ダンジョンで神様を嫁にする為に神を目指すのは間違っているだろうか 作:白人
「グォォォーーー!」
少し離れたところで、さっきまでのモンスターたちが吠えている声が聞こえる。
断罪剣サクリファイスを消した影響か、先程まで、僕の心を支配していた怒りなんかの感情が霧散していた。
かと言って、先程までの事を忘れている訳では無いので、自分がヘスティア様にかなりの態度を取っていたこともしっかりと覚えている。
まぁ、今はそんな状況ではないので、謝るのは、また後にする。
「良いかい?僕は、君と離れてから今まで、
僕が、頭を止血しを終えると、ヘスティア様は言った。
「僕の武器?」
「うん!君の…いや、僕らの武器さ!君はあの時、僕が君の為に何も出来ないって言ったら、僕のことを凄く怒ってその言葉を否定してくれたよね。僕は、本当に嬉しかった。でも、やっぱりダンジョンに潜る君の力になってあげたいって、ダンジョンに潜っている君を守ってあげたいって、より強く思う様になったんだ。」
ヘスティア様は、あの時、そんなことを思っていたらしい。
僕のことを、こんなに考えてくれる貴女に、僕は感謝しか無いって言うのに…。
「だから、僕は作ったんだ。いつでも側で、君を守る為の武器を……
そう言って、ヘスティア様は会った時から、ずっと背中に背負っていた包みを開いて、中から黒いナイフを出した。
「これが、
これが、ヘスティア様が僕の為に作ってくれた剣。
今まで、僕が貰ったものの中で、一番嬉しい贈り物だ。
「このナイフは、生きてるんだ。僕の
その一言で、僕は遂に、涙を堪えきれなくなる。
「うッ、うう‼︎」
「なっ⁉︎どうしたんだい⁉︎何で泣いているんだい⁉︎僕のプレゼント気に入ってもらえなかったかな?」
彼女は、涙目でそう言う。
「だっだって、こんなにも嬉しいプレゼントもらったことがなかったから、一番大事な貴女にこんな物を貰ったら、そりゃあ、嬉しくて涙も出ますよ。ありがとう、ヘスティア。」
「そっか、喜んでくれて何よりだよ。ノヴァ君。」
ヘスティア様は、この大地の母であるかのような母性溢れる表情で、僕に微笑む。
「グォォォーーー!」
すると、そこで空気の読めないモンスターの唸り声が聞こえる。
「おっと、こうしちゃいられない。すぐに、ステイタスを更新しないと。それじゃあ、寝転がってくれるかい?ノヴァ君。」
僕は涙を拭き、ヘスティア様に言われた通りに寝転がる。
「すっ凄いじゃないか‼︎ノヴァ君!ステイタスの延びが凄い事になっているよ‼︎特に、敏しょッ⁉︎(これってもしかしなくても、さっきまでモンスターから逃げていたからだよね?僕もずっとあの子の腕の中だったし…、)」
「どうかしました?ヘスティア様?」
僕は、喜んだかと思ったら、突然静かになったヘスティア様に疑問を告げる。
「いや、大丈夫さ!君のアビリティはいつも頭の可笑しい上がり方をするね。」
「ええっ⁉︎また、ですか⁉︎」
僕は、驚きの声を上げる。
「ああ、またさ。でも、その方が良いだろう?僕を守ってくれるって信じてるよ。旦那様。」
チュッ!
僕の頬に、何か柔らかいものが当たる。
「うおおおぉぉーーーー!」
僕の身体中から、力が溢れ出る。
何だコレ?
それよりも今、旦那様って‼︎
あと、僕の頬に当たったあの柔らかいものって‼︎
キタァァああぁぁーーーーーー‼︎
「行ってきます!ヘスティア‼︎」
「行ってらっしゃい!ノヴァ君‼︎」
僕が、隠れていた路地から飛び出すと、直ぐそこに、僕を追っていたモンスターたちを見つけた。
「グォォォーーー!」
向こうもこちらに気づいたのか、僕を見て唸り声を上げる。
【来いッ‼︎
僕は、ある確信を持ってそう言った。
すると、
心無しか以前より、煌びやかに光っている。
「さあ!勝負だ‼︎ここを通りたければ、
僕は、やって来る数多のモンスターにそう叫ぶ。
「グォォォーォォオオオーー‼︎」
奴らは、吠えてこちらを威嚇しながら、僕に襲い掛かって来る。
一体目の猪型のモンスターが僕に突進して来る。
「ここから先にには、行かせねぇって言っただろうがッ‼︎」
僕は、プロメテウスの腹で猪のツノをかち上げて、開いた首を
一体目。
凄い、このナイフ物凄い手に馴染む。
まるで、最初から身体の一部だったみたいだ。
とりあえず、試し斬りは済んだ。
だったら後は、全て片付けるだけだ!
