われるシルさんにそう問いかけると、

 

「テヘっ。」

 

「テヘっじゃねぇぇーーーー‼︎何時から僕は大食らいになったんですか!僕そんなに食べれなぃ「ゴンッ!」すいません、食べます。」

 

怖えぇぇーーー‼︎

何だここ‼︎

もしかして、ここはそういうヤバい店だったのでは?

だとしたら、あの魔石も全て罠‼︎

ヘスティア様‼︎

僕は今、ピンチです!

 

「あの〜、ちょっと奮発してくれたら良いんです。」

 

「ヒッ⁉︎わわわ分かりました。ふふ奮発すすすすれば、イインデスネ!」

 

ヤバい、ヤバい、ヤバい、どうする?逃げるか?

いや、無理だ。

見たところ、あのドワーフの店主は相当強い。

逃げようものなら、殺され兼ねない。

ここは、大人しく従うしか…。

 

「ノヴァさん?大丈夫ですか?」

 

ヒィィィィイイイーー⁉︎

「だだだだだ大丈夫ですよ。ししシルさん。」

 

「本当に大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」

 

きっ気付かれた⁉︎

 

「ええ、大丈夫ですよ。シルさん。」

 

僕は、仮面を被り直す。

 

「ところで、おススメのメニューは、なんですか?」

 

ドンッ‼︎

 

「食いなッ‼︎」

 

はい、分かりました。はい。

どうやらこの店で、僕に自由は無いらしい。

 

「ありがとうございます。頂います。」

 

それでも僕は、一応礼を言う。

食べものを出してもらった以上、例え、どれだけ法外な値段を吹っかけられようと、作ってもらった人への感謝を忘れてはいけない。例え、どれだけ法外な値段を吹っかけられようと……

 

「あのコレ、何万ヴァリス何でしょうか?」

 

「はあぁああ?」

 

「ヒィッ!すいません。すいません。下らないこと聞いて。」

 

ヤバい死ぬ‼︎

やっぱり、こういう店で値段を聞くのは、タブーだったか…。

こうなったら、コレ一皿で、何億ヴァリスとか、取られるんじゃあ…、

 

「あの、ノヴァさん本当に大丈夫ですか?凄く顔色悪いですよ?」

 

「はいいぃぃーーー‼︎大丈夫です!有り金全部置いていくので、殺さないでください‼︎」

 

「えっ?」

 

ふと、店内が急に静かになる。

 

あれっ?もしかして僕、また何かやっちゃった?

ああ、ヘスティア様。

僕は、どうやらここまでの様です。

まさかダンジョン以外で、この生涯を終えることになるとは、思ってもみませんでしたが、ここの魔王には、勝てそうもありません。

どうか先立つ不孝をお許しください。

 

「ブワッハッハハハハ‼︎」

 

突然、周囲の人間の笑い声が聞こえだす。

 

「流石、豊穣の女主人だ!初めての客に土下座されて許しを請われるなんてなぁーぁあ‼︎ガッハッハ!」

 

ズガン‼︎

 

フライパンが、今笑った男の顔面に吸い込まれる。

 

「ヒィィーーー‼︎」

 

「ワッハッハッハ!」

 

周りの笑い声が、一段と大きくなる。

 

「坊主。」

 

ドワーフの店主が、僕に話し掛けて来る。

 

「はいいぃぃーーー⁉︎殺さないでください‼︎」

 

僕は恥も外聞もなく、土下座する。

 

「はあぁぁ〜〜。シル、後は頼むよ。」

 

ドワーフの店主は、そう溜め息をついて奥へ消えた。

 

「やっ、やった!僕は生き残ったぞ!」

 

そう言うと、周りから又も、大きな笑い声が出る。

気になって周りを見ていると、みんな僕の方を見ていた。

 

「あの〜ノヴァさん。」

 

「はいいぃぃーーー!何億ヴァリス払えば、許してもらえますか‼︎」

 

「勘違いしておられる様ですが、ここは普通の酒場です。」

 

「分かりました‼︎ここは普通の酒場!外では、そう言って周れということですね!分かります、はい!」

 

「そっそうでは無くってですね。」

 

「ハッ!余計なことは、言うなということですね!分かりました。ここでのことは、絶対に他言しません‼︎だからホームに帰らせてください!」

 

「そうじゃなくって‼︎」

 

 

この後、僕の誤解が解けるまで、小一時間ほど掛かることになったのだった。

 

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