「うおおぉぉーーー‼︎」
身体が、まるで羽のように動く。
何故か、どんどん力が湧いて来る。
思えば、さっき猪型のモンスターのツノをかち上げたのも、ちょっとあり得ないぐらい上手くいった。
力も器用さも思ったよりずっと、上がっているようだ。
「グァァアアアーーー‼︎」
次から次へと、明らかに格上のモンスターたちが、僕を圧し潰す勢いで迫る。
「くッ、がぁッ!」
虫型のモンスターの鎌が、僕の肌に切り傷を与え、蛇型のモンスターの牙が僕に刺さる。
「ぐうッ⁉︎」
蛇型のモンスターに噛まれて少し経つと、急に身体に寒気がはしる。
これは、毒か!
毒に侵された時に、突然、僕の背中が熱くなり、幾らか症状がマシになる。
前から思ってたけど、何なんだろうなコレ。
まぁ。今は唯、助かるだけだから、理由なんてどうでも良いか。
虫型のモンスターの鎌を
あと3体。
「キシャーー‼︎」
鎌を受け止められた虫型のモンスターが、再び僕に襲い掛かって来る。
僕は、その鎌を
寸前で、溶解液の様なものが飛んできた。
それは、どうやら植物型のモンスターが、飛ばしてきた様だ。
見ての通りコイツらは、さっきから連携して、僕に襲い掛かって来る。
コレは、裏で指示している者がいるからだろう。
モンスターに指示が出来るって、一体どんな奴だよ!
僕は、植物型のモンスターに向けて、プロメテウスを振り下ろす。
「燃えろぉぉー‼︎」
すると、刀身から炎が迸り、植物型のモンスターを焼き払った。
あれ〜?
普通に、避けられたと思ったんだけどなぁ〜。
僕は、いい加減、非常識に強いプロメテウスは、望めば大体、何でも出来るんじゃないかと思った。
さっきの炎に驚いた虫型のモンスターが、僕から距離を取る。
すると、今度は、犬型のモンスターが僕に向けて火を吐いてきた。
「うおっ⁉︎」
僕は、炎に包まれる。
あれっ?
全然、熱く無い。
………どうやら僕に炎は効かないらしい。
僕は、直ぐさま犬型のモンスターに近づいて、念のため
あと1体。
僕は、最後に残った虫型のモンスターに近づこうとして、息を呑む。
何だ、急に雰囲気が変わった。
先程までとは打って変わって、まるで王者の様な風格を感じる。
「シャッ‼︎」
速い⁉︎
先程までとは、段違いの速さで、虫型のモンスターが僕に迫る。
ギンッ!
「ぐッ‼︎」
重っ‼︎
僕は、その一撃を何とか受け止める。
何で急に、こんなに鎌が重くなったんだ?
続けて、2撃目が来る。
「ぐあッ‼︎」
堪らず僕は、近くにあった建物の壁に叩きつけられる。
「ガハッ‼︎」
背中を叩きつけられ、僕はプロメテウスを手放してしまう。
すると、プロメテウスはまるで、其処には最初から何も無かったかのように消えた。
くっ!
僕は、直ぐにそれを掴み、敵を見る。
すると奴は、さっき僕を吹っ飛ばしたところから、一歩も動かずにこちらを見据えていた。
まるで、王者としての余裕を見せつけるかの様に…。
何故、急に強くなったのかは、分からないけど、アイツは明らかに、今の僕より格上だ。
それでも、やるしか無いだろう。
あの、ヘスティア様の事だ。
今も路地から、僕を見ているかもしれない。
なら、あまりカッコ悪いところを見せられない。
せっかく神になっても、カッコ悪いから無理。とか言って断られたら、自殺し兼ねない。
ああ、怖い怖い。
その恐怖と比べたら、こんな格上と戦う恐怖なんてたかが知れてるな。
一歩、奴に近づく。
本当に参っちゃうな。
きっと、僕が攻撃される度に、悲鳴を上げていたんだろう。
二歩、敵を見据える。
それなら、きっと僕が死んじゃったら凄く悲しんで、泣いてくれることだろう。
三歩、
僕は、あの
四歩、脚に力を溜める。
笑った顔の方が好きだな。
五歩、僕は奴の身体を
「キシャ?」
奴はまだ、自分の身に何が起こったのか、気付いていないらしい。
それにしても、奴の身体を貫いた瞬間、さっきまでの格上の気配が消えてしまったな。
まぁ。とりあえず、ヘスティア様を守れた。
これだけ出来れば、大じょう……
バタッ‼︎
僕がそこまで考えたところで、意識が途切れた